Author Archives: 良人平林

SDGインパクト基準4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.351 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準4 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をし
ています。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

前回、17の目標の全体像を知るためそれらの目標の概要をお伝え
しましたが、今回から一つひとつの目標に関してお話をしていき
たいと思います。

■■ 目標1.貧困 ■■
目標1は、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」
です。
<1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々
と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。>

世界銀行は、2015年10月、国際貧困ラインを1日1.25ドルから
1.90ドルに改定しました。これは、貧困国において2005年に
1.25ドルで買うことができたものが、2011年には1.90ドルでな
ければ買えないということで、世界の貧困率はほとんど変わらな
いとしています。

1日1.9ドル(約230円)で暮らす「貧困層」は,世界で約7億
2,900万人、世界人口に占める割合は約9.4%で,新型コロナウイ
ルスの感染が拡大する前の7.9%から大きく悪化する見通しとなっ
ています。

世界の貧困層7億2,900万人の半数が、わずか5カ国に集中して
います。この5カ国とは、インド、ナイジェリア、コンゴ民主共
和国、エチオピア、バングラデシュです。世界全体で貧困層を削
減するには、これら5カ国における取組みとともに、貧困層のう
ち85%(6億2,900万人)が暮らす南アジア地域とサブサハラ・
アフリカ地域の貧困削減に取り組むことが不可欠であると指摘さ
れています。

貧困は、単に持続可能な生計を確保するための所得と資源がない
ことだけではなく、飢餓や栄養不良、教育その他基本的サービス
の利用制約、社会的差別と排除、さらには意思決定への不参加な
ど、数多くのネガティブな形となって表れます。

■■ 世界の貧富の差 ■■
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界の富裕層と貧困層
の格差が広がっています。フランスの経済学者トマ・ピケティ氏
らが運営する「世界不平等研究所:World Inequality Lab」(本部・
パリ)が発表したレポートによると、世界の上位1%の超富裕層の
資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の
資産は全体の2%にとどまったそうです。

同様なレポートは、いろいろな所から出されています。国際労働機
関(ILO)は2019年、世界の所得格差に関するレポートを発表し、
世界で支払われている労働所得の半分を、世界のわずか10パーセ
ントの人々が得ている、ということです。

スイスの金融大手クレディ・スイス銀行の発表した「グローバルウ
ェルスレポート2019」では世界全体の貧富の分布をみることができ、
「下から 50%の層が保有する額は世界の総資産の1%未満。上位
10%の人が総資産の82%、上位1%が半分近くを保有している」と
なるそうです。

経済産業省の資料によると、富裕層は2つのカテゴリー、金融資産
が30億円以上の「超富裕層」と、1億円以上30億円未満の「富裕
層」に分けられるそうです。2017年時点で、金融資産50億円以上
の人口は世界に129,730人いたということです。

■■ 貧富の差は広がっていく ■■
世界不平等研究所レポートによると、「貧富の差は今後も広がり続
ける」としています。これは、コロナ禍で景気刺激のための財政出
動や金融緩和によるマネーが株式市場などに流れ込み、多くの資産
を保有する富裕層に恩恵をもたらしたためです。

レポートによると、コロナ禍で世界中の多くの人が仕事を失った一
方で、「2020年は、ビリオネア(億万長者)が保有する世界の富の
割合が、かつてないほど大きな年となった」と述べています。

地域別にみると、最も格差が大きいのは中東・北アフリカ地域
(MENA)であり、上位10%が全体の所得に占める割合の58%を占
めています。格差が最も小さいのは欧州で、上位10%が36%を占め
ています。

■■ 日本の貧富も広がっている ■■
日本においては、所得上位10%の人が、資産の45%を占めています。
最上位1%に占める人が資産の24.5%を占めています。
日本の給与所得者数 は2020年には5,026万人であったので、所得
上位に連なる10%の人の数は約50万人と想定されます。また、最
上位1%の人の数は約5万人と想定されます。

