Author Archives: 良人平林

個人の行う活動9_内部診断と内部監査37 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.296 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 個人の行う活動9_内部診断と内部監査37 ***
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昨年の4月から連続して40回近くお話ししてきた内部診断と内部
監査は今回で終了です。今回は前回に引き続き、個人の行う活動に
ついてお話しします。個人業務のミスについての未然防止、エラー
プルーフ化について内部診断のポイントの続きになります。

■□■ 業務標準書 ■□■
業務の変更を実施する際には、仮の業務標準書を定め、それに従っ
て実施するようにします。また、事前に関連する部門に連絡し、変
更の目的、内容及び実施時期に関する十分な理解を得ておくのが大
切です。変更を行った後は、適切なデータを収集・解析し、変更目
的の達成状況、他の品質や生産性に対する影響を調査します。もし、
満足すべき結果が得られていない場合には、変更内容の見直しを行
います。

新しい業務標準書が発行されているにもかかわらず、古い業務標準
書をそのまま使ったために発生するトラブルが多くあるようです。
不要となった業務標準書が現場から確実に撤去されるようにしなけ
ればなりません。

■□■ 標準化の狙い ■□■
標準化のねらいは、業務者、設備、資材などの要因系の条件を一定
の範囲に保ち、安定した品質の製品が得られるようにすることにあ
ります。しかし、人間の知識が不完全な以上、押さえるべき要因全
てについて始めから適切な標準化を行うことは非常に困難です。し
たがって、結果の品質およびそれに関わる種々の要因のデータを記
録し、予想に反する事象が発生した場合、それらが重大な問題に至
らないよう処理する、また、それらの原因を解析し、要因系の条件
の規制方法を改善することも必要となります。

■□■ 変化に強いマネジメントシステム ■□■
「マネジメントシステムの強靭性とは何か」を考えていくと突き当
たるのは標準化です。ヒューマンエラーを含めてクレームを出さな
いシステムは変化に対応できるシステムです。
システムとは「相互に関連し、又は相互に作用する総体」ですから、
複雑な業務はできるだけシンプルに要素同士を繋げることがポイン
トになります。 業務標準に何をどのくらいの詳細さで書くのか、
誰に向けて書くのかは当然組織によって異なります。通常担当者は
標準書を見ながら業務をしませんので、標準書はいつ読んでもらう
のか、についても決めておかなければなりません。

■□■変化に強いマネジメントシステムの一般原則■□■
個人は時々最低限のルールを守らないことがあります。システムの
維持は、決められたルールを個人が守ることで達成されていきます
から、このルール無視が多いとマネジメントシステムは維持されて
いきません。
個人がルールを守らないのにはいくつかの要因があります。

(1) ルールを知らない。
(2) ルールの存在は知っているが自分たちのやり方と異なって
いる。ルールどおり実施せずとも目的は達成できる。
(3) チェック又は注意されない。最初は上司も関心を持っていたが
段々と無関心になり、今や業務のやり方は部下任せである。
(4) 時間がない。
(5) 面倒である。

この内(1)(2)はルールの定め方に問題があると思われます。実
際に業務を実行する人に対して、有効な働き掛けをしていないこと
から発生している問題です。ルールを定める時には実施者と共同で、
あるいはやり方をよく聞いて制定しなければなりません。もし、
実際に業務を行わないスタッフが机上で考えてルールを制定すると、
多くの場合このような状況に陥ることになります。

■□■ 管理者の問題 ■□■
(3)はマネジメントの問題です。部下がルールと異なった仕事を
してもチェックしない上司が多いようです。そのような場合、果た
して上司が部下のルールを知っているのかも疑問に思われます。
(4)(5)は難しい問題ですが、難しいといって放置しておくわけ
にはいきません。何らかの対策を考えなければならないわけですが、
原理原則からいえば、ルール無視の仕事はシステムのメカニズムに
よって先に進まないようにすればよいことになります。同僚、上司
のチェックが一番有効ですが、
ITの活用が盛んな今日、ITの活用による標準書順守の仕組みも
考えられます。

■□■ ナラティブ内部監査 ■□■
このつなげるツボでは40回にわたって内部診断と内部監査につい
てお伝えしてきました。40回の連載では何を診断するのか、何を
内部監査するのかについて焦点を当ててきましたが、どのように
行うのかについては触れてきませんでした。
今年の1月のテクノファフォーラムでどのように行うのかを「ナラ
ティブ内部監査」と称して講演を行ったところ大きな反響がありま
した。
次回からは「ナラティブ内部監査」をテーマに連載をスタートさ
せたいと思います。

