Category Archives: つなげるツボ

ISO9001キーワード 人々5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.479 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** ISO9001キーワード 人々5***
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ISO30414:2018規格のタイトルは「ヒューマンリソースマネジメント」です。
ISOマネジメントシステムでは7原則(ISO9001)にもありますように「人々」
についてはいろいろな規格で触れていて、組織運営の根幹を成すものであると
いう認識が強く打ち出されています。

■■ 品質マネジメントの7原則 ■■

0.2 品質マネジメントの原則
この規格は,JIS Q 9000 に規定されている品質マネジメントの原則に基づいて
いる。この規定には,それぞれの原則の説明,組織にとって原則が重要であるこ
との根拠,原則に関連する便益の例,及び原則を適用するときに組織のパフォー
マンスを改善するための典型的な取組みの例が含まれている。
品質マネジメントの原則とは,次の事項をいう。
- 顧客重視
- リーダーシップ
- 人々の積極的参加
- プロセスアプローチ
- 改善
- 客観的事実に基づく意思決定
- 関係性管理

(出典:日本工業規格 JISQ 9001:2015 (ISO 9001:2015))
品質マネジメントシステム-要求事項 Quality management systems-Requirements

ISO9001の序文から引用しました。序文ですから要求事項ではないのですが、組織
が品質マネジメントを推進するうえでの原則が書かれています。この原則は2015
年版前までは8原則でした。当時、「システムアプローチ」が存在していましたが、
「プロセスアプローチ」と概念が重複するという議論から、2015年版からは7原
則となりました。

■■ 7原則(8原則)は日本の提案によるもの ■■
この7原則は2000年版を制定するときに日本がISO(TC176 )に提案したものです。
日本では戦後、製品品質を高め貿易を推進し外貨を獲得して、国の復興を早期に達
成しようと国を挙げて邁進しました。その過程で多くの企業が製品品質の向上の実
践の中で経験的に会得し、それを大学の先生方のリーダーシップでまとめられたも
のが「日本式品質管理(TQC)」と呼ばれる体系でした。1995年にはTQCがTQM
と呼び名を変えましたが、7原則にある品質保証の中核の概念は変わらずに今に引
き継がれています。

■■ 人々の積極的な参加 ■■
7原則の3番目にある「人々の積極的な参加」についてはISO9000で次のように説
明されています。

2.3.3 人々の積極的参加
組織内の全ての階層にいる,力量があり,権限を与えられ,積極的に参加する人々
が,価値を創造し提供する組織の実現能力を強化するために必須である。
2.3.3.2 根拠
組織を効果的かつ効率的にマネジメントするためには,組織の全ての階層の全ての
人々を尊重し,それらの人々の参加を促すことが重要である。貢献を認め,権限を
与え,力量を向上させることによって,組織の品質目標達成への人々の積極的な参
加が促進される。
2.3.3.3 主な便益
あり得る主な便益を,次に示す。
- 組織の品質目標に対する組織の人々の理解の向上,及びそれを達成するための
意欲の向上
- 改善活動における人々の参画の増大
- 個人の成長,主導性及び創造性の強化
- 人々の満足の増大
- 組織全体における信頼及び協力の増大
- 組織全体における共通の価値基準及び文化に対する注目の高まり
2.3.3.4 取り得る行動
取り得る行動を,次に示す。
- 各人の貢献の重要性の理解を促進するために,人々とコミュニケーションを行う。
- 組織全体で協力を促進する。
- オープンな議論,並びに知識及び経験の共有を促す。
- 人々が,パフォーマンスに関わる制約条件を明確にし,恐れることなく率先して
行動できるよう,権限を与える。
- 人々の貢献,学習及び向上を認め,褒める。
- 個人の目標に対するパフォーマンスの自己評価を可能にする。
- 人々の満足を評価し,その結果を伝達し,適切な処置をとるための調査を行う。

(出典:日本工業規格 JISQ 9000:2015 (ISO 9000:2015)) 品質マネジメント
システム-基本及び用語

(つづく)

ISO9001キーワード 人々4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.478 ■□■
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日本のエンゲージメントは低いという話をしました。アメリカのギャラップ社
の調査によると日本従業員のエンゲージメント、すなわちやりがい、満足度は
主要国の中で下位に甘んじているとデータで説明しています。
その調査では、engaged (やる気のある)者の比率が日本では組織のわずか6%
であると示されています。

