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ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol 226 ■□■
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-6***
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前回は、中條先生編集の「ISO 9004:2018 解説と活用ガイド」に上げられて
いる、5つの変化に対応する組織の能力について、それぞれの変化とそれに
対する組織能力と品質マネジメントの強化点について述べました。

■□■  JSQC日常管理の指針 ■□■

日本品質管理学会JSQCの「日常管理の指針」の中にも組織の能力について
何か所かで触れています。
総合的品質管理 (TQM: Total Quality Management)とは、顧客及び社会の
ニーズを満たす製品・サービスの提供と、働く人々の満足を通した組織の
長期的な成功を目的とし、プロセス及びシステムの維持向上、改善及び革新を、
全部門・全階層の参加を得て行うことで、経営環境の変化に適した効果的かつ
効率的な組 織運営を実現する活動です。

TQMの中核となる活動は、プロセス及びシステムの維持向上、改善及び革新
ですが、組織の能力を引き出すには維持向上、改善及び革新をバランスよく
行うことが大切です。

■□■  日常管理 ■□■

日常管理と方針管理:維持向上を実践するためには、各々の部門・担当者が
自分の役割を継続的・安定的に果たすことができるようにする必要があります。
職務とそれを行うプロセス、職務の出来栄えに影響する要因とそれを一定に
保つ方法などを明確にするとともに、人が入れ替わる中でこれらを確実に行う
ことのできる仕組みを確立する必要があります。また、このような努力にも
かかわらず、思い通りの結果にならないことも少なくなくありません。

職務の出来栄えを測定する方法を考え、通常と異なる結果が得られた場合には、
その事実を関係者の間で速やかに共有し、確実な原因追究と対策を実施することが
必要です。これが「日常管理」です

■□■  方針管理 ■□■

他方、維持向上だけでは足りない部分について改善・革新を実践するためには、
顧客のニーズや経営環境の変化に対応するための戦略・目標を立て、その達成の
ために取り組むべき課題・問題を目的指向・重点志向の原則に沿って明らかにする
必要があります。これが「方針管理」です。

日常管理、方針管理の双方に、管理・日常管理を通じて明らかとなった様々な
課題・問題について、解決を図る活動が必要です。コミュニケーシヨンが図り
やすい少人数によるチームを構成した上で、特定の課題・問題 についてスビードの
ある取り組みを行い、その中で各人の能力向上と自己実現、信頼関係の醸成を図る
ための活動を戦略的に行います。部門横断チーム、部門ごとのプロジェクト活動、
第一線の従業員によるQCサ ークル活動などが含まれます。

■□■  工程能力 ■□■

プロセスの結果は様々な原因によってぱらつきますが、原因の中には、結果に
与える影響が小さく、技術的あるいは経済的に突き止めて取り除くことが困難又は
意味のない原因も少なくありません。

他方、プロセスの結果に影響を与える原因の中には、標準を守らなかった、原料が
変わった、設備の性能が低下したなど、安定した結果を得る上で見逃しては
ならないものもあります。このような原因については、直ちにプロセスを調査し
その原因を取り除き、再発防止につなげる必要があります。

突き止めて取り除く必要のある原因によって結果が通常の安定した状態から大きく
外れる事象は、「工程異常」又は「異常」と呼ばれます。
工程能力が不足している場合は、工程能力調査や工程解析などの結果に基づいて
改善・革新に取り組む必要があります。また、改善・革新が完了するまでの間は、
異常がなくとも不適合が発生する可能性が高いため、全数検査を行い、選別や
手直しにより規格外のものが後工程に流れないようにしながら日常管理のもとで
維持向上に取り組みます。

■□■  エラー防止 ■□■

標準の遵守を徹底するためには、なぜそうしなければならないのか、守らなかった時の
影響にいて理解することが大切です。標準を守らなかったために発生したトラブルの
事例を用いて教育すると効果的です。また、パトロール等を行い、標準が守られていない
場合には指摘、指導を行うのがよいでしょう。

さらには、標準を自分で作るだけの能力を身につけさせ、その作成・改訂に参加して
もらうがよいと思います。
日常的に作業担当者からの声を集めて、検討することも大切です。意図しないエラーを
防止するためには、エラープルーフ化(間違いにくくする、間違えると次の作業ができない
ようにするなど)を行います。この場合、作業に潜在するエラーを洗い出し、事前に対策を
取っておくのが必要です。また、過去に行なった有効な対策を共有して活用することも大切です。

