Author Archives: 良人平林

SDGインパクト基準24 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.371 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準24 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標15です。

■■ 目標15 森林、砂漠、陸地 ■■
目標15.陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可
能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・
回復及び生物多様性の損失を阻止する。
<15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、
湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態
系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保
する。>

■■ 森林破壊 ■■
国連の報告によると、2015年以降、毎年東京都と同じくらいの大
きさの天然林/森が、50個くらい面積にして約10万平方キロメー
トルが消滅しているそうです。この森林破壊は、特に熱帯を中心
とした開発途上国という限られた地域で起きています。
ここではWWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)
の資料から報告させていただきます。
2010年から2030年までに起こる森林破壊が急速に進む原因は、
さまざまな開発行為です。開発途上国で生産される農作物や木材、
紙、また採掘される石炭や金属などは、日本をはじめとする世界
中の国々で利用されています。WWFでは、このままの勢いで森
林破壊が続けば、今残されている天然林も遠からず地球上から消
失してしまうと危惧しています。
今危惧されていることをもう少し詳細にお伝えします。
・世界の陸地の31%は森林が占めている(約40億ヘクタール)。
・しかし、既に約半分の森林が消失しており、約20%が消失の危
 機にあり、天然林はわずか15%しか残らない。
・このまま森林破壊が続けば100年以内に熱帯雨林がなくなる。
・世界森林面積65%を有する118ヵ国では森林が火災によって
 毎年1,980万ヘクタールが消失している。
・パーム油のプランテーション開発が原因でボルネオ島の森林
 は既に約半分消滅している。
・森林破壊により世界の温室効果ガス排出量が約15%増加して
 いる。

森は、木材や薬の原料、農作物の原種の供給など、世界中の人た
ちの暮らしに恵みをもたらしてくれます。また、林業、森林管理
などに携わっている人は、現在世界中で約2億5,000万人いると
推定されています。森林破壊はこうした人たちの生活も奪う深刻
な人権問題でもあります。世界で起きている森林破壊には、日本
も深く関係しています。日本人が暮らしの中で利用しているさま
ざまな産品や原料などは、時に世界の森を破壊する形でつくられ
ているためです。

■■ 野生生物への影響 ■■
森林の面積は上述のとおり地球の陸地の約3割を占めており、こ
こには、これまで発見されている野生生物種の半分以上が生息し
ています。森林の消失は、多くの野生生物を絶滅の危機に追いや
る大きな原因です。現在、森林をすみかとする世界の野生生物の
うち、絶滅の危機が高いとされる種の数は、1万4,000種以上に
のぼります。これらの生きものは、森以外の環境にすむ他の野生
生物とも共生の関係や食物連鎖でつながっているため、その絶滅
はさらに多くの命の危機にも繋がるのです。
森林破壊の結果、すみかであった森林を追われた野生生物が、人
里などに姿を現し、人との遭遇事故を引き起こす例も多発してい
ます。事故により、人の命が犠牲になることもあれば、希少な野
生生物が害獣として殺されてしまうことも珍しくありません。

■■ 気候変動への影響 ■■
近年、世界各地で深刻な被害をもたらしている、大雨や干ばつな
どといった異常気象にも、森林破壊は深く関わっています。森林
を形成している樹木が、生長の過程で、空気中の二酸化炭素を取
り込み、大量に蓄えているためです。
2007~2016年にかけては、人が行うすべての活動を通して放出
された二酸化炭素量のうち、約29%に当たる量を、主に森林が吸
収してきたことが推測されています。火災や伐採によって、樹木
の中に蓄えられていた二酸化炭素が、大気中に放出されると、異
常気象の大きな原因とされる気候変動(地球温暖化)が助長され、
水害や森林火災の長期化といった被害をもたらすことに繋がりま
す。こうした脅威が引き起こされているにも関わらず、地球に残
された森林のうち、適切な保護区などに指定されている地域は17
%に過ぎず、森林を守るには、不十分と言わざるを得ません。

■■ 感染症への影響 ■■
新型コロナウイルス感染症などの動物由来感染症の拡大には、森
林破壊が深くかかわっています。森林が破壊されることで、さま
ざまな病原体を持っている野生生物が外界に出てきて人や家畜と
接触するためです。森に暮らす何百万という野生生物種は、その
体内に、未だ解明されていないウイルスや細菌などを持っていま
す。もともと、特定の生物種の中にだけに存在していたウイルス
は、森林破壊によって、宿主動物と共に森の外に顔を出すように
なり、人と接触するようになるからです。このような形で新たな
ウイルスが人に伝播するよう変異し、人の生活圏内での感染につ
ながることが危惧されています。
森が失われることをきっかけに、動物から動物へ、動物から人へ、
そして人から人へと、新たな感染症が拡大してしまえば、その影
響は国境を越えて世界中に広がり、人々の暮らしを危険にさらす
ことは容易に想像できます。