個人の行う活動8_内部診断と内部監査36 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.295 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** 個人の行う活動8_内部診断と内部監査36 ***
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前回に続き内部診断と内部監査について、個人の行う活動につい
てお話しします。今回はその8になります。前回は個人業務のミ
スについての未然防止、エラープルーフ化について内部診断のポ
イントをお話ししましたが、今回はその続きになります。

■□■ ミスは変化のあったときに ■□■
業務ミスはプロセスに変化があった時に起こりやすいものです。
変化があった時の業務の管理を適切に行う工夫が求められま
すが、すべての変化を同じやり方で取り扱うのは非効率です。
変化には計画的な変更による変化と予期しない変化の2種類が
ISO9001:2015で扱われています。
<計画的な変更>
箇条6.3:組織が品質マネジメントシステムの変更の必要性
を決定したとき,その変更は,計画的な方法で行わなけれ
ばならない(4.4参照)
組織は,次の事項を考慮しなければならない。
<予期しない変更>
箇条8.5.6:組織は,製造又はサービス提供に関する変更を,
要求事項への継続的な適合を確実にするために必要な程度ま
で,・・・。

変更による変化の管理は変更手続きを取ること、変更による変
化をランク付けして明確にすることが推奨されます。変更を計
画する際は、目的とする効果が得られるかどうかだけでなく、
予期しない他の問題を起こさないかどうかについての注意が必
要です。

■□■ ISO変更管理 ■□■
現在、共通テキスト(附属書SL)の改定が検討されています
が、上記で述べたISO9001箇条6の「変更管理」がそのまま、
共通テキストに追加されそうです。以下のような規定を9001
以外のすべてのマネジメントシステム規格に反映させようと
するものです。

6.3 変更の計画
組織が品質マネジメントシステムの変更の必要性を決定した
とき,その変更は,計画的な方法で行わなければならない
(4.4 参照)。
組織は,次の事項を考慮しなければならない。
a) 変更の目的,及びそれによって起こり得る結果
b) 品質マネジメントシステムの“完全に整っている状態”
(integrity)
c) 資源の利用可能性
d) 責任及び権限の割当て又は再割当て業務に影響を及ぼす
可能性のある要素の変更にはどのようなものがあるかに関
し、その手続きを定め、文書化しておく。これによって、
各々の変更があらかじめ定められた手続きによって実施さ
れ、責任・権限の不明確な変更が行われないようにする。

また、ISO9001:2015 箇条8には、上述のように変更の管
理の要求があります(上述)。
8.5.6 変更の管理
組織は,製造又はサービス提供に関する変更を,要求事項
への継続的な適合を確実にするために必要な程度まで,レ
ビューし,管理しなければならない。
組織は,変更のレビューの結果,変更を正式に許可した人
(又は人々)及びレビューから生じた必要な処置を記載し
た,文書化した情報を保持しなければならない。

■□■ 変更管理に関しての診断のポイント ■□■
組織における変化は次のような時に起こりますので、内部
診断するときのポイントにすると良いでしょう。
・定期的な見直し時
・標準書が修正される時  
・規格が変更された時
・不備を発見した時
・原材料の購入先の見直し時
・原料や他の業務標準書が変わった時
・業務の現場から提案のあった時
・設備・装置・方法などに技術的改善が行なわれた時
・計測器の設置・改造が行なわれた時
・管理項目が管理限界外に出た時
・新しいソフトを導入した時
・新しい外注と取引を始めた時など

変更時には標準を改訂する必要があります。改訂にあたっ
てはいくつか注意すべき点があります。

個人の行う活動7_内部診断と内部監査35 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.294 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** 個人の行う活動7_内部診断と内部監査35 ***
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前回に続き内部診断と内部監査について、個人の行う活動について
お話しします。今回はその7になります。前回は個人業務のミスに
ついて、その対応には排除、代替化、容易化があるとお話ししまし
たが、今回はその続きになります。