■□■  組織風土作り ■□■

日常管理のための人材の育成と職場風土づくりは、各部門の管理者の重要な役割です。
各部門の管理者は自分が役割を果たせているか、職場で何が起こっているのかについて常に
関心を払う必要があります。

この際、次の点に注意するのがよいと思います。

・ 職場の使命・役割を、環境の変化に応じて、適宜見直す。
・ 業務のプロセス、作業内容についても、環境の変化に応じて、適宜見直しを行い、
標準を改訂する。
メンバー全員に仕事の目的・意義を説明し続ける。
メンバーが標準に基づいて作業ができているか、毎日確認する。
メンバーがやり難いと思ったり、標準を守ることができなくなったりしていたら、
メンバーからの声を聞いて、解決に向けた処置をとる。このため、メンバーの困りごとを
絶えず吸い上げる仕組みを構築する。
・ さらにメンバー全員の参加による日常の改善が促進される活動を、仕組みとして整備して
展開することも極めて重要である。(例えば、「QCサークル活動」の導入など)

風士作りにおいては、メンバーのモチベーションを維持・向上させることが大切です。
この際、次の点に注意するのがよいでしょう。

・メンバーに期待を示す。
・メンバーが困ったときには、支援する。
・メンバーが改善に取り組んでくれたら、結果にかかわらず感謝の気持ちを表す。
・ 「メンバーの能力を高めてその能力を最大限引き出す」ことができる職場づくりに取り組む。

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.225 ■□■    
*** ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-5 ***
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前回は、ISO 9004:2018箇条5「組織の状況」について話をしました。
組織の能力を的確に把握するには、組織を取り巻く状況を理解して、
社会、利害関係者から求められている期待を達成するには、どのような
能力が必要になるかを明確にしなければなりません。

■□■  組織の能力 ■□■

この箇条5は「組織の状況」というタイトルで、持続的成功を達成するための
組織の能力について記述しています。多くの経営者は、組織の状況を理解せずに
組織の能力を過信して、即ち的確に把握せずに事業を行い、その結果失敗する
ことになってしまっています。

中條先生編集の「ISO 9004:2018 解説と活用ガイド」には、組織の能力について、
5つの変化に対応する能力が求められるとして、それぞれの変化に対する組織能力と
品質マネジメントの強化点が上げられています。

■□■  組織能力1 ■□■

変化:事業環境が大きく絶え間なく変化する。

組織能力:
・変化の中で長期的に目指す姿を定める能力
・変化に対応した機動的な経営と組織能力の獲得を同時に実現できる能力

QMの強化点:
・組織の状況を踏まえ、顧客及び利害関係者のニーズを満たすことを中心に
据えた方針、戦略、目標を定める。
・QMを有効なツールと位置付け、推進計画を明確にし、中長期的な視点で推進
・方針、戦略、目標の展開、集約による課題、問題の共有と確実な取組みを強化する。

■□■  組織能力2 ■□■

変化:社会が成熟するにつれ、新たな価値の創造が求められる。

組織能力:
・潜在ニーズを発見する能力
・必要な技術を明確にし、計画的に開発する能力 
・ニーズとシーズを結び付け価値を創造する能力

QMの強化点:
・顧客の声を集め、潜在的なニーズを把握し、新製品、新サービスの開発に
積極的に取り組む。
・技術開発ロードマップ等を策定し、従来の枠組みを打ち破る新技術の開発へ
計画的に取り組む。
・顧客価値創造に向けた組織、部門間の密接な連携を図る。

■□■  組織能力3 ■□■

変化:安全、安心への関心が高まり、高度な品質保証が求められる。

組織能力:
・トラブルを予測し、未然防止する能力
・標準に従って業務を安定的に継続的に行う能力

QMの強化点:
・ノウハウの活用の失敗が増えていることを認識し、安全、安心な社会の
実現に向け、一段上を目指したプロセス/システムの実現に取り組む。
・従業員を巻き込んだ、起こり得るトラブルの洗い出しと未然防止活動、
異常や変化点に対する日常管理の徹底を図る。

■□■  組織能力4 ■□■

変化:従来と異なった部門、職種で改善を実践することが求められる。

組織能力:
・様々な職場における問題、課題の発見能力
・複数の異なる知識、能力をもつ人が連携し、問題、課題を解決する能力

QMの強化点:
・顧客満足度、自工程完結、TPS(トヨタ生産方式)、TPM(予防保全)、
ロス、ばらつき、自然災害リスクなどの新たな視点を加えることで
既存のプロセス/システムの問題、課題を顕在化
・複数の異なる形態の小集団改善活動を組み合わせることで、全員の参画を
引き出し、問題、課題に応じた柔軟な改善活動と自己実現を実現