SDGインパクト基準23 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.370 ■□■
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*** SDGインパクト基準23 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標14です。

■■ 目標14 海洋汚染の防止 ■■
目標14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、
持続可能な形で利用する。
<14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上
活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削
減する。>

海がいろいろな恵みを人類に与えてきたことは常識であり、地球の
生命を維持する上で不可欠な要素であるが故にSDGs14に取り上
げられているのだと思います。ところが、近年この海がいろいろな
要因により汚染され、しかも汚染の度合いがこれ以上許されないレ
ベルにまでなっていることが国際的に報じられています。
日本では、環境省が平成23年に「海洋生物多様性保全戦略」を定
めていますので、最初はこの戦略の一部を紹介します。本保全戦略
は、生物多様性条約における国際的な目標や我が国の「海洋基本法
(2007 年 4 月成立)」及び「海洋基本計画(2008 年 3 月閣議決
定)」を踏まえ策定されています。

■■ 海洋生物多様性保全戦略 ■■
本保全戦略は、海洋の生態系の健全な構造と機能を支える生物多様
性を保全して、海洋の生態系サービス(海の恵み)を持続可能なか
たちで利用することを目的としています。そのため、主として排他
的経済水域までの我が国が管轄権を行使できる海域を対象とし、海
洋の生物多様性の保全及び持続可能な利用について基本的な視点と
施策を展開すべき方向性を示しています。我が国周辺の海域には、
深浅の激しい複雑な地形が形成されているとともに、黒潮 や親潮
などの海流と列島が南北に長く広がっていることがあいまって、多
様な環境が形成され、多くの海洋生物が生息・生育しています。

■■ 海洋に流れ出るプラスチック ■■
このような海洋生物多様性の保全を脅かさせているものの一つにマ
イクロプラスチックの問題があります。世界経済フォーラム(本部
:ジュネーブ)では,海洋に流出するプラスチックごみの量は,
2050年には海に生息する魚の量を上回ると予測しており,プラス
チックごみの海洋への流出を防ぐ対策の強化の必要性を指摘してい
ます。
ここでは農水省の論文を参考にします。マイクロプラスチックとは
海洋に流出したプラスチックのうち,大きさが 5mm以下の小さな
ものをいい,私たちの身の回りのプラスチック製品の原料である樹
脂ペレットや化粧品に含まれるスクラブ剤などが洗面所や風呂場か
ら流れ出たもので、近年,世界各地の海域でこうした微細なマイク
ロプラスチックの浮遊が確認され、その数は推計 5兆個以上あると
言われています。日本周辺の沖合海域でもマイクロプラスチックの
漂流が確認されています(H26年度日本の沖合海域における漂流・海
底ごみ実態調査,環境省)。これらのマイクロプラスチックは比重が
1以下で水に浮くという特徴をもっているため, 海に流れ出ると
海洋を浮遊・漂流し続け,世界中の海へと広がっていきます。化粧
品に含まれるマイクロビーズは肌の汚れや古くなった角質を除去す
る効果があるとされており(いわゆる,スクラブ剤),多くの化粧品
に添加されています。もともとはスクラブ剤にはクルミやアプリコ
ットなどの天然の素材が使用されていましたが,2000年前頃から,
安価で,粒径が同じプラスチック製のビーズが普及し始めました。
マイクロビーズの大きさは 1mm以下 (数十~数百 μm) の小さ
な微粒子であり,一本の化粧品の容器 (100g前後)に数十万個から
数百万個のマイクロビーズが入っているそうです。化粧品に入って
いるマイクロビーズはあまりに小さいため,消費者の家のバスルー
ムや洗面所から下水処理施設のフィルターを通過して川や湖,海へ
と流れ込んでいきます。アメリカの五大湖(エリー湖)でも,多い
場所で 1平方 km当たり 60万粒のマイクロビーズが回収されて
います。プラスチック製のマイクロビーズには海洋を長時間浮遊し
て空気と触れる間に空気中に希釈されて拡散している殺虫剤や難燃
剤など有害化学物質を吸着し高度に濃縮する性質があり,そのマイ
クロビーズを食べた魚が体内に有害物質を蓄積し、更にそれを食べ
る人間に深刻な影響を与える可能性が指摘されています。

