Author Archives: 良人平林

ISO9001キーワード 3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.468 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード 3 ***
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ISO9001:2015規格に出てくるキーワードについて、世の中のい
ろいろな情報から抽出した広範な周辺知識をお伝えします。ISO
審査員、内部監査員が職務を遂行する時(審査、監査)にこれら
の知識を直接質問などに使用することは避けていただかねばなり
ませんが、ISOマネジメントシステムが意図するところを一歩踏
み込んで理解していただくには有用な情報だと思います。

■■ リーダーシップ論いろいろ  ■■
キーワード1と同じように、ISO9001:2015箇条5に出てくる「リ
ーダーシップ」についてもう少しお伝えします。世の中にはいろ
いろな方のリーダーシップ論があり、参考になります。
以下に何人かの先見者たちによって示されたリーダーシップ論を
掲載します。

1.Peter Senge 
組織には複数のタイプのリーダーがいる。第一線のリーダーは、
具体的な結果の心配をする。幹部的リーダーは、継続的な学習が
可能な経営環境づくりに責任を持つ。そして内部ネットワーカー
は、コミュニティ作りを行う。
2.Sally Helgesen 
世界は「相互接続した部分からなるクモの巣」として見ると、
「地位を伴わないリーダーシップ(non‐positional leadership)」
や「地位を伴わないパワー(non‐positional power)」が生まれ
る。
3.Gifford Pinchot 
リーダーは人々が粛々と「なすべき仕事を果たすこと」に取り組
むことを援助しながら、従業員に心を配り、公益に奉仕を続け、
使命と価値観の共有を通じて、コミュニティが創り上げられるこ
とを援助する。
4.Edgar Schein 
リーダーとは組織に生命を吹き込む人のことで、組織を離陸させ、
組織文化を創造し、文化を維持し、チェンジ・エージェントとし
て活動する。リーダーは偶然に変化を起こすことはできないが、
絶え間ない学習を通じて変化を導き出すことを援助することがで
きる。
5.John Work 
リーダーシップは、社会的に意味のあるビジョンと、「終わりなき
社会的課題」を持つ社会の改善へと続く変化の上に築かれなけれ
ばならない。このようなタイプのリーダーシップは、民族的感受
性、職場のビジョン、これまでとは違う新しい雇用プロセス、多
様な労働力の効果的な活用、そして組織とコミュニティのつなが
りに責任を持つ。
6.Rosabeth Moss Kanter 
リーダーは、コスモポリタンであり、統括者であり、外交官であ
り、受粉媒介者(cross-fertilizer)であり、深い思索者であらね
ばならない。リーダーは硬直化した役割やステレオタイプを打破
し、リスクを恐れず新しいパターンを導入し、他の者たちのパー
トナーとならなければならない。
7.Richard Leider 
リーダーシップは、「YOU INC(あなた株式会社)」からできてい
る。言いかえると、すべての変化は「自己変化(self-change)」
である。自己変化によって、感情的に豊かになる。変化は、セル
フ・リーダーシップと自己の内部を見つめることを要求する。
8.Beverly KayeとCaela Farren 
リーダーは、ファシリテ一夕ー、評価者、予測者、アドバイザー、
支援者となることによって、人々がキャリアを開発するのを援助
することができる。

出典 サニー・S・ハンセン著作「Integrative Life Planning」福村出版

■■ リーダーシップ論に共通すること ■■
これらのリーダーシップ論にはいくつかの共通する見解が見られ
ます。
・多くの人たちが、組織が変化する力について、良きリーダーは
組織の変化をどのように起こすかを知っている。
・何人かは、コミュニティの形成、社会の改善、そして共通の利
益のために働くことについて関心を示している。
・階層的で競争的な組織から、継続的な学習を中心に据えた、民
主的な価値観を評価し、協力的で協働的な組織へ移行する必要
性について意見の一致が見られる。
・ほとんどの人が、組織があらゆる多様な人的資源を活用しよう
とするならば、新しい形のコミュニケーション、雇用方針、報
償制度、ビジョンが必要であると信じている。
・コミュニティ、コミュニティの形成、架け橋の形成、つながり、
パートナーシップの形成というテーマが重複している。
特に、4.Edgar Scheinの「リーダーとは組織に生命を吹き込む
人のことで、組織を離陸させ、組織文化を創造し、文化を維持し、
チェンジ・エージェントとして活動する。リーダーは偶然に変化
を起こすことはできないが、絶え間ない学習を通じて変化を導き
出すことを援助することができる。」は私の好きなリーダーシッ
プの捉え方です。

