SDGインパクト基準25 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.372 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** SDGインパクト基準25 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標16です。

■■ 目標16 平和 ■■
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、す
べての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて
効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。
<16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関
連する死亡率を大幅に減少させる。>

目標も最後の2つになりました、最後の2つ「平和」(16)と
「パートナシップ」(17)は今まで述べてきた目標を統括する目標
です。

366号(目標11)でもお話ししましたが、ここには「包摂的(ほう
せつてき)」という言葉がキーとして登場します。
Goo辞書によると;
1.一定の範囲の中につつみ込むこと。
「知識はその中に―されている」〈倉田・愛と認識との出発〉
2.論理学で、ある概念が、より一般的な概念につつみこまれるこ
と。特殊が普遍に従属する関係。例えば、動物という概念は生物と
いう概念に包摂される。

■■ 平和で包摂的な社会  ■■
平和で包摂的(インクルージョン)な社会とは、誰もが平和(暴力
の無い)で社会に何らかの形で参画する機会を持ち、排除されない
ことを意味します。
包摂の英語は“inclusion”ですが、入れる、全体に纏める、包み込む
などの意味があり、すべての人を平和な社会に入れ込むことが目標
16の基本的な概念になります。
SDGsは「誰一人取り残さない」(leave no one behind)を合言葉
にしていますが、この概念が包摂的、すなわち誰も排除せず全員を
社会に参画させるように包み込むという意味につながるのです。包
摂の反対は排除ですが、弱い立場に置かれた人は、就業・雇用の機
会に恵まれなかったり、貧困に直面したり、社会の中に置き去りに
され、必要な支援や制度を受けられないということが起きます。
自分はそんなことはないと今は思っていても、誰もがある日突然弱
い立場になることがあります。例えば、水害にあい住んでいる家を
押し流されたというように、誰でもいろいろな災害に遭遇する可能
性があります。そのような状況では、弱い立場になった貴方に対し
て従来には考えられなかった受け入れ難いことが起こり得ます。

■■  包摂的な制度  ■■
日本国憲法第25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度
の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社
会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければなら
ない」とあります。
「弱い立場になった貴方に対して従来には考えられなかった受け入
れ難いことが起こり得ます」といいましたが、そうさせないための
社会的な制度が必要です。目標16には「包摂的」という言葉が2
度出てきますが、2番目の包摂的な制度は、誰をも包み込む社会的
制度を目標にしているのだと思います。
憲法25条の言う「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に
応える制度がそれだと思いますが、よくセーフティネットという言
葉を耳にします。
社会的制度を網の目のように張ることで、国民全員が安全で安心な
生活を送れる仕組みのことです。また、ナショナルミニマムという
言葉があります。国が保障する国民の生活の最低水準を意味してい
ます。

■■  すべての形態の暴力及び暴力  ■■
一番ひどい暴力は戦争です。いまウクライナで起きていることをみ
ると国連の無力さを痛感します。さりとて目標16を諦めるわけに
はいきません。個人あるいは一企業だけでは目標16を達成するこ
とはできませんが、目標16を達成するために個人も一企業も努力、
協力することで戦争抑止の大きなうねりを作り出し早く戦争のない
世界を作り出していかなければなりません。

日本国憲法の前文には次のようにあります。
【日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動
し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、
わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為に
よって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そ
もそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は
国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利
は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法
は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の
憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高
な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信
義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した
。われ
らは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除
去しよう
と努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい
と思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免か
れ、平和のうちに生存する権利を有する
ことを確認する。
われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視
してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであ
り、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係
に立とうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名
誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓
う。】