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マネジメントシステム規格共通文書5 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.56 ■□■

*** マネジメントシステム規格共通文書5 ***

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「マネジメントシステム規格共通文書5」をお読みいただく
前に恐縮ですが
「第19回テクノファ年次フォーラム」(参加費:無料)の
ご案内をさせていただきます。

皆様のお申込みをお待ちしております。

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・日時:12月27日(木)/ 13:00~17:30
・会場:きゅりあん(品川区立総合区民会館) 7F イベントホール
・定員:350名(先着順)
・講演者・テーマ(内容が変わる場合がございます)
  1. 早稲田大学理工学術院 教授 棟近 雅彦 氏
    『次期ISO9001規格について』

  2. 高知工科大学 客員教授 神田 淳 氏
    『持続可能文明の創造』副題「日本のエネルギー問題」

  3. 立正大学心理学部 教授 小澤 康司 氏
    『不確実な社会を生き抜くキャリア開発』

・フォーラムの詳細はこちらで
http://www.technofer.co.jp/convini/forum2012.html

・お申し込みはこちらで
https://www.technofer.co.jp/script/forum2012register.php

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それでは本題ですが、

■□■ 共通テキスト化のポイント ■□■

 ISO/IEC Directive の附属書SLに組み込まれたMSSのポイントは
5つあるとして、前回までにそのうち1,2,3,4について述べました。

1.どのMSSにもある普遍的な箇条の文章が共通化されたこと。
2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと。
3.MSSを導入する前提を明確にすることが問われるようになっ
たこと。
4.要求事項をビジネスプロセスに統合することが要求されてい
ること。
5.リスクの考え方が導入されたこと。

 今回は、「5.リスクの考え方が導入されたこと。」について説明
をします。

■リスクとは■

 附属書SL箇条3.09に「不確かさの影響」と定義されています。
これから何が起こるか分からない、誰も未来をいい当てられない状況
においても、何が起こりうるかを予測し、それに対する影響を明確に
しておくことが要求されています。

 箇条6.1では、同時に「機会(opportunity)」も明確にすることが
要求されています。附属書SLには機会の定義はされていませんが、
opportunityは好機とも訳されますので、目標達成の見込み、向上・
改善のチャンスなど組織にとって良いことについても明確にすること
が要求されています。

 リスクは「何かについての影響」であり、機会は「何か」そのもの
であることに両者の違いをみることができます。

■リスクを明確にする際の視点■

 ただ、無条件に組織のリスクと機会を決定すると要求しているわけ
ではありません。
 「①組織の目的に関連した外部・内部の課題、②MSSの意図した成果
を達成する能力に影響を与える外部・内部の課題」に関してのリスク
と機会でなければなりません。

 決定したリスクと機会については、a)MSSの意図した成果を確実に
達成する、b)望ましくない影響を防止又は低減する、c)継続的に改善
することが求められています。

 更に、箇条8.1ではこのa)~c)への取り組みに必要なプロセスを計画
し、実施し、かつ管理することが求められています。

 我々は、確実にものごとを実行することは、現在においてしかできま
せん。だれも未来において、何かを確実にすると言い切れません。

 我々にできることは、将来何が起こるのかを予測し、それに備えるこ
との実行だけです。予測したことが、未来においてその通りになったの
か、ならなかったのか、準備したことが適切であったのか、なかったの
かなどについては、将来の人にしか分かりません。未来に存在する人
だけがそれを確認できるのですが、その人が現在の人である保証はあ
りません。

 現在、備えとして行ったことが、実は大きな潜在的効果になっていた、
というようなことは誰にも認めてもらえない可能性もあります。

 附属書SLはリスク及び機会を決定するに際して、どのくらいの時間ス
パンが望ましいかについては何もいっていませんが、現在の事業計画
の延長線上を見定めての決定がよいと思います。
  
■ 組織及び制度に与える影響 ■

 附属書SLが今後組織及び認証制度にどのような影響を及ぼすかに
ついては、いろいろな見方があってしかるべきです。

 筆者は次のような観点から組織及び認証制度への影響を考えるべ
きであるかと思っています。それは、まさしく附属書SL箇条6.1に述
べられている観点からです。

 すなわち、リスクと機会についてであり、何をリスクと捉えるか、
何を機会ととらえるかを組織は自分たちの置かれている状況、
環境のなかから考察していくべきです。したがって具体的な影響は
組織によって様々であると思います。