■■ ISO30414:2018規格 ■■
昨年2023年に一番売れたISO規格は、ISO30414:ヒューマンリソースマネジ
メントだったそうです(日本規格協会)。この規格には「人的資本、エンゲー
ジメントに関係する指針」が出てきます。
人的資本には,組織の人々の知識,スキル,能力の蓄積及び組織の長期的パフ
ォーマンスへの影響,そして組織の成果の最適化を通じた競争優位などが含ま
れます。
ISO30414では測定という用語を使用していますが、人的資本の測定は,組織が
最も重大と考えるであろう資源及びリスクの「人を管理すること」を促進する、
と説明されています。
人的資本を管理しない組織は,長期的かつ持続可能な価値を生み出す能力及び
機会を損なうかもしれない、として人的資本に無関心な組織に懸念を伝えてい
ます。
ISO30414は,労働における人権の原則を指針としており,ヒューマンガバナン
ス規格 (ISO 30408) と共に,人的資本のデータ収集,測定,分析及び報告に関
する指針を定めています。組織が利害関係者、特に外部の人を対象に発行する
人的資本報告(HCR:Human Resource Report)を標準化することは、次のような
利点があるとしています。
1.比較可能な人的資本への取り組みを外部利害関係者に公表すことにより、
組織価値をあげることが出来る。
2.外部公表を前提とすることで、従業員と組織の関わり合いを向上させる
ヒューマンリソースマネジメントのプロセスを改善させることが出来る。
3.人的資本への投資の結果として生まれる財務的及び非財務的な成果を得
ることが出来る。
4.組織の人的資本,及び現在及び将来のパフォーマンスに関する内部及び
外部の理解を増進させることが出来る。
5.利用しやすく透明性の高い人的資本データ及び洞察を得ることが出来る。

■■ 人材を資源と考えるか資本と考えるか ■■
上述の5つの利点はISO30414の序文に書かれていることを要約したものですが、
「人材を資本と考える」利点については明確な記述がありません。
従来の我が国の人材マネジメントは、まず現有人材の視点から始まりました。
そのため現有人材に基づく組織設計が行われ、現有人材に基づく組織のパフォー
マンスの発揮しか現実化しませんでした。その結果、組織が掲げる3~5年先の
経営戦略/ビジョンへの取り組み能力との間にギャップを生み出す結果となって
いました。
これからは、順序を逆にして、まず市場、顧客、競合を踏まえた経営戦略やビジ
ョンを設定し、これらを実現するための組織設計を行い、そこに位置付けること
のできる人を採用する必要があります。経営上取り組むべき将来と現在とのギャ
ップを明らかにすることで、将来への人材ニーズを導き出すことが出来るという
論法です。
この考えを基本にしますと、従来考えられてきた「人材は資源である」という人
材資源論から人材資本論に変わらざるを得なくなります。資源ですとできるだけ
効率よく使用して少ない人で仕事を回していこうという人を「コストとみる」考
えになります。
しかし、資本となるとできるだけ多く貯めよう、そしてそこからリターンを得よ
うという人を「投資とみる」考えになります。ISO30414の底流を流れるコンセプ
トは、人の位置づけを人材資源の見方から人材資本の見方に組織全体のマネジメ
ントにおいて変えようというものです。
そのための変革は容易ではありません。社内での人材の流動化や、外部からの採
用強化の高まりに伴って、従業員にリスキリングを求め、組織としてもリスキリ
ングの強化をはかり、現在業務から将来業務への転業を図るような工夫をしなけ
ればならない時代となってきました。

(つづく)

ISO9001キーワード 人々3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.477 ■□■
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*** ISO9001キーワード 人々3***
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ここ10年エンゲージメントという言葉が多く聞かれるようになりました。エ
ンゲージリング(結婚指輪)に代表されるようにエンゲージメントという言葉
は約束、取り決めを意味します。そこから派生して、雇用する、雇用されると
いう組織と個人の雇用契約にも使われます。
最近の多くの使われ方が「やりがい、満足」といった、従業員の組織への献身、
忠実さ、そこから得られるであろう自己成長に関係しても使われています。

■■ 日本のエンゲージメントは低い ■■
アメリカのギャラップ社の調査によると日本の従業員のエンゲージメント、す
なわちやりがい、満足度は主要国の中で下位に甘んじていると言われています。
その調査では、engaged (やる気のある)者の比率が日本では組織のわずか6%
であると示されています。

以下ランク表に示されている国名とengaged な者の比率は次のとおりです。
 ・世界平均           15%
 ・アメリカ/カナダ        31%
 ・ラテンアメリカ        27%
 ・ロシア            25%
 ・東南アジア          19%
 ・アフリカ諸国         17%
 ・東ヨーロッパ         15%
 ・ニュージランド        14%
 ・中東諸国           14%
 ・南アジア           14%
 ・西ヨーロッパ         10%
 ・西アジア            6%
 ・日本              6%

このデータは経済産業省の研究会から発行されたもので信頼あるデータである
と思いますが、私にはにわかに信じられません。
(出典) 経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会
~ 人材版伊藤レポート ~ 図表15 令和2年9月

