ロンドン物語4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.426 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** ロンドン物語4 ***
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英国がEUから離脱したことの是非についての議論はあまり聞こえ
てきません。しかし、免税ショップがロンドン市内から無くなり、
イギリス人がフランスへブランド品の買い出しに行くという話を聞
くと英国のEU離脱には国民投票が真っ二つに分かれたように、功
罪相半ばする、或いは日向と日影があるというのが6年たった今日
の英国の姿ではないかと思います。

■■ そもそもEUとは ■■
EUは欧州の主権国家である27ヵ国(2016年英国が離脱して(28
→27ヵ国)が、人、物、金を集中的に管理するという世界でも類を
見ない連合国家の仕組みです。2022年の統計では、EUが擁する人
口は4.5億人、経済規模は約16兆ドル(邦貨1600兆円:日本の国
家予算の16倍)で、世界最大級の経済圏として、アメリカ、中国と
比較されますが、以下の加盟国から構成されています(現在28→2
7ヵ国)。
1952年:ベルギー、西ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、
    オランダ
1973年:デンマーク、アイルランド、英国(2016年離脱)
1981年:ギリシャ
1986年:スペイン、ポルトガル
1995年:オーストリア、フィンランド、スウェ―デン
2004年:チェコ、エストニア、キプロス、ラトビア、リトアニア、
    ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロベニア、スロバキア
2007年:ブルガリア、ルーマニア
2013年:クロアチア
EUには欧州議会、欧州理事会、欧州委員会、理事会の4つの主な
機関が有ります。

■■ EUでは何をしている ■■
欧州議会はEUの国会に当たるもので、ルールや法律を議決していま
す。欧州理事会は、「EU首脳会議」とも言われ、各国のトップが定
期的に集まり EUの針路や直面する課題について議論しています。
欧州委員会は、EUの内閣に当たる行政執行機関で、新しい法律を作
る権限を持っています。欧州委員会によって作られた法律案は、欧州
議会、EU理事会で議論し、採決されます。そして、理事会があり、
ここでは、担当の閣僚が出席して議題毎に実務的な議論をしています。
このようにみるとウクライナ紛争で話題になるNATO(ナトー軍)
と併せて巨大な国家(連合体)ともいえる存在です。EUは主要な国
際会議において、EU加盟国とは別の一つの機関として参加し、例え
ば、G20とか気候変動枠組み条約締結国会議とかにも参加しています。
また、EU単一市場の「シングル・パスポ-ト制」は、EU加盟国の
どこか1ヵ国で免許や認可を得れば、まるでパスポートを持った様に、
他の27ヵ国のどこでも追加の免許など取らずに自由に業務が展開出
来る制度です。

■■ EUを離脱した理由 ■■
このようにメリットのあるEUから離脱したいと言い出した英国の理
由は何だったのでしょうか。誰しも疑問に思うことだと思います。
2016年は、記録的な事件が起きた年として強く21世紀の欧州史に残
るでしょう。この年に実施された国民投票で、英国民はEUから離脱
するという決断を下しました。1952年、西ドイツ、フランス、イタリ
アとベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)が結成
した欧州石炭鉄鋼共同体( ECSC )から65年が経とうという長い歴
史の中で、初めて直面したEUの危機です。
人口4.5億人のEUの自由に物やサービスの取引が出来るという、世界
に類を見ない統合された仕組みから、わざわざ英国が抜け出すはずは無
い、と思っていた大方の予想に反し、英国の人々は大英帝国の栄光を取
り戻す「独立」を選びました。最終集計によると、離脱票は全体の52%、
一方の残留票は48%でした。
国民投票の翌日(2016年6月24日)に実施された世論調査において、
離脱に投票した有権者の理由は次のようなものでした。
1) 49%:「英国に関わる決定は英国が行う」
2) 33%:「英国の移民と自国国境に対するコントロールを回復する」
3) 13%:「EU残留では、英国の権限を拡大する選択権が無い」
4) 6%:「貿易と経済の面でEUの外にいる方が有利である」