■ MSSへの応用状況 ■

最後になりますが、12種類のMSSの状況です。

①ISO9001

 2012年3月の国際定期見直し投票結果により改正が決定されました。
 2012年6月に第1回TC176/SC2/WG24がスペインで開催され、設計計
 画書が作成されました。
 附属書SLの採用が決定され、スタート時点として単純に 附属書SL
 と現行の規格(2008年版)の組み合せを作成 しながら、2015年完
 成を目標にプロジェクトが進んでいます。

②ISO14001

 1996年の初版後、2004年に改正されたのみで、以来改正がされず
 にきましたが、2015年を目標に改正作業に入っています。
 附属書SLの採用が決定され、そこに環境に特有な要求事項をどの
 ように入れ込むのかの議論が続いています。
 ex)環境側面に関する要求はどこの箇条に入れるのがよいのか?

③ISO22301(事業継続マネジメントシステム)

 2012年5月に新しいテーマである国際規格が発行されました。
 附属書SLに基づいた初の規格です。

④ISO20121(イベントマネジメントシステム)

 2012年7月新しいテーマである国際規格が発行されました。
 附属書SLに基づいた2番目の規格です。

⑤ISO39001(道路交通安全マネジメントシステム)

 2012年10月に新しいテーマである国際規格が発行されました。
 附属書SLに基づいた3番目の規格です。

⑥ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)

 2005年5月発行規格が最新版です。
 現在、附属書SLに基づいた改定版を開発中で、現在CD段階に
 あります。

⑦ISO22000(食品安全マネジメントシステム)

 2005年5月発行規格が最新版です。 
 現段階の「改正」は現場の混乱をまねくとして、現在のままで
 いく決定がされました(確認)。

⑧ISO20000(ITサービスマネジメントシステム)

 2011年4月が最新版の国際規格です。
 現在JIS化が進められています。

⑨ISO50001(エネルギーマネジメントシステム)

 2011年5月発行の新しいテーマの国際規格です。
 現在、周辺の規格の開発が進められています。

⑩ISO16949(自動車セクター規格)

 アメリカBig3が作ったInternational Autmobil Task ForceがISOと
 一緒に作成した規格です。
 附属書SLは規格ユーザーへの影響が大きいという背景から、
 採用しない案をISO/TMBへなげかけており、今後の展開が
 注目されます。

⑪ISO9100(航空宇宙マネジメントシステム)

 世界の航空宇宙関係の部品メーカー用のセクター規格です。 
 現段階では、附属書SLを採用しての「改正」を検討しています。

⑫ISO55001(アセットマネジメントシステム)

 2010年に英国BSIの提案で開発が進められ、現在CD段階にいます。
 附属書SLを用いて開発が進められています。

以上

マネジメントシステム規格共通文書4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.55  ■□■

*** マネジメントシステム規格共通文書4 ***

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■□■ 共通テキスト化のポイント ■□■

 ISO/IEC Directive の附属書SLに組み込まれたMSSのポイン
トは5つあるとして、前回までにそのうち1,2,3について述べま
した。

1.どのMSSにもある普遍的な箇条の文章が共通化されたこと。

2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと。

3.MSSを導入する前提を明確にすることが問われるようになっ
たこと。

4.要求事項をビジネスプロセスに統合することが要求されてい
ること。

5.リスクの考え方が導入されたこと。

 今回は、「4.要求事項をビジネスプロセスに統合することが
要求されていること」について説明をします。

■□ ×××要求事項をビジネスプロセスに統合する ■□

 今回の附属書SLの大きなポイントは、箇条5.1にある「組織の事
業プロセスへの統合」です。

 たった一行の文章ですが、この意味するところは経営の本質に
かわるものであり、今回のMSS共通文書によるシステム構築、維
持、改善に大きな影響を与えるものであると考えます。

 認証審査にも当然のこと影響を与えることになると思います。
 ここにおけるポイントは2つあります。一つは「事業プロセス
(business process)」であり、もう一つは「統合(integration)」
です。

