Author Archives: 良人平林

ナラティブ内部監査20 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.316 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査20 ***
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ナラティブ内部監査実践のための5ステップについて話を進めて
います。
・第1ステップ : 今行っている内部監査をレビューする。
・第2ステップ : どのような内部監査を行いたいか、行うべき
         かを組織内でコンセンサスを得る。
・第3ステップ : 内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る。
・第4ステップ : 発見された課題(不適合、観察事項、気づき
         事項)などを問題解決する。
・第5ステップ : 問題解決したことを水平展開、歯止めして改
         善する。さらに、改善したことを革新へのイ
         ンプットにする。
監査員と被監査者は、働く目的は異なっていても、内部監査を活
用して価値創造を行おうという思いが一致している、あるいは共
有できていることがナラティブ内部監査には重要な前提になりま
す。

■□■ 自己を理解する ■□■
ナラティブ内部監査の第3ステップは、内部監査員、被監査者の
共同作業の基盤を作ることです。テクノファは、16年間キャリア
コンサルタント養成講座を開催してきています。
このキャリアコンサルタント養成講座には内部監査員と被監査者
との間に共同作業基盤を作るヒントがたくさん含まれています。
1.コミュニケーション
2.自己理解
3.他者理解
4.よく聴く
5.よく伝える(アサーション)
6.個人と組織の共生
前回から2.自己理解について話を進めていますのでその続きを
説明します。

■□■ 自己を理解する ■□■
中学校学習指導要領には、自己を理解するという概念が以下のよ
うに書かれているという話をしましたが、私の育った経験からい
うと中学生が自己を理解するのは至難の業です。
「職業や自己の将来に関する学習を行う際には,問題の解決や探
究活動に取り組むことを通して,自己を理解し,将来の生き方を
考えるなどの学習活動が行われるようにすること。」
私の理解では、中学校で自己を理解することを教えるのは、これ
からの人生で自分の生き方を考えるためには、自分がどういう人
間かを考えましょう、というごく入り口のことではないかと思い
ます。中学生に本当に自己を理解させるとするならば、まず「人
間というもの」を理解させなければならず、自分は人間という母
集団の中の一員であるという位置づけからスタートしないと「自
己を理解する」ことには達しません。

■□■ 人々の積極的参加 ■□■
ISO9001:2015の序文には、7つの品質マネジメントの原則が載
っていますが、その3番目に「人々の積極的参加」の原則があり
ます。そしてISO9000:2015箇条2.3.3には「人々の積極的参加」
の要点が書かれています。
「組織を効果的かつ効率的にマネジメントするためには,組織の
全ての階層の全ての人々を尊重し,それらの人々の参加を促すこ
とが重要である。貢献を認め,権限を与え,力量を向上させる
とによって,組織の品質目標達成への人々の積極的な参加が促進
される。」

「人々を尊重する」とは組織活動を行う最も根底にある最重要な
概念です。日本でもTQC(TQM)の活動の中で強く言われてき
たことが「人間性尊重」ということでした。

■□■ 主な便益 ■□■
そして、ISO9000:2015箇条2.3.3.3には、「人々が積極的に参加
する」と次のことが利点(便益)として掲げられています。
- 組織の品質目標に対する組織の人々の理解の向上,及びそれを
  達成するための意欲の向上
- 改善活動における人々の参画の増大
個人の成長主導性及び創造性の強化
- 人々の満足の増大
- 組織全体における信頼及び協力の増大
- 組織全体における共通の価値基準及び文化に対する注目の高まり

次号では、人間とはどういう生き物で、どのようなプロセスを踏ん
でいくことで「自分を理解する」ことに近づいていけるのかを考え
てみたいと思います。

ナラティブ内部監査19 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.315 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査19 ***
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監査員と被監査者が働く目的は異なっていても、内部監査を活用
して価値創造を行おうという思いが一致している、あるいは共有
できていることがナラティブ内部監査には重要な前提になります。
組織は監査員と被監査者がそのような共有基盤を作ることをサポ
ートすることが奨励されます。

