ISO9001キーワード 人々9(人事評価について) | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.483 ■□■
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*** ISO9001キーワード 人々9(人事評価について)***
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ISO9001:2015箇条6.2.2 にはこうあります。
「6.2.2 組織は,品質目標をどのように達成するかについて計画するとき,次
の事項を決定しなければならない。a) 実施事項、b) 必要な資源、c) 責任者、
d) 実施事項の完了時期、e) 結果の評価方法」
最後の「e) 結果の評価方法」が今回のテーマです。人々が積極的に参加して
「エンゲージメントの高い状態」になっても、その後の体制が重要です。その
後の体制とは、結果を適切に評価する体制のことです。

■■ 人事評価に関して ■■
人の評価も結果の評価も、評価の基本的概念は単純明快で、組織の業務はいろ
いろありますが、基本は次のようです。
 (1) 目標を明確に設定する。
 (2)リソース (ヒト・モノ・カネ)と時間を配分し、目標達成に向けて遂行
 する。
(3)遂行の成果を目標に照らし評価する。
(4)評価をフォローする。

このように評価という概念を理解するかぎりでは、日常いわれるPDCAとなん
ら変わることはありません。人事評価も(1)~(4)に沿って行われる「目標によ
る管理」が多くの会社で採用されているようです。
しかし、実務的には人事評価と言われると立ち往生することになります。
「目標のたて(させ)方がわからない」、「目標設定時の部下とのやり取りがわ
からない」、「考課のときの基準がわからない」など上司から幾多の質問が寄せ
られます。
「目標設定上の自主性を認めてくれない」「遂行過程での上司のチェックがこ
まかすぎる(あるいは大ざっぱすぎる)」、「考課(業績評価)が納得できない」
など、部下からも不満が出て来ます。
苦情や不満の中には単に新しい制度に対する心理的抵抗の域を出ないものもあ
りますが、鋭く、本質的に、推進側の準備や教育の不備、不徹底を衝くものも
あります。

■■ MBO:目標によるマネジメント ■■
かつて、横山先生※1は、Management By Objectiveの導入企業で失敗する会
社を横目に見ながら、MBOを導入するならば、実務上最低5年間は、集中的な
密度の濃い「MBOスキル教育」の実施が必要であると述べていました。集中教
育後も、恒常的にあらゆる訓練会議の中に必ず MBOのための一セッションを
入れ込むような、継続的な反復教育が必要であると述べていたのです。
教育用の資料の一つとしては、当時評判のE・A・ロックとG・P・ラザムの共著
『Goal Setting(目標が人を動かす)』(松井・角山共訳 ダイヤモンド社)、及
びE・C・シュレー著 『Management Tactician管理者の目標達成)』(梅津訳 ダ
イヤモンド社)などを上げておられました。
 横山先生 ※1 1926~2019年(没)、元モービル石油取締役人事部長、日
   本のキャリア開発理論の先駆者、2004年テクノファ/キャリアコンサ
   ルタント養成講座立ち上げ指導

■■ JOB型人事における評価 ■■
コロナ禍があけて、日本の産業界も30年にわたる衰退期を経てようやく明るい兆しを見
せてきました。今このタイミングで JOB 型人事の議論が盛んになっています。同時に
「人事評価制度」の議論も並行して盛んになっています。言うまでもないのですが、人
事評価制度は、従業員の業績への貢献度、結果に至るプロセスにおける努力、
業務態度などを評価し、昇格昇進、賞与査定につなげる人事施策です。人を評
価することは難しいと敬遠する向きが多いのが現状ですが、決して避けて通れない課題
です。
目的を正しく理解した上で取り組まないと、評価結果によっては従業員のやり
がいにマイナス影響を与え企業業績の足を引っ張る恐れがあります。企業が求
める業績に貢献した従業員は、貢献しない人より評価して称えなければなりま
せん。逆に業績に貢献しなかった従業員には奮起を促す必要があります。企業
と従業員は、同等の立場で評価に臨まなければなりません。従業員が主張すべ
きことを主張し、適切に処遇が決まれば、従業員のモチベーションは向上し、
組織のさらなる成長が期待できます。
そのためには、まず双方の(部下と上司)納得のいく目標設定が必要です。
企業が実現したいビジョンと、それをブレークダウンして職場の部下の目標を
明確にして、従業員に「自分は何を期待されているのか」「何を実現すればい
いのか」を明確に示さなければなりません。

次週は「人事評価の項目・基準」にふれたいと思います。
(つづく)