■□ 事業プロセスとは  ■□

 箇条5.1の注記に「この規格で“事業”という場合、それは、組織
の存在の目的(purpose)の中核となる活動という広義の意味で解釈
することが望ましい」とあります。

“NOTE : Reference to “business” in this International
Standard should be interpreted broadly to mean those
activities that are core to the purpose of the organization’s
existence”

 ここにおける目的は前回で述べた目的、purposeであって、
objectivesではないことに注意が必要です。このNoteは、「組織の
存在の目的」という組織の根源的なことに触れています。

 ここでいう組織の目的は、まさしく前回ふれたドラッカーの著書
“Management”にでてくる企業の目的である「顧客の創造」であると
いってよいでしょう。 

 顧客の創造に関するプロセスとは、組織が毎日行っている活動であ
り、たとえば市場調査プロセスであったり、商品/サービス企画プロ
セスであったり、とにかく製品或いはサービスをお客様に届けるとい
うことに関係する活動はすべてがそうであるといえます。

 たとえば、研究開発プロセス、設計プロセス、技術プロセス、製造
/サービス提供プロセス、購買、品質保証プロセス、配送プロセス、
クレーム対応プロセス、アフターサービスプロセスなどは当然該当す
ると思います。

 組織が顧客にむいて、顧客のために、顧客の身になって行う活動は
すべて事業プロセスといってよいでしょう。

 すべての企業は、企業自身が作り出す「製品又はサービス(以下、
製品という場合もサービスを含む)」が市場で受け入れられ、その製
品の価値に見合う対価を受け取ることで継続的に存在することができ
ます。

 企業が事業を連続的に継承していくためには、常に企業の製品
が顧客ニーズと期待に合っていなければなりません。そして、そのた
めには、企業自身が「常に顧客ニーズと期待に合った製品」を提供し
ていくマネジメントシステムを構築、維持していくことが重要です。

 企業のマネジメントは、多様な要素から成り立っています。例えば、
事業モデルの確立、ビジョンと戦略の策定、収益構造の維持、研究開
発、安全、環境保全、社会貢献、従業員教育、福利厚生、財務管理、
リスク分析、非常事態への対応、顧客対応と顧客満足度向上、品質管
理、非常時対応、事業継承、内部統制、企業倫理、法例遵守などです。

 これらマネジメントの要素は当然のことながら、企業の性質、規模、
持っている製品によって異なります。しかもこれらは、お互いに影響
をし合い大きなシステムを作っているので、要素の重要性に順序は付
けがたいものです。

■□ CSRも事業プロセス  ■□

 直接顧客の創造につながらなくても、社会全般に向けての活動も間
接的には顧客創造につながるものですので、事業プロセスといってよい
と思います。
 
 たとえば、CSR(企業の社会責任)活動に関係するプロセスもそうで
しょう。CSRには7つの重要な活動があるといわれています。

①組織統治(Organizational governance)に関する活動
 社会正義に反することをしないよう組織を統治する。

②人権(Human rights)に関する活動
 従業員の人権をまもる、例えば差別、強制就業、いやがらせなどを
無くす。

③労働慣行(Labor practices)に関する活動
 就業規則、給与、福利厚生、残業、休日出勤などのルールを守る。

④環境(Environment)に関する活動
 環境保全をはじめ、もろもろの活動により環境への配慮をする。

⑤公正事業活動(Fair operating practices)に関する活動
 法を守る、業界ルールなどを遵守する。

⑥消費者課題(Consumer issues)に関する活動
 消費者保護の精神に則った企業活動をする。

⑦地域社会参画と発展(Community involvement & development) に
 関する活動立地している社会との相互関係を尊重し地域に貢献する。

 CSR活動以外の品質管理活動、環境管理活動、安全管理活動、情報管
理活動などのMSSに関係するテーマも、ほとんどが事業活動(プロセス)
であるといえます。

■□ 事業プロセスは日々の活動に分解される  ■□

 ISO9000規格では、プロセスを「インプットをアウトプットに変換
する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義してい
ます。

 この一連の活動というところがポイントです。設計というプロセス
を考えてみると、基本設計、構造設計、要素設計、設備設計、許容
交差計算、詳細設計などいろいろな活動がありえます。