■□■ あなたは何がしたいですか? ■□■
前回イギリス(アメリカでも)など海外の小学校高学年で「あな
たは何がしたいですか」と問いかけて、今後の生きる道筋を生徒
と一緒に考えていくというお話をしました。
日本では、文部科学省の小学校学習指導要領の原則の中に「生き
る力」という言葉がたくさん出てきます。

「学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,児童
生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かした特色あ
る教育活動を展開する中で, 基礎的・基本的な知識及び技能を確
実に習得させ, これらを活用して課題を解決するために必要な思
考力, 判断力, 表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体
的に学習に取り組む態度を養い, 個性を生かす教育の充実に努め
なければならない。」

■□■ 生きる力とは ■□■
生きる力が何を意味するかは文部科学省の学習指導要領に次のよ
うに解説されています。
「生きる力とは,平成8年7月の中央教育審議会答申において,
基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと,自ら
課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,

よりよく問題を解決する資質や能力,自らを律しつつ,他人とと
もに協調し,他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性,
たくましく生きるための健康や体力などであると指摘されている。」

この「自ら課題を見つけ・・・」は、まさしくイギリスの小学校
における「あなたは何をしたいのですか?」と同じ思考に属する
概念だと思います。ただ、小学生が「自ら課題を見つける」こと
はなかなか難しいことでしょう。したがって、「あなたは何をし
たいのですか?」と問われて
心にある思うままに「パイロットになりたい」、「テレビキャス
ターになりたい」と答える中から、「自らの課題」が見つかるの
ではないかと思います。

■□■ 自己を理解する ■□■
続いて、中学校学習指導要領を見てみました。
小学校学習指導要領に出てくる「生きる力」について、次のよう
にその生きる力の発展に触れています。

「生徒に生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かした
特色ある教育活動を展開する中で,基礎的・基本的な知識及び技
能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必
要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,
主体的に学習に取り組む態度を養い,個性を生かす教育の充実に
努めなければならない。」

さらに、中学校学習指導要領には自己を理解するという概念が書
かれています。
「職業や自己の将来に関する学習を行う際には,問題の解決や探
究活動に取り組むことを通して,自己を理解し,将来の生き方を
考えるなどの学習活動が行われるようにすること。」

ここで言われている「自己を理解する」ということは、「生きる
力」の概念が発展すると、自分とは何者なのか、という根源的な
課題にぶつかり、中学校では自己を理解するということの入り口
に立った指導を文科省は学校に要求している、ということになり
ます。

■□■ 自己実現 ■□■
次に、文部科学省の高等学校学習指導要領にはこの周辺の概念は
どのように書かれているのか調べてみました。
学習指導要領の第1章総則の中には「自己実現」という言葉が出
てきます。
「(1) 私たちの生きる社会
現代社会における諸課題を扱う中で,社会の在り方を考察する基
盤として,幸福,正義,公正などについて理解させるとともに,
現代社会に対する関心を高め,いかに生きるかを主体的に考察す
ることの大切さを自覚させる。
(2) 現代社会と人間としての在り方生き方
現代社会について,倫理,社会,文化,政治,法,経済,国際社
会など多様な角度から理解させるとともに,自己とのかかわりに
着目して,現代社会に生きる人間としての在り方生き方について
考察させる。
ア 青年期と自己の形成 
生涯における青年期の意義を理解させ,自己実現と職業生活,
社会参加,伝統や文化に触れながら自己形成の課題を考察させ,
現代社会における青年の生き方について自覚を深めさせる。」

少し引用が長くなったのは、前後を理解することで自己実現とい
う概念が分かるのではないかと思ったからです。

■□■ 学習指導要領 ■□■
今回は文部科学省の学習指導要領を小学校、中学校、高等学校と
見てきましたが、「生きる力」「自己を理解する」「自己実現」
といずれも結構重たい言葉が出てきています。
次回はこれらをもう少し説明していき、会社において働く意味を
考えてみたいと思います。

ナラティブ内部監査18 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.314 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査18 ***
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監査員と被監査者の間で共有基盤を作るためには、個人が自立し
個立することが大切だとお話ししました。お互いが自立するとい
うことは、働く目的を明確にして自分の意思に基づいて働くこと、
がポイントになります。しかし、監査員と被監査者はそれぞれ異
なる目的をもって組織で働いているかもしれません。いや、むし
ろ同じ目的を待って働いているということはまずないでしょう。
同じ組織の中でそれぞれ異なる目的をもって働いているというこ
とを、組織はよく認識しそれにこたえる柔軟な考え、体制を持つ
必要があります。

