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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.439 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ロンドン物語9 ***
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再びロンドン物語に戻りたいと思います。いま日本では高校学費
無償化、大学学費無償化の議論が盛んです。8月にロンドンに行
ったことをきっかけにイギリスにおける高等教育とそこに至る
パブリックスクールのお話をしたいと思います。
■■ イギリスの高等教育(18歳以降) ■■
イギリスの大学は全国に100近くあります。国立かどうかとい
う概念が日本とは異なりますが、国が経営しているわけではなく
それぞれ独立して経営しています。ほとんどが、国から補助金を
もらっているという点では準国立といってもいいかもしれません。
イギリスでは、1998年まで大学の学費はすべて無償だったの
ですが、2000年当時平均して年間9,000ポンド(約145万
円)かかっていました。といっても大学によって違っていたり、
スコットランドの学生は無償だったりもします。また、学費とい
っても入学時に払わなければならないわけではなく、学費と生活
費のローンを国から借り、卒業後ある一定の年収に達してから返
済するシステムになっています。
ちなみに日本人など外国人がイギリスの大学に入る場合はかなり
高い学費を払う必要があります。これは1998年までも同様で、
それまで財政の厳しい大学は外国人学生の学費収入が大きな収入
源になっていました。
■■ イギリスの入学試験 ■■
日本と違って大学ごとの個別の入学試験はありません。生徒は、
あらかじめ希望大学に応募し、Aレベルで必要な成績が取れた場
合に入学が許可される仕組みになっています。必要な成績が取れ
なかった場合は、その時点で第2、第3希望の大学に進むかどう
か再検討します。大学は、通常3年間の学士号課程ですが、4年
のコースもあります。学部を卒業したら学士の資格を習得できま
す。その時First(ファースト)、2-1(ツーワン)2-2
(ツーツー)といった成績が与えられますが、この卒業成績は、
のちの就職や進学にかなり重要視されます。ファーストは、狭き
門なのでたいていの大学生は2-1を目指して勉強しています。
その後は、大学院で修士号や博士号を習得するコースに進みます。
通常、修士は1~2年、博士は3年からとなっています。イギリ
スの大学は、何年かの社会経験を積んだ上で入学する社会人学生
も多く、特に大学院レベルでは何らかの専門職に付いている人が
さらに勉強するために入学することも少なくありません。
■■ パブリック・スクール ■■
パブリック・スクールは、もともとは教会と密接なつながりがあ
るところが多く、その活動の一環として始まった部分もあります。
しかし、歴史とともに徐々に形を変えてきており、教育にお金を
かけることができる家庭の子どもたちが、名門大学入学を目指し
て通わせる学校という側面が強まってきています。英国で子ども
をパブリック・スクールに入学させたいと考えている親は、
・自身がパブリック・スクールに通っていたので、子どもにも
同等の良い体験をさせたい。
・公立校に比べて充実した環境や施設で子どもを学ばせたい。
・名門大学へのステップとして価値を感じている。
というのが大きな理由となっています。
卒業生に聞くと、同級生は親が資産家や実業家、銀行や大企業勤
めの人が多いと聞きます。英国でパブリック・スクールに通わせ
る、ということは日本の子どもたちを日本の私立中高に通わせる
よりもハードルが高いとおもいます。特に学費は日本に比べてか
なり高額です。寄宿舎に暮らし、生活のすべてがほとんど学校で
行なわれるような所だと年間に平均して500万円ほどかかりま
す(円安の昨今はもっと高い)。
1968年に制定されたパブリック・スクール法が認定した最初
の学校で、伝統、学力の点から見ても申し分なく、英国では
「ザ・ナイン」と呼ばれる9校を紹介します。
・チャーターハウス・スクール
・イートン・カレッジ
・ハロウ・スクール
・マーチャント・テイラーズ・スクール
・ラグビー・スクール
・シュルーズベリー・スクール
・セント・ポールズ・スクール
・ウェストミンスター・スクール
・ウインチェスター・カレッジ