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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.417 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** トヨタ物語19 ***
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私が諏訪精工舎に勤めていた頃、トヨタの大野耐一氏が会社に招聘
されて、我々社員は彼の講演を聞く機会を得ました。その時(1970
年代)の講演録からお話をさせていただいています。前回、大野氏
は「私はものごとをひっくり返して考えるのがすきだ。」と講演で
述べたところで終えましが、この逆に考えるとこころが大野氏の大
きな特徴です。まさしく真骨頂と呼べる発想だと思います。講演は
トヨタ生産方式のコアの部分、すなわち世の中で有名になった「か
んばん方式」へと続いていきます。
■■ 逆転の発想 ■■
私はものごとをひっくり返して考えるのがすきだ。生産の流れは、
物の移動である。そこで私は物の運搬を逆に考えてみたのである。
従来の考え方は「前工程が後工程へ物を供給する」ことであった。
自動車の生産ラインの上では、材料が加工され、部品となり、部
品が組み合わさってユニット部品となり、最後の組立ラインへ流
れていくなかで、すなわち、前工程から後工程へ進むにつれて、
自動車の体を成していくのである。
この生産の流れを逆にみてみた。いま「後工程が前工程に、必要
なものを、必要なとき、必要なだけ引き取りに行く」と考えてみ
たらどうか。そうすれば、「前工程は引き取られた分だけつくれば
よい」ではないか。たくさんの工程をつなぐ手段としては、「何を、
どれだけ」欲しいのかをはっきりと表示しておけばよいではない
か。それを「かんばん」と称して、各工程間を回すことによって、
生産量すなわち必要量をコントールしたらどうか、という発想と
なった。
いろいろトライした結果、最終的には製造工程のいちばんあとの
「総組立ライン」を出発点として、組立ラインだけに生産計画を
示し、組立ラインで使われた部品の運搬方法も、これまでの前工
程から後工程へ送る方式から、「後工程から、必要なものを、必
要なときに、必要なだけ、前工程に引き取りに行き、前工程は引
き取られた分だけつくる」というやり方を追求することとした。
これにもとづいて、最終の組立ラインに生産計画を示し、必要な
車種を必要なときに必要なだけ欲しいと指示することによって、
組立ラインで使われる各種の部品を前工程へ引き取りに行くとい
う、後工程引き取りの運搬管理方法に逆転させれば、製造工程を
前へ前へとさかのぼり、粗形材準備部門まで連鎖的に同期化して
つながり、ジャスト・イン・タイムの条件を満足させることにな
るわけである。
■■ かんばん方式 ■■
これによって、管理工数も極度に減少させることができる。この
ときに、引き取り、あるいは製造指示の情報として使われるのが、
前にも触れた「かんばん」である。「かんばん」については後に
詳しく言及するが、ここで、トヨタ生産方式の基本の姿を知って
おいてもらいたいのである。トヨタ生産方式の基本思想を支える
のは、これまで触れてきた「ジャスト・イン・タイム」と、つぎ
に触れる「自働化」であり、「かんばん」方式は、トヨタ生産方
式をスムーズに動かす手段なのである。