■□■ 未然防止 ■□■
なにか頭に当たっても怪我しないようにヘルメットをかぶる等は、
起こってしまったミスに対しての防止として行われています。品
質トラブルや事故が起きてから原因となるミスを防止するよりも、
起きないようにする、起きることを想定して対策を打っておくこ
とが効果的です。
ミスが起きないようにする、起きても影響がないようにすること
は、異常検出、影響緩和として前回お話ししましたが、今回は一
歩進めて未然防止のアプローチを考えてみましょう。
未然防止のツールの一つにFMEA(失敗モード影響解析)があ
ります。

■□■ 業務FMEA ■□■
業務FMEAの一例を示します。
1) 業務をその流れに沿って適当な大きさの要素に区分する。
2) 要素ごとに起こり得る総ての業務ミスを列挙する。
3) 列挙された業務ミスごとに発生頻度や致命度を評価する。
4) 対策の必要な業務ミスに対して適切な対策(排除、代替化、
  容易化、異常検出、影響緩和)を実施する。

上記手順に沿って現行の業務方法を分析・改善することが未然防止
に繋がります。業務FMEAの効果的な適用のためには、業務を適
切な大きさに区分すること、従来経験したミスの事例を分類して失
敗モードをまとめておくことが重要になります。

■□■ エラープルーフ化 ■□■
人のミスをヒュ-マンエラ-と呼びますが、293号で述べた人の排
除、人の代替化、業務容易化などを含む、計画段階からのエラー防
止を「エラープルーフ」と言います。
エラープルーフ化を組織的に推進する上での注意すべき点は内部診
断のポイントになります。以下にその例を掲げます。

1.業務ミスは業務者個人の問題でなく、プロセスの設計と密接に
  関係する管理上の問題であることを管理者を含めた職場の全員
  が理解する。
2.エラープルーフ化による業務ミス防止の成功例を作る(このこ
  とが皆の理解増進に一番役立つ)。
3.業務ミスに起因する品質トラブルや事故の原因調査を行い、業
  務方法の悪さを解析する。
4.エラープルーフ化の具体的な実現方法に関する技術教育を行う。
5.職場又はミスの種類別に分類したエラープルーフ化事例集を作
  成する。
6.エラープルーフ化の実施件数に関する目標を設定したり、優秀
  なエラープルーフ化事例の発表会を開催する。

個人の行う活動6_内部診断と内部監査34 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.293 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** 個人の行う活動6_内部診断と内部監査34 ***
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前回に続き内部診断と内部監査について、個人の行う活動について
お話しします。今回はその6になります。前回は全員が標準を守る
ようになるにはどんなポイントがあるのかについて説明をしました
が、今回はその続きになります。

■□■ ルールを守る組織になる ■□■
組織は担当者に守れるだけの能力を身につけてもらい、守れる環境
(例えば時間)を整えます。加えて業務標準書を作るだけの能力を
身につけてもらい、その作成・改訂に参加してもらいます。人は他
人の作ったルールにはおうおうにして反発しますが、自分で作った
ルールは守るものです。

担当者は標準の内容を知っており、その通りやる技能もやる気も
もっていたにもかかわらず、ちょっとした気の緩みからミスが発生
する場合も少なくありません。しかし、これらのミスは原因とはと
らえません。ミスは「あること」からの結果であり、不適合の原因
を人(担当者)には求めないことが大切です。もし不適合の原因を
人に求めますと、原因への対策は人に取ることになります。

■□■ 人が関与する不適合への対応 ■□■
人的ミスが関係する不適合を効果的に防止するためには、作業方法
(部品、材料、設備、治工具、作業指示書、手順などを含む)に対
して対策を考えます。業務に関する総合的な工夫・改善、すなわち
作業のエラープルーフ化が不可欠になります。
組織の現場である生産、サービス提供、設計開発などで行なわれ
ているエラープルーフ化の方法には様々なものがあります。
それらは次に示す2つの考え方から成り立っています。

1) 業務ミスが起こらないようにする。
2) 起きた業務ミスが品質トラブル、事故にならないようにする。

ミスを発生させない最も効果的な方法は「業務を行わない」ことで
す。これが不可能な場合には、業務を「人の代わりに機械(AI)
にやらせる」「人にとって容易なものにする」ことが考えられます。
これらは未然防止の基本的な考え方であり、それぞれ「排除」、
「代替化」、「容易化」と呼ばれます。
例えば、製品をワイヤーで吊る時に当て木(製品にきずを付けない
ため)をすることを忘れるミスに対して、ワイヤーの代わりにナイ
ロン製の吊具を用いるというのは、当て木をするという作業を必要
ならしめる吊具の特性を変えて、当て木をする必要をなくしており、
排除によるエラープルーフ化の一例と言えます。