(つづく)

ISO9001キーワード 2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.467 ■□■
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*** ISO9001キーワード 2 ***
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ISO9001:2015規格に出てくるキーワードについて、世の中の広
い情報から抽出した広範な周辺知識をお伝えしています。ISO
審査員、内部監査員が職務をする時の周辺知識としてお読みいた
だければ幸いです。

■■  顧客満足  ■■
ISO9001:2015には次の要求事項があります。

5.1.2 顧客重視
トップマネジメントは,次の事項を確実にすることによって,顧
客重視に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなけ
ればならない。
a) 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を明確にし,
理解し,一貫してそれを満たしている。
b) 製品及びサービスの適合並びに顧客満足を向上させる能力に
影響を与え得る,リスク及び機会を決定し,取り組んでいる。
c) 顧客満足向上の重視が維持されている。

引用 JIS 品質マネジメントシステム-要求事項 JISQ9001:2015

■■  顧客満足は正しいのか?  ■■
「顧客満足は正しいのか?」とは何とも衝撃的な問いかけで、顧
客満足は当たり前の概念ではないかと思うのですが、皆さんはど
う思われますか?
ISO9001では「顧客満足」は自明の理であり、疑う余地がないこ
とを前提に「顧客重視」の要求事項を規定しています。確かに顧
客満足は正しいと思いますが、では次の問い掛けにはどう答えま
すか。
「顧客満足のためには顧客の言うことは何でも聞かなければなら
ないのか? 顧客自身が自分のニーズとして口に出して言ってい
ることが真意かどうかわからないときがある。建前とホンネとで
もいうのか,真意を読み取るのが難しいこともよくある。欲しい
ものを言ってくれるのはまだよいほうで,自分のニーズがわかっ
ていないのではないかと思われることがある。また,何か言って
いるのだが,何が欲しいかよくわからないこともある。」

この答えは7月29日に日本品質管理学会が主催する「TQM大誤
解」で私がお答えします。講演会に出席されて納得いくまで議論
に参加されたらどうでしょう。

■■ 品質管理は古い、これからは顧客価値創造だ ■■
品質管理が古いとはこれまた衝撃的な問いかけですが、本当にそ
うなのでしょうか。確かにここ10年位の間に「顧客価値創造」
が幅を利かせているようです。文字どおりに解釈すると,「顧客
価値を創り出す」ということですが,この「顧客価値」について,
JIS Q 9005:2023では,「製品・サービスを通して,顧客が認識
する価値」と定義されています。
これを少しわかりやすく説明すると,「顧客価値とは,提供され
た製品・サービスを消費,使用する際にお客様が感じる効用,メ
リット,有効性のこと」といえます。どんな企業でも,必ずこの
顧客価値を提供することによって事業が成立しています。高度経
済成長の時代は,消費者は「今まで手にしていなかった新たな機
能や効用」をもった良質廉価な工業製品を求め,そしてメーカー
はこれに応えるために,「不良やばらつきのない品質と合理的な
コスト」という顧客価値を提供すれば,事業は成功する時代でし
た。
ところがモノがあふれた成熟経済社会になると,ニーズの多様化,
高度化,複雑化が起きて,かつての顧客価値は通用せず,顧客層
や個客に合わせた価値を創り出していかなければ,成功しにくい
時代となったのです。だから,「うちの経営方針は顧客価値創造だ
よ」は,確かに,大変によい方針といえるでしょう。しかし、こ
れに対する反論も聞く価値があると思います。
どうぞ7月29日の「TQM大誤解」にお越しください。
(つづく)

ISO9001キーワード 1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.466 ■□■
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*** ISO9001キーワード 1 ***
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今回からISO9001:2015規格に出てくるキーワードについて、世
の中の広い情報から抽出した周辺知識をお伝えしたいと思います。
これらの知識は要求事項ではありませんので、ISO審査員、内部
監査員が職務遂行する際は使用してはなりません。しかし、審査
を離れて、ISOマネジメントシステムが意図することを一歩踏み
込んで知ることはとても有用だと思いますので、周辺知識を増や
す意味でお読みください。

■■ リーダーシップ  ■■
ISO9001:2015には次の要求事項があります。

5 リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.1.1 一般
トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメン
トシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証し
なければならない。
a) 品質マネジメントシステムの有効性に説明責任(accountability)
を負う。
b) 品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を
確立し,それらが組織の状況及び戦略的な方向性と両立する
ことを確実にする。
c) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項
の統合を確実にする。
d) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進
する。
e) 品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であるこ
とを確実にする。
f) 有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求
事項への適合の重要性を伝達する。
g) 品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成するこ
とを確実にする。
h) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積
極的に参加させ,指揮し,支援する。
i) 改善を促進する。
j) その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダー
シップを実証するよう,管理層の役割を支援する。

