ロンドン物語2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.424 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ロンドン物語2 ***
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市中におなじみの免税店がなくなっていた、という話の続きです。
2020年から海外旅行者への英国の付加価値税(VAT:日本の消費
税に相当)免税ショッピング制度が、欧州連合(EU)離脱(ブレ
グジット)に合わせて廃止されました。

■■ 免税ショッピング制度廃止の影響 ■■
英国が外国人買い物客向けの免税措置を廃止した影響で、外国から
の客がパリやミラノに流れ始めたといわれています。いくつもある
有名ブランド高級小売店は、ロンドンが人気あるショッピング都市
としての地位を失うのではないかと懸念を募らせているそうです。
英国の国家予算案に対しては、高級店が軒を並べるニューボンドス
トリート、オックスフォードストリート、ナイツブリッジなどのハ
ロッズ、ハーベイ・ニコルズなど数百社が、免税措置の復活を求め
ていると報道されています。
統計によると、外国人旅行客は英国の国内総生産(GDP)に年間
350億ドル(5,000億円)もの貢献をしているそうです。英国
を訪れるアメリカ人旅行客に限った数字ではありますが、2022年、
アメリカからの旅行者の落としたお金はコロナ禍前の2019年並みに
戻りましたが、フランスは2019年の256%、イタリアは226%と2
倍以上に増えていると報道されています。
そのしわ寄せは英国最大の高級小売りブランド、バーバーリーに及
んでいます。バーバーリーは2022年、VATの免税不許可の政策
が原因でロンドンは他の欧州都市に負けつつあると警鐘を鳴らしま
した。
ハンドバッグのマルベリーは、目抜き通りボンド・ストリートの店
舗を閉鎖する際、免税措置の廃止を主な要因に挙げています。

■■ 英国国民も大陸に買い出し? ■■
このような外国人旅行者の動向に加えて、肝心の英国国民の動向も
厄介なことだと報じられています。それは、英国の消費者自体が税
還付を受けられるEU域内(特にフランスへ行く)での買い物を増
やし始めているという報道です。多くの業界は、免税措置が不在の
ままではホテルやレストラン、タクシー、美術館、劇場を含む観光
業界全体に影響が及ぶと訴えています。
これに対して政府は、旅行者は購入品を直接海外の住所に送れば今
でも免税を享受できると主張しています。そもそも2020年の免税
措置の廃止は、観光業に大きな影響は及ぼさないとのいろいろな統
計データを評価した結果であると主張しています。

■■ 大陸に行けば20%値引きされる ■■
ドーバー海峡に鉄道ユーロスターが走るようになって英国と大陸は
1,2時間で結ばれるようになりました。多くの業界のトップは「欧
州大陸に行けば20%値引きされるというのに、行かない手がある
だろうか」と政府に免税ショップ復活の要請をしています。あるト
ップは、英国のEU離脱はここまで考えた結果だったのだろうか」
と今さらながらの恨み節を新聞に投稿したそうです。
観光客への訪問人気ランキング調査では、2019年時点で英国は欧州
の大国の中でフランスに次いで最も人気の高い旅行先でした。しか
し、現在は英国旅行を計画していると答えた割合が42%と2019年
の70%から大きく減り、スペイン、イタリア、ドイツの割合が増え
ています。

■■ 政府はどうする ■■
政財界の重鎮は「観光客は常に買い物の価格に敏感だから、この免
税ショップ制度廃止には注視していかなければならない。わが国は
欧州で免税を提供していない唯一の国になってしまった」と指摘し、
免税制度は観光客にとって非常に重要であると、今後の政策転換に
期待していると述べています。そして、コロナの波が収まって、世
界的に海外旅行の促進に注力すべき時だというのに、われわれは近
隣EU都市に対して明確かつ不要なハンデを背負っている、と訴え
ています。何も行動を起こさなければ、ロンドンのホテルやレスト
ランにまでこれ以上の影響が広がっていくであろうと警鐘を鳴らし
ています。