ナラティブ内部監査11 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.307 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査11 ***
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我々は日常生活で当たり前と思っていることが多くあります。
しかし、あることについて見方を変えると、今まで「当たり前と
思っていたこと」が違って見えることをいろいろな場面で経験し
ています。例えば、景色がそうです。正面から見ていると一枚の
絵としか見えないものが、横から見ると隠されていたものが見え
ます。角度を変えて見ると従来と異なった景色が見えてくるとい
うことはよくあります。

■□■ 高層建物の30階から地上をみる ■□■
例えば、高層建物30階から走っている地上の車の車種は判別
できません。1階から見たら同じ地上を走っている車の車種はわ
かるでしょう。車種どころか車の中にいる人まで見えるかもしれ
ません。
京都にある三十三間堂を正面から見ても普通の神社の構えにしか
見えませんが、横に回ってみると33間もある長い回廊に驚くか
もしれません。
あまり通い慣れない道ですと、行った時の風景と帰りの風景が随
分異なることに驚くことがあります。
ナラティブと関係する言葉にディスコース (discourse)という言
葉があります。辞書には「言葉による思想の伝達」とありますが、
いろいろな考えがあることを言い表しています。見方が変わると
は、いわゆる通説という社会的に当たり前だと思っていることが
異なって見える考えを言います。

■□■ ディスコース ■□■

清宮徹(西南学院大学)氏は「ディスコース的視座と組織化」で
2011年の東日本大震災時の経験を次のように語っています。

「東日本大震災の被災地の一つ、南三陸町に、年に2-3回ほど赴き、
現地の人々との多様な対話を通して得られたコミュニティーの語り
を研究している。
南三陸町の被災から復興へのディスコースを観察することが可能と
なった。
地域の人々とのコミットメントをより深めることで、多様なディス
コース
が織りなす被災地の社会的現実を垣間見ることができた。筆
者はデータを取りに行くという意識より、仮設住宅のご老人と語る、
現地のコミュニティー・リーダーと語る、商店街の人々の話を聞く、
被災地が復興に向かっていく応援団の一人として、新しいコミュニ
ティーの再生に手助けしたいという姿勢であった。家族や友人を失
い、当たり前だった日常の機能をすべて失い、人々はどのようにコ
ミュニティーを再生するか、応援すると同時に、私たちが学ぶべき
ことがたくさんあると確信していた。
そして被災地の語りはまさに、多声的ディスコースのダイナミクス
であり、言説が言説を生み出す人々の語りから現実が作り出されて
いた。」

■□■ ディスコースのオルタナティブ ■□■
内部監査にも先輩から語り繋がれた思想?の伝達があります。東北
大震災の前の南三陸町に震災前にあったディスコースと同じように、
内部監査にも今までのディスコースがどの組織にもあります。

清宮氏の話を続けます。
「これまでの訪問で理解したことは、南三陸町の復興を支えるコミュ
ニティー・リーダーたちの献身的な働きであった。これは地域の「内
的ボランティア行為」といえ、復興の大きな原動力となっている。
人々のディスコースは、被災直後は「喪失」のディスコースであった。
同時に、被災地に駆けつける外部ボランティアや日本社会が発信す
る絆または連帯のディスコースである。被災地の語りでもう一つ顕
著なのは、「感謝」の語りである。これが「復興」のディスコースに連
動している。もちろん今でも被災地の中には「喪失」のディスコース
は消えていない。しかし、外部ボランティアを中心とした「絆・連帯」
という語りは、それに対する「感謝」のディスコースとともに、復興
の語りを支え、コミュニティー・レジリアンスを推進している。これ
らの語りは明らかに相互言説的である。「悲しんでいるだけじゃだめ
だ」、「みんなのために復興市を開こう」、「みんなが応援してくれ
るから、やらなくては」など、相互言説的な語りのダイナミクスは、
人々がコミュニティー内部から生み出す復興の力となっていること
が理解できる。」

■□■ 内部監査を変えることは難しい ■□■
20年間(例えば)行ってきたことを変えようとすることは難しいこ
とです。内部監査のディスコースをこの機会に異なるディスコース
に変えていきましょう。
・内部監査がマンネリ化してきている。
・有効な内部監査をさらに追求したい。
・内部監査で何らかの具体的成果を出したい。
・内部監査が組織のパフォーマンス向上に寄与するようにしたい。

このような思いを実現させることを皆で考えていくことが組織のパ
フォーマンスを向上させる原動力になると思います。