そもそも「やりがい」をどのように測定するのでしょうか。やりがいは心の置
かれている状況と強い関係性がありますからどのように測定したのか大変に興
味のあるところです。
調査の結果、日本は139ヵ国中132位と書かれています。

■■ エンゲージメントの重要性 ■■
現在進めている経営戦略の実現、新たなビジネスモデルの達成には、必要とな
る人材に最大の能力・スキルを発揮してもらうことが必至です。そのためには、
従業員がやりがいや働きがいを敏感に感じ取り、主体的に業務に取り組むこと
ができる環境を創りあげることが必要となります。

このためには、企業と個人が対等な関係の下で、一体となって、企業の成長の
方向性や組織目標の達成と多様な個人の成長のベクトルを一致させていくこと
が重要です。企業においては、企業理念や存在意義(パーパス)、経営戦略や
ビジネスモデルを含めて従業員に積極的に発信・対話し、共感や納得感を得て
いく取り組みを進め、定期的に状況を把握していく必要があります。特に企業
と個人との間の情報の非対称性(情報量と質の違い)をなくし、情報をオープ
ンにしていくことが、個の自発性を後押しすることにつながります。

また、出社を基本とする就業条件や画一的なキャリアパス、年次別の研修では
なく、兼業・副業、在宅勤務などの多様で柔軟な就業環境の整備、社内外を含
めた多様なキャリアパス等の魅力的な就業経験や機会(EX)の提供、意欲ある
個人に対する幅広い教育訓練コンテンツの提供等、多様な個人一人ひとりに向
き合い、価値創造を最大化することが今日の企業には強く求められています。
※ EX
エンプロイーエクスペリエンス(EX/Employee Experience)とは、働くこ
とを通して従業員が得るあらゆる経験価値のことを言い、日本語では「従
業員体験」と訳されます。

(つづく)

ISO9001キーワード 人々2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.476 ■□■
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*** ISO9001キーワード 人々2 ***
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ISO9001の要求事項7.1.2 「人々」に関連して人的資本開示のお話をいたし
ました。日本では、2023年3月の決算期より、上場企業においては人的資本
の情報開示が義務付けられました。
世界的規模ですすむ「人的資本経営」の流れをふまえると、自社の人々につ
いて最適な人事をすすめていくことは、企業経営者にとって重要な課題にな
っています。

■■ ファミリー型からの変化 ■■
戦後、日本が奇跡と言われる復興をなした一つの要因に人事制度があると言
われます。その特徴は、新卒同時採用や終身雇用、年功序列型の人材戦略に
より、多くの企業が、個人を囲い込むような雇用を構築するとともに、将来
を期待する新卒同時採用、終身雇用を前提に、「ファミリー型」といわれる
雇用慣行をつくりあげ、成長のエネルギーとしてきました。
同質性の高い品質の効率的な提供が主目的であった事業環境においては、フ
ァミリー型にはメリットがありました。しかし、事業環境が急速に変化し、
非連続的なイノベーションが頻発するとともに、個人の価値観・ニーズが多
様化する中では、変化に対応した人材の育成・獲得や、従業員の専門性の向
上等の観点がより重要視されるようなってきました。
雇用の在り方については、各社の経営戦略に適した人材戦略を策定・実施し
ていく中で、経営判断していく必要があります。個人が自律を主張し活性化
する中で、企業と対等な関係になっていくことを考えれば、囲い込み型と言
われるファミリー型ではなく、企業と個人が、互いに選び選ばれる、多様性
のあるオープンな雇用形態を推進していくことが求められるようになってき
ました。

■■ ジョブ型の台頭 ■■
こうした雇用形態の変化の中では、人材の国籍や属性も多様になるとともに、
中途・経験者採用、兼業・副業の推進や受入れ、ギグ(単発)ワーカーやフ
リーランスの活用も増え、多様な価値観や専門性を持つ人材で雇用形態が構
成されるため、個人のモチベーションの発揮も多様になります。こうした、
多様な価値観や高度な専門性を持つ人材にアクセスし、獲得・活躍してもら
うためは、特に、グローバルマーケットで競争している企業において、ポス
トに求められる職務内容を明確にし、その職務の遂行に必要なスキルを有す
る人材の活躍を促す「ジョブ型」雇用の促進が求められるようになっていま
す。
現在でも、中途採用・経験者採用では、ジョブを明確にした雇用形態が多い
のですが、新卒採用の段階でも、一部の企業では、職務内容を明確にした採
用が行われています。例えば、専門性が明確なAIやコンピューターサイエン
ス等の職種においては、新卒採用の段階からジョブ型雇用を採用しています。
ジョブ型雇用については、一般的に欧米では、職務・労働時間・勤務場所に
ついて契約で限定された雇用の在り方をさします。日本では、経団連の
「2020年版 経営労働政策特別委員会報告」に、業務等の遂行に必要な知識
や能力を有する社員を配置・異動して活躍してもらう専門型業務・プロフェ
ッショナル型に近い雇用であると説明されています。 1日本でもジョブを
明確にした長期インターンシップ等も含め、個人のキャリア形成に有効なこ
の雇用形態が、今後、増えていくことが見込まれています。