引用 JIS 品質マネジメントシステム-要求事項 JISQ9001:2015

■■ ドラッカーのリーダーシップ論  ■■
経営の神様と言われたピーター・ドラッカーは、リーダーシップ
について次のような考えを述べています。
(1)フォロワーがいてこそのリーダーである。
 「フォロワーがいる」という今日的(SNS時代)用語を用いて
説明していることに驚かされます。1980年代にフォロワーと
いう言葉を使ってリーダーシップの本質を説明しています。
裸の王様になっていないか、独りよがりになっていないか、
多くの人たちがついて来てこそのリーダーであると核心を衝
いています。
(2)称賛されもしないし愛されもしない。
  リーダーは孤独です。先頭に立って事を行う人は称賛される
どころか、もしかすると憎まれるかもしれません。ましてや
愛されることはないでしょう。逆に言うと称賛されたり、愛
されたりすることを意識するようでは本当のリーダーシップ
を発揮していないということです。
(3)とてもよく目立ち、模範を示す。
  リーダーは先頭に立ちますから「とても目立ちます」し、進
む方向を示しますから間違えたら大変なことになります。模
範となるような行動をしなければなりません。
(4)リーダーシップを責任と見なしている。
  リーダーシップをとる人はその時の気まぐれで行動をとるこ
とは厳に慎まなければなりません。それでは単なるお山の大
将です。責任(responsibility)という重たい言葉を自覚して
行動をしなければなりません。

■■ リーダーの問い掛け  ■■
ドラッカーは次のようにも言っています。
リーダーはいくつかの鍵となる問いかけをすることができなけれ
ばなりません。
・いま何をやる必要があるか?
いま責任者としてどんなことをしなければならないのか、タイ
ミングを失ったら同じことをやっても効果はないかもしれませ
ん。
・違いを生み出すために私は何をすることができるか?
 リーダーは常に他者との違いを意識していなければなりません。
競争力は他者との違いから生まれますので、差別化の認識は重
要です。
・組織の使命とゴールは何で、何が業績と結果の構成要素となる
か?
マネジメントの根幹にあるミッション/ビジョン、そしてそこ
から導かれてくる業績を簡潔に述べています。
更にドラッカーは「有能なリーダーの特徴は、常に「ミラーテス
ト」を行う」と言っています。すなわち、鏡の中にいる人物は、
自分がなりたいと思い/尊敬し/信じられる人物であるか、と常に
自問しているという説明です。鏡の中にいる人物とは誰でしょう
か?ドラッカーは何も言っていません。
(つづく)

品質経営を考える7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.465 ■□■
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*** 品質経営を考える7 ***
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CG(コーポレートガバナンス)コードの構成は5章構成ですが、
企業経営に重要であると思われる製品「品質」のことが全く出て
こないことに違和感を覚えています。株主の権利保護、取締役の
執行監督・監視などは当然ですが、企業経営の健全性を主張する
のであれば品質についても一言記述していただきたいと思います。

■■ CGコード第3章 ■■
CGコードの第3章は「情報公開」を扱っていますが、この章に
書かれている情報公開も「品質経営」には必須なことです。
「品質経営」とは、製品・サービスの品質を組織経営の中核に置
いて経営を行うという概念であると前回申し上げましたが、組織
は品質の良い製品・サービスを市場に提供し、顧客に価値を与え
て持続的に存在していけます。その製品、サービスの品質につい
て、近年データ改ざん、認定品の捏造、事実の隠蔽など情報公開
に関する問題が多く発覚しています。

【基本原則3】
 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営
戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報
について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づ
く開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建
設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報
(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、
情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

【原則3-1】(情報開示の充実)
 上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社
の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガ
バナンスを実現するとの観点から、以下の事項について開示し、
主体的な情報発信を行うべきである。

(i)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(ii)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバ
ナンスに関する基本的な考え方と基本方針
(iii)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっ
ての方針と手続
(iv)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指
名を行うに当たっての方針と手続
(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取
締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名
についての説明

【補充原則3-1-(1)】
 上記の情報の開示(法令に基づく開示を含む)に当たって、取
締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者に
とって付加価値の高い記載となるようにすべきである。

【補充原則3-1-(2)】
 上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、
合理的な範囲において、英語での情報の開示・提供を進めるべき
である。
 特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる
情報について、英語での開示・提供を行うべきある。