1年間の給与総額は約250兆円なので、最上位1%の人は、この想定
からいうと、平均して年に約12億円の収入を得ているということに
なります。年収と資産とは異なるのですが、人口1.2億人のいる日本
の中のわずか5万人の人が国全体の資産の24.5%を占めているという
ことを実感するアナロジー(比喩)にはなると思います。

日本の下位50%を占める人の資産は5.8%でした。レポートでは日本
の富の分布について、1980年代から収入格差が広がっており、欧州
より格差は大きいとされています。

SDGインパクト基準3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.350 ■□■
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*** SDGインパクト基準3 ***
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前回は2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」について
お話をしました。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。
アジェンダとは、課題という意味ですが、古くは1992年のブラ
ジル・リオデジャネイロで開催された環境サミットにおいて採択
された「アジェンダ21」が有名です。
2015年のSDGs(持続可能な開発目標)には17の目標があります。

■■ 17の目標と169のターゲットの原則 ■■
国連2030アジェンダを基本にして合意された17の目標と169の
ターゲットは以下のような原則で作成されました。

1. SDGsとターゲットは、各国の置かれたそれぞれの現状、能力、
発展段階、政策や優先課題を踏まえつつ、一体のもので分割できな
いものである。

2.地球規模且つすべての国に対応が求められる性質のものである。

3.ターゲットは、地球規模レベルでの目標を踏まえつつ、各国の
置かれた状況を念頭に、各国政府が定めるものとなる。

4.各々の政府は、これら高い目標を掲げるグローバルなターゲッ
トを具体的な国家計画プロセスや政策、戦略に反映していくことが
想定されている。

5.持続可能な開発が経済、社会、環境分野の進行中のプロセスと
リンクしていることをよく踏まえておくことが重要である。

6.最も脆弱な国々、特にアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開
発途上国、小島嶼開発途上国が直面している特別な課題とともに、
中所得国が直面している特有の課題を強調する。

7.いくつかのターゲットについては、基準データが入手困難であ
るということを認識する。国及び地球規模レベルの基準データを整
備するための加盟国レベルでの能力構築及びデータ収集強化の支援
を強く求める。

8.アジェンダの実施の妨げとなり得る課題に関する他のフォーラ
ムでの各国の取組を歓迎する、

9.本アジェンダ及びその実施が、他のプロセスやそこでの決定に
対しこれに貢献することはあっても侵害することのないようにする。

10.持続可能な開発の達成に向け、それぞれの国が置かれた状況及
び優先事項に基づき各々に違ったアプローチ、ビジョン、モデルや
利用可能な手段が変わってくることを認識する。

11.地球という惑星及びその生態系が我々の故郷であり、「母なる
地球」が多くの国及び地域において共通した表現であるということ
を再確認する。

■■ 持続可能な開発目標 ■■
以上のような原則で17の持続可能な開発目標が作られています。
一つひとつの開発目標の説明に入る前に、17の目標全体を概観します。

目標1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続
  可能な農業を促進する。
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉
  を促進する。
目標4. すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、
  生涯学習の機会を促進する。
目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化
  を行う。
目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確
  保する。
目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネ
  ルギーへのアクセスを確保する。
目標8 .包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ
  生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・
  ワーク:decent work )を促進する。
目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能
  な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する。
目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及
  び人間居住を実現する。
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する。
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能
  な形で利用する。
目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能
  な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回
  復及び生物多様性の損失を阻止する。
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべ
  ての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて
  効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。
目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・
  パートナーシップを活性化する。

SDGインパクト基準2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.349 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準2 ***
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SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

2021年12月には、国連が発行するシール使用の認証基準に
「SDGインパクト基準」を使うというアナウンスがありました。

ISOマネジメントシステムの認証制度と同じような外部認証が行
われるということです。その概要は今年夏頃に発表するとのこと
でしたが、
「ウオッシュ:wash」にしてはならない
という発言が重くひびきました。
https://a13.hm-f.jp/cc.php?t=M266284&c=30083&d=ceee

■■ SDGs アジェンダ ■■
「アジェンダ」という用語は国連のアナウンスによく出てきます。
アジェンダとは、検討課題という意味ですが、古くは1992年の
ブラジル・リオデジャネイロで開催された環境サミットにおいて
採択された「アジェンダ21」が有名です。

