2025年2月26日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.498 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード 外部・内部の課題―気候変動2 ***
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トランプ大統領はパリ会議の約束を履行せず、アメリカが気候変動枠組条約から
脱退することを主導しています。そして、気候変動問題などはない、石炭石油を
もっと掘れ、CO2の排出など気にすることはない、と世界のリーダーとしては不
適切な言動を続けています。本当にそれでよいのでしょうか。政治的な思惑には
とらわれず、科学的な見解を知っておくことが大切であると思います。
■■ IPCC ■■
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)
という先進諸国の政府間ネットワークがあります。40年前くらいに設立され、気
候に関する専門家2~3000名くらいでつくる、地球温暖化についての科学的な研
究の収集、整理のための政府間機構です。学術的な機関であり、地球温暖化に関
する最新の知見の評価を行い、対策技術や政策の実現性やその効果、それが無い
場合の被害想定結果などに関する科学的知見の評価を提供しています。原則5年
おきに研究報告書を発行していますが、20年位前までは気候変動は人為的なもの
であるという説明と太陽活動の活発度など自然の変動によるものであるという説
明が併記されていました。しかし、2007年発行の第4次評価報告書からは、気候
変動の要因は人為的なものである、と一本化されました。
IPCCが発行する「評価報告書」(Assessment Report)は地球温暖化に関する世
界中の専門家の科学的知見を集約した報告書であり、国際政治および各国の政策
に強い影響を与えています。
■■ IPCC第4次評価報告書 ■■
第4次評価報告書には次のような科学的知見が記述されており、結論として人為
的な活動の結果地球温暖化は急速に進んでおり、早急かつ大規模に手を打つこと
が喫緊の課題であると緩和策の必要性を強く認識させる内容となっています。
1.我々を取り巻く気候システムの温暖化は決定的に明確であり、人類の活動が
直接的に関与している。
人間による化石燃料の使用が地球温暖化の主因と考えられ、自然要因だけでは説
明がつかないことを指摘しています。
(第一作業部会報告書:自然科学的根拠)
2.気候変化はあらゆる場所において、発展に対する深刻な脅威である。
気温や水温の変化や水資源、生態系などへの影響のほか、人間の社会に及ぼす被
害の予測結果についての評価しています。
(第二作業部会報告書:影響・適応・脆弱性)
3.地球温暖化の動きを遅らせ、さらには逆転させることは、我々の世代のみが
可能な(defining)挑戦である。
気候変動の緩和策の効果、経済的実現性と、温室効果ガスの濃度別に必要な緩和
策の規模や被害等の分類などの評価をしています。
(第三作業部会報告書:気候変動の緩和策)
■■ IPCC第5次評価報告書 ■■
IPCC 第5次評価報告書が完結:気候変動は取り返しのつかない危険な影響を及ぼ
すおそれがある一方で、その影響を抑える選択肢も存在 | 国連広報センター
第5次評価報告書は2013年から2014年にかけて公表されました。この評価報
告書では、さらに明確に温室効果ガス(GHG : Green House Gas)の排出をはじ
めとする人為的要因が、20世紀中盤から観測されている温暖化の主因であるとい
う事実を指摘しています。
報告書は、温室効果ガスの排出が続けば、さらに温暖化が進むだけでなく、気候
システムを構成する全要素の恒久的な変化が生じ、社会のあらゆるレベルと自然
界に幅広く、深刻な影響が及ぶ公算が大きくなるという調査結果を示しています。
IPCCパチャウリ議長はこう語ります。「個々の主体が別々に自己の利益を追求し
ていては、気候変動への取り組みはできません。そのためには、国際協力を含む
協調的な対応が絶対に必要です」。
「私たちの評価によれば、大気と海洋の温暖化が進み、雪と氷の量は減少し、海
水面は上昇し、二酸化炭素の濃度は少なくとも過去80万年で最高の水準にまで
上昇しています」。
統合報告書は、気候変動の影響が世界各地で表れ、気候システムの温暖化がはっ
きりと進んでいることを確認しています。1950年代以来、観測された変化の多く
は、過去数十年から数千年にわたって見られない規模に達しています。しかし、
適応だけでは不十分です。気候変動のリスク抑制の中心となるのは、大幅かつ持
続的な温室効果ガス排出量の削減です。