Category Archives: つなげるツボ

SDGインパクト基準22 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.369 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** SDGインパクト基準22 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標13の2回目です。前回は国連気候変動枠組条約
(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)
についてでしたが、今回はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)
についてお話しします。

■■ IPCC レポート ■■
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
<13.1すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強
靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。>

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第14回会合(WG1)が
令和3年7月26日(月)から同年8月6日(金)にかけて開催(オ
ンライン)され、IPCC第6次WG1評価報告書(自然科学的根拠)
が承認されました。
この報告書は平成25年の第5次評価報告書以来8年ぶりとなるもの
です。報告書本体は、総会での議論を踏まえた編集作業等を経て、
令和3年12月にIPCCから公表されました。
同会合には、各国政府の代表を始め、世界気象機関(WMO)や国連
環境計画(UNEP)などの国際機関等から、300名以上が出席しまし
た。日本からは、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、
気象庁、環境省などから21名が出席しています。
また、本報告書の取りまとめに当たっては、関係省庁の連携により
IPCC国内連絡会を組織し、活動の支援を行ってきました。本評価報
告書には、我が国の研究成果論文が数多く引用されています。

■■ 人為起源の気候変動 ■■
今回の報告書の特徴は、気候変動の原因は人為的なものであると
断定したことにあります。前回報告書では、自然起源との併記で
したが、気候の現状から見て、人間活動の影響が大気、海洋及び
陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がないとしています。
その影響は、大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲か
つ急速な変化として現れており、気候システム全般にわたる最近
の変化の規模と、気候システムの側面の現在の状態は、何世紀も
何千年もの間、前例のなかったものである、としています。また、
人為起源の気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象及び
気候の極端現象に既に影響を及ぼしていて、熱波、大雨、干ばつ、
熱帯低気圧のような極端現象が人間の影響によるとする原因特定
に関する証拠が多くある、としています。

■■ 人間活動の影響の結果 ■■
気候プロセス、気候的証拠及び放射強制力の増加に対する気候シス
テムから見て、今後の世界平均気温は、今世紀(21世紀)半ばまで
は上昇を続けるとしています。
これから数十年の間に、二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排
出が大幅に減らない限り、21 世紀中に、地球温暖化は 1.5度~ 2度
を超えると述べています。気候システムの多くの変化は、地球温暖
化の進行に直接関係して拡大していくが、この気候システムの変化
には次のものが含まれるとしています。  
・極端な高温
・海洋熱波
・大雨
・農業及び生態学的干ばつの頻度と強度
・強い熱帯低気圧の割合
・北極域の海氷、積雪及び永久凍土の縮小

特に、地球温暖化の継続は、世界全体の水循環を狂わします。水循
環が変わってしまう結果、世界各地の降水量が少なくなる、逆に多
くなる、乾燥現象が大きく変化するなどが指摘されています。

■■ 二酸化炭素の排出 ■■
CO2排出においては、海洋と陸域の炭素吸収力が減ることで、大気
中のCO2蓄積を少なくさせることが出来なくなると述べています。
そのため、多くの現象は、百年から千年の時間スケールで不可逆的、
すなわち元には戻らないとしています
過去及び将来のCO2排出に起因する多くの変化、特に海洋、氷床
及び世界海面水位における変化は、いま手を打たないと壊滅的な結
果を招きます。
自然科学的見地から、そうさせないためにはCO2の累積排出量を制
限しなければならず、少なくとも CO2 正味ゼロ排出を達成し、他
の温室効果ガスも大幅に削減 する必要があります。
加えて、メタン排出を大幅に、迅速かつ持続的に削減できれば、エ
アロゾルによる汚染の減少に伴う温暖化効果を抑制し、大気質も改
善すると述べています。

SDGインパクト基準21 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.368 ■□■
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*** SDGインパクト基準21 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標13についてです。

■■ 目標13 ■■
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる※。
<13.1すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強
靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。>
※ 国連気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nations Framework
Convention on Climate Change)が、気候変動への世界的対応について
交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。

気候変動枠組み条約は、この条約の現状を確認するために毎年開催され
るCOP(Conference Of the Parties:締約国会議)で有名です。また
IPCC(Inter- Governmental Panel on Climate Change:国連気候変動に
関する政府間パネル)が5年おきに発行する地球温暖化レポートもこの
目標13に関係して目を通しておきたい報告書です。

