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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.487 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード 人々13 (JOB型人事採用の背景)***
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業務ポジションに求められる職務内容を明確にし、その職務の遂行に必要なス
キルを有する人材の活躍を促す「ジョブ型」雇用が進んでいます。ジョブを明
確にした雇用、社内流動化(社内公募、社内応募)、給与体系の見直し、人事評
価、配置転換など、JOBの明確化に伴う一連の人事体制のことを「JOB型人事」
と呼んでいます。
■■ JOB型人事の実施例 ■■
内閣官房が本年8月に発表したJOB型人事の指針の中から、ここでは10年以上
かけて人事体制改革を断行した日立製作所の事例を取り上げていきたいと思いま
す。以下は、内閣官房から本年8月にJOB型人事の指針として発表された日立
製作所の事例の要約です。
新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|内閣官房ホームページ
■■ 1.制度の導入目的、経営戦略上の位置付け ■■
(1)制度の導入目的
(グローバルリーダーへの変革に向けた人事制度改革)
〇2009年、赤字であった組織(2008年8000億円の赤字)の転換を掲げ、2023
年には3期連続の最高益を計上するほどの変革を果たした。
〇ジョブ型人事を導入した理由は大きく2つある。
1.日本のメンバーシップ型の人材マネジメントの継続では、国際的な流動性の
高い組織としては十分機能しなくなっていたため。
2.目指すべき企業の姿と組織・仕事を連動させるため。
(「見える化」による成長マインドの醸成)
〇新たな人事制度における人材マネジメントのコンセプトは「見える化」。
会社は、等級や報酬などの「職務」に関する情報を「見える化」して社員に示
す。社員は、自身のキャリアやパフォーマンスを「見える化」する。これによ
り、会社と社員の双方向のコミュニケーションを強化し、会社と個人の双方の
成長につなげていきたいというのが基本思想である。
(2)経営戦略上の位置付け
(組織目標を達成するための最適な組織体制の構築)
〇組織設計に関しては、経営戦略から逆算するアプローチを採用した。
まず戦略実現のための「あるべき組織体制」を描く。その上で、現状の組織と
のギャップを明らかにし、ポジションの統廃合・新設を行い、最適な人材配置
を実施していった。
【Step 0 】 事業戦略の明確化(組織目標の設定)
【Step 1 】 必要なポジションの定義
【Step 2 】 ポジションの最適な組合せ
【Step 3 】 人材の確保・配置
〇新たな人事制度の導入に際して、事業部門ごとの組織構成の在り方に関するガ
イドラインを策定。ガイドラインでは、マネージャーは一定数の部下を持つこ
とを定めており、マネージャーの数を適正に管理するようにした。
〇従来の人材の配置と比して、適所適材を実現しやすくなった。ライフイベント
で離職していた女性社員も、復職後、職務記述書(ジョブディスクリプション)
の要件を満たしているポジションであれば柔軟に就任するケースも増加し女性
の活躍推進にも資する取組となった。
■■ 2.ジョブ型人事の骨格 ■■
(1)グローバル人材マネジメント基盤の整備
(グローバル共通の人材マネジメント基盤の構築)
〇約15年をかけてグローバルで一体感のある組織を目指しグローバル共通の人
材マネジメントの基盤を整備した。まずは共通の基盤を作り、その上で各国の
法制度を反映するというやり方で人事制度を整備した。
(段階的な基盤の構築)
〇グローバル人材マネジメントの基盤整備の大まかな流れは以下のとおり。
1. 2012年~
国内外25万人の社員の人材情報のデータベース化を開始。
2.2018年~
統合プラットフォームを構築し、人材情報の全世界での一元管理を開始。
(国内非管理職の人事制度の在り方)
〇2024年6月
日立製作所本体の非管理職約2万人に職務等級制度の導入。適所適材を促進
するため、全社的に職務をベースとした制度へ改定し、職務と報酬の関係を
明確化した。
〇国内のグループ会社においても、各社で議論を行い、それぞれ職務等級制度
へ順次移行していくことを予定している。
(つづく)