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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.321 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査25 ***
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前回まで、ナラティブ内部監査で活用すべき重要と位置づけられ
る「他者理解」を3回にわたって述べてきました。その前は、ま
た3回にわたって「自己理解」について述べました。都合6回に
わたって自己理解、他者理解をお話したことになりますが、ここ
にナラティブ内部監査の神髄があります。内部監査員と被監査者
の両者が自己理解をすることで、お互いを他者理解することが出
来るようになります。これは何も内部監査に限らずコミュニケー
ションの神髄ですが、ナラティブ内部監査には特にこの自己理解、
他者理解が内部監査員と被監査者の両者に求められます。
それでは、今回からは自己理解、他者理解した後、「4.よく聴
く」についてお話しします。
■□■ よく聴く ■□■
ある方から、「聴」という字は、耳へんに+目と心で構成されて
いると教えていただきました。ただ、目が横に寝ているが・・・
という「おまけ」がついていますが、と分かりやすく説明してい
ただきました。
「門構えの聞く」と「聴く」とは、おなじ発音でも意味が異なる
のですよ、と解説していただきました。
「聞く」は音が自然と耳に入ってくることを言うそうです。例え
ば、道を歩いていて鳥のさえずりが聞こえてくるという場合に使
用されます。それに対して、「聴く」は積極的、能動的に音を取
り込むことを意味します。音を取り込むとは少し奇妙な表現です
が、相手の発する言葉の中身を吟味することを「聴く」の本質で
あると考えればよいと思います。
この相手の言わんとする意味の本当のところを理解することは事
前にそれなりの準備をしておかなければなりません。
■□■ 積極的に聴く ■□■
「よく聴く」をさらに一歩深めると、「積極的に聴く」という表
現が相応しくなりますが、この積極的に聴くということは大変エ
ネルギーを要する行動です。ドラッカー語録に次のようなものが
あります。
「人の話には、事実と要望と感情が交錯している」。従って、し
っかり積極的に聴こうとすると、この3つの部分を聴き分ける努
力が必要になります。自分自身が話をするときにも、事実と要望
と感情が交錯しているということ、を認め自覚している必要があ
ります。
自分では事実だと思っていたことがいつの間にか自分自身で脚色
し、あたかも事実のように話をするという経験は多くの人が持っ
ているのではないでしょうか。
■ラポールの構築(受容関係の構築)■
会話をする場面では、相互が信頼して話す気になることがまず大
切です。そのためには、まずは相互の間に信頼関係を構築するこ
とが必要です。内部監査で監査員と被監査者とが信頼関係を構築
することが良い、いやすべきであるという認識を監査員と被監査
者が持つことが期待されることですが、そのために用意しなけれ
ばならないことがいろいろあります。
まず、内部監査の目的が被監査者にとって受け入れられることが
必要です。自分の仕事を批判するような雰囲気があれば相互の信
頼性は構築できないでしょう。目的が組織の改善にあり、そのた
めには内部監査員と被監査者が協力してネタを探し、課題を解決
するという共通の問題意識を持つと相互の信頼は構築しやすくな
ります。
組織全体に内部監査の位置づけを前述のように明確にするとラポ
ールは構築しやすくなるでしょう。そのためには、トップの理解
が必要になりますが、このトップの理解については場を改めてお
話ししたいと思います。
■ うなずいたり、あいづちを打ったり、 ■
内部監査員は、相手の言わんとしていることを正確に理解しよう
とするには、うなずいたり、あいづちを打ったり、エコーイング、
パラフレージングなどを応用すると良いと言われています。
うなずいたり、あいづちを打ったりしたことぐらいで、相互信頼
性が本当に高まるのかと懐疑的な方も多いと思いますが、実践し
てみるとその効果が分かると思います。
日常の会話の中で、私的な会話はそうではないかもしれませんが、
仕事の上ではあまりうなずいたり、あいづちを打ったりしていな
いことに気づく方が多いのではないでしょうか。
ましてや、エコーイング、パラフレージングなどを意識している
方はそう多くはないと思います。ここで、エコーイング、パラフ
レージングの説明をしますと、エコーイングとは相手の言葉の一
部をそのまま自分の返事の中に入れ込むことを言います。パラフ
レージングは、相手の言葉の一部を言い換えて自分の返事の中に
入れ込むことを言います。
前者の効用は、相手は自分の発した言葉を相手が言ってくれたこ
とで無条件に好印象を持つというところにあります。後者の効用
な、相手に私はこう受け止めましたよ、というメッセージを与え
ることが出来るというところにあります。受け止め方が合ってい
れば、相手は喜ぶでしょうし、そうでなければ相手は「それは違
う、こうこうだ・・・」と言って、次の話題へと2人の会話が進ん
でいく効用があります。