■□■  組織能力5 ■□■

変化:IoT 等の情報技術が進み、新事業や生産性革新が期待される。

組織能力:
・多種多様で膨大な量の情報を分析、活用する能力
・次々に生まれてくる新たなノウハウを確実に蓄積、活用する能力

QMの強化点:
・ICTを活用し複数の組織・部門の間で情報を共有することで、
価値創造に役立てるとともに、方針管理、日常管理、改善活動等の
スピード、精度を向上する。
・改善活動を通じて得られたノウハウをデータベース化することで、
ノウハウの共有、活用と相互学習を促進する。

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.224 ■□■    
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-4***
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ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針」
について話をしています。今回は、箇条5「組織の状況」について話をします。
ISO 9004:2018の箇条5「組織の状況」は、ISO 9001:2015の箇条4「組織の状況」と
整合しています。

■□■ ISO9004;箇条5 ■□■

この箇条5は「組織の状況」というタイトルで、持続的成功を達成するための組織の
能力について記述しています。多くの経営者は、組織の状況を理解せずに組織の能力を
過信して、即ち的確に把握せずに事業を行い、その結果失敗することになってしまって
います。

組織の状況に影響を及ぼすものは、まず経営環境の変化です。この経営環境の変化には、
考慮すべきものとして、利害関係者、外部の課題、内部の課題があります。個々利害
関係者のニーズと期待は異なるので、ニーズ及び期待の対立、矛盾、優先順位などに
ついて、調整したり整合したりする必要があります。
さらに、経営環境の変化には外部の課題と内部の課題を考慮することが必要です。

■□■ 利害関係者 ■□■

利害関係者は,組織の意思決定又は活動に影響を及ぼします。したがって、社会に限り無く
多くある利害関係者の中から、自組織に影響を与える組織、団体を認識しておくことが必要です。
一方、「密接に関連する利害関係者」は,顧客、外部及び内部の関係者であることが多く,
組織の持続的成功を達成する能力に影響を及ぼします。

箇条5は、次の事項に該当する利害関係者を明確にすることを推奨しています。
a)関連するニーズ及び期待を満たさない場合,組織の持続的成功へのリスクとなる。
b)組織の持続的成功を強化する機会を提供できる。

組織は、「密接に関連する利害関係者」を明確にし,次の事項を行うことを推奨しています。
a)関連するニーズ及び期待を特定し,対処することが望ましい事項を明確にする。
b)利害関係者のニーズ及び期待を満たすのに必要なプロセスを確立する。

ここでいうプロセスは、「密接に関連する利害関係者」のニーズ及び期待を満たす方法、
基準など明確にして行う一連の活動を意味しています。

■□■ 外部、内部の課題 ■□■

箇条5.3.3は、組織は、外部及び内部の課題を検討する場合、過去の組織情報,
今後の戦略的方向性を考慮することを推奨しています。そして、どの外部及び
内部の課題が組織の持続的成功へのリスクになるのか、又は持続的成功を強化する
機会になるのかを明確にすることを推奨しています。

これらの課題を決定したならば、リスク及び機会のうちのどれに対処するのが
望ましいかを判断し,必要なプロセスの確立,実施及び維持に開始することが
望ましいとしています。
組織は,対処すべき結果について考慮しながら,外部及び内部の課題を監視,
レビュー,評価するプロセスを確立し,実施し,維持する方法について検討する
ことも推奨しています。

■□■ 組織の能力との関係 ■□■

利害関係者のニーズと期待、外内部の課題などを分析することで、組織の状況を
理解したら、それらに対応するために「組織の能力」を検討しなければなりません。
ISO 9004:2018 の箇条5の冒頭でも、「組織の状況への理解とは,その組織が
持続的成功を“達成する能力”に影響を及ぼす要因を明確にするプロセスのことである。」
と述べています。

経営環境の変化は、組織の状況に大きく関係します。昨今の世界の目まぐるしい
動きについていけず、ちょっとした経営環境の変化を見落すことで、組織経営を不利な
状況に追い込むことがあり得ます。そして、これらの課題は組織の能力に影響を与えます。
課題を解決する、回避する、乗り越えるなどいろいろなことが考えられますが、いずれに
しても、新しい能力を必要とすることでしょう。

