Author Archives: 良人平林

ボランタリーからつなげる | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.3 ■□■

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■□■ ボランタリーからつなげる ■□■

テクノファ代表取締役の平林です。

皆様、新年明けましておめでとうございます。
昨年と同様2009年も宜しくお願いいたします。

今回は「ISOはボランタリー」と題して、先のメルマガに引き続き国際会議の
話をさせていただきます。

■□■ ISOはボランタリー ■□■

ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)
で作成される規格はボランタリー規格といわれています。

ボランタリー(voluntary)とは、「強制的ではなく自発的に自ら進んで行う」
ことをいいます。

ISO9001、ISO14001、或いはその他多くの規格も強制的ではなく自発的に採用
することが前提とされています。

でも、本当にそうなのでしょうか?
確かに、ISO9001もISO14001も組織が自ら進んで行うものとされていますが、
実態は少し違うようです。

一般的には知られていないと思いますが、ISOの技術専門委員会(TC)の事務局
もボランタリーと称されています。

例えば、ISO9001を審議しているTC176は英国規格協会(BSI)が事務局を引き
受けています。日本の(社)日本鉄鋼連盟は、TC17(鋼)の事務局を引き受
けています。

ボランタリーですから、事務局経費は引き受けた組織が負担します。
(社)日本鉄鋼連盟は、毎年億単位の予算を投じています。

また、TCに参加する委員もボランタリーと称されています。したがって、国
際会議に出席しても手当は出ません。

これでは、事務局、委員などの引き受け手がいないのではないかと思われる
かもしれません。ところが、この役を引き受けるのにはメリットが潜んでい
るのです。

■□■ ボランタリーの裏に潜むメリット ■□■

世の中には、強制と任意の両軸があり、その間に多くの組合せがあります。
決して、1か0の世界ではありません。例えば、強制とはいっても国が法律
で縛るものから、業界団体が規制で縛るものまでいろいろです。

任意といっても、全く自主的なものから、仲間意識などからやらざるを得な
い任意まで、これまたいろいろです。

任意だったものが、いつの間にか強制になっているという世界を私たちは見
てきています。

そもそも、世の中すべてのことは誰かが任意で考えたこと、行動したこと、
から始まっていますよね。

このロジックに気が付いた国、組織、人達は「ボランタリー」という概念を
うまく利用しています。

ボランタリーの裏に潜むメリットを享受しようとしている世界、私が参加し
てきた国際会議はそのような舞台でした。

■□■ 各国の思惑 ■□■

ISO9001の認証制度は、サッチャー政権時代に英国の経済産業省(DTI : Dep
artment of Trade and Industry)が政策として始めたものが最初であると
いわれています。

ISO9001規格もいろいろ説はありますが、英国のBS5750:1979をベースにして
いるといわれています。

そんなことがあって、私の参加している国際会議では英国(BSI)の動きが
いつも注目されています。

それに対抗していこうとしているのがドイツです。ドイツは2004年に「スタ
ンダードをつくるものは市場をコントロールする」とドイツ国家標準化戦略
の中で述べています。

私はマネジメントシステム規格(標準)の国際会議しか知りませんが、工業
製品の標準化のISO国際会議はより強く国の戦略、企業の戦略がお互いに
火花を散らしているようです。

■□■ 任意から強制へ ■□■

1995年1月に発効した、WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)
の第2条は、各国の中央政府の国際規格の使用を義務付けました。
(WTO加盟国151ヶ国、2007年10月現在)

いままで任意と思われていたISO規格が強制の方向に一歩踏み出したのが
この1995年であると言われています。

1995年は、国際標準がグローバルな市場支配力をもつ時代の到来の年である
といってよいと思います。

ボランタリーは実はマンダトリー(mandatory:強制)につながっていたので
す。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の第4号もどうぞお楽しみに。

気持ちをつなげる | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.2 ■□■
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■□■ 気持ちをつなげる ■□■