【補充原則3-1-(3)】
 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリ
ティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資
本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題
との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供
すべきである。

 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収
益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要な
データの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みで
あるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充
実を進めるべきである。

【原則3-2】(外部会計監査人)
 外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資
家に対して責務を負っていることを認識し、適正な監査の確保に
向けて適切な対応を行うべきである。

【補充原則3-2-(1)】
 監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきである。
(i)外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切
に評価するための基準の策定
(ii)外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有している
か否かについての確認

【補充原則3-2-(2)】
 取締役会及び監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきで
ある。
(i)高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保
(ii)外部会計監査人からCEO・CFO等の経営陣幹部へのアク
セス(面談等)の確保

(iii)外部会計監査人と監査役(監査役会への出席を含む)、内部
監査部門や社外取締役との十分な連携の確保
(iv)外部会計監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合や、
不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立

出典 日本取引所グループnlsgeu000005lnul.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第3章の解説 ■■
補充原則3-1-(3)には、サステナビリティについて、および人的
資本や知的財産への投資等についての情報開示を求めていますが、
ここに「製品(サービスを含む)品質」についての情報開示も追
加していただきたいと思っています。
また、補充原則3-2-(2)には、(ii)外部会計監査人からCEO
(Chief Executive Officer)・CFO (Chief Financial Officer)等の
経営陣幹部へのアクセス(面談等)の確保が求められています。
CEO、CFOに加えてCQO (Chief Quality Officer)も加えていただ
きたいと思います。
これまで7回にわたって品質経営とCGコードの関係について説
明をしてきましたが、全体を通じて発信したかったことは、上場
企業において影響力が強いCGコードに品質への言及がないので、
経営の要である製品品質について一言、二言推奨あるいは要求を
してほしいということです。
さらに言えば、株主、機関投資家への還元を言うのであれば、そ
の原資は製品・サービスの品質にありますので、「還元」という
結果と同時に「品質」という要因についてもCGコードは言及す
べきであると考えます。

(つづく)

品質経営を考える6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.464 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 品質経営を考える6 ***
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品質経営を考えると称して、これまで5回CG(コーポレートガ
バナンス)コードについて説明してきました。しかし、読者から、
このメルマガで説明のあったCGコードは、「品質経営に触れて
いないのではないか」という疑問が寄せられましたので、今回は
その疑問にお答えしたいと思います。

■■ CGコード第2章 ■■
CGコードの第1章に続き第2章の説明に入ります。CGコードの
第2章は「企業の社会責任」を扱っていますが。まさにこの章に
「品質経営」に関係することが出てきます。
「品質経営」とは、製品・サービスの品質を中核において経営を
行うという概念です。組織は製品・サービスを市場に提供し、顧
客に価値を与えて持続的に存在していけます。品質の悪い製品・
サービスは自ずから市場から排除され、そのような製品・サービ
スを提供し続けている組織は退陣を余儀なくされます。

【基本原則2】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出
は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様
々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果である
ことを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働
に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場
や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けて
リーダーシップを発揮すべきである。

【原則2-1】(中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定)
上場企業は、自らが担う社会的な責任についての考え方を踏まえ、
様々なステークホルダーへの価値創造に配慮した経営を行いつつ
中長期的な企業価値向上を図るべきであり、こうした活動の基礎
となる経営理念を策定すべきである。

【原則2-2】(会社の行動準則の策定・実践)
上場会社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の尊
重・健全な事業活動倫理などについて、会社としての価値観を示
しその構成員が従うべき行動準則を定め、実践すべきである。取
締役会は、行動準則の策定・改訂の責務を担い、これが国内外の
事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにすべきで
ある。

【補充原則2-3-(1)】
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊
重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引
先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステ
ナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益
機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企
業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り
組むよう検討を深めるべきである。

出典 日本取引所グループ
nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第2章の解説 ■■
第2章は企業の「健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土
の醸成に向けて」の活動について推奨事項を掲げています。

「価値創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値向上を
図るべきであり、こうした活動の基礎となる経営理念を策定すべ
き」であるとして、「気候変動などの地球環境問題への配慮、人
権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、
取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サ
ステナビリティを巡る課題への対応」を求めています。

ただ、品質経営の観点から見ると「品質」の2文字がありません。
「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の
健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・
適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを
巡る課題への対応」の文中を次のように改訂することを提案して
いきたいと思います。

「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の
健康・労働環境への配慮、『製品・サービスの質』や公正・適切な処
遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、
サステナビリティを巡る課題への対応・・・」

(つづく)