ちょっと、横道に | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.273 ■□■    
*** ちょっと、横道に ***
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内部診断の話だけでは単調で飽きますので、今回は「ちょっと、横道に」
にそれたいと思います。
最初にテクノファの動画ポータルサイトの宣伝をさせてください。
新型コロナウイルスの渦中にあって集合教育がしづらくなっており、
当社でもオンラインでのライブ講座が増えていますが、それに連動
させていろいろなトピックス(例えば、リモート監査など)を気軽
に動画で見ることができるサイト「テクノファ動画ポータル」を
新設しました。私が執筆している当メールマガジン「平林良人の
つなげるツボ」の動画版も、私の出演で配信しております。この
動画版では、メルマガでは伝えきれないこともお話していますので、
どうぞお立ち寄りください。

■□■ PCR検査 ■□■
さて、最近はPCRという言葉を聞かない日はありません。
このメルマガでもPCR検査について品質管理の視点から閑話休題
としてお話ししたことがあります(Vol.267)。検査ですから必ず
誤りがあるという話ですが、繰り返しになりますので詳しく触れ
ません。PCR検査の精度(約70%と言われている)に関して、
「ぼんやり者の誤り」、「あわて者の誤り」という2種類の誤りが
あるという話をしました。 

■□■ PCRとは何か調べました ■□■
PCRを調べてみますと、Polymerase Chain Reactionの略で
「 ポリメラーゼ連鎖反応」という試薬を使った増幅応用技術の
ことだと分かりました。DNA(遺伝子)の量を大幅に増やす技術
のことだそうです。
DNAは4種類のパーツ(Aアデニン、Tチミン、Gグアニン、
Cシトシンと呼ばれるアミノ酸)が長く繋がったものです。
DNAの塩基である、AとT、GとCは互いに強く結びついており、
2本の鎖を構成し、2重はしご状になったものが螺旋(らせん)
状に結びついた構造を作っています。

■□■ DNAを増幅させる ■□■
この構造を加熱すると二重らせん状がほどけて2本の鎖に分か
れるので、そこにポリメラーゼという酵素※とその他の試薬を
加えると2本に分かれた鎖が二本ずつ倍に増えるのだそうです。
※酵素とは、生体で起こる化学反応に対して触媒として
機能する分子。

この操作を何回も繰り返すとコピーされたDNAは4本、8本と
倍々と増えていき、理論上は10億倍以上にも増幅します。実際
の操作は新聞などで報道されているように、数時間もかかる面倒
なステップが含まれているようです。
PCR検査は人の喉からウイルスを採取します。そのウイルスの
遺伝子を解析して、新型ウイルスの特有な配列が認められれば
その人は感染者(陽性)と判定されます。
PCR検査の精度が低いと言われるのは、採取できるウイルスの
数が極めてわずかであるからだそうです。

■□■ PCR検査の発明者 ■□■
PCRの原理はアメリカのMr.キャリー・マリスが1980年台初め
に思い付きました。
マリスは当時の同僚で交際相手のジェニファーを乗せてのドラ
イブ中に、DNA増幅方法のアイデアが突然に頭に浮かんだと
後日回想しています。この閃きに自分でも驚き車を路肩に寄せて、
手元にある紙片に化学式を書き留めながら、興奮の中で「自分が
思いつく位なら、他の者が既に発表しているはずだ」と過去の
関係しそうな論文を総て当たったそうです。

1983年12月、実験に成功しましたが、分子生物学を揺る
がすことになる発明を同僚らに話しても、重要性は伝わら
なかった代わりにビジネスマンの友人が「パテントを取得
してはどうか」と提案してくれた、という話が伝わっています。

■□■ ノーベル賞受賞 ■□■
マリスはその功績により、1993年にノーベル化学賞を受賞
しました。彼のお陰で、それ以降遺伝子鑑定ができるようになり、
世界中で科学研究、犯罪捜査などに使われてきました。私は今回
PCR検査の精度が70%位だと知り、親子鑑定などに使われている
現状に気がかりですが、きっとそれなりの補正を掛けたり、いろ
いろな工夫をしているのだろうと思います。
DNAは自然界のなかで自らを複製するように特化された極めて
稀有な存在ですが、PCRはその特性を利用して検査ができる程に
までDNAの数を増幅させる画期的な発明であったことを知りました。