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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.260 ■□■
*** 内部診断と内部監査6 ***
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新型コロナウイルスはまだ今後の動きが見えず不安ですが、まだ早いという方がいるかもしれませんが、終息後の世界について、変化を注視していく必要があります。そうした変化に備える意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を行ったらどうでしょうか。前回は働き方改革についてお話しをしましたが、今回はSDG’sについてお話しします。
■□■ 経営分野-SDG’s ■□■
SDG’s(Sustainable Development Goals)とは国連の「持続可能な開発目標」のことです。国連は1992年にブラジルのリオで「環境サミット」を開催し、多くのレポートを出しましたが、その中にアジェンダ21という文書がありました。アジェンダ21は、21世紀に向けての課題を500ページにわたって書き表した文書ですが、アジェンダ21は2001年に各国政府の合意を得たミレニアム開発目標(MDGs)に引き継がれました。そのMDGs節目の年、2015年に国連は「国連持続可能な開発サミット」を開催し、150を超える加盟国首脳の参加のもとに「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」であるSDGsを採択しました。
これは、世界が直面している最も切迫した問題のうちのいくつかに取り組むための大掛かりな15年実行計画です。
■□■ SDG’sのリスト ■□■
SDG’sには17の目標とそれぞれに平均10個ずつくらいのターゲットが存在し、合計で169のターゲットが書かれています。
- 貧困撲滅:あらゆる場所のすべての形態の貧困を撲滅する。
- 無飢餓:飢餓をなくし、食品安全及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
- 健康と幸福: 年齢を問わずすべての人々に健康的な生活を保証し、幸福(快適な暮らし)を促進する。
- 質の良い教育:包括的で、公平な質のよい教育を保証し、すべての人々の生涯学習の機会を促進する。
- 男女平等:男女平等を実現し、すべての女性に権限を与える。
- クリーンウォーターと衛生:万人に水と衛生の安定供給及び持続可能な管理を保証する。
- 手ごろな価格のクリーンなエネルギー:手ごろな価格で、信頼でき、持続可能な、近代的エネルギーをすべての人々が確実に利用できるようにする。
- 適正な労働(decent work:ディーセント・ワーク)及び経済成長:維持された、包括的で、持続可能な経済成長、万人に完全かつ生産的雇用及び適正な労働を促進する。
- 産業、革新及びインフラ:回復力[機能]のあるインフラを構築し、包括的で持続可能な産業化を促進し、革新(イノベーション)を促進する。
- 不均衡(不平等)を減らす:国内及び国家間の不均衡(不平等)を減らす。
- 持続可能な都市及び地域社会:都市及び人間の共同社会(集落)を、さまざまな人を受け入れ、安全で、回復が早く、持続可能にする。
- 信頼できる消費及び生産:持続可能な消費・生産パターンを確保する。
- 気候変動行動:気候変動及びそれが及ぼす影響に立ち向かうための緊急対策を取る。
- 水中生物:持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に使用する。
- 陸上生物:陸上生態系を保護し、回復させ、その持続可能な使用を促進する、森林を持続的に管理する、砂漠化に立ち向かう、土地の劣化を食い止める、生物多様性(の)損失(喪失)を止める。
- 平和、公正、及び強力な機構:持続可能な開発のために平和でさまざまな人々を受け入れる社会を促進し、すべての人々が公正を有することができるようにし、すべての階層で効果的で責任の所在が明らかな、さまざまな考えを受け入れた機構を構築する。
- 目標達成のためのパートナーシップ:持続可能な開発のために実行の手段を強化して、グローバルな協力関係(パートナーシップ)を活性化する。
■□■ SDG’sの経済モデル ■□■
国連の貿易連合(ITUC)の書記長Ms. Sharan Burrow氏は、2020年1月のダボス会議で、多くの企業のCEO(Chief Executive Officer:最高責任者)がSDG’sに言及しているにもかかわらず、その具体的な行動は経済モデルに十分反映されていないと警告しています。
例えば、目標12は、持続可能な消費・生産パターンを確保することですが、国連は、「危険有害な化学薬品及びその廃棄物の管理に関する国際的な基準の順守、国のセクタ別計画、持続可能なビジネスプラクティス、さらに消費者行動に組み込む持続可能消費についてなお強固なフレームが必要である」と述べています。
■□■ 診断における他社事例 ■□■
イギリスのユニリーバ社は、ガーディアンのリポートにおいて、SDG’sは「一生に1度のビジネス・チャンスを提供し、事業目標の中核にSDG’sをおき、投資決定において中心的役割を果たすつもりである、と述べています。ユニリーバの「持続可能な生活」ブランド(持続可能性を製品に組み込んでいるというブランド)は、今までの製品より30%速く成長していると会社は説明しています。
アメリカのマクドナルドは、イギリスで使い捨てのプラスチックストロー(BBCによると、イギリスだけで年850万本を使う)を減らす計画を発表し、代わりに紙のストローを使うことを表明しました。
■□■ 内部診断のポイント ■□■
私が考えるSDG’sにおける内部診断のポイントは次の通りです。
- サプライチェーンの脆弱性、すなわち、製品の廃棄、供給における非順法性
- 環境リスク、品質リスク、コンプライアンスリスク
- 投資者と消費者の信頼
- 従業員の快適な暮らし
- 製品及びサービスの開発