テクノファ代表取締役の平林です。

先のメルマガに引き続き、「気持ちをつなげる」と題して国際会議、その他
の話をさせていただきます。

では宜しくお願いいたします。

■□■ ISOはコンセンサスが基本 ■□■

国際会議で仲間を必要とするのは孤独でさびしいからではありません。
自分の主張、考え方を通すために必要なのです。

私の参加しているISO国際会議のルールにはいろいろなものがありますが、重
要なものに「コンセンサスが基本」というものがあります。

コンセンサスが基本とは、AかBかを決めるとき、いろいろ議論したあと最
後は全員が同意することをいいます。

最後にコンセンサスを得ないと、それ以降の議論に支障となり 、その結果、
世界標準の普及が効果的に行われなくなります。

議論は合理的な考え方で進んでいきますが、その過程には人の気持ちが入り
込んできます。

私は、人が同意するのはロジック(理屈)が半分、気持ちが半分だと思って
います。

少し専門的になりますが、今回のISO9001追補改正において、日本は(私は)
箇条8にある「8.4 製品の監視及び測定」は箇条7に移動すべきであると主
張しました。しかし、採用されませんでした。

 http://www.technofer.co.jp/
 最新情報08/12/22 「ISO9001はこう変わった(平林良人のISO奮戦記)2」参照

私は今でもこの主張は正しいと思っていますが、反対の論陣を張った相手に
は相手の理屈がありました。

理屈に理屈で応戦する場合、その議論の周辺にいる多くの委員には、AかB
かの賛否をロジックのみで判断することが段々と困難になっていきます。

どちらもそれなりに合理性があって議論しているわけですから、当事者でな
い委員は自分ポジション(立ち位置)を明確にしないと結論を出すことが難
しくなります。

そこに、人の気持ちが入り込む余地があります。

そしてその結果、採択された結果は必ずしも全体から見て正しい、または合
理的な結果になるとは限らない場合がでてきます。

■□■ 行動経済学とは ■□■

最近、「行動経済学」が注目を集めています。

標準的な経済学では、「人間は合理的である、経済は効率的である」を前提
としています。が、現実の人間は、意思決定においては思ったほど合理的に
物事を考えないようです。

行動経済学では、人は考えられる以上に気持ち、感情で経済的な行動をとる
としています。

■□■ ここで、「ロジックvs気持ち」のクイズを ■□■

①80万円貰う(a)、100万円貰うが確率は85%(b)、のどちらがいいか選
択してください。
②80万円支払う(c)、100万円支払うが確率は85%(d)、のどちらがいい
か選択してください。

70~80%の人が、①は(a)、②は(d)と答えるそうです。

たしかに感覚、気持ちとしてはそうでしょうが、このことが繰り返し行われ
る場合の正解は、①は(b)、②は(c)であることがすぐ分かります。多くの人
の平均は、85万円貰って、80万円払うほうに集約されていきます。

さて、あなたはどうでしたか、もしかしたら(a)(d)だったかもしれませ
んね、気持ちとしては合理性(ロジック)より目の前にあるものに心は動か
されますよね。

■□■ アダムスミスもその著作で ■□■

実は経済学の創始者と目されるアダムスミスはその著作(国富論、道徳感情論、
他)の中で、「気持ち」、「心」という言葉を実に200回以上使用しているそうです。

「世の中の景気」は皆の気持ちの持ち方次第とはよく言われる言葉ですよね。

だから、政治家が「今は100年に一度の金融問題の勃発である」というような
ことを言えば、ますます不況が深刻になっていきます。

●「気持ちをつなぐ」ポイント

事柄は理屈(ロジック)だけでは決まらない、気持ち、感情で決まることも
多いようですね。そのためにも仲間を多く作り、気持ちをつなげましょう。

つなげた気持ちは、世の中にとって合理的なこと、良いことに向かわなけれ
ばならないことは言うまでもないことです。

ここまでお読みいただき有難うございました。
来年もお楽しみに。

マネジメントシステムはつながっていますか | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ マネジメントシステムはつながっていますか ■□■

テクノファ代表取締役の平林です。

このメルマガは、(株)テクノファ及び平林良人が何らかの縁でつながった
皆様方にお送りさせていただいております。

皆様方には当社の研修セミナーをご愛顧いただき改めて厚く御礼を申し上げ
ます。

このメルマガは、私が活動している周辺情報をあまり硬くならず、といって
あまり気軽なものにならず、何らかの形でお役に立てるような情報をお送り
することを目的としております。

では宜しくお願いいたします。

■□■ つなげるツボとは何か ■□■

マネジメントシステムの要諦は、

『 いろいろな要素をつなげる』   ことです。

つなげるにはそれなりの勘とコツすなわちツボがあります。
ツボにはいろいろなものがあります。

 - 活動をつなげるツボ

 - 手順をつなげるツボ

 - 設備をつなげるツボ

 - プロセスをつなげるツボ

 - 知識をつなげるツボ

 - 人をつなげるツボ

 - 人の心をつなげるツボ

■□■ どんなツボが発信されるのか ■□■

このメルマガでは、マネジメントシステム、ISO国際会議、品質管理学会、
環境プラニング学会、東京大学大学院授業、上場企業監査役活動、キャリア
カウンセラー、及び研究会(排出権取引など)について、その時々のトッピ
ックスをお伝えしたいと思っています。

