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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.358 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準11 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。
350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、その後から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標6についてです。
■■ 目標6 ■■
目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確
保する。
<6.1 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍
的かつ平等なアクセスを達成する。>
21世紀に入って飲み水の枯渇が心配されています。世界的に降雨の
偏りが以前に比べ大きくなっていることもあって、地域によっては今
後の心配を加速させています。
国土交通省の統計によると、日本では1日に1人あたり、およそ300
リットル近くの水が使われているそうです。日本では「飲み水に困る」
ということは夏の異常気象以外ではあまり考えられませんが、世界で
は水不足が深刻化し、清潔な水が確保できない地域が少なくありませ
ん。水不足が原因で紛争が起こる場合もあり、今、世界の水不足問題
の解決が急がれています。
■■ 水不足の現状 ■■
国連の「世界人口白書2021」によると、現在の世界総人口は78億人
です。現在、その約半分の36億人が水不足に悩まされており、今後も
増えると予測されています。この状況が続けば、2050年には約97億
人になるとされる世界人口のうち、約半数50億人もの人が水不足の影
響を受けるのではないかと予測されています。
ユニセフによると、世界の約20億人が安全に管理された飲み水の供給
を受けられていません。菌に汚染された水を飲むなどで、アフリカでは
急性の下痢などを引き起こすコレラが流行し、多くの死者を出したりし
ています。世界では、その水が危険だと分かっていながらも飲まざるを
得ない人々が多くいるのです。水不足は現在に始まった問題ではなく、
過去にも深刻な被害をもたらしてきました。国同士の紛争に発展したこ
ともあります。水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)、
水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など)、水の所有権・水資
源開発の問題などが主な原因です。
■■ 水不足の要因 ■■
地球温暖化による気候変動が一つの原因となっています。温暖化は降水
量だけでなく、雨の強さや頻度も変化させています。降水パターンが激
しく変動するため、季節や月ごとで見ると、水不足に悩む地域が出てき
やすくなると言われます。雨だけではなく、気温上昇による積雪の減少
や雪解けの早まりは、春夏の水源量に大きく影響します。
工業化の進展も水不足の要因の一つです。多くの産業で水が多量に使用
されています。さらに都市化による開発などで森林伐採が進み、水を蓄
積していた森も減少したりするなど、自然の貯水機能の破壊も原因とな
っています。
「水の使用量が増えること」の背景には人口増加と産業発展があります。
先述した通り、世界の総人口は2050年には約97億人に増加すると予測
されていますが、人口が増えるほど水の使用量は増えます。水は限りあ
る資源であることを忘れずに対策を考えねばなりません。
■■ 水不足への対策 ■■
日本の水処理技術は、世界で深刻化している水不足問題の解決に役に立
つと言われています。地球上の水の97%は海水ですが、この海水を飲み
水に変える技術、すなわち淡水化技術が日本にはあります。また水の循
環システムも期待されている技術で、下水が注目されています。この下
水の浄化処理には日本が開発した膜分離活性汚泥法などが有望視されて
います。
AI(人工知能)をはじめとするICT技術も今後の水不足問題を解決に導
く鍵となっていくと言われています。例えば、AIが気象などさまざまな
データを組み合わせて水需要を予測し、配水計画をリアルタイムで自動
生成することで、常に最適な水の供給制御を可能にするといったシステ
ム構想です。
■■ 水日常生活での工夫 ■■
誰もが歯磨き、洗濯、トイレ、入浴など、生活のあらゆるところで水を
使用します。その際、使用を最低限に抑える節水を心がけることを世界
中の人々が日常的に行う仕組みが出来ることが期待されます。
一人ひとりが節水を習慣にするには何らかの工夫が必要です。世界が水
に困るようになると何らかの規制が行われるようになると思います。温
暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出を抑えることと同様な動き
が将来起こるでしょう。日本では、水不足の問題は遠い国での出来事の
ように思えますが、水も自然にある資源であり、循環していることを忘
れてはなりません。