 これらの活動は更に小さな活動に分解可能です。例えば、基本設計
を分解すると、素材選択とか、強度計算のようなより小さな、より具
体的な活動になります。
 
 このようにして分解をしていくと、最後は個人が仕事することがで
きる大きさになります。

以上

マネジメントシステム規格共通文書3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.54  ■□■

*** マネジメントシステム規格共通文書3 ***

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■□■ 共通テキスト化のポイント ■□■

ISO/IEC Directive の附属書SLに組み込まれたMSSのポイントは
5つあるとして、前回までにそのうち1.2.について述べました。

1.どのMSSにもある普遍的な箇条の文章が共通化されたこと。
2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと。
3.MSSを導入する前提を明確にすることが問われるようになっ
たこと。
4.要求事項をビジネスプロセスに統合することが要求されてい
ること。
5.リスクの考え方が導入されたこと。

1.2.で述べきれなかったこととして、より容易な文章で規格が
作成されたということを追加して説明します。

■□ 日常のビジネス用語で規格の要求を述べる ■□

例えば、箇条「6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定」
には、次のような一節があります。

・ what will be done
(何がなされるのか)
・ what resources will be required
(どんな資源が必要とされるのか)
・ who will be responsible
(誰が責任をもつのか)
・ when it will be completed
(いつ終了するのか)
・ how the results will be evaluated
(どのように結果は評価されるのか)

このように、5W1Hを使用した要求事項は今までの
ISO規格にはなかったものでした。

同様な例が、「7.4コミュニケーション」にもあります。

・ on what it will communicate
(何についてコミュニケーションするのか)
・ when to communicate
(いつコミュニケーションするのか)
・ with whom to communicate
(誰とコミュニケーションするのか)
 
このように我々が日ごろの業務の中で使用している
用語を使用しての規格は、なじみやすく、従来よりも
多くの人に理解されるといってよいであろう。

■□ ×××MSSを導入する前提を明確にすること ■□

従来のISO規格にはなかったものとして、
「組織はなぜ×××MSSを導入するのか」
「組織を取り巻く状況はどのようなものか」というようなことを
明確にするように規格は要求しています。

まず問われているのは、組織の目的に関連した外部、
内部の課題を明確にすることです。

ここで気を付けなければならないことは、目的の原文は
“purpose”であり、”objectives”ではないということです。

ちょっとややこしいが、今回の日本規格協会の翻訳では、
“purpose”も”objectives”も同じ「目的」と翻訳されています。

国内審議で幾多議論された結果であるが、今後の出版物には
背景と注意を喚起するとしています。

以下は今回の翻訳(日本規格協会、ホームページ)について、
日本規格協会が原文にない部分として追加した3.08注記4です。

(規格開発者への注記 この文書はマネジメントシステムの中での
統一した用語の使用を推奨していることから,この文書内における
目的(objective)には,一貫して“目的”という訳語をあてています。

他方,既存のJISでは,日本語と英語の語彙の違い,
各マネジメントシステムにおける分野固有の背景及び
規格内の文脈との関係などの理由から,
目的(objective)に対して分野固有ごとに異なる用語が
使用され,広く一般化しているという現状もあります。

<例>
JIS Q 9001では“(品質)目標”,JIS Q 14001などでは“目的”が
それぞれ使用されています。

このため, 各分野固有のJISにおいては,分野固有の背景,
文脈などを踏まえて,“目的”又は“目標”のいずれかを
選択することが望ましい。

また,その選択の背景などについては,JISの解説に記載し,
規格利用者に対して説明することが望ましい。)

「4.1組織及びその状況の理解」、「5.2方針」、
「5.1 リーダーシップ及びコミットメント:注記」の3か所にある
「目的」は原文がpurposeです。

他の所、例えば「5.2 方針」2番目の「目的」、
「6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定」などの
個所にでてくる「目的」の原文は“objectives”です。

■□ ドラッカーは“purpose”と”objectives”を
              このように説明している ■□

ドラッカーは、目的(purpose)について次のように述べています。

“To know what a business is we have to start with its
purpose.
Its purpose must lie outside of the business itself.
In fact, it must lie in society since business enterprise
is an organ of society. There is only one valid definition
of business purpose: to create a customer. P.F.Drucker
“Management : Tasks, Responsibility, Practices、1973年”

「企業とは何かを知るためには、企業の目的から
考えなければならない。
企業の目的は、それぞれの企業の外にある。
企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。
企業の目的の定義は一つしかない。
それは、顧客を創造することである。
上田惇生編訳、ダイヤモンド社、2001年」

purpose とobjectivesの関係については、ドラッカーは次のように
言っています。

“From the definition of its mission and purpose a business
must derive objectives in a number of key areas; it must
balance these objectives against each other and against the
competing demands of today and tomorrow.”