アジェンダ21とは、21世紀に向けての検討課題でしたが、2015
年のSDGsアジェンダでは次のことを採択しています。

1. 国連は、70周年を期して、2015年9月ニューヨークの国連本
部で新たな地球規模の持続可能な開発目標を決定した。

2.このアジェンダは、2030年までに完全に実施するために休みな
く取り組むことをコミットしている。持続可能な開発を、経済、
社会及び環境というその三つの側面において、バランスがとれ統
合された形で達成することにコミットしている。

3.我々は、2030年までに以下のことを行うことを決意する。
(1) あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つこと。
(2) 国内的・国際的な不平等と戦うこと。
(3) 平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てること。
(4) 人権を保護しジェンダー平等と女性・女児の能力強化を進め
  ること。
(5) 地球と天然資源の永続的な保護を確保すること。
(6) 持続可能で、包摂的で持続的な経済成長、共有された繁栄の
  ための条件を作り出すことを決意する。

4. この偉大な共同の旅に乗り出すにあたり、我々は誰も取り残さ
れないことを誓う。

5. このアジェンダは、各国の現実、能力及び発展段階の違いを考
慮に入れ、かつ各国の政策及び優先度を尊重しつつ、すべての国
に受け入れられ、すべての国に適用されるものである。

6.この目標とターゲットは、2年以上にわたる公開のコンサルテー
ションの結果できた。事務総長は2014年12月にコンサルテー
ション統合報告書を提出している。

■■ 我々のビジョン ■■
そして、このアジェンダは「我々のビジョン」を発表しています。

1.これらの目標とターゲットにおいて、目指すべき世界像は、すべ
ての人生が栄え、貧困、飢餓、病気及び欠乏から自由な世界である。
・恐怖と暴力から自由な世界。
・すべての人が読み書きできる世界。
・すべてのレベルにおいて質の高い教育、保健医療及び社会保護に
 公平かつ普遍的にアクセスできる世界。
・身体的、精神的、社会的福祉が保障される世界。
・安全な飲料水と衛生に関する人権を再確認し、衛生状態が改善し
 ている世界。
・十分で、安全で、購入可能、また、栄養のある食料がある世界。
・住居が安全、強靱(レジリエント)かつ持続可能である世界。
・安価な、信頼でき、持続可能なエネルギーに誰もがアクセスでき
 る世界。

2.また、目指すべき世界像は、人権、人の尊厳、法の支配、正義、
平等及び差別のないことに対して普遍的な尊重がなされる世界である。
・人種、民族及び文化的多様性に対して尊重がなされる世界。
・人間の潜在力を完全に実現し、繁栄を共有することに資することが
 できる平等な機会が与えられる世界。
・子供たちに投資し、すべての子供が暴力及び搾取から解放される世界。
・すべての女性と女児が完全なジェンダー平等を享受し、その能力強化
 を阻む法的、社会的、経済的な障害が取り除かれる世界。
・最も脆弱な人々のニーズが満たされる、公正で、衡平で、寛容で、開
 かれており、社会的に包摂的な世界。

3.さらに、目指すべき世界像は、すべての国が持続的で、包摂的で、
持続可能な経済成長と働きがいのある人間らしい仕事を享受できる世界
である。
・消費と生産パターン、そして空気、土地、河川、湖、帯水層、海洋と
 いったすべての天然資源の利用が持続可能である世界。
・民主主義、グッド・ガバナンス、法の支配、そしてまたそれらを可能
 にする国内・国際環境がきわめて重要である世界。
・技術開発とその応用が気候変動に配慮し、生物多様性を尊重する世界。
・人類が自然と調和し、野生動植物その他の種が保護される世界。

SDGインパクト基準 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.348 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準 ***
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2021年7月に国連(国連開発計画:UNDP)から「企業・事業体
向けSDGインパクト基準」が発行されました。副題は「インパク
トマネジメントを意思決定に組み込む~持続可能な開発とSDGs
達成に向けて~」となっています。