■□■ あなたはなにがしたいですか ■□■
組織で働く人に、次の問いかけをしたとします。
 (1)あなたはなにが得意ですか。
 (2)あなたはなにがしたいのですか。
 (3)あなたはなにをしているときがうれしいですか。
急にこのような質問をされて、直ぐに答えられる人は余りいない
でしょう。
実はこの問いは、イギリスの小学校で問われている質問です。小
学校高学年では、先生があなたは何になりたいですか?と生徒に
聞くのだそうです。生徒がテレビキャスターになりたいと答える
と、その為にはどんな勉強をしなければならないですか?と聞き、
将来の自分のやりたいことを自覚させる教育をしているのだそう
です。

日本では、大学生にこの問いかけをしても答えられる人は5%以
下であったという調査があります。会社に入る前に,これら3つ
の問いに答えられる人は,日頃問題意識を持っている少数の人だ
けなのです。だとすれば,大半の人は,会社に入った後も,これ
ら3つの問いの答えを探しています。その意味では,会社(仕事
によっては,役所,協会、病院、事務所など)は,人が学校を出
た後も,生涯にわたって自分のしたい仕事を発見する舞台を提供
しているとも言えます。

■□■ なにがしたいか発見する ■□■
人の自我※については、その発見、理解する過程について諸々の
説がありますが、おおむね20~30歳代で完成、しかし30代,40
代あるいは50代になっても続くという説が我々には体験上説得力
があります。生涯にわたる自我発見過程の舞台は,会社以外にも,
趣味の集い,コミュニティ,家族などの場にもあるでしょう。し
かし,会社が資源の提供に対して報酬で応えるという構造を持っ
ているかぎりは,より重要な舞台として会社を活用すべきです。
人生100年時代に入って、現役で働いている人たちが、50,60歳
になっても「本当にやりたいことは?」を追い求めることは人生
を豊かにする秘訣だと思います。
※ 自我
他人や外界と区別された認識、行為の主体であり、しかも体験内
容が変化しても同一性を持続して、作用、反応、体験、思考、意
欲の働きをする意識の統一体。(出典コトバンク)

■□■ やりたいことの一つが価値創造 ■□■
個人が自立し個立すれば、他人に遠慮することなくそれこそ忖度
することなく自由にふるまい、自由に活動することが出来るよう
になりますが、組織という舞台にいる限りはその自由には当然限
界があります。自由にふるまえない限界は、コンプライアンス違
反と反事業方針の2つくらいだと思います。この2つのことを超
えなければ組織においての行動は何ら咎められることはないと思
います。組織によってはその組織固有のノルマ的限界を定めてい
るところもありますが、一般論としては自分でやりたいことを行
うことが最も生きがいを感じることになります。やりたいことが
価値創造につながるものであればなお更のことです。

■□■ 改善は価値創造の一つ ■□■
ナラティブ内部監査が目的としている「改善」は、組織のおける
価値創造そのものです。改善を実現するための要諦は次の通りで
す。
 ・何が問題かを明確にする。
 ・その問題の背景を理解する。
 ・今までの経過を調べる。
 ・問題の要因を推測する。
 ・問題の解決方法を考える。
 ・問題が解決したらどんな価値創造になるか推定する。
 ・誰が問題を解決できるかを考える。
 ・問題解決に必要な人に相談する。
 ・問題解決のための資源を用意する、など。

ナラティブ内部監査17 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.313 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査17 ***
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およそ20年も前の話です。大学時代の友人の紹介で出会ったY先生
から「個立」という言葉を教えていただきました。Y先生とは、テク
ノファでキャリアカウンセリングの養成講座を行いたいと思っていた
時に出会った横山哲夫さんのことです。新しい養成講座にチャレンジ
しようと思ったのは、当時ISO9001の養成講座には「心が入っていな
い」と感じたからです。品質管理には人の心は無縁だと当時は大きな
誤解をしていました。

