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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.400 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 再発防止策とは ***
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このメルマガは2009年にスタートさせていただきました。それ
から毎週皆様方にマネジメントシステムに関する話題を送り続け
させていただき今回400回目となりました。記念すべき400号の
話題は何にしようかと考えましたが、ことさら奇をてらうことな
く、今の流れの継続で行きたいと思います。
ここまでトヨタの話をさせていただいてきましたが、一転して話
を品質不祥事に戻したいと思います。品質不祥事も社会的に一段
落したように感じますが、一度芽が出たものを無くすことは簡単
なことではありません。
■■ テクノファフォーラム開催 ■■
テクノファでは3月17日にWEBで「テクノファフォーラム29回:
改めて考える品質不正」を開催しました。山口利昭先生(弁護士)
にはご都合が合わずビデオ出演になりましたが、慶應義塾大学理
工学部 管理工学科 山田秀先生、TQMコンサルタントの安藤之
裕氏、認証機関の大久保友順氏を迎えて講演、及びパネルディス
カッションを行いました。
ここでも話題になりましたが、品質不正に対する再発防止につい
て考えてみたいと思います。
■■ 電機総合メーカの再発防止策 ■■
例えば、昨年10月に出された三菱電機の報告書には次のような
再発防止策が書かれています。
<この不正は当委員会の調査により判明した。神戸製作所におい
ては、既に、社会システム第一部内で毎月末に行われる教育会に
おいて、検査成績書には実測値以外を記載することのないように
指導をする等の再発防止策が講じられている。>
不正が行われたことに対して、教育会で指導をすることは再発防
止策としては不十分です。現状を反省し修正する手段としては有
効かもしれませんが、将来に向けて再発しないという観点から、
今一歩踏み込んだ対策が必要であると考えます。
メーカである事業所において常識的なことである「検査成績書に
は実測値以外を記載することはしてはならない」という事を指導す
るのは再発防止策ではないと考えます。なぜならば、程度の違い
はあるにしても、このようなメーカとして常識的なことは全従業
員に周知されていたはずです。結果から見て周知されているはず
のことが周知されていなかったのですから、再度周知を徹底する
という事は必要でしょう。しかし、してはならないと周知されて
いたはずのことが行われてしまっていたことに対する分析、評価、
対策が無いと又同じことが起きると思います。してはならないこ
とをしてしまったことには、それなりの理由があるはずです。ど
うして、してはならないことをせざるを得なかったのか、どのよ
うな理由で行ったのかを調査、分析し、その結果に対して対策を
取らないと、ほとぼりが冷めた頃にまた同じことが起きると思い
ます。
■■ 再発防止策を考える ■■
<赤穂工場においては、職場単位で品質不正を防止する施策につ
いてディスカッションを行い、系統変電システム製作所幹部と共
有すること、内部監査において試験現場を確認し、生データの確
認を行うこと、品質保証監理部が設計デザインレビューにおいて
規格・顧客仕様に合致した設計結果となっているかを確認するこ
と、品質保証監理部において試験結果と試験成績書の記載値に齟
齬がなく、試験結果が仕様値を満足していることを確認し、出荷
判定を行うこと等の再発防止策を講じている。>
赤穂工場における再発防止策としては、次の4点が上げられてい
ます。
(1)職場単位で品質不正を防止する施策についてディスカッショ
ンを行い、系統変電システム製作所幹部と共有すること。
(2)内部監査において試験現場を確認し、生データの確認を行う
こと。
(3)品質保証監理部が設計デザインレビューにおいて規格・顧客
仕様に合致した設計結果となっているかを確認すること。
(4)品質保証監理部において試験結果と試験成績書の記載値に齟
齬がなく、試験結果が仕様値を満足していることを確認し、出
荷判定を行うこと。
(1)~(4)は再発防止策の入り口に立つ活動であって、再発防止策と
は呼べません。「ディスカッションを行い幹部と共有する」ことを
しては、起きたことへの反省であり今後同様なことが起きない歯
止めにはならないと思います。同様に「内部監査において試験現
場を確認し、生データの確認を行うこと」も内部監査のあるべき
姿を確認することであり、再発防止策ではないでしょう。あるべ
きことがどうして行われなかったかの原因を突き止めないとまた
再発するでしょう。「設計デザインレビューにおいて規格・顧客
仕様に合致した設計結果となっているかを確認する」こともDR
における当然実施すべきことであり、このことを再徹底するとい
う事は必要です。しかし、再発防止に必要なことは、「どうして当
然DRで行われるべきことが実施されなかったのか」の原因究明
とその原因を取り除くことのはずです。さらに「試験結果が仕様
値を満足していることを確認し、出荷判定を行う」ことも製造メ
ーカとしては当然行うべきことであり、再確認、再徹底すること
は必要かもしれません。しかし、これが再発防止策であるとする
ならば、将来また同じことが起きるかもしれません。