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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.278 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 内部診断と内部監査21 ***
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前回まで、サポート(支援)分野の情報セキュリティプロセスに
ついてお話しをしてきましたが、今回は同じサポート分野である
会計プロセスについてお話しをします。
会計プロセスはどのような組織にも必ずありますが、普段はあまり
意識しないプロセスです。組織の人が出張したり、備品を購入した
りした時に各種伝票を発行すると思いますが、その伝票インプット
をはじめ、各種お金の処理をするプロセスです。
■□■ 会計監査 ■□■
ここでは内部診断と内部監査を扱っていますが、世界で最初に
監査が行なわれたのは、会計監査だそうです。監査について私が
聞きかじったお話をします。
監査のことを英語ではご存じのように“audit”といいます。つなげ
るツボの今回一連のトピックス「内部診断と内部監査」を英語で
表現しようとすると、“internal diagnosis and internal audit”と
なります。
このauditの語源はaudioだそうで、監査は「音→聴く」という
のが元々の意味だそうです。そのため、会計監査はもちろん、
監査という行為は「聴くという行為」を意味していると言われて
います。監査においては、「監査員はあまりしゃべらない、一言
聞いた後は相手のしゃべることを注意深く聴く」という教えは、
この話で裏付けられます。
■□■サポート分野‐会計プロセス■□■
会計という業務は、組織の中のあらゆる仕事の中で最も標準化が
進んでいると思います。
標準化されているというこのことは万国共通で、組織の財務諸表
の作り方は国際標準となっています。したがって、内部で診断
したり監査したりするポイントは、この標準を知り、この標準に
沿ってチェックするということになります。
国内では組織の会計の原則が法律(会計法)で定められています。
その原則は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従う
もの」というものです。
■□■ 会計一般原則 ■□■
企業会計原則には、一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則
の3つがありますが、後者2つは専門的になりますので、一般
原則を知っておればよいでしょう。
1.真実性の原則
「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告
を提供するものでなければならない。」というのが真実性の原則です。
2.正規の簿記の原則
「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、
正確な会計帳簿を作成しなければならない。」というものです。
正規の簿記とは複式簿記のことで、組織は正確に仕訳を記帳し、
総勘定元帳その他の会計帳簿を作成しなければなりません。
3.資本取引と損益取引区別の原則
「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益
剰余金とを混同してはならない。」というものです。
例えば、ある入金があったときに、これが資本取引として入金され
たのか、それとも損益取引(売上代金など)として入金されたのか
は厳密に区別しなければなりません。
4.明瞭性の原則
「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計
事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないように
しなければならない。」というものです。
会社の財務諸表(決算書)は利害関係者が閲覧しますので、利害
関係者が判断を誤らないように明瞭に表示しなければならないと
いう原則です。
5.継続性の原則
「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、
みだりにこれを変更してはならない。」というものです。
例えば、固定資産の減価償却方法について、ある期は定率法を
採用し、ある期は定額法を採用するとなると、期間ごとに会計
方針が異なることになり、期間比較することが困難になってし
まいます。
6.保守主義の原則
「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これ
に備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」というの
が保守主義の原則です。
例えば、ある会社に対する売掛金が貸倒れになる可能性があると
いうときは、実際に確定するのを待たず速やかに損失処理しておく
ことが健全な財政状態を示すこととなります。
7.単一性の原則
「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の
目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、
それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたもので
あって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。」
というのが単一性の原則です。当たり前ですが、いわゆる裏帳簿と
いうものは作ってはいけません。