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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.306 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査10 ***
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ナラティブとは「語り口」のことですが、語ることが変われば生み
出される物語は違ったものになります。ナラティブは今まで「当た
り前と思っていたこと」を「そうではない」と考えることが一つの
特長です。しかし、従来慣れ親しんできた当たり前のことを変える
ことは相当に難しいことです。しかも周りの人々も、今までと違っ
たことを行おうとするとそれなりに抵抗も大きいでしょう。しかし、
内部監査を変えたいと思っている人にはこのメルマガシリーズは参
考になると思います。
■□■ サービス・ドミナント・ロジックス ■□■
最近 サービス・ドミナント・ロジックスという顧客価値を探索す
る理論がマーケティング分野で研究されています。私も最近聞いた
ばかりですが、サービス・ドミナント・ロジックスの神髄は「プロ
セスとナラティブ」にあるとある講師が言っておりました。今まで
とは異なった視点で顧客の潜在ニーズを掘り起こそうという理論の
ようです。
前にも話しましたが「ガンダムNT」は、ガンダムナラティブのこ
とであるとある方から教えられました。これもガンダム伝説の新し
い物語を意味していると思います。
ナラティブセラピーは心理療法として有名です。これもいままで
「当たり前」と思ってきたことを、見方を変えることで異なった世
界が見えて悩んでたことが解消される手法であると聞いています。
コロナ後の世界をどのように見るのかの議論においても時々ナラテ
ィブという用語が出てきます。NHKBS番組での議論を聴いていて
感じたことは、前後のコンテックス(文脈)から、今まで当たり前
と思っていたことを変えなければならないという意味で使われてい
ました。
■□■ 見方を変える ■□■
「見方を変えること」はいろいろなところで説明されていますが、
人は簡単には見方を変えられません。見方を変えるには、私たちが
いままで「当たり前」と思っていたことから離れなければならない
からです。
よく聞く話ですが、コップに半分の水が入っているが、もう半分し
かないと見るか、まだ半分もあると見るかでその後の行動が変わる
といいます。本当でしょうか?理屈としては本当で面白い話ですが、
いままで「半分しかない」と思って暮らしてきた人が自分の頭の中
を「まだ半分もある」と切り替えることは至難の業です。
山登りの例も良く出されます。もう半分も登ったとみるか、まだ半
分もあるとみるかで気持ちの持ち方がずいぶん変わるという話をよ
く聞きます。
人には染みついた思考回路があります。その回路を変えることは容
易にはできません。見方を変えることはそれなりの訓練と努力が必
要です。さらに重要なことは、本人がその結果得られるであろう便
益を確信することです。
■□■ 内部監査を変えることは難しい ■□■
内部監査も同じで、20年間(例えば)同じやり方で行ってきたこと
を変えようとすることは容易にはできません。まず今のやり方を変
えたいという強い意志が必要です。今に満足していれば変えたいと
いう気持ちは出てきません。
・内部監査がマンネリ化してきている。
・有効な内部監査をさらに追求したい。
・内部監査で何らかの具体的成果を出したい。
・内部監査が組織のパフォーマンス向上に寄与するようにしたい。
ナラティブ内部監査を導入するには、このような内部監査を「変え
たい」という思いがまず必要です。私は研修の場において上記の例
のように内部監査を変えたいという声をよく聞いてきました。でも、
どうしたら変えていけるのかよく分からないという声が圧倒的でし
た。
ナラティブ内部監査は「どのようにして内部監査を変えるのか」に
ついての具体的方法を提示するものです。前述しましたように、頭
では理解できても実践するにはいろいろなチャレンジが必要です。
コップの水の例のように、半分もあるとポジティブに考えるアイディ
アは分っていても実践する方法はすぐには考えられません。どのよ
うに実践するのかという、次の段階になると、それなりの理論武装、
具体的方法を会得しなければならないと思います。