SDGインパクト基準23 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.370 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準23 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標14です。

■■ 目標14 海洋汚染の防止 ■■
目標14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、
持続可能な形で利用する。
<14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上
活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削
減する。>

海がいろいろな恵みを人類に与えてきたことは常識であり、地球の
生命を維持する上で不可欠な要素であるが故にSDGs14に取り上
げられているのだと思います。ところが、近年この海がいろいろな
要因により汚染され、しかも汚染の度合いがこれ以上許されないレ
ベルにまでなっていることが国際的に報じられています。
日本では、環境省が平成23年に「海洋生物多様性保全戦略」を定
めていますので、最初はこの戦略の一部を紹介します。本保全戦略
は、生物多様性条約における国際的な目標や我が国の「海洋基本法
(2007 年 4 月成立)」及び「海洋基本計画(2008 年 3 月閣議決
定)」を踏まえ策定されています。

■■ 海洋生物多様性保全戦略 ■■
本保全戦略は、海洋の生態系の健全な構造と機能を支える生物多様
性を保全して、海洋の生態系サービス(海の恵み)を持続可能なか
たちで利用することを目的としています。そのため、主として排他
的経済水域までの我が国が管轄権を行使できる海域を対象とし、海
洋の生物多様性の保全及び持続可能な利用について基本的な視点と
施策を展開すべき方向性を示しています。我が国周辺の海域には、
深浅の激しい複雑な地形が形成されているとともに、黒潮 や親潮
などの海流と列島が南北に長く広がっていることがあいまって、多
様な環境が形成され、多くの海洋生物が生息・生育しています。

■■ 海洋に流れ出るプラスチック ■■
このような海洋生物多様性の保全を脅かさせているものの一つにマ
イクロプラスチックの問題があります。世界経済フォーラム(本部
:ジュネーブ)では,海洋に流出するプラスチックごみの量は,
2050年には海に生息する魚の量を上回ると予測しており,プラス
チックごみの海洋への流出を防ぐ対策の強化の必要性を指摘してい
ます。
ここでは農水省の論文を参考にします。マイクロプラスチックとは
海洋に流出したプラスチックのうち,大きさが 5mm以下の小さな
ものをいい,私たちの身の回りのプラスチック製品の原料である樹
脂ペレットや化粧品に含まれるスクラブ剤などが洗面所や風呂場か
ら流れ出たもので、近年,世界各地の海域でこうした微細なマイク
ロプラスチックの浮遊が確認され、その数は推計 5兆個以上あると
言われています。日本周辺の沖合海域でもマイクロプラスチックの
漂流が確認されています(H26年度日本の沖合海域における漂流・海
底ごみ実態調査,環境省)。これらのマイクロプラスチックは比重が
1以下で水に浮くという特徴をもっているため, 海に流れ出ると
海洋を浮遊・漂流し続け,世界中の海へと広がっていきます。化粧
品に含まれるマイクロビーズは肌の汚れや古くなった角質を除去す
る効果があるとされており(いわゆる,スクラブ剤),多くの化粧品
に添加されています。もともとはスクラブ剤にはクルミやアプリコ
ットなどの天然の素材が使用されていましたが,2000年前頃から,
安価で,粒径が同じプラスチック製のビーズが普及し始めました。
マイクロビーズの大きさは 1mm以下 (数十~数百 μm) の小さ
な微粒子であり,一本の化粧品の容器 (100g前後)に数十万個から
数百万個のマイクロビーズが入っているそうです。化粧品に入って
いるマイクロビーズはあまりに小さいため,消費者の家のバスルー
ムや洗面所から下水処理施設のフィルターを通過して川や湖,海へ
と流れ込んでいきます。アメリカの五大湖(エリー湖)でも,多い
場所で 1平方 km当たり 60万粒のマイクロビーズが回収されて
います。プラスチック製のマイクロビーズには海洋を長時間浮遊し
て空気と触れる間に空気中に希釈されて拡散している殺虫剤や難燃
剤など有害化学物質を吸着し高度に濃縮する性質があり,そのマイ
クロビーズを食べた魚が体内に有害物質を蓄積し、更にそれを食べ
る人間に深刻な影響を与える可能性が指摘されています。

■■ アメリカの規制 ■■
このため、アメリカ連邦議会は, 2015年末に,洗顔料や歯磨き粉
などに含まれるプラスチックビーズの使用を禁じる法案 (「マイク
ロビーズ除去海域法」という法案)を可決し,2018年 7月からは
微粒子を含む製品の販売を禁止しました。こうした政府の決定を受
けて,米国の化粧品 メーカーの「ジョンソン・アンド・ジョンソ
ン」,「プロクター・アンド・ギャンブル」 (P &G),英国「ユニリ
ーバ」,仏国「ロレアル」などは,プラスチック製スクラブを天然の
果物の種子などに相次いで転換していく考えを発表しました。日本
でも,行政,化粧品メーカーともに,化粧品へのプラスチックマイ
クロビーズの使用を禁止する方向に動いています。マイクロプラス
チックはミクロな微粒子のため,一旦流入が起こると回収除去する
ことはほとんど不可能ですので、早急に,プラスチックマイクロビ
ーズの使用禁止が必要です。欧州では北海の養殖場のムール貝やフ
ランス産のカキの身から微小プラスチックが見つかり、マイクロプ
ラスチックが海の生態系を壊し,海産物を通じ人間の健康に悪影響
を与える恐れが指摘されるようになっています。