2021年12月には、この「SDGインパクト基準」を国連が発行す
るシール使用の認証基準にするというアナウンスがありました。

ISOマネジメントシステムの認証制度と同じような外部認証が行
われるということです。その概要は今年夏頃に発表されるとのこ
とでしたが、
「ウオッシュ:wash」にしてはならない
という発言が重くひびきました。

SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

■■ SDGとSDGs ■■
「小文字sのない」“SDG”と「小文字sある」“SDGs”とは何が
違うのでしょうか。

まずはSDGsについてお話ししたいと思います。最近街中で17
色のカラフルなバッチを付けている人を見かけます。

SDGsに賛同しているという意思表示なのか、会社でSDGsを推
進しているのか、SDGsに関して何らかの表彰を受けたのか、い
ろいろ背景は違うのでしょうが、年々バッチを付けている人が増
えています。私も社外取締役をしている会社が経済産業省から
SDGs表彰を受けたとしてバッチをいただきました。

2015年、国連は2030年までに世界をよりよくするための道筋を
描く開発目標アジェンダを決定しました。この「国連2030アジェ
ンダ」は2000年に決議した2015年までのミレニアム開発目標
(MDGs: Millennium Development Goals)に次ぐ、向こう15年
間に渡って国連が主要な活動として網羅した総合的活動計画です。

その中には、「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development
Goals)」と呼ばれる17の目標があります。

17も目標があるので、“SDGs”と「小文字s」が付いているのです。

かたや「SDGインパクト基準」の方は、「17目標及び169ター
ゲット」を企業が適切に構築、運営するルールを決めている基準
で、この基準は一つしかないので「小文字s」は付かないのです。

■■ SDGsの実現 ■■
いま169のターゲットと言いましたが、17の目標は更に具体化さ
れた169のターゲットに落とされています。

今年2022年は正式なSDGs開始から7年目になりますが、世界
の人々はまだどのようにSDGs実現に取り組むのか思案していま
す。SDGsが大掛かりな取り組みであることは明確ですが、どの
ように取り組むかに関しての手がかりは一般に知られていません。

最初に「国連2030アジェンダ」を説明しましょう。
そのあと「持続可能な開発目標:SDGs」を説明しましょう。
最後に「SDGインパクト基準」について説明をしたいと思います。

■■ 国連2030アジェンダ ■■
「我々の世界を変革する持続可能な開発のための2030アジェン
ダ」とは次のようなものです。少し硬い話ですが、これからの基
本になりますので我慢して読んでください。

I. 前文
アジェンダの前文では、アジェンダが人間、地球及び繁栄のため
の行動計画であることを明確にしている。
・より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求ものでもある。

・あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課
 題である。

・すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナー
 シップの下、この計画を実行する。

・人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安
 全にすることを決意している。

・世界を持続的かつ強靱(レジリエント: resilient )な道筋に移行
 させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに
 決意している。

・この共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを
 誓う。アジェンダには17の持続可能な開発のための目標(SDGs)
 と、169のターゲットが明記されている。

・これらの目標とターゲットは、ミレニアム開発目標(MDGs:
 Millennium Development Goals)、すなわち、2000年9月国連
 ミレニアムサミットで2015年までに達成するとした目標を基に
 して、ミレニアム開発目標が達成できなかったものを全うするこ
 とを目指すものである。

・これらは、すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべ
 ての女性と女児の能力強化を達成することを目指す。

・これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、
 持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面
 を調和させるものである。

・これらの目標及びターゲットは、向こう15年間にわたり、行動
 を促進するものになる。

ハラリの「サピエンス全史5」 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.347 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ハラリの「サピエンス全史」 ***
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ハラリは、人類10万年の歴史の特異点(シンギュラリティ)に認知
革命、農業革命、科学革命の3つを上げています。認知革命は7万年
前、農業革命は1万年前に起こりました。最後の「科学革命」はわず
か500年前に起きたとしています。
しかし、今日2022年までの間に、人類は大変な発展をしました。
1500年には、全世界にホモ・サピエンスはおよそ5億人いましたが、
今日その数は78億人に達しています。当時の1年に生み出された財
とサービスの総価値は、今日のお金に換算して約2,500億ドル(25兆
円)と推定されますが、2022年は約60兆ドル(6,000兆円)と240
倍になっています。1500年には、1日に人類はおよそ13兆カロリー
のエネルギーを使っていましたが、今日は115倍の1500兆カロリー
のエネルギーを消費しています。