“Defining the purpose and mission of the business is
difficult, painful, and, risky. But it alone enables a
business to set objectives, to develop strategies, to
concentrate its resources and to go to work.”

「事業の“ミッションとpurpose”の定義から、主要な幾つかの
領域におけるobjectivesを導き出さなければならない。
今日と明日とでは競合する要求及び相互のobjectivesについて
バランスを取らなければならない。」

「事業の“purposeとミッション”を定義することは、難しく、
苦痛で、リスクを伴う。
しかし、“purposeとミッション”のみが事業のobjectivesを設定し、
戦略を展開し、資源を集中し、活動することを可能にする。」

このようにドラッカーは、“purpose”とは
組織の外にあるものであり
“objectives”の上位に位置するものである、と説いています。

以上

マネジメントシステム規格共通文書2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.53  ■□■

*** マネジメントシステム規格共通文書2 ***

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日本規格協会のHPに共通文書の日本語訳が掲載されました。

この翻訳に意見のある方は誰でもコメントを寄せることができま
すので、HPから共通テキストをダウンロードしてみてください。

この共通文書の発行は、マネジメントシステム規格(Management
 System Standard:MSS、以下MSSと呼称する)の世界において
は画期的なことであると思います。

なぜ画期的かその理由は、一つに規格ユーザーの利便にあると思
います。

MSSの嚆矢と目されるものは、1987年に発行されたISO9001規格で
す。以降、2012年まで25年の間に10を超えるMSSが誕生しました。

歴史的に上げてみると、ISO9001、ISO14001、ISO27001、
OHSAS18001(労働安全衛生については準ISOとしての扱い)など
が、MSSとして登場しました。

その後もこの動きは続き、最近ではISO50001(エネルギーマネジ
メント)、ISO22301(事業継続マネジメント)、ISO39001(道路
交通安全マネジメント:2012年末発行予定)と続いています。

■□■ 共通テキスト化のポイント ■□■

ISO/IEC Directive の一部に組み込まれたMSSのポイントは5
つあると考えています。

1.どのMSSにもある普遍的な箇条の文章が共通化されたこと。
2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと。
3.MSSを導入する前提を明確にすることが問われるようになっ
たこと。
4.要求事項をビジネスプロセスに統合することが要求されてい
ること。
5.リスクの考え方が導入されたこと。

細部にわたっては、多くのポイントがありますが、今回の共通文
書化のポイントを大きなものから5点あげよ、と問われるならば
以上のとおりです。

■□1.どのMSSにもある普遍的箇条の文章が共通化されたこと■□

ざーっと共通文書をみたとき、次の項目がすべてのMSSの共通の
文章になったことに気がつきます。
 
 ・経営者の責任
 ・方針管理
 ・目標管理
 ・責任権限
 ・コミュニケーション
 ・教育訓練
 ・文書管理
 ・記録の管理
 ・内部監査
 ・マネジメントレビュー
 ・是正処置
 ・予防処置(共通文書ではリスク及び機会への取組み)
 ・継続的改善

■□2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと■□ 

MSS共通文書の構成は、前回もふれましたが
次のようになっています。

1. 適用範囲
2. 引用規格
3. 用語及び定義
4 組織の状況
5 リーダーシップ
6 計画
7 支援
8 運用
9 パフォーマンス評価
10 改善

また、今回定義された用語は次のとおりです。

1.organization
2.interested party
3.requirement
4.management system
5.top management
6.effectiveness
7.policy
8.objective
9.risk
10.competence
11.documented information
12.process
13.performance
14.outsource
15.monitoring
16.measurement
17.audit
18.conformity
19.nonconformity
20.correction
21.corrective action
22.continual improvement