■□■ 個立している人 ■□■
英国工場での全従業員参加のクリスマスパーティが終わりました。パー
ティは成功裏に終わりましたが、事後の会計で事件が起こりました。
予定をしていた人数の倍の人が参加していて、アルコール、料理が大幅
に追加され、200万円くらいの予算が実際は500万円くらいかかってい
ることが判明したのです。
なぜ予定していた倍もの人が来たのかがわかりました。家族を持ってい
る従業員の夫、妻、子供の数は当初から人数に数えていたのですが、前
の家族、及び前の恋人(元カレ、元彼女)など複数以上のグループが予
約なしで参加していたのです。
ここから見えてきたのは、個人を中心とした英国社会の様相です。自分
のやりたいことを中心に生活設計する、自分と合わないと判った伴侶と
は躊躇なく別れる、しかし喧嘩して別れたのではないので、その後も家
族同士で付き合う、そんな社会の一面が自立の側面を表しています。

この事件は私に「自立」ということを強く意識させました。このことを
きっかけに、私は本社の事業部長に談判をしました。それは英国工場の
人事は現地責任者である自分に任せてほしいというものでした。
当時工場管理職の人事には本社事業部の意向が強く影響していたのです
が、自立をしたかった私としてはそれを煙たいと感じており、日本サイ
ドの意向を排除したかったのです。

■□■ やりたいことをやる ■□■
事業部長への談判の内容は、英国現地の人事には適材適所という考えを
通したいという考えについてでした。この事件があるまでは遠慮して言
えなかったのですが、英国人の自立の精神に触れて、言いたいことを言
おうと決心しました。
人間は自分がやりたい仕事をやるときには自分の能力を存分に発揮しま
す。場合によっては、自分が持っている以上の力を発揮することもあり
ます。自分がやりたくない仕事をやらされるときには自分の能力を十分
に発揮しようという気になりません。
適材適所を実現させるには、部下と「自分はどういう仕事をしたいのか、
なぜそれをしたいのか。そうすることで、会社にはどういうメリットが
あるか」を話し合う必要があります。
そうすることによって、1人ひとりにとっての仕事の大切さが明確にな
り、主体的で自立的な人材になっていきます。当時の私は、「やりたい
人でかつできる人に、その仕事をしてもらうこと」、つまり真の適材適
所を実践する組織を英国に作りたいと思っていたのです。

■□■ やりたくないこともやる ■□■
組織では、やりたくない人にやってもらわなければない場合や、できな
い人にできるようになってもらわなければならない場合があります。
このような場合に重要なことは話し合いです。上司は部下の話をきちん
と聴くことができなければなりません。相手の考えや気持ちをきちんと
受けとめることができ、相手のことをきちんと理解することができなけ
ればなりません。「聴く」という字は、「耳へん」に+(プラス)され
た「目」が「心」により支えられている構造を持っています。ただ、目
は横に寝ていますが・・・。
すなわち、耳と目と心の3器官で精魂かけて受け止める行為を「聴く
(listen)」というのです。一方「聞く(hear)」は耳に音が入ってくる
ことをいいます。鳥のさえずりが聞こえてくる、隣家からピアノの練習
音が聞こえてくるといった時に使います。

■□■ 傾聴 ■□■
「聴く」ということは大変エネルギーを要する行為です。人の話には「事
実」「要望」「感情」が混然一体になっているそうですが、その状態をと
ぎほぐし、何が事実で、何が言いたいこと(要望)で、どこに怒っている
こと/どこに悲しんでいることが潜んでいるのか、などを聞き分けることが
大切です。しかし、話の中から混然一体になっているものを聴き分けるに
はある程度の訓練が必要になります。
この訓練のことを傾聴トレーニングといい、その中にある「勘コツ」を傾
聴スキルといいます。
話し合いにおいては、本人に対する組織の期待やマネジメント方針などを
きちんと伝えることができなければなりません。話し合いの時に求められ
るコミュニケーション能力において、まず重要なことが傾聴です。上司が
部下の意図を何ら考慮せず、ただひたすら一方的にしゃべることはご法度
なことです。

