再発防止策を考える3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.403 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 再発防止策を考える3 ***
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(一社)日本品質管理学会では2023年1月、JSQC-TR 12-001:2023
「テクニカルレポート品質不正防止」全65頁を発行しましたが、
その中には,学会が選んだ品質不正の18社の事例について、調査
報告書からの抜粋の形でなぜ品質不正が行われたかの要因、原因が
書かれています。

■■ 説明されている要因,原因 ■■
18社の第三者報告書で説明されている要因,原因は次の8項目に
集約されます。
1.コンプライアンス意識がない。(401号)
2.品質保証部門が機能不全を起こしている(402号)。
3.人が固定化され,業務が属人化されている。
4.収益偏重の経営がされている。
5.監査が機能していない。
6.工程能力がないのに生産している。
7.管理がされていない。
8.教育がされていない。
これからその1つずつについて検証していきたいと思います。

■■ 人が固定化され,業務が属人化されている ■■
今回は3つ目についてですが、18社中の11社(61%)が「人の
固定化,業務の属人化」を品質不正の要因としています。各社は,
次のような記述で「人の固定化,業務の属人化」が品質不正の要
因であると説明しています。
-単独かつ固定化した業務体制であった。
-孤立し閉鎖的な職場環境であった。
-縦割り組織になっており、個々の組織は孤立し,属人化し,
 人事の固定化が,不適切行為を長期にわたり発覚させない主
 要な要因ともなっていた。
-最初に所属した職場に留まる人事制度であった。
-人事が固定化していた。
-人事ローテーションがなく,人間関係が固定化していた。
-同じ者が、長期にわたり品質管理業務を担当していた。
-縦割り文化,個人商店化,業務の属人化が要因になっていた。

■■ 業務に熟達することは簡単ではない ■■
私たちはどんな仕事でもその道に熟達すること、プロになること
は簡単ではないことを知っています。試しにちょっと「その道の
プロになるために」でgoogle検索をするとたくさんの事例が出
てきます。

その道のプロになるためには、
・その道を好きになる。
・自身の好奇心を刺激する。
・達成する目標を持つ。
・思ったように行かなくても忍耐強く行う。
・そのことを継続する。
・熟達する、成功するまで行う。
・どん欲に吸収する。
・失敗を恐れない。
など、多くのことが出てきます。
私の周りにもその道のプロがいますが、第一人者たちはその道の
仕事のためなら徹夜も厭いません。そして、何よりも重要だと思
えることは、その仕事を驚異的な期間飽きずに続けていることです。

■■ 業務を長く続けることは? ■■
ここの小タイトルに疑問符を付けたのは、「人が固定化されている」、
すなわち「業務を長く続けている」ことと品質不正の関係性がすん
なりと頭に入ってこないからです。
人があることを継続実行する(業務が固定化される)ことは、その
人がその道のプロになる必要条件でしょう、しかし十分条件ではあ
りません。
では、人が固定化されると品質不正を起こすというのは必要条件で
しょうか、そうとは思えません。それとも十分条件でしょうか、な
おそうとは思えません。
このような推論を続けて辿り着く結論は、「人の固定化」を品質不
正の要因とするにはかなり無理があるという事です。

では「人の固定化」は品質不正と関係がないのかというとそうでも
ありません。人が固定化されるとその人だけが知っていることが増
えて、他人には分からない、隠された部分が増えるということは言
えるでしょう。
つまり何らかの不正が行われても発覚しづらいという事は言えるで
しょう。発生原因ではなく、見逃し原因であるとは言えるかもしれ
ません。