以上

マネジメントシステム規格共通文書1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.52 ■□■ 

*** マネジメントシステム規格共通文書1 ***

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ISO9001、ISO14001規格は2015年を目標に次期改定の作成作業に入っていますが、
そのベース文書となるMSS(Management System
Standard:マネジメントシステム規格)共通文書が正式に発効しました。

ISOは2012年5月2日にMSS共通文書をISO/IECのDirective Part1の一部に編纂したと
発表しました。

ISOは8年前(2006年)から、全てのマネジメントシステム規格は基本構造、用語、共通部分の文言、
構成は同じものにするというポリシーのもと、特別委員会(JTCG:Joint Technical Coordination Group)で
検討を進められてきましたが、そのガイド規格が成立したのです。

このMSS共通文書は、8年の間紆余曲折をへるなか、あるときはJTCG共通文書(N316)、あるときはI
SO Guide83、あるいはHLS(High Level Structure)とか呼ばれてきましたが、今回の処置でISO Directiveの
一部になったことになります。

■□■ ISO/IEC Directiveとは何 ■□■
ISO/IEC Directive とは、ISO(及びIEC:International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議;電気工学、
電子工学、および関連した技術を扱う国際的な標準化団体であり電気関係の標準化はこちらが扱う)が発行する
指示文書であり、ISO/IECが規格作成から正式発行にいたるまでの必ず守らなければならないルールを規定した
国際的なガイドブックです。

ISO/IECが発行しているDirectiveにはいくつかのPartがありますが、Part1は規格を新しく発行したり、改定したりするときの
ルールを定めた約160ページの指示書です。
Part1には付属書が29もあり、大半が規格を作るための具体的な手順を規定しています。
例えば、次のようなことに関する手順が決められています。
 ・ISO規格を作る手順
・専門技術委員会の議長、主査の決め方
 ・各国言語に関するルール
 ・TC(Technical Committee)、SC(Sab Committee)などの構成
 ・PC(project committee)の設立方法
 ・規格作成各段階における投票方法、承認基準
 ・開催国(ホスト国)の決め方
 ・各種様式(規格作成段階で使用される書式)

このような一連の手順書の中の一部に、今回MSS共通文書が次のようなタイトルで編纂されました。
“Guidance on the development process and structure of a
MSS‐High level structure, identical core text and common
terms and core definitions for use in Management System
Standard”

■□■ ISO/IEC Directiveは誰が使う文書 ■□■ 
ISO/IEC Directiveは、規格を作成する関係者、各国の標準団体(日本では、日本規格協会)、政府関係者、
TC、SCなどの属する規格作成が使用するガイドです。

これから作成するMSS規格は改定、新規作成を問わず、このMSS共通文書を必ず使用しなければなりません。
MSS共通文書は規格作成者向けの文書ですが、当然のことながら規格使用者、各種のユーザーにも参考になる文書です。

つなげるツボでは、これから何回かに分けてMSS共通文書の解説をしていきたいと思います。

■□■ MSS共通文書の構成 ■□■ 
MSS共通文書の構成は次のようになっています。
1. 適用範囲
2. 引用規格
3. 用語及び定義
4 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
4.3 XXXマネジメントシステムの適用範囲の決定
4.4 XXXマネジメントシステム
5 リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.2 方針
5.3 組織の役割,責任及び権限
6 計画
6.1 リスク及び機会への取組み
6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定
7 支援
7.1 資源
7.2 力量
7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化された情報
7.5.1 一般
7.5.2 作成及び更新
7.5.3 文書化された情報の管理
8 運用
8.1 運用の計画及び管理
9 パフォーマンス評価
9.1 監視,測定,分析及び評価
9.2 内部監査
9.3 マネジメントレビュー
10 改善
10.1 不適合及び是正処置
10.2 継続的改善

このように、マネジメントシステム規格に網羅すべき項目をすべて網羅しており、分野ごと(9001、14001、27001、
OHSAS18001とか)に必要となる規定は、主に「8 運用」のなかに規定されることになります。

その他のところにも、分野ごとどうしても追加したいことがあれば、ISO/TMB(Technical Management Board)へ
報告することで許されることになっています。

次回から各章の説明をしていきたいと思います。