ナラティブ内部監査16 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.312 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査16 ***
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ナラティブ内部監査実践のための5ステップについて話を進め
ています。
・第1ステップ : 今行っている内部監査をレビューする。
・第2ステップ : どのような内部監査を行いたいか、行うべ
         きかを組織内でコンセンサスを得る。
・第3ステップ : 内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を
         作る。
・第4ステップ : 発見された課題(不適合、観察事項、気づ
         き事項)などを問題解決する。
・第5ステップ : 問題解決したことを水平展開、歯止めして
         改善する。さらに、改善したことを革新へ
         のインプットにする。
前回、第2ステップについて話をさせていただきました。

■□■第3ステップ:内部監査員、被監査者の共同作業
                    の基盤を作る■□■
ナラティブ内部監査実践のための5ステップの3番目です。テク
ノファではキャリアコンサルタント養成講座を16年間開催して
います。このキャリアコンサルタント養成講座には内部監査員と
被監査者との間の共同作業基盤を作るヒントがたくさん含まれて
います。
1.コミュニケーション
2.自己理解
3.他者理解
4.よく聴く
5.よく伝える(アサーション)
6.個人と組織の共生

1. コミュニケーションから説明しようと思いましたが、いざ書
こうと思いましたら、私たちはどうして今の組織で働いているの
か、という根源的な問題に引っ掛かりました。
今の組織で働いているというのは一つの結果です。品質管理的に
言うと結果には要因があります。なぜ、今の組織で働いているの
かを考えだすととてつもなく多くの要因が出てくる人もいれば、
あまり要因というほどのものはないという人もいるでしょう。
「内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る」というお題の
副題に1~6を掲げましたが、そんなことから「6.個人と組織
の共生」から話を進めたいと思うようになりました。

■□■ 個人が個立する ■□■
およそ20年も前の話です。大学時代の友人の紹介で出会った
Y先生から「個立」という言葉を教えていただきました。テクノ
ファでキャリアカウンセリングの養成講座を行いたいと思ってい
た時に出会った指導者の方からです。新しい養成講座にチャレン
ジしようと思ったのは、ISO9001の養成講座には「心が入ってい
ない」と感じたからです。品質管理に人の心は無縁だと当時は大
きな誤解をしていたのです(今は大きく自省していますが)。
その時の研究会でY先生が「個立」と板書され、「孤立」じゃあ
りませんよ、と付け加えられました。個人としての精神的自立、
なるほど、これは明快でいいと思いました。 この言葉をISO9001
審査員養成講座の中に持ち込み組織のマネジメントシステム、内
部監査の場に活用させて頂こうと思いました。
組織にいる個人が「個立」する、これは私が25年サラリーマン
生活を送ってきた時からのテーマでした。

■□■ 人間が好き ■□■
自分自身は格別強烈な自我と自立心を持ち合わせているわけでは
ありません。とりわけユニークで多彩な個性に恵まれているとも
思えません。にもかかわらず、組織にいる個人の個立をテーマと
して、ずうっと心に持ち続けてきたのはなぜだろうか、不思議な
気がします。
思うに、私は人間が好きで人間の成長力を信じているためではな
いだろうか、一人ひとりの人間の異なったよさ、一人ひとりが多
様に自己実現を目指す姿に、深い感動を誘われるからだと最近思
い当たるようになりました。であるから、人間がそうなっていな
い状態、つまり、一様に画一的に扱われていたり、画一的に扱わ
れることに甘んじていたりする状態をみると、ひどく残念にとき
にひどく怒りたくなります。

■□■ 事業部長に直訴 ■□■
そんな自分が30年以上も前に当時の事業部長に何かしなければ
いられなくなり、直訴をした事件(私的には事件)がありました。

当時自分はイギリスの子会社で工場長をしていましたが、現地の
人の処遇を巡って事業部長に談判をしたのです。
1987年工場開設の初年度ですが、毎年12月にはクリスマスパー
ティを会社主催で行うことが現地(北イングランド)の風習であ
ると人事部長から言われ、当時の200人従業員とのパーティを実
施しました。
パーティは成功裏に終わりましたが、事後の会計で事件が起こり
ました。
予定をしていた人数の倍の人が参加していて、アルコール、料理
が大幅に追加され、200万円くらいの予算が実際は500万円く
らいかかっていることが判明したのです。

このことがなぜ「個立」に関係してくるのかは次号にお話しさせ
ていただきます。