■■ アメリカの規制 ■■
このため、アメリカ連邦議会は, 2015年末に,洗顔料や歯磨き粉
などに含まれるプラスチックビーズの使用を禁じる法案 (「マイク
ロビーズ除去海域法」という法案)を可決し,2018年 7月からは
微粒子を含む製品の販売を禁止しました。こうした政府の決定を受
けて,米国の化粧品 メーカーの「ジョンソン・アンド・ジョンソ
ン」,「プロクター・アンド・ギャンブル」 (P &G),英国「ユニリ
ーバ」,仏国「ロレアル」などは,プラスチック製スクラブを天然の
果物の種子などに相次いで転換していく考えを発表しました。日本
でも,行政,化粧品メーカーともに,化粧品へのプラスチックマイ
クロビーズの使用を禁止する方向に動いています。マイクロプラス
チックはミクロな微粒子のため,一旦流入が起こると回収除去する
ことはほとんど不可能ですので、早急に,プラスチックマイクロビ
ーズの使用禁止が必要です。欧州では北海の養殖場のムール貝やフ
ランス産のカキの身から微小プラスチックが見つかり、マイクロプ
ラスチックが海の生態系を壊し,海産物を通じ人間の健康に悪影響
を与える恐れが指摘されるようになっています。

SDGインパクト基準22 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.369 ■□■
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*** SDGインパクト基準22 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標13の2回目です。前回は国連気候変動枠組条約
(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)
についてでしたが、今回はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)
についてお話しします。

■■ IPCC レポート ■■
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
<13.1すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強
靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。>

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第14回会合(WG1)が
令和3年7月26日(月)から同年8月6日(金)にかけて開催(オ
ンライン)され、IPCC第6次WG1評価報告書(自然科学的根拠)
が承認されました。
この報告書は平成25年の第5次評価報告書以来8年ぶりとなるもの
です。報告書本体は、総会での議論を踏まえた編集作業等を経て、
令和3年12月にIPCCから公表されました。
同会合には、各国政府の代表を始め、世界気象機関(WMO)や国連
環境計画(UNEP)などの国際機関等から、300名以上が出席しまし
た。日本からは、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、
気象庁、環境省などから21名が出席しています。
また、本報告書の取りまとめに当たっては、関係省庁の連携により
IPCC国内連絡会を組織し、活動の支援を行ってきました。本評価報
告書には、我が国の研究成果論文が数多く引用されています。

■■ 人為起源の気候変動 ■■
今回の報告書の特徴は、気候変動の原因は人為的なものであると
断定したことにあります。前回報告書では、自然起源との併記で
したが、気候の現状から見て、人間活動の影響が大気、海洋及び
陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がないとしています。
その影響は、大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲か
つ急速な変化として現れており、気候システム全般にわたる最近
の変化の規模と、気候システムの側面の現在の状態は、何世紀も
何千年もの間、前例のなかったものである、としています。また、
人為起源の気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象及び
気候の極端現象に既に影響を及ぼしていて、熱波、大雨、干ばつ、
熱帯低気圧のような極端現象が人間の影響によるとする原因特定
に関する証拠が多くある、としています。

■■ 人間活動の影響の結果 ■■
気候プロセス、気候的証拠及び放射強制力の増加に対する気候シス
テムから見て、今後の世界平均気温は、今世紀(21世紀)半ばまで
は上昇を続けるとしています。
これから数十年の間に、二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排
出が大幅に減らない限り、21 世紀中に、地球温暖化は 1.5度~ 2度
を超えると述べています。気候システムの多くの変化は、地球温暖
化の進行に直接関係して拡大していくが、この気候システムの変化
には次のものが含まれるとしています。  
・極端な高温
・海洋熱波
・大雨
・農業及び生態学的干ばつの頻度と強度
・強い熱帯低気圧の割合
・北極域の海氷、積雪及び永久凍土の縮小

特に、地球温暖化の継続は、世界全体の水循環を狂わします。水循
環が変わってしまう結果、世界各地の降水量が少なくなる、逆に多
くなる、乾燥現象が大きく変化するなどが指摘されています。

■■ 二酸化炭素の排出 ■■
CO2排出においては、海洋と陸域の炭素吸収力が減ることで、大気
中のCO2蓄積を少なくさせることが出来なくなると述べています。
そのため、多くの現象は、百年から千年の時間スケールで不可逆的、
すなわち元には戻らないとしています
過去及び将来のCO2排出に起因する多くの変化、特に海洋、氷床
及び世界海面水位における変化は、いま手を打たないと壊滅的な結
果を招きます。
自然科学的見地から、そうさせないためにはCO2の累積排出量を制
限しなければならず、少なくとも CO2 正味ゼロ排出を達成し、他
の温室効果ガスも大幅に削減 する必要があります。
加えて、メタン排出を大幅に、迅速かつ持続的に削減できれば、エ
アロゾルによる汚染の減少に伴う温暖化効果を抑制し、大気質も改
善すると述べています。

