——————————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.235 ■□■
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針15***
——————————————————————–
今回はISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を
達成するための指針」の箇条10「組織のパフォーマンスの分析及び評価」
についてお話しします。
ISO 9001を構築しても成果が出ない組織には、幾つかのヒントが含まれて
います。
■□■箇条10組織のパフォーマンスの分析及び評価■□■
ISO 9001を導入しても組織の品質に関するパフォーマンスが上がらない
という話をよく聞きます。ISO 9001の活用の仕方に難があるのは
明らかですが、どこをどう直せばISO 9001導入の結果が出るのかについて
ガイドが欲しいところです。
箇条10.4「パフォーマンス評価」は,パフォーマンス評価結果が悪かった
場合の分析がガイドされています。
利害関係者のニーズ及び期待に達しない、あるいは反するような
パフォーマンスが見つかった場合は、パフォーマンスに影響を与えた
プロセスを特定し分析する必要があるとしています。
■□■ パフォーマンスの見えるか ■□■
まずはパフォーマンスに悪さを与えているプロセスをどのようにして
見つけるかがポイントです。パフォーマンスに直接関係する当事者から
悪さを報告してもらうことが望まれるのですが、人間が本来持っている
「失敗は隠す」という意識を乗り越えることはなかなか大変です。
しかし、何とかして悪さをオープンにするくせを組織全部署に植え付ける
工夫をしないと長期間悪さが浮き上がってきません。
悪いことが明らかにならないと、改善すべきプロセスが決まらず
パフォーマンスは悪いままになってしまいます。
しかし、ただ悪いことを明らかにしなさいと言ってもだめであって、
第3者からも悪さが見える工夫が欲しいところです。
箇条10.4に出てくる、
1.利害関係者のニーズ及び期待
2.達成すべき目標
3.長期的改善に対応
の3項目に関して達成できたかどうかの判定基準を明確にしておき、
定期的にグラフ化などにして関係者全員が見えるようにすると良いでしょう。
ポイントは判定基準を明確にしておかないと、悪さ加減を判断できなく
なってしまうことにあります。
■□■ うまくいっていない原因の追究 ■□■
パフォーマンスの悪さを顕在化させたら、その要因及び原因を探り当てる
必要があります。これはちょうど管理図を作成して、管理限界線から
飛び出した点(数値)について、例えば特性要因図を用いてその原因を
探っていくことと同様に考えます。
そして「なぜなぜ」などの手法を活用して真因を見つけます。
1.利害関係者のニーズ及び期待に対しては、品質、コスト、
納期・量、環境、安全などの経営要素に着目します。
2.達成すべき目標に対しては、方針管理や日常管理の活動と
対応付けることが大切です。
3.長期的改善に対応については、学習及び革新の推進や人材の
参画に着目するとよいとしています。
同時にその原因に応じて,組織の方針,戦略及び目標の展開,
並びに組織の資源の運用管理について,適切なレビューを行うことが
必要になります。
トップマネジメントは,評価の結果を理解し、組織の方針,戦略及び
目標に対する影響に基づき,特定されたパフォーマンスを是正する
ための優先付けをすることが推奨されています。
組織のパフォーマンスで達成された改善を,長期的な展望から
評価することがいいでしょう。
■□■ KPIの選定 ■□■
KPIの選定は、パフォーマンスが目標を達成しない場合に
どのようなレベルになるべきかの情報を提供するものが
望ましいとしています。
KPIの選定に関する情報は,次のような要素から得られます。
1. 利害関係者のニーズ及び期待
2. 組織にとっての個々の製品及びサービスの重要性
3. プロセスの有効性及び効率
4. 資源の効果的及び効率的な利用
5. 財務パフォーマンス
6. 適用可能な外部の要求事項の順守
■□■ ベンチマークとの比較 ■□■
ベンチマークとの比較については、組織のパフォーマンスを
「確立されたベンチマーク」と比較することを推奨しています。
ベンチマーキングとは,組織が,そのパフォーマンスの改善及び
革新的実践を目的として,組織内外のベストプラクティスを
利用する測定及び分析の手法です。
ベンチマーキングは,方針,戦略及び目標,プロセス及びその運用,
製品及びサービス,又は組織構造に適用することができます。
次のような事項に関してベンチマーキングの実施方法を確立することが
よいでしょう。
1.ベンチマーキングの適用範囲の決定
2.ベンチマーク先の選定並びに必要なコミュニケーション及び
機密保持に関するプロセス
3.比較する特性に対する指標の収集
4.データの収集及び分析
5.パフォーマンスのギャップの特定及び改善の可能性
6.対応する改善計画の策定
7. 組織の知識基盤及び学習プロセスへの取込み