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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.463 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 品質経営を考える5 ***
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上場企業の組織経営に大きな影響を持っている、コーポレート
ガバナンスコード(CGコード)は出来てからまだ10年です。
企業行動の規範にはいろいろありますが、CGコードが上場企
業のアキレス腱を握っているからだと思います。上場企業のア
キレス腱とは、株主総会に上程した議案が否認されることです
が、この上程議案は株主の投票によって決定されます。CG
(コーポレートガバナンス)コードは、金融庁/東証(日本取
引所グループ)によって運用されていますが、法律ではないの
で強制力はありません。会社が、株主をはじめ顧客・従業員・
地域社会などの立場を踏まえたうえで、透明・構成かつ迅速・
果敢な意思決定を行うための仕組みです。全部で5章構成の比
較的短い文書です。でもここに「品質」の一文字が無いことに
違和感を覚えています。
■■ CGコード第1章-3 ■■
CGコードの第1章は「その1~その7」まであり、株主の権利
について事細かく上場企業に注文を付けています。今回はその3、
すなわち「資本政策の具体的な方針」推奨事項について説明をし
たいと思います。
【原則1-3】(資本政策の具体的な方針)
上場会社は、資本政策の動向が株主の利益に重要な影響を与え
得ることを踏まえ、資本政策の基本的な方針について説明を行う
べきである。
■■ CGコード第1章-3の解説 ■■
【解説】
「資本政策」というISO関係者には聞きなれない言葉がでてきま
す。資本とは会社が活動する元となる資金のことですが、事業活
動の進展・拡大につれて追加資金が必要になってきます。そこで
事業資金を調達する計画を作成する必要がでてきますが、必要と
なりそうな資金額を事前に見積もった上で、資金調達の方法を計
画します。できるだけ効率的な資金調達をするためには、足りな
くなった都度調達することではリスクが高く、経営の維持や企業
価値の向上にマイナスになってしまいます。
1-3で求めていることは、こうした資金調達を含め金融分野で代
表されるような指標を使用して基本的な考え・方針を株主にする
べきであるという推奨をしています。
金融の世界で資本に関係する代表的な政策、指標には次のような
ものがあります。
1.自己資本比率の向上
企業自身のお金と借金との比率のことで高いほど倒産リスクは
低く、経営は安定していると見なせます。
次の式で計算されます。
・自己資本比率=自己資本÷総資本(自身のお金+借金)
2.資本効率の向上
企業の資金がどのくらいの利益を生み出してるかを表す指標で
す。資本効率の代表的な指数には、ROA(総資産利益率)やROE
(自己資本利益率)などがあります。ここでは、ROAやROEに
は触れませんが、資本効率が高い企業は、少額の資本で多くの利
益を稼いでいると言え、資本効率は株式投資の際に企業の収益性
を測る指標としても用いられています。
3.株主配当性向の安定化
年間を通じた企業活動の結果、利益がでればその最終利益(税
引き後純利益)の何割かは投資をした株主に還元します。どのく
らいの率で株主配当を行うのかは、業種、企業履歴、企業政策に
よりますが、一般には50%以下が好ましいと言われています。
企業の支払い余力は高いほど良いので、配当性向は高いほど望ま
しいと思われがちですが、100%を超えるような配当は企業が無
理をして株主を引き留めようとしている可能性があり注意が必要
です。上場企業の多くの株主配当性向は20~40%くらいのです。
4.自己株式取得
最近市場に出回っている企業自身の株式を取得するケースが目
立ちます。本来株式は株主に所有してもらうべきものですが、発
行した企業自身が自分の株を取得するという本来の姿と異なるこ
とが行われています。自己株式を取得すると、市場流通の株式が
少なくなりますので、自己株式を取得することで、1株当たりの
価値を高めることができます。株式の価値は、需要と供給で成り
立っていますので、需要が増えればそれだけ株式の価値は上がり、
逆に供給が増えれば1株当たりの価値は下がります。自己株式の
取得は株式の供給数を減らすことになり、現在の株主には好評な
政策です。ただ、自社株買いは会社の内部留保された現金を使っ
て行うため、株主への利益還元につながるにしても、ある限界で
しかできない政策です。
(つづく)