ISO9001キーワード PDCA2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.472 ■□■
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*** ISO9001キーワード PDCA2 ***
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役所の文書には「PDCA(サイクル)」という言葉が説明の中によく出てきます。
私が目にしたものは人材育成に関したものでした。ものづくり企業における人材
の能力開発の取組と効果について、(独)労働政策研究・ 研修機構(JILPT)の
「ものづくり産業の人材育成・処遇とデジタル化に関する調査」の中に出てきま
すので引用します。

■■ PDCAサイクル  ■■
JILPTの文書を経済産業省が「令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策」の中
に引用していますので、このメルマガにおける引用は孫引きということになります。

ものづくり企業が、どのような従業員の育成・能力開発に関する環境整備を
行っているか をみていく。伝統的に、品質向上や生産性の改善等を目的として行
われることも多い「改善 提案の奨励」や「小集団活動やQCサークルの奨励」と
並んで、「能力評価制度の導入」、「目標管理を通じた能力の棚卸し」、「自社の技能
マップの作成」、「個人ごとの育成計画の作成」、 「メンター制度やチューター制
度など先輩社員が新入社員をサポートする制度の導入」も実施割合が比較的高く
なっている。社内で必要な技能を洗い出し、それを階ていとして見える化し、従
業員が技能の階ていを登っていくことを計画的に確認・支援する、従業員の育成・
能力開発における、言わばPDCAサイクルを持っている企業が一定割合存在する
ことがうかがえる。

(資料JILPTI「ものづくり産業の人材育成・処遇とデジタル化に関する調査」)

■■ PDCAに展開  ■■
JILPT の人材育成の調査にはISO審査員にも有益な項目が羅列されています。今
回のPDCAの説明はJILPT資料の中ほどにある「個人ごとの育成」を取り上げて
みたいと思います。PDCAは「目的達成のための活動」であると前の号で申し上
げましたが、ここでは「個人ごとの育成」を目標にしてみたいと思います。
最初のPlan(計画)では、P1として目的,目標,ねらいの明確化を図ります。
組織にある(であろう)必要能力一覧表を用いて、従業員一人一人の能力の現状
を把握し、個人目標達成シートを作成します。 その上で、P2の達成手段として
従業員本人と上司とで「求める姿」のすり合わせをし、何を行うことで達成しよ
うとするかを決めます。このP2は極めて重要で、ここで達成手段、方法を決め
ておかないと目標は絵にかいた餅になってしまいます。

次に、Do(実行)では、D1実施準備として毎月の進捗状況をスキルマップで管
理するための表を作成します。その準備をした上でD2として、従業員はOJT、
OFF-JT、そして自己啓発を通じて能力向上を図ります。会社ではその支援として、
外部講習の受講費用・出張費用や資格取得に係る費用を全面的に補助します。

■■ PDCAに展開 2 ■■
そして、Check(評価)では、C1:目標達成に関わる進捗確認,処置として、最
初の能力と、Plan(計画)に基づき実行した結果をチェックします。そして、向
上がはかられた能力があれば、能力向上に応じて技術手当や職務手当などの見直
しをします。C2(副作用の確認)として、技術手当や職務手当などへの反映に不
公平感がないか確認をします。
最後に、Action(改善)では、A1:応急処置,影響拡大防止としてP1で作成し
た個人目標達成シートの確認を行います。PDCの段階を通じて改善することがな
いか従業員と上司が面談をします。もし改善すべき事項が見つかれば速やかに個
人目標達成シートを修正して次年度に備えます。また、もし達成状態が好ましく
ないような場合には、達成状況により、A2:再発防止,未然防止として来年に向
けたフィードバックを従業員と上司の間の話し合いにより実施します。

(つづく)