■■ 世界地図 ■■
中世の宗教も哲学も自分たちは神から使わされた使徒であり、絶対的
な存在でこの世で知らないものはないと信じていました。当時の多く
の人々は、天上の神の存在をお互いが信じているというだけで、知ら
ない人間同士がネットワークを作り互いに協力し合うことが出来まし
た。この神話がたとえ虚構であり、架空な話であっても、信じてしま
えば実際にあるものとして人類を結び付けることとなり、その功績は
大きなものであったと言えます。しかし、神から使わされた自分達に
は知らないものはないという信念は人類の発展を妨げていました。

当時の世界地図には自分たちの領土以外、ぎっしりといろいろな大陸、
島が描かれていました。しかし、それらはコロンブスが1492年にア
メリカ大陸を発見した途端に嘘だと証明されてしまいました。
16世紀には地球を1周した人間が出てきました。1522年マゼランの
遠征艦隊が7万2千キロメートルの旅を終えてスペインに帰り着いた
とき、歴史が変わりました。

その後も含めての大航海の結果から、15世紀から16世紀にかけて、
ヨーロッパ人は空白の地図を作るようになりました。これは大きな転
換で、人類は今まですべてのことを知っていると思っていたことを止
めて、知らないことははっきりさせよう、知らないことが多くあるの
だということを認めたのです。

■■ 無知な人 ■■
人類は認知革命以降、森羅万象を理解しようと膨大な時間と労力を注
ぎ込んで自然界を支配する法則を発見しようとしてきました。
しかし、大航海の時代を迎えて、人類には知らないことがあるという
概念が広がりました。科学革命は知識の革命ではありませんでした。
無知の革命だったのです。
宗教においては、キリスト教でもイスラム教でも、マホメット教でも
この世の重要なことはすでに全部知っているという主張をしていまし
たから、新しい事実に対しては宗教裁判と言われるように多くの抵抗
がありました。ガリレオガリレイの残したと言われる「それでも地球
は回る」という有名な言葉がその一端を示しています。
しかし、実は知らないことがあると知ったことから人類の大躍進が始
まりました。この躍進の結果は一概に人類のためによかったとは言え
ない部分がありますがそれは別にして、今までの病気は治すことがで
き、幼児の死亡率は劇的に減り(中世では生まれた子供の30%は成人
前に死んだ、今日では0.7%)、労働は人から機械に変わっていきま
した。

■■ クレジットの概念 ■■
この500年間に我々の良く知っている近代の数々の科学とテクノロジー
の発明が次から次へと出てきましたが、この発明が長い間袋小路には
まっていた人類の停滞を劇的に変える動機となりました。新しい技術
そのものもそうですが、それと同等くらいにクレジット(信用)の概
念は近代社会を強力に前進させるエンジンとなりました。

歴史の大半を通じて経済の規模はほぼ同じでしたが、まだ存在してい
ない財を特別な種類のお金に変えることに「同意」し、「クレジット
(信用)」と呼ばれる制度を築くことで世界の経済は大きく発展しま
した。
例えば、いま100万円銀行に預けている人がいるとします。銀行はそ
の人に信用貸し100万円を貸し出します。100万円借りた人は25万円
ずつ機械、材料、道具、事務所に投資して新しい事業を始めるとし
ます。この状態は100万円の財が社会には倍の200万円になって経済
を拡大したことを意味します。さらに銀行が信用はもっとあると判
断したときには200万円貸し出すこともあり得ます。
信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べ物
にならないほど豊かになるという想定の上に成り立っています。つ
まり、人類が新しい科学とテクノロジーを発見したことで、未来へ
の期待が「信用」を作り出したのです。もし世界の経済規模(パイ)
の大きさが変わらないのであれば、信用が生まれる余地はありませ
ん。信用とは今日のパイと明日のパイの大きさの差なのです。