代替化の例としては、作業指示票の見間違いによる誤品組付に対し
て、送られてきた部分組立品の形状を治具やセンサで検知し対応す
る仕様の部品箱にランプをつける方法があります。

容易化の例としては、手順の抜けや回数不足等のミスを防止するた
めに作業の内容と順序を一覧表にします。また、出庫作業における
部品の数え間違いを防止するために内部を仕切って入る部品の数を
一定にした専用の通い箱を用いるなどがあります。

■□■ ミスを拡大させない ■□■
ミスによる影響が拡大するのを防ぐ方法としては「ミスを検出し
処置する」、「ミスの影響を緩和する」の2つがあります。これら
はそれぞれ「異常検出」、「影響緩和」と呼ばれます。
異常検出の例としては、車の両側に誤った種類のタイヤを組み付け
るミスに対して、タイヤ置き場の取り出し口にセンサを取付け、取
ったタイヤの種類が右と左で一致しない場合には工具が作動しない
ようにする、または警報ブザーがなるという方法があります。

影響緩和の例としては、誤って柱にぶつけても傷が付かないように
柱に緩衝材をまいておくなどがあります。

個人の行う活動5_内部診断と内部監査33 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.292 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ― 
*** 個人の行う活動5_内部診断と内部監査33 ***
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前回に続き内部診断と内部監査について、個人の行う活動について
お話しします。今回はその5になります。前回は個人業務の標準化
についてその内部診断のポイントについて説明をしましたが、今回
はその続きになります。

■□■ 作業標準書 ■□■
担当者が標準書の通りに行っているにもかかわらず不適合品、不適
合サービスが発生する場合であります。このような場合には、不適
合内容を分析して品質不良の要因を探り出すことが必要になります。
要因探索の方法の一つに不良の少ない担当者と多い担当者について、
業務のやり方のどこに違いがあるかを分析する方法があります。こ
の分析においては、担当者から業務方法についてフィードバックし
てもらうことが重要になります。個人評価マイナスにつながると思
われる探索は労務管理上よくないと思われがちですが、業務成果を
より良いものにすることは個人、組織相互の利益に繋がることへの
理解が大切になります。

■□■ 業務成果の分析 ■□■
業務の成果は自分の力量を測る物差しですから、結果を知って悪い
面を改めていこうとすることは大変重要なことです。
業務の品質は担当者の技能に大きく依存しますので、作りこまれた
品質の状態が通常の検査や試験で確認できないプロセス(特殊工程)
については、担当者が認定された力量、資格を持つこと、あるいは
それに準じる人に業務を限定することが必要になります。

意図的でないにしろ、結果として作業標準通りに業務をしないとい
うのは、動機付けの問題であることが多いようです。作業標準への
理解もさせず盲目的に標準通り実施するよう求めることは、教育レ
ベルや潜在能力が高い担当者ほど人間疎外につながるでしょう。

■□■ 全員が標準を守るポイント ■□■
全員が標準を守る組織になるためにはどんなポイントがあるのかを
考えてみたいと思います。

1.守るべきこととそれを行う方法が明確になっていなければなら
 ない。まず、組織として全社を俯瞰して何が「守るべきこと」
 であるかを部門(プロセス、機能)ごとにリストアップする。
 どのくらいの数がリストアップされるのかは組織の規模、製品・
 サービスの種類によりますが、出来るだけ重要な項目に絞るこ
 とが前提認識となります。
2.作業があるにもかかわらず、それを改訂せず、標準と異なる業
 務を行わせることは、むしろやる気を損なう。業務のやり方を
 変更する場合には、まず標準を改訂し、改訂した標準書に沿っ
 て作業を行わせます。
3.標準を守るように指導・指示する。標準通り業務をしていない
 ことが黙認される職場では標準を守るという意識は生まれませ
 ん。監督者が業務を定期的に観察し、問題がある場合には再発
 防止の処置を取ります。
4.なぜ守らなければならないか、守らないとどうなるかなど守る
 べきことの必要性・理由を理解してもらう。標準を守らなかっ
 たために発生したトラブルの事例を用いて、標準を守ることの
 重要性を教育する。標準書を守ることが品質の確保につながり、
 しいては会社の、自分達の利益につながることを理解してもら
 います。