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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.224 ■□■
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-4***
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ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針」
について話をしています。今回は、箇条5「組織の状況」について話をします。
ISO 9004:2018の箇条5「組織の状況」は、ISO 9001:2015の箇条4「組織の状況」と
整合しています。
■□■ ISO9004;箇条5 ■□■
この箇条5は「組織の状況」というタイトルで、持続的成功を達成するための組織の
能力について記述しています。多くの経営者は、組織の状況を理解せずに組織の能力を
過信して、即ち的確に把握せずに事業を行い、その結果失敗することになってしまって
います。
組織の状況に影響を及ぼすものは、まず経営環境の変化です。この経営環境の変化には、
考慮すべきものとして、利害関係者、外部の課題、内部の課題があります。個々利害
関係者のニーズと期待は異なるので、ニーズ及び期待の対立、矛盾、優先順位などに
ついて、調整したり整合したりする必要があります。
さらに、経営環境の変化には外部の課題と内部の課題を考慮することが必要です。
■□■ 利害関係者 ■□■
利害関係者は,組織の意思決定又は活動に影響を及ぼします。したがって、社会に限り無く
多くある利害関係者の中から、自組織に影響を与える組織、団体を認識しておくことが必要です。
一方、「密接に関連する利害関係者」は,顧客、外部及び内部の関係者であることが多く,
組織の持続的成功を達成する能力に影響を及ぼします。
箇条5は、次の事項に該当する利害関係者を明確にすることを推奨しています。
a)関連するニーズ及び期待を満たさない場合,組織の持続的成功へのリスクとなる。
b)組織の持続的成功を強化する機会を提供できる。
組織は、「密接に関連する利害関係者」を明確にし,次の事項を行うことを推奨しています。
a)関連するニーズ及び期待を特定し,対処することが望ましい事項を明確にする。
b)利害関係者のニーズ及び期待を満たすのに必要なプロセスを確立する。
ここでいうプロセスは、「密接に関連する利害関係者」のニーズ及び期待を満たす方法、
基準など明確にして行う一連の活動を意味しています。
■□■ 外部、内部の課題 ■□■
箇条5.3.3は、組織は、外部及び内部の課題を検討する場合、過去の組織情報,
今後の戦略的方向性を考慮することを推奨しています。そして、どの外部及び
内部の課題が組織の持続的成功へのリスクになるのか、又は持続的成功を強化する
機会になるのかを明確にすることを推奨しています。
これらの課題を決定したならば、リスク及び機会のうちのどれに対処するのが
望ましいかを判断し,必要なプロセスの確立,実施及び維持に開始することが
望ましいとしています。
組織は,対処すべき結果について考慮しながら,外部及び内部の課題を監視,
レビュー,評価するプロセスを確立し,実施し,維持する方法について検討する
ことも推奨しています。
■□■ 組織の能力との関係 ■□■
利害関係者のニーズと期待、外内部の課題などを分析することで、組織の状況を
理解したら、それらに対応するために「組織の能力」を検討しなければなりません。
ISO 9004:2018 の箇条5の冒頭でも、「組織の状況への理解とは,その組織が
持続的成功を“達成する能力”に影響を及ぼす要因を明確にするプロセスのことである。」
と述べています。
経営環境の変化は、組織の状況に大きく関係します。昨今の世界の目まぐるしい
動きについていけず、ちょっとした経営環境の変化を見落すことで、組織経営を不利な
状況に追い込むことがあり得ます。そして、これらの課題は組織の能力に影響を与えます。
課題を解決する、回避する、乗り越えるなどいろいろなことが考えられますが、いずれに
しても、新しい能力を必要とすることでしょう。
組織の能力に影響を与える外部の課題の例として、次のようなものが上げられています。
a)法令・規制要求事項
b)分野固有の要求事項及び合意事項
c)競争
d)グローバル化
e)社会的,経済的,政治的及び文化的要因
f)技術の革新及び進歩
g)自然環境
さらに、組織の能力に影響を与える内部の課題の例として、次のようなものが上げられています。
a)規模及び複雑性
b)活動及び関連するプロセス
c)戦略
d)製品及びサービスの種類
e)パフォーマンス
f)資源
g)力量及び組織の知識のレベル
h)成熟度
i)革新