ハラリの「サピエンス全史2」 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.344 ■□■
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*** ハラリの「サピエンス全史」 ***
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前回に続きハラリの「サピエンス全史」について感想を記したい
と思います。まず認識を新たにしたのは3万年前頃のサピエンス
は現代人と同じ知能を持っていたという説明についてです。200
万年前頃に類人猿の一種類にDNAの突然変異が起き、その人種
がホモサピエンスの先祖であるという。そこから100万年単位で
ホモサピエンスは徐々に進化をしていき、10万年前頃までには他
の類人猿とは比較にならない高い知能(そうはいっても現代人に
は劣る)を持つようになったという。しかし、約7万年前に認知
革命が起きると、数万年をかけて、3万年前頃にはサピエンスは
現代人と同じ知能を有するようになったということです。

■ 認知革命 ■
認知革命とは、生きている今の世界から離れて、虚構の世界を空
想するようになった革命(大きく変化した)のことだそうです。
この空想は言葉により語られる(いろいろな神の物語)ようにな
り、数万年かけて徐々に今の我々と同じ脳を持つようになったと
いうことです。
なぜ認知革命が起きたのかについては、またもや突然変異が起き
たという説明です。7万年前頃、サピエンスの脳内のDNAの配
線が偶然大きく変わったが、ホモサピエンスの他の人種、例えば
ホモエレクトスにはそのような突然変異は起きなかったというこ
とです。
この説明は、現在多くの研究者が同意しているものだということ
です。3万年前のサピエンスが我々と同じ知能(記憶力、想像力、
理解力など)を有していたとは俄かに信じがたいのですが、それ
を説明する客観的な古代遺物がいろいろ発見されているのです。
ただ、私には200万年前の突然変異、7万年前の脳内配線の変化
(突然変異)というところが理解しがたいのですが、昨今の新型
ウイルスのことと重ね合わせると真実味が増します。

■ 古代遺跡文化 ■
サピエンスが3万年前頃には現代人と同じ知能を有していたとす
ると、いろいろな古代遺跡がなぜ作れたかの説明が付くように思
います。エジプトのピラミッド、イギリスストーンヘンジの巨石、
イースター島にあるモアイ像などの古代遺物は作られた年代も様
々ですが、重機の無かった数千年前にどのようにして作ったのか
実に不思議です。巨大なピラミッドの作り方はいろいろ研究がさ
れほぼ解明されていると言っていいと思いますが、他の巨石遺物
についてはいまだにどのように切り出したのか、運んだのか、作
ったのか不明なものがたくさんあります。
しかし、その頃の人が我々と同じ知能を有していたと知ると、宇
宙人説などは吹っ飛び、合理的な理解への突破口が開かれた思い
がします。

■ 10,000年は何世代 ■
1世代を30年とすると、1万年は333世代が紡いできた歴史とい
うことになります。自分から数えて333もの先祖の存在は気の遠
くなるような話ですが、その間にDNAのコピーが一部欠損したり、
変わったりするということはなんとなくわかるような気がします
(それらの大きなものが突然変異?)。
私の家には家系図なるものが菩提寺にありますが、江戸時代から
の系統しか記されていません。しかも、住職によると明治時代に
は家系図を売る商売があって、普通の家柄(平林家)の家系図の
多くはもしかすると家系図屋から買ったものかもしれない、とか
つて聞かされました。
我が家の家系図には10代(300年)しか書かれていません。多
分日本で一番信頼が置ける家系図である天皇家でも70世代
(2100年)位しか明確になっていないのではないでしょうか。
誰が(天皇家を超える5倍近くもの)先祖333世代の姿、形を想
像できるのでしょうか?

■ 農業革命 ■
農業革命は1万2000年前に起きたそうですが、これにより植物
の栽培化と動物の家畜化がすすみ、人々は永続的に定住するよう
になりました。しかし、この永続的定住がその後の人類に必ずし
も明るい未来を創ることにならなかった、という物語は次回お話
ししたいと思います。