SDGインパクト基準21 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.368 ■□■
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標13についてです。

■■ 目標13 ■■
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる※。
<13.1すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強
靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。>
※ 国連気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nations Framework
Convention on Climate Change)が、気候変動への世界的対応について
交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。

気候変動枠組み条約は、この条約の現状を確認するために毎年開催され
るCOP(Conference Of the Parties:締約国会議)で有名です。また
IPCC(Inter- Governmental Panel on Climate Change:国連気候変動に
関する政府間パネル)が5年おきに発行する地球温暖化レポートもこの
目標13に関係して目を通しておきたい報告書です。

■■ 国連気候変動枠組条約(UNFCCC) ■■
気候変動枠組み条約は、1997年に京都でCOP3(第3回締約国会議)
が開催されたことで一躍有名になりました。UNFCCCの出発点は1992
年にまで遡ります。1992年6月の国連環境開発会議(地球サミット、
ブラジル・リオデジャネイロ)では、大気中の温室効果ガス(二酸化炭
素、メタンなど)の濃度を安定化させることを究極の目的として、議論
が交わされその結果署名がされました。日本を含め155カ国がこの会議
で条約に署名しましたが、その後197か国まで加盟国が増えました。本
条約に基づき、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(COP)
が開催されています。

1993年5月 日本の批准
1994年3月 条約発効
1995年3月 第1回締約国会議 ベルリン
1997年12月 第3回締約国会議 京都

この条約は、枠組条約という名が示すとおり、地球温暖化防止について
の枠組を規定しています。

■■ 各国の義務 ■■
UNFCCCでは各国に具体的な削減義務までは課していませんが、計画を
作成すること、すなわち温室効果ガスの排出・吸収のリスト、温暖化対
策計画の策定等を締約国の義務としています。
もう少し詳しく言いますと、先進国と開発途上国の義務は分かれています。

<全締約国の義務>
・温室効果ガスの排出及び吸収のリスト作成と定期的更新
・具体的対策を含んだ計画の作成・実施
・リスト及び実施した又は実施しようとしている措置に関する情報を締  
 約国会議へ送付
 
<先進国の義務>
温室効果ガスの排出量を2000年までに1990年の水準に戻す(努力目標)
ことを目的に、
・温暖化防止のための政策措置を講ずる。
・排出量などに関する情報を締約国会議に報告する。
・途上国への資金供与、技術移転を行う。

京都COP3では先進国の義務を明確にした議定書が激しい議論の末成立
しました。それは、先進国は 6種類の温室効果ガス総排出量を20年
(2008年)~24年(2012年)の5年間に、1990年基準で、先進国全
体で5%以上の削減を目指すこととされました。

■■ 京都議定書の後 ■■
京都議定書の約束はその後の日本政府の発表ですと、日本は達成したと
されています。しかし、京都議定書での温室効果ガス排出量削減目標は、
2008~2012年の第1約束期間と呼ばれる期間を対象にしたもので、
2013年以降の取り組みについては、何も決まっていないことが大きな
問題でした。

「2013年以降」についてどうするかは、京都議定書に2005年時点で締
約国は話し合いを開始しなければならないと書かれていました。
しかし、世界の情勢は大きく変わっていきました。世界の排出量は、も
はや先進国だけの問題ではなくなっており、中国やインドといった途上
国の排出量が大きくなっていったのです。そのため、2013年以降は途上
国にもなんらかの取り組みを求める声が高まっていきました。
途上国に対して先進国が取り組みを要求するという「2013年以降」へ向
けた交渉は、テーブルにつく段階から問題が山積みの状態でした。
しかし、2015年のCOP21において、「パリ協定」が成立し、新しい国際
的枠組みが誕生しました。

■■ パリ協定(Paris Agreement) ■■
パリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に
おいては、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠
組みとして、パリ協定が採択されました。
この合意により、京都議定書の成立以降長らく日本が主張してきた「全て
の国による取組」が実現し、世界の全ての国が取組に参加する公平な合意
ができました。
しかし、世界第一の排出国であるアメリカが議定書から抜け出てしまいま
した。2017年、トランプ米国大統領は、「パリ協定」から離脱することを
表明しました。人類社会が過去1世紀余の時間をかけて、CO2などの温室
効果ガスによる気候変動問題に取り組み、IPCCの設立、気候変動枠組み
条約の締結、京都議定書の実施など、一歩一歩取り組みを続け、ついに辿
りついた歴史的な「パリ協定」を、「アメリカ第一」すなわち国内の雇用や
経済的損失などを優先したのです。