組織の能力に影響を与える外部の課題の例として、次のようなものが上げられています。
a)法令・規制要求事項
b)分野固有の要求事項及び合意事項
c)競争
d)グローバル化
e)社会的,経済的,政治的及び文化的要因
f)技術の革新及び進歩
g)自然環境

さらに、組織の能力に影響を与える内部の課題の例として、次のようなものが上げられています。
a)規模及び複雑性
b)活動及び関連するプロセス
c)戦略
d)製品及びサービスの種類
e)パフォーマンス
f)資源
g)力量及び組織の知識のレベル
h)成熟度
i)革新

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-3 | 平林良人の『つなげるツボ』

★動画版はこちらから→https://technofer.info/contents/52
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.223 ■□■
**ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-3**
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ISO 9001:2015の関連規格ISO 9004:2018 について話をさせて
いただいています。
ISOマネジメントシステム規格が発行されると、その解説本が
出版されますが、ISO 9004 についても同様で、6月に
「ISO 9004:2018解説と活用ガイド:ISO 9001からISO 9004へ、
そしてTQMへ - 編集委員長中條武志」が日本規格協会から
出版されました。

■□■ ISO 9001、9004、TQM ■□■

今回のISO 9004の解説書で私が注目したのは、「ISO 9001から
ISO 9004へ、そしてTQMへ」という副題です。
ISO 9001とISO 9004の関係は、かつてはコンシステントペア
(consistent pair:一致した2つ)と呼ばれ、箇条ごとに調和した
記述がされていました。
2008年からは、ISO 9001とISO 9004は完全な一致では無くなり
ましたが、ISO 9001要求事項を超えて組織に成果をもたらすガイドを
記述するというISO 9004本来の狙いはそのとおり変更されずにきています。
その意味では、今回のISO 9004:2018 もまったく同様で、ISO 9001を
意識して組織にさらなる価値を提供するという観点で指針が記述されています。

■□■ そしてTQMへ ■□■

しかし、ISO 9004:2018は、前回述べたように「組織の品質」という
新しい概念を述べています。ISO 9004は、二者監査の代用として
使えるISO 9001よりも広範に、顧客及びその他の利害関係者のニーズ
及び期待を満たす活動を全社で行うことを示唆しています。
しかし、ISO 9001との一致性にこだわっていると、より広範な部署を
カバーしての活動にまで記述しきれないというジレンマがありました。

持続的成功と名前をつける以上は全社での活動、例えば、人事、
財務、経理、法務、経営企画、施設、ITサービス、CSR、研究開発
などの管理部門もQMS活動に参加すべきです。

■□■ TQMとは ■□■

TQMは、Total Quality Managementのことであり、日本では全社的(総合的)
品質管理と呼ばれてきました。組織の品質を上げるためには、例えば;

1. 品質不祥事を起こさない。
-不良品を流出しない。
-データを改ざんしない。
-法的要求事項を守る。

2. 関係企業と連携を取り、相互技術交流、相互研鑽を行う。

3. 改善活動の好事例を世の中に公表する。

4. 品質研究会、発表会、シンポジュームなどに参加して
社会といろいろな組織とオープンに交流する。

5. 環境(CO2排出、エネルギー削減、産業廃棄物など)に
配慮した経営を行う。

などを実施することになりますが、これらの活動はまさしく
全社の総ての人々が参加してこそ成果に繋げることができます。

■□■ 日本のTQM活動 ■□■

上記の「ISO 9004:2018解説と活用ガイド:ISO 9001からISO 9004へ、
そしてTQMへ」本では、ISO 9004:2018の活用を有効的に行うには、
TQMの方法論を活用することが一つの効果的な選択肢であるとしています。

そして、第4章では、TQMに関するJIS及び日本品質管理学会規格(JSQC規格)
を紹介し、解説をしています。
解説されているJIS及び日本品質管理学会規格(JSQC規格)は次のものです。

・JIS Q 9026 日常管理の指針
・JIS Q 9023 方針管理の指針
・JIS Q 9027 プロセス保証の指針

■□■ JIS及びJSQC規格 ■□■

企業は、組織の品質を向上させる、あるいは組織の価値を向上させることで
持続的成功に繋げていくことができます。そのためには、単純に言えば
製品・サービスを提供して、利益を上げることになりますが、利益を
上げるためには、製品が売れかつ原価管理ができていなければなりません。

