ナラティブ内部監査38 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.334■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査38***
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「なぜ、なぜを5回繰り返す」ことは、原因を探し出すことに有効
ですが、人が絡んだ問題の原因追及には限界があります。人の行動
は科学的な根拠が希薄だからですが、行動心理学的にいいますと、
人が何かをしようとするときには理由がある場合と、理由がない場
合とがあるそうです。ある場面におけるとっさ(瞬間的)の行動な
どは、理由なく行われます。
「特性要因図」、「なぜ、なぜを5回繰り返す」の他の原因追及の
ツール、特に人が絡んだ不適合の原因探索の方法についてお話をし
ていきます。

■ VTA ■
人が絡んだ問題の原因追及のツールの一つに、バリエーションツ
リー・アナリシスがあります。あまり知られていませんが、X-Y
軸をもつ図を描き、起きた事象(行動・活動、出来事)のすべてを
図に記入して全体の事象から原因と思われることを推測、確定して
いく手法です。
X軸に問題に関係したと思われる組織(部門、部署、係、個人名な
どの主体)を割り付けます。割り付けられた個所からY軸に平行に
縦の柱を立てて、柱に組織ごとテキストボックスを配置します。テ
キストボックス内には該当する組織が行った行動・活動、出来事な
どを時系列に書き込みます。

バリエーションツリー図)こちらをクリックしてください

バリエーションツリー図の一番上のテキストボックス(時系列最後)
には対象となっている不具合を書き込みます(例では軸Dの最上部)。
その場合の組織は不具合が起きた組織とします。原因がほかの組織
にあったとしても不具合の発見された組織のテキストボックスに不
具合事象を書きます。組織に配置されたテキストボックスは、行動・
活動の相互関係の分析から繋がりがあると判断されたボックス同士
を線で結びます。
右の説明欄には、テキストボックスそれぞれの行動・活動に関して
の簡単な説明、特記事項を書きます。
バリエーションツリー図は、ツリーと呼ばれるように下から上に時
系列に行動・活動を関係した組織の根元(下端)からてっぺん(先
端)までをチャートとして可視化する手法だと思っていただければ
よいと思います。

■ どんな手法ですか? ■
VTAは Leplat & Rasmussenによって1980年代に考案された手法
ですが、2000年前後に日本でも様々な産業分野(建設、電力、航空
機、鉄道等)で応用され始まりました。不具合発生に係る人間要因
(ヒューマンファクタ)を明らかにするために有効な方法の一つとさ
れています。
分析をする基本は、不具合、不適合が起きたことの責任追求ではな
く、原因を明確にすることにあります。対策を明確にすることが目
的で、起きた事実を分析する過程で人間行動の流れを中心に何が根
本原因であるかにアプローチする方法です。
X軸に割り振られた複数の主体(組織:部門、部署、係、個人名な
ど)が時間軸に沿ってどんなことを行ったのか、行動をチェーンと
して描き、その相互の繋がりから、発生した不具合の発生経過、過
程を分析するというものです。行動のチェーンを描くという特性上、
主体ごとのインタフェースやコミュニケーションの流れが比較的多
い不具合における原因究明に効果を発揮すると言われています。

■ 原因への対策は絞る ■
再発防止対策は、複数ある要因事象の全てに行うのではなく、最も
効果的な部分を選び処置することが良いとされています。図式化さ
れたツリーの中から不具合を防止するために排除しなければならな
い変動要因を「排除ノード」(軸Cの上に〇で示されている)と呼
び、変動要因の連鎖を断ち切るポイントを見つけ出すことで根本原
因に手を打つことが出来るとされています。