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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.242 ■□■
**ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-22**
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明けましておめでとうございます。
令和2年最初のつなげるツボをお送りします。
本年もよろしくお願いします。
前回に続きイノベーションについてです。
デジタル革命の先進国アメリカにおけるイノベーションの
考えも紹介したいと思います。過日、経済産業省の後援による
イノベーションに関するシンポジュームが開催されましたが、
そこで紹介されたアメリカの3人の経営学者の考え方を
説明します。
■□■ アメリカにおける3者の概念 ■□■
1980年代、日本が戦後急速に力をつけ、まさしく今でいう
スタートアップ企業ソニーが次から次へとイノベーションを
起こす商品を市場に出したころ、アメリカは大きな危機感を
抱き合衆国を上げてイノベーションを起こす国家戦略を
策定しました。
その戦略が功を奏して、今でいうGAFAに代表される
ITベンチャーが次から次へと育ちました。
ここにイノベーションを説明するアメリカ経営学者の
3者は次の方です。
・クレイトン・クリステンセン氏
ハーバード・ビジネス・スクール教授
・エリック・リース氏
HBSアントレプレナー・イン・レジデンス
・ジェームズ・マーチ氏
スタンフォード大学名誉教授
■□■ クレイトン・クリステンセン氏 ■□■
事業の推進において、イノベーションを起こすためには、
該当組織の「資源」、「プロセス」、「優先順位」の3つは
どのような場合にも必要なものです。
このことは既存事業においても新規事業においても同様で、
この3つはイノベーションに重要ですが、新規事業において
イノベーションを起こそうとする場合は、「資源」以外、
すなわち「プロセス」と「優先順位」は既存事業と
共有しないことが大切であると主張しています。
■□■ エリック・リース氏 ■□■
彼は、既存事業におけるマネジメントと新規事業における
マネジメントの対比に焦点を当てています。
事業マネジメントの基礎は、ビジョン、目的、人材投資、
長期的視点にあり、「人」、「文化」、「プロセス」、「責任」の
4要素をコアにして活動を推進し、その結果の成果として
持続可能な成長、継続的イノベーションを達成することを
上げています。
彼は、既存事業と共通する価値である、「真実の追究」、
「規律」、「エクセレンス」、「継続的改善」を基軸に新規事業を
推進することを提案していますが、「人」、「文化」、「プロセス」、
「責任」の4要素の構成がイノベーションでは異なることに
焦点を当てることを主張しています。
■□■ ジェームズ・マーチ氏 ■□■
彼は組織論、意思決定理論の権威と言われている人です。
イノベーション経営における「知の探索」と「知の深化・活用」の
2軸に焦点を当ててイノベーションを論じています。
短期的な利益を求めて知の深化・活用に重きを置くと、中長期的な
イノベーションが停滞してしまうと警告しています。
イノベーションには、知の深化・活用は必要ではありますが、
それに加えて「知の探索」をするべきであると論じています。
知の探索と知の深化・活用をバランスよく実現することで、
中長期的なイノベーションの確立が高まるとしています。
■□■ 時代は繰り返す ■□■
アメリカ経済学者3者のイノベーションに関する主張を
説明しましたが、イノベーションを起こす条件で根底に
あるものは「企業が若い」ということだと思います。
戦後75年も経つと日本企業も若いとは言えなくなってきました。
中国、インド、韓国、東南アジア新興国などがこれから活躍する
ことは目に見えています。
レガシー(遺産)のあることが足かせになる、ということが
よく言われます。そうであるならば、経団連が言うように
本体とは切り離した出島を作り、模擬的に若い企業を
創設する戦略がイノベーションを起こすカギであると思います。