■□■ 国際会議で 「仲間をつなげる」 ■□■

この第1号では、ISO9001:2008追補改正にかかわることから、「仲間」につ
いてのお話しをしたいと思います。

●ISOの国際会議とは?(ご存知の方は読み飛ばして下さい)

ISO(国際標準化機構)は世界160カ国あまりの国が加盟している非政府組織
で、電気以外の工業製品の標準化を扱っています。
本部はスイス、ジュネーブにあり、日本は経済産業省JISC(日本工業標準調
査会、事務局:財団法人日本規格協会)が加盟しています。

ISOは、過去80年、専門技術委員会(TC)において約2万種にも及ぶ各種規格
を審議制定してきました。

私は2003年から、そのうちのTC176〔品質保証〕(1980年設置)に参加して
きました。

TC176では品質マネンジメントシステムの規格ISO9001を審議しています。TC
176に参加している約100カ国の代表(日本代表は飯塚悦功東京大学教授)は、
規格の中に自分たちの主張を如何に入れようかと腐心していますので、常に
沸騰した議論がされています。

●仲間をつくる

国際会議でのツボは、 『仲間を作ること』 です。

日頃あまり交流のない海外の人と仲良くなるには、言葉の問題もありますが、
ポイントはその人に関心を持つことだろうと思います。

その人は、何歳くらいなのか、

子供は居るのか、

専門は何か、

どんな趣味を持っているのか、

何語をしゃべるのか、

出身国はどんな国なのか、

等々、

その人に関心を持つといろいろな話題が尽きません。

自分のことについても同じように話しをし、相手にも自分のことに関心をも
って貰えたら、まずはスタートラインに立てたと思ってよいと思います。

次にポイントとなるのは、

自分の頭の構造をできるだけ相手に分かってもらうこと、

と同時に

相手の頭の構造を知ることです。

頭の構造というのは、論理の立て方のこと、或いは考え方のことを言います。

同じことを考えても、最終着地への行き方には、いろいろなルートがあります。

結論(落としどころ)を先に考えて、そこから(未来から)現在に戻ってくる
考え方と、現在を起点に将来を考えていくルートでは、結果は同じであっ
ても、議論がそこかしこで噛み合わないでしょう。

前者の思考方法を backcast、

後者は forecast というそうです。

そういえば、forecastというのは天気予報みたいなことを言いますから、現
在を起点にして明日がどうなるかと思考することで、なるほどとうなずける
話です。

●TC176での出会い

さて、先月発行されたISO9001の追補改正版(ISO9001:2008年版は、2008年
11月15日に発行)は、2003年ルーマニアのブカレストでISO9001:2000の定期
見直しが決議されたのを受けて、議論がスタートしました。

初めて出席する国際会議で、私は、誰と仲良くなろうかと周りを注意深く観
察しました。

300人を超える出席者の中から適切だと思われる人を探し出すのは、なかな
か難しいものです。

全員が出席する総会では、まず会議の雰囲気を肌で感じることとし、2日目
に小委員会に分かれて議論を詰めていく場で仲間を求めることとしました。

そこで見つけたのは、

ドイツの故クリスと、
アルゼンチンのハラショ

でした。

後で知ることになりますが、私を含めた3人は、

1944年生まれで、当時59歳で同年でした。

今でも不思議ですが、何となく近寄って仲良くなろうとした3人は、同じ年
の生まれでした。

横道にそれますが、国際会議での議論ぶりは、

ISO専門雑誌アイソス2月号(2009年1月10日発売:2月号特集ISO9001はこう
変わった-ISO9001:2008追補改正版はこう議論されこのように決まった )
に詳しく掲載されますので、ご覧になってください。

テクノファ HP にも、掲載記事の抜粋を紹介しています。
弊社HPの「最新情報」12月10日付け掲載記事
「ISO9001はこう変わった(平林良人のISO奮戦記)」をご覧ください。

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●「仲間をつなぐ」ポイント

クリス(残念なことに2007年に亡くなってしまった。)とハラショとは、そ
れ以降、言いたいことを言える仲に段々となっていけました。

「仲間をつなぐ」ポイントは、自分をオープンにすること、自分の地を隠さ
ないことだろうと思います。と、同時に相手の人間に関心をもつことも要点
ですね。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の第2号もどうぞお楽しみに。