ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-9 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.229 ■□■    
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-9***
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ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針」
について話を進めています。
今回はISO9004 :2018箇条7「リーダーシップ」、箇条8「プロセスのマネジメント」
についての話をします。

■□■ ISO 9004;箇条7 ■□■

箇条7リーダーシップは次の4つの細分箇条に分かれています。

 ・一般
 ・方針及び戦略
 ・目標
 ・コミュニケーション

当然のこととして、持続的成功を達成するにはトップのリーダーシップが必須です。
ISO 9004:2018に特徴的なことは、CSRのような社会的責任(SDGsを含む)、就業生活の質、
顧客経験(customer experience)などにもポイントを置いているところです。

■□■ 戦略の一つに顧客経験 ■□■

トップマネジメントの戦略について次のように書かれています。
「トップマネジメントは,例えばコンプライアンス(compliance),品質,環境,
エネルギー,雇用(employment),労働安全衛生,就業生活の質(quality of work life),
革新(innovation),セキュリティ(security),プライバシー(privacy),
データ保護(data protection)及び顧客経験(customer experience)などの側面に対処
することが望ましい。」

ここに、顧客経験(customer experience):カスタマーエクスペリエンスという聞き
なれない言葉が出てきます。

■□■ 顧客経験とは ■□■

”customer experience value”とも言われ、顧客は商品・サービスの利用において、
さまざまな「経験」を価値とし認識する、としています。これは、VOC(Voice of Customer)
よりもさらに進んだ、顧客満足を向上させる戦略をいいます。

顧客は、単に商品・サービスを購入するだけでは満足しない、いまや店舗の雰囲気、
販売員の対応、ブランド商品を試着する、最高アイテムを身につける喜びなどの体験を
通じてその企業の価値を感じとります。カスタマーエクスペリエンスこそが競合他社との
差別化要因になるという戦略です。

VOCは顧客の生の声を聞いて一定水準の企業価値を目指す活動ですが、カスタマー
エクスペリエンスは「顧客の期待を上回る満足度」を提供する戦略です。

■□■ ISO 9004;箇条8 ■□■

箇条8はプロセスマネジメントについてガイドしています。
ISO 9001:2015では、プロセスアプローチという用語を使用していますが、9004:2018では
「プロセスマネジメント」という用語を使用しています。プロセスアプローチよりも
広い概念であると思います。

ISO 9004:2018では、外部から提供されるプロセス(外部委託)を含むすべてのプロセスを、
組織の目的とプロセスの様々な目的との間のバランスを最適化して、運用管理することを
プロセスマネジメント(プロセスの運用管理)と呼んでいます。
プロセスは、組織の中にネットワークとしてつながって価値を伝達しています。
そのプロセスは、ネットワークを通じて有機的なシステムとして機能している場合に、
より効果的、効率的に組織の目標達成に貢献します。
また、プロセスはそれぞれの組織に固有のものであるので,組織ごとに製品、組織構造、
規模などに応じてプロセス内の活動の諸要素を決定しなければなりません。

組織は、目的とする利害関係者のニーズ及び期待を満たしたアウトプットを提供するために、
必要なプロセスを決定する必要があります。決定すべきプロセスは、次のような分野・領域に
渡ることが推奨されています。

a)製品・サービスに関する運用
b)利害関係者のニーズ及び期待の充足
c)資源の提供
d)監視,測定,改善、改革等の運営管理

箇条8.2.2では決めたプロセスが対処すべき所(areas)を次のように上げています。

a)プロセスの目的
 ISO 9001:2015箇条4.4.1 には要求されていない項目です。プロセスには当然目的が
あるはずですが、その目的を明確にするべきであるという事項です。
プロセスの目的を明確にしておかないと、提供すべきアウトプットが決まりません。

b)達成すべき目標及び関連するパフォーマンス指標
 ISO 9001:2015箇条4.4.1c)に該当する項目です。達成すべき目標とはプロセスの
活動における目標で、次項c) 提供すべきアウトプットにつながるものです。

c)提供すべきアウトプット
 次工程(プロセス)へ引き渡すもの(アウトプット)です。b)項の目標及び
パフォーマンス指標に合致したものがアウトプットにならなければなりません。

d)利害関係者のニーズ及び期待並びにその変化

e)運用,市場,技術の変化
ISO 9001:2015箇条4.4.1g)に該当する項目です。経営環境の変化に対応
しなければなりません。

f)プロセスの影響
 原文は“the impacts of the processes”です。

g)必要となるインプット,資源及び情報並びにその利用可能性
ISO 9001:2015箇条4.4.1a)に該当する項目です。

h)実施する必要のある活動及び使用できる方法
ISO 9001:2015箇条4.4.1c)に該当する項目です。

i)プロセスにおける制約条件
原文は“constraints for the process”です。

j)リスク及び機会
ISO 9001:2015箇条4.4.1f)に該当する項目です。