この2つの条件、製品・サービス提供、コスト管理(無駄なことを行わない)
をどのように行うのかが、上記3つのJISおよびさらに3つのJSQC規格に
書かれています。

3つのJSQC規格とは次のものです。

・JSQC Std 31-001 小集団改善活動の指針
・JSQC Std 41-001 品質管理教育の指針
・JSQC Std 22-001 新製品・新サービス開発管理の指針

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-2 | 平林良人の『つなげるツボ』

★動画版はこちらから→https://technofer.info/contents/51

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.222 ■□■    
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-2***
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前回からISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を
達成するための指針」についての話を始めました。
2018年に改定されたISO 9004は「組織の品質」を扱っていることが特徴です。

■□■ ISO 9004;箇条4 ■□■

“組織の品質”とは,「持続的成功を達成するために,組織固有の特性がその顧客
及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度」です。
何が持続的成功の達成に関連しているのかを判断するのは,組織次第です。
この組織の品質は持続的成功のカギであると言っていますが、そのカギが
何であるかは書かれていません。

持続的成功の達成要素として利害関係者への対応が上げられており、直接の
顧客にとどまらず広く利害関係者を捉えることがよいとされています。

■□■ 利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度 ■□■

それでは、顧客及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度とは
何で計ればいいのでしょうか。ここで注目すべきは、「ニーズ及び期待を
満たす程度」は顧客だけでなく、その他の利害関係者も対象に入っている
ことです。

「顧客のニーズ及び期待を満たす程度」だけですと、従来も言われてきた、
「顧客満足」と同じに考えればいいのですが、広く「その他の利害関係者の
ニーズ及び期待を満たす程度」を対象に考えるとなると、多くの事柄が
浮かんできます。
候補として思い浮かんだことをどこまで何を行うのかは組織に委ねられています。

具体的には、次のようなことが候補になるでしょう。

1. 品質不祥事を起こさない。
  -不良品を流出しない。
  -データを改ざんしない。
  -法的要求事項を守る。
2. 関係企業と連携を取り、相互技術交流、相互研鑽を行う。
3. 改善活動の好事例を世の中に公表する。
4. 品質研究会、発表会、シンポジュームなどに参加して社会といろいろな組織と
  オープンに交流する。
5. 環境(CO2排出、エネルギー削減、産業廃棄物など)に配慮した経営を行う。
6. 災害を起こさない。
7. 情報を流出しない。
8. SDGs活動に参加する。
9. 社会的ボランティア活動に参加する。
10. 慈善事業を行う。

ISO 9004:2018は、「品質マネジメント」とタイトルが付いていますが、
取り扱っている対象は、持続的成功に関係する環境、安全、エネルギー、
CSRなど多岐にわたります。

■□■ 1.~10.はどのように特定するか ■□■

上記の1.~10.は思いつくまま上げてみましたが、箇条4.2.1では、
組織の品質を向上し,持続的成功を達成するためには、長期にわたり
その利害関係者のニーズ及び期待を一貫して満たすことにことが
望ましく、組織は次のようなことを行うことが望ましいとしています。

a)全ての利害関係者を特定し,そのニーズ及び期待並びに組織の
パフォーマンスに対するその個々の潜在的な影響を明確にするため,
定期的に組織の状況を監視,分析,評価及びレビューする。
b)組織の使命,ビジョン及び価値基準を明確にし,実行,伝達し,
整合性の取れた文化を促進する。
c)短期的及び長期的なリスク及び機会を明確にする。
d)組織の方針,戦略及び目標を明確にし,実施し,伝達する。
e)一貫性のあるシステムの内部で機能するよう関連するプロセスを
確定し,管理する。
f)そのプロセスにより意図した結果を達成することができるように,
組織の資源を管理する。
g)組織のパフォーマンスを監視し,分析し,評価し,レビューする。
h)組織の状況における変化に対応する組織の能力を支援するため改善,
学習及び革新促進を行うプロセスを確立する。

■□■ 組織の品質とは結局・・・ ■□■

箇条4に出てくる「組織の品質」とは、国柄、人柄などに通じる概念で、
社会から尊敬される程度・レベルなのかと思います。我々の日常生活でも、
いろいろなものを対象に品質が高い、低いという言い方をしますが、
組織に対しても品質が高い、低いという言い方ができ、品質の高い組織が
持続的に成功するというロジックでISO 9004:2015は作られている、
ということになります。
そして、品質が高い、低いという尺度は、「顧客及びその他の利害関係者の
ニーズ及び期待を満たす程度」であると規格は言っています。