■■ パリ協定へアメリカ復帰 ■■
しかし、2021年にバイデン大統領はパリ協定への復帰を決定し、オンライ
ンでの「気候変動サミット(2021年4月22~23日)」を開催するなど、
現在、アメリカは気候変動対策に積極的な姿勢を示しています。

日本も2021年に英国・グラスゴーで開催されたCOP26において、「我が
国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すな
わち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを
宣言しました。

SDGインパクト基準20 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.367 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** SDGインパクト基準20 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標12についてです。

■■ 目標12 ■■
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する。
<12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費
と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の
下、すべての国々が対策を講じる。>

ここには「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)」
というものが出てきます。
ここで言う「持続可能」とは、人類が存続する限り(永続的)成り立
っていけるという意味ですから、消費と生産の関係性を永続的なもの
にする計画を作ろうという意味になります。

消費と生産の関係を永続的にしない、すなわち壊すものは何かという
と、最も影響を与えるものが「廃棄」です。消費には廃棄が付きもの
です。食べ物で言えばリンゴを食べてもその芯は廃棄されます(非可
食部廃棄)。衣服でも20年、30年着る人は少なく5年も経てば多く
の衣服は廃棄されるでしょう。住居もスクラップ&ビルドされて50
年も経つと街並みがかなり変わってしまいます。このような多くのも
の、温室効果ガスも含めて「廃棄問題」が目標12の最大の取組課題
です。

■■ 食料廃棄問題 ■■
その廃棄問題で強くフォーカスされているものが食料の廃棄問題です。
<2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの
食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーン
における食料の損失を減少させる。>
目標12には具体的に食料の廃棄を2030年までに半減させるとあり
ます。世界の食料廃棄の現状はどうなっているのでしょうか。
実は世界の食料廃棄の現状を調べようとしましたが、これがなかな
か把握しづらい問題であることが分かりました。Googleで検索し
てもズバリこれが食料廃棄量である、生産量に対する廃棄率である、
国別の廃棄率であるといった数字は出てきません。
農林水産省「平成 27 年度食品産業リサイクル状況等調査委託事業
:海外における食品廃棄物等の発生状況 及び再生利用等実施状況
調査、平成 28 年 3 月 11 日 公益財団法人流通経済研究所」に
詳しいのですが、
(1)食品廃棄の定義、
(2)対象プロセス(生産、流通、小売り、消費)区分、
(3)非可食部、潜在可食部、可食部
などの線引きなどが各国バラバラでなかなか比較が難しいという
ことです。

■■ 世界の食料廃棄の現状 ■■
そうはいっても辛うじて以下のような情報は読み取ることが出来
ました。
米国では、2010 年における小売・消費者段階での食料損失は、
6,033 万トンと推計される。これは、小売・消費者段階での供
給量である 1.95 億トンの 31%を占めるそうです。
31%のうち、10%が小売段階での損失であり、21% が消費者
段階での損失であるとしています。データが古いのですが大き
くいって3分の1が廃棄されているということになります。
EUの情報もありました。
EU では、年 9,000 万トン、1 人 当たり年 180kg の食品が
廃棄されている(2006 年データ)との数値が紹介されていま
す。 また、ECのホームページ「Sustainable Food」では、食
品廃棄物の削減に取り組まなければ、「2020 年には食品廃棄
物が 1 億 2,600 万トンに増加する」と述べられている、と
の調査記載があります。
このように160ページの報告書にはいろいろなデータが紹介
されていますが、各国の状況を理解するのはなかなか困難で
す。しかし、EUの例のように一人当たりの年間の食品廃棄
量の比較資料がありますので、それを眺めてみるのがいいか
と思います(平成24年度推計)。

■■ 日本の食料廃棄の現状 ■■
各国の年間一人当たりの食品廃棄物発生量を整理しますと
次のようになります(平成24年)。
 ・日本 134Kg
 ・米国 178Kg
 ・英国 187Kg
 ・フランス 149Kg
 ・ドイツ 136Kg
 ・オランダ 150Kg
 ・韓国 114Kg
 ・中国 76Kg

別の資料には、日本には2017年度時点で約570万tの食品
ロス(可食部)があると報告されています。一時、日本は食
品ロス大国と表現されましたが、今では上記の表のごとく先
進国の中で際立っているわけではありません。一人あたり年
間134kg、毎日お茶碗3杯分のご飯を捨てているのと同じこ
と、と例えられています。