ISO9001キーワード 人々17 (雇用管理制度及び人事部門と事業部門との関係) | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年1月8日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.491 ■□■
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*** ISO9001キーワード 人々17 (雇用管理制度
        及び人事部門と事業部門との関係)***
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明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。本稿は昨年
からの続きで、内閣官房が2024年8月に発表したJOB型人事の指針の中から日
立製作所の事例を取り上げています。
新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|内閣官房ホームページ

■■ 3.雇用管理制度(3)等級の変更  ■■
(制度の理解促進と社員のパフォーマンス向上)
 〇ジョブ型人事の採用に際して、職務の大きさに応じた等級制度・報酬制度を
  整備しているため、職務が変更した場合は、それに応じて等級の上下の変更
  が発生する。
 〇従事する職務に応じた適正な格付を実施するためには、制度の理解促進と、
  各職場におけるマネージャーの評価能力の向上が社員のモチベーション維持
  の観点からも重要である。
 〇日立製作所では、職務の変更に伴い等級変更が生じる場合は、そのタイミン
  グでの丁寧な説明を心掛けている。継続的なパフォーマンス向上に向けて、
  マネージャーと部下で認識を合わせることが重要であり、パフォーマンスの
  評価面談や1on1 などを通じて、継続的な対話の機会を設けている。

(マネージャーの評価能力の向上)
 〇ジョブ型人事の導入により、マネージャーは、個々の社員に対する職務の割
  当や職務の大きさに応じた等級の格付など、以前よりもきめ細かな部下のマ
  ネジメントが求められるようになる。
 〇2022 年より、新たなマネージャー向けの研修制度を開始。ジョブ型人事の
  考え方を踏まえながら、ワーク型の手法も取り入れつつ、部下のマネジメン
  トに関する理解の促進を図っている。また、部下のキャリアの志向等を踏ま
  えたキャリアの導き方に関するノウハウ集の提供や、マネージャー専用の情
  報サイトの整備などを行っており、いずれも好評である。
 〇パフォーマンスマネジメントにおいても、部下を持つマネージャーは、自身
  の目標のうち30%は部下の育成・人材開発に関するものを設定することにし
  た。意識的に部下のマネジメントに取り組ませようとの考えによるものであ
  る。
  
■■ 4.人事部門と事業部門の権限分掌の内容 ■■ 
(人事部と各部署の権限分掌)
 〇採用・人員配置・昇格・処遇の権限は各事業部門に付与されており、人事部
  門がサポートしながら運営している。
 〇人事部門は、事業戦略の実現に向けた組織・人材戦略の提言・実行、人事の
  専門各領域におけるエキスパートである人材オペレーション遂行と効率化・
  高度化と、それぞれの機能を分け、経営戦略の実現に向けた人事施策の立案
  ・実行に注力している。

(事業部門のサポート)
 〇組織の戦略から逆算し、在るべき姿から各部署におけるポジションを設定す
  る手法については、経営側の部署に対する「このミッションを果たしてほし
  い」との視点と、それを実行するための人事部門のサポートが重要となる。
 〇このため、担当者を職場ごとに設置し、経営者と現場のマネージャーが連携
  して人事施策を推進できるようサポートを行っている。
  
■■ 5.導入プロセス ■■ 
(トップ主導の改革の推進と社員からの意見集約)
 〇人材マネジメントの基盤は、グローバルで段階的に導入していった。海外の
  グループ会社では、「新たな人事制度の内容は一般的な実務である」とスムー
  ズに受け入れられた一方、日立製作所本体や国内のグループ会社への導入に際
  しては、より丁寧な説明が求められた。当時のCEO が、「社会イノベーション
  事業をグローバルに進めていく前提で考えたときに、日本が変わっていかなけ
  ればならない」との強いメッセージを発し、トップダウンで改革を進めてきた。
 〇重要な人事施策ごとにワーキンググループを作り、コミュニケーションの場を
  設けた。制度の内容や導入方法について、多方面から意見を集約する方法を採
  用している。

(労使コミュニケーション)
 〇2017 年から、非管理職(組合員)のジョブ型人事の導入に向け、国内10 万
  人の労働組合・組合員と継続的に議論を行ってきた。
 〇コミュニケーションを開始した当初は、ジョブ型人事に対する誤解もあり、労
  使間で認識の相違も見受けられたが、何度もコミュニケーションを繰り返す中
  で、共通認識を築き、あるべき制度について議論を進めることができた。
 〇2024 年6 月より日立製作所本体における非管理職(組合員層)の職務給制度
  導入に際しては、労使それぞれの代表者による専門的な会議体にて、議論の機
  会を多く設けた。また、社員向けのコミュニケーションの機会も設け、会社側
  の情報発信を十分に行うことで、スムーズな制度移行を図ってきた。

(制度導入時のソフトランディング期間)
 〇新たな等級を導入するに際して、報酬が下がる社員に対しては、一定の調整給
  を支給している。調整給は一定期間をかけて徐々に減額していく仕組みとして
  いる。
  
(つづく)