■■ ジョブ型への移行の課題頭 ■■
ジョブ型への雇用形態の転換に際して、イノベーション創出を含めた自社の
競争優位性を強化する観点や、働き手の専門性や意識面の観点も含めて、どう
いった時間軸で、具体的にどの様な方向性を目指すのか、業種や会社の状況に
応じた各社の経営判断は重要です。
ジョブ型への移行に向けた移行措置としてファミリー型とジョブ型のハイブリ
ッドにしていく方向性も想定されます。例えば、総合職で入社して20代は配
置転換等も経験する中で専門性を高め、30代からはジョブ型に移行し、管理職
クラスは全ポジションを公募制にして年功序列を打破するなど、働き手の専門
性や意識面も踏まえながら取り組むアプローチなどが想定されています。企業
の成長フェーズや業種等によっては、ファミリー型からジョブ型雇用に雇用の
ポートフォリオを組織全体で順次移行していくアプローチも考えられています。
なお、多様性のあるオープンな雇用形態を推進していく際には、企業間での育
成出向(交換留学)や、投資先企業への出向、兼業・副業の推進など、組織を
軸にしながら、その枠にとらわれない個人の成長機会や経験の設計が重要とな
ります。

(つづく)

ISO9001キーワード 人々 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.475 ■□■
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ISO9001の要求事項7.1.2 「人々」には以下の要求があります。
「組織は,品質マネジメントシステムの効果的な実施,並びにそのプロセス
の運用及び管理のために必要な人々を明確にし,提供しなければならない。」

■■ 人々の活性化がキー ■■
ISOに言われなくても人々が組織経営のコアであることは誰も否定することは
できないと思います。ISO9001ではこの後ろの7.1.4に「 プロセスの運用に関
する環境」という要求事項があります。
「組織は,プロセスの運用に必要な環境,並びに製品及びサービスの適合を達
成するために必要な環境を明確にし,提供し,維持しなければならない。
注記 適切な環境は,次のような人的及び物理的要因の組合せであり得る。
a) 社会的要因(例えば,非差別的,平穏,非対立的)
b) 心理的要因(例えば,ストレス軽減,燃え尽き症候群防止,心のケア)
c) 物理的要因(例えば,気温,熱,湿度,光,気流,衛生状態,騒音)
これらの要因は,提供する製品及びサービスによって,大いに異なり得る。
注記は要求事項ではありませんが、組織にとっては重要なことが書かれています。

■■ 人的資本開示の義務化 ■■
日本では、2023年3月の決算期より、上場企業においては人的資本の情報開示が
義務付けられました。世界の先進国においては、社会的な義務として人的資本
の情報開示要求が進んでいますが、日本でも遅れたとはいえ一部の企業(上場
企業)に義務されたのです。世界的規模ですすむ「人的資本経営」の流れをふ
まえると、自社の戦略人事をすすめていくことは、企業経営者にとって重要な
課題であると言えるでしょう。

このような潮流の中でISOでは2018年にISO30414が発行されました。ISO30414は
「ヒューマンリソースマネジメントー内部及び外部人的資本報告の指針(ガイ
ドライン)」の名が示すように、組織における人々の貢献を考察し内外部に報告
をする指針で、組織文化やダイバーシティ、後継者計画、労働力など全11領域
に関する指標が書かれています。

1.コンプライアンス及び倫理
規範に対するコンプライアンスの測定指標
2.コスト
採用・雇用・離職等労働力のコストに関する測定指標
3.ダイバーシティ(多様性)
年齢・性別・障害などに関する労働力とリーダーシップ/チームの特徴を
示す指標
4.リーダーシップ
従業員の管理職への信頼等の指標
5.組織文化
エンゲージメント等、従業員意識と従業員定着率の測定指標
6.組織の健全性、安全性及びウェルビーイング
労災等に関連する指標
7.生産性
人的資本の生産性と組織パフォーマンスに対する貢献をとらえる指標
8.採用・異動・離職
人事プロセスを通じ適切な人的資本を提供する企業の能力を示す指標
9.スキルと能力
個々の人的資本の質と内容を示す指標
10.サクセッションプラン(後継者計画)
対象ポジションに対しどの程度承継候補者が育成されているかを示す指標
11.労働力の利用可能性
従業員数等の指標

(つづく)