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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.443 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** トヨタ物語27 ***
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大野耐一氏提唱の問題が起きた時の「なぜなぜ5回」を行ってみ
ました。しかし、該当の問題は下記に示しますが、結論に達した
「フィルターを定期的に交換する」という対策について当初はう
まくいきましたが、数か月あとには忘れてしまうという事例が発
生しました。「なぜなぜ5回」の活用についてもう少し話をしたい
と思います。
■■ 「なぜなぜ5回」の実施 ■■
機械工場の事例として「切削効率が落ちてしまった」という問題
のなぜなぜについて、以下のようなものがありました。
(1)「なぜ機械の切削効率は悪くなったのか」
「工具と加工物の間に切粉が絡んでいたからだ」
(2)「なぜ工具と加工物の間に切粉が絡んでいたのか」
「切削油が十分でなかったからだ」
(3)「なぜ十分に切削油がかかっていなかったのか」
「切削油ポンプが十分くみ上げていなかったからだ」
(4)「なぜ十分くみ上げなかったのか」
「ポンプのフィルターが詰まっていたからだ」
(5)「なぜ詰まっているのか」
「フィルターを交換していなかったからだ」
以上、5回の「なぜ」を繰り返すことによって、フィルターが切
粉で目詰りを起こしていることが分かりました。そこで、フィル
ターを定期的に交換するということを対策に行うという決定がさ
れました。「なぜ」の追求の仕方が足りないと工具を取り替えたり
する不十分な対策になってしまいますが、そうではなく恒久的な
対策が考えられたと機械工場では考えられました。ところがそう
ではないことが、数カ月後に同じトラブルが再発することで分か
りました。フィルターを定期的に交換することを標準書に規定し
た後に同様な問題が起きたのです。なぜでしょうか?
■■ ヒューマンエラーをどう防止するのか ■■
それは担当者がフィルターを交換することを忘れてしまったこと
から起こりました。なぜ担当者はフィルター交換を忘れてしまっ
たのでしょうか。機械工場では「なぜフィルター交換を忘れたの
か」をなぜなぜ分析を行うことで解決しようとしましたが、結果
は見るも無残なものになりました。
(1)「なぜ担当者はフィルター交換を忘れたのか」
「忙しかったからである」
(2)「なぜ担当者は忙しかったのか」
「仕事のやり方が効果的でないからである」
(3)「なぜ仕事のやり方が効果的でないのか」
「上司の教育訓練が効果的でなかったからである」
(4)「なぜ上司の教育訓練は効果的でなかったのか」
「担当者の理解が足りなかったからである」
(5)「なぜ担当者の理解が足りなかったのか」
「担当者のやる気がなかったからである」
このなぜなぜ分析は欠陥だらけです。
第一に事実確認が不十分であると思われます。第二に因果関係に
難があります。第三に人を原因としています。
1.事実確認が不十分である。
(1)の忙しかったからである、という理由はよく上げられる結
果ですが、本当に忙しかったのでしょうか、もしそうなら
ば忙しいとか忙しくないとかの境目はどこにあるのか聞き
たくなります。
(2)の仕事のやり方が効果的でなかった、という分析結果も怪
しいものです。同じように効果的である、効果的でないと
はどこに境目があるのでしょうか。
(3)の上司の教育訓練についても、上司の教育訓練が効果的で
あるとか、効果的でないとかはどこに判断基準があるのか
分かりません。
(4) (5)担当者の理解力がないとか、やる気がないとか、これ
らも根拠のない分析結果だと思います。
2.因果関係に難がある。
要因と結果の関係をみると無理やり関係つけているように思
えます。
3.人を原因としている。
人は原因とはなりません。というと反論が出ますが、犯罪行
為を除いてはと注釈をつければ皆さん理解してくれます。そ
うです、企業組織で働く人は、ミスを起こしても、原則、意
図的に行っていないという前提で「なぜなぜ分析」は行うべ
きなのです。