—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.436 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 番外編_日経品質管理文献賞受賞6 ***
—————————————————————
組織が品質不正を防止するためには精神論を説いたり、内部通報
制度活用、内部監査実施、コンプライアンス教育だけでは限界が
あります。品質不正が発生する要因を考えると、品質不正を起こ
すことのない組織文化を醸成する必要があります。 TQM(Total
Quality Management)はその方法の一つです。
「JSQC-TR 01-001 テクニカルレポート 品質不正防止」の目次
に沿って、今回は6章「品質不正をなくすために組織はどうした
らよいか」日常管理の徹底と改善活動の続きです。
■■ 日常管理の徹底と改善活動の促進 ■■
(3)改善活動の促進
SDCAサイクル(日常管理)の徹底は、日常的に発生する問
題を発見、認識することになる。問題を認識した後、この問題解
決のための取り組みの一つが、小集団改善活動である。1962年
に日本で誕生したQC サークル活動は、製造業を中心に現場力を
高めて、高度経済成長を実現したことはよく知られている。日常
管理の徹底には、強い現場づくりに取り組むことが不可欠であり、
こうして改善活動が促進され、環境変化に柔軟に対応できる強い
組織が生まれてくる。
(4)問題解決力の向上
問題解決には、問題を効果的・効率的に解決するための考え方、
手順、解析ツールなどが必要となる。そのためには全員が問題解
決を学び、実践できるようになることが不可欠となる。具体的な
方法については、日本品質管理学会の規格「品質管理教育の指針」
を参照するのがよい。
(5)TQMによる品質不正の防止
TQMの推進による日常管理の徹底は、品質不正の発覚を防止
するための極めて有効な手段である。品質不正は突然表面化する
わけではない。必ず予兆がある。ところが、組織文化が適切でな
いと、この予兆が無視されてしまう。したがって、この予兆をし
っかりつかまえて対処することが大切である。このような役割を
果たすのが日常管理である。
■■ リスクマネジメントの促進 ■■
品質不正を防ぐ上では、どのようなトラブルや異常がどのような
場面で発生するかを事前に洗い出して事前対応しておく活動が欠
かせない。リスクマネジメントは、事業や組織の運営に影響を与
えるリスク(不確実性のある事象)に対して、適切な予防を施す
一連のプロセスであり、諸リスクが発生する前にそれらを予め回
避するか、あるいは被害を最小限に抑えるためにさまざまな対策
を講じることである。
(1)リスクマネジメントの要点
組織活動には多くのリスクが内在する。このため、グループ全て
を対象に、どの会社・部門においてどのような業務遂行上のリス
クが存在するのか、それらのリスクをどのように回避するか等を
予め明らかにし、日頃トップマネジメントから第一線に至るすべ
ての階層で確認し、管理対象にしていることが重要となる。
加えて、顧客・社会のニーズや競合状況も変化するので、定期的
な見直しも欠かせない。中でも、法令。条例の不遵守や契約に関
わる不遵守のリスクの重要性は高く、とりわけ安全性を損なうリ
スクがもしも発生したら、組織の存続にかかわる致命傷になりか
ねない。
a) リスクを特定(発見)する
先ず、あらゆるリスクをリストアップする。そのためには、
外部で発生した品質不正に関する情報、内部で発生している意
図的な不遵守等に関する情報などを集め、いくつかの典型的な
タイプに整理する必要がある。その上で、同様のリスクが自組
織にあるかどうかを検討する必要がある。特に関係する法令や
条例の違反、各種規格類からの逸脱、顧客・社会と約束した契
約関係の不遵守事項などのプライオリティは高い。
b) リスクを算定(分析)する
洗い出したリスクの重大さを明らかにする。具体的には、リ
スクが顕在化した際の「影響の大きさ」と「発生確率」の両面
から両方を掛け合わせた結果を物差しに、それぞれのリスクが
どのくらい重大なものかを算定する。影響の大きさや発生確率
は可能な限り定量化を指向する。
c) リスクを評価する
リスクの大きさを影響度と発生確率の組み合わせで評価する。
d) リスクへの対応
-回避:リスクを完全に取り除く。
-軽減:悪影響を及ぼすリスク事象の発生確率や影響度を受
容可能な限界値以下にまで減少させる。
-移転:リスクを他者と共有する(例:保険)。
-受容:リスク軽度のものは手を打たない。
e) リスク対策の実施
個々のリスクに対して、前項で選択した対応策を実施する。
f) モニタリング
リスクを許容限界値まで下げたとしても、全く予想外の事態
が起こらないとも限らない。変更管理時の確認や、安全性にか
かわる事項等は注意深いモニタリングが必要である。
g) 有効性評価と是正
有効性の評価とその是正のサイクルを回す。顧客・社会の要
求は常に変化するし、組織のリスク対応の強弱も変動するので、
それらを勘案した定期的な見直しプロセスの設定と実施が大切
である。