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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.451 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 特別採用(トクサイ)を考える3 ***
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449号でお話ししましたようにモノの寸法、特性にはバラツキがあ
ります。数多くのモノを唯一決められた絶対寸法(絶対特性)で製
造することはできません。モノの製品設計をするときには、寸法
(特性)のバラツキを考えなければなりません。製造する機械の精
度が素晴らしく良く、操作する人の技量がこれまた素晴らしく良く、
加工素材の組成も均一に作られているような場合は、数多く作るモ
ノのバラツキは小さくなります。反対に製造する機械の精度が悪く、
操作する人の技量もこれまた悪く、加工素材の組成も均一に作られ
ていないような場合には、数多く作るモノのバラツキは大きくなり
ます。モノの寸法(特性)のバラツキをどの程度に管理できるかが
製品品質に直接影響を与えますが、この能力を知らなければモノの
設計(公差設計)はできません。
■■ 特別採用とは ■■
設計では寸法(特性)のバラツキ(上限値と下限値:許容値)を決
めます。売り手である製造者は買い手が示した寸法(特性)のバラ
ツキよりも厳しい範囲で日常の品質管理をしている場合が一般的で
す。製造者が顧客との契約より厳しい寸法(特性)を設定している
のは、万が一のリスクをみているからです。例えば買い手が±2mm
の厚さの金属板を欲しいと要求してきたときに社内規格として
±1.8mm規定しているような場合です。±2mmと±1.8 mmの差で
ある±0.2mmは安全率と呼ばれ製品設計にはよく適用されます。当
然ですが工場にそれを実現する能力があることが前提です。社内規
格±1.8mmをはみ出していても、顧客の管理する±2mmを超えな
い場合は、顧客も納得する道理です。
問題は顧客の管理する±2mmを超えた場合です。素材系の製品で
他の部品と組み合わせがないような場合は、比較的「一時合格」の
判定が出やすいものです。しかし、他の部品と組み合わせがあるよ
うな場合はなかなか「一時合格」はでません。この一時合格が特別
採用と呼ばれるものです。「許容値」に合わないモノは「不合格品」
ですが、買い手側の「納期など」の事情で採用されることとなれば
「特採」となり、ロットの一部または全部が採用されるという制度
です。
■■ 設計における許容値の設定 ■■
では、許容値はどのように決められるのでしょうか。すべてのモノ
は、かならず寸法及び角度ほかの特性を持っています。寸法及び角
度ほかの特性がある限界を超えると部品機能を損なうことになりま
すので、設計ではこれ等のバラツキの限界を設定する必要がありま
す。すなわち、顧客の求める仕様を実現させる手段・方法を決める
図面においては、製造するときのバラツキも明確にする必要がある
わけです。この設計における規定は重要で、製造側は勝手にモノを
作ることはできませんし、勝手に変更することもできません。
製造及び検査においては図面に規定された寸法及び角度ほかの特性
を守るような業務推進しなければなりません。
■■ 許容値の設定を公差設計という ■■
モノの寸法をはじめとする特性のバラツキの範囲、すなわち上限と
下限で決められる許容値の設定を公差設計と言います。
JIS B 0405:1991には普通公差(general tolerance)の規定があり
ます。普通公差とは、個々に公差の指示がない特性に関する公差で、
JIS B 0405:1991には長さ寸法及び角度寸法については、4つの公
差等級が規定されています。
・4つの公差等級
-精級 例えば±0.5(基準寸法1000mm)
-中級 ±1.2
-粗級 ±3
-極粗級 ±6
公差等級を選択する場合、上で述べたように製造における加工精度
を考慮しなければなりません。普通公差より「小さな公差が要求さ
れる」場合は「個別に規定する」ことになります(設計公差)。ま
た経済的でありより大きな交差が許容される場合でも個別に規定し
ます。
(つづく)