■■ 国連気候変動枠組条約(UNFCCC) ■■
気候変動枠組み条約は、1997年に京都でCOP3(第3回締約国会議)
が開催されたことで一躍有名になりました。UNFCCCの出発点は1992
年にまで遡ります。1992年6月の国連環境開発会議(地球サミット、
ブラジル・リオデジャネイロ)では、大気中の温室効果ガス(二酸化炭
素、メタンなど)の濃度を安定化させることを究極の目的として、議論
が交わされその結果署名がされました。日本を含め155カ国がこの会議
で条約に署名しましたが、その後197か国まで加盟国が増えました。本
条約に基づき、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(COP)
が開催されています。

1993年5月 日本の批准
1994年3月 条約発効
1995年3月 第1回締約国会議 ベルリン
1997年12月 第3回締約国会議 京都

この条約は、枠組条約という名が示すとおり、地球温暖化防止について
の枠組を規定しています。

■■ 各国の義務 ■■
UNFCCCでは各国に具体的な削減義務までは課していませんが、計画を
作成すること、すなわち温室効果ガスの排出・吸収のリスト、温暖化対
策計画の策定等を締約国の義務としています。
もう少し詳しく言いますと、先進国と開発途上国の義務は分かれています。

<全締約国の義務>
・温室効果ガスの排出及び吸収のリスト作成と定期的更新
・具体的対策を含んだ計画の作成・実施
・リスト及び実施した又は実施しようとしている措置に関する情報を締  
 約国会議へ送付
 
<先進国の義務>
温室効果ガスの排出量を2000年までに1990年の水準に戻す(努力目標)
ことを目的に、
・温暖化防止のための政策措置を講ずる。
・排出量などに関する情報を締約国会議に報告する。
・途上国への資金供与、技術移転を行う。

京都COP3では先進国の義務を明確にした議定書が激しい議論の末成立
しました。それは、先進国は 6種類の温室効果ガス総排出量を20年
(2008年)~24年(2012年)の5年間に、1990年基準で、先進国全
体で5%以上の削減を目指すこととされました。

■■ 京都議定書の後 ■■
京都議定書の約束はその後の日本政府の発表ですと、日本は達成したと
されています。しかし、京都議定書での温室効果ガス排出量削減目標は、
2008~2012年の第1約束期間と呼ばれる期間を対象にしたもので、
2013年以降の取り組みについては、何も決まっていないことが大きな
問題でした。

「2013年以降」についてどうするかは、京都議定書に2005年時点で締
約国は話し合いを開始しなければならないと書かれていました。
しかし、世界の情勢は大きく変わっていきました。世界の排出量は、も
はや先進国だけの問題ではなくなっており、中国やインドといった途上
国の排出量が大きくなっていったのです。そのため、2013年以降は途上
国にもなんらかの取り組みを求める声が高まっていきました。
途上国に対して先進国が取り組みを要求するという「2013年以降」へ向
けた交渉は、テーブルにつく段階から問題が山積みの状態でした。
しかし、2015年のCOP21において、「パリ協定」が成立し、新しい国際
的枠組みが誕生しました。

■■ パリ協定(Paris Agreement) ■■
パリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に
おいては、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠
組みとして、パリ協定が採択されました。
この合意により、京都議定書の成立以降長らく日本が主張してきた「全て
の国による取組」が実現し、世界の全ての国が取組に参加する公平な合意
ができました。
しかし、世界第一の排出国であるアメリカが議定書から抜け出てしまいま
した。2017年、トランプ米国大統領は、「パリ協定」から離脱することを
表明しました。人類社会が過去1世紀余の時間をかけて、CO2などの温室
効果ガスによる気候変動問題に取り組み、IPCCの設立、気候変動枠組み
条約の締結、京都議定書の実施など、一歩一歩取り組みを続け、ついに辿
りついた歴史的な「パリ協定」を、「アメリカ第一」すなわち国内の雇用や
経済的損失などを優先したのです。

■■ パリ協定へアメリカ復帰 ■■
しかし、2021年にバイデン大統領はパリ協定への復帰を決定し、オンライ
ンでの「気候変動サミット(2021年4月22~23日)」を開催するなど、
現在、アメリカは気候変動対策に積極的な姿勢を示しています。

日本も2021年に英国・グラスゴーで開催されたCOP26において、「我が
国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すな
わち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを
宣言しました。

SDGインパクト基準20 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.367 ■□■
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*** SDGインパクト基準20 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標12についてです。

■■ 目標12 ■■
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する。
<12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費
と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の
下、すべての国々が対策を講じる。>

ここには「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)」
というものが出てきます。
ここで言う「持続可能」とは、人類が存続する限り(永続的)成り立
っていけるという意味ですから、消費と生産の関係性を永続的なもの
にする計画を作ろうという意味になります。

消費と生産の関係を永続的にしない、すなわち壊すものは何かという
と、最も影響を与えるものが「廃棄」です。消費には廃棄が付きもの
です。食べ物で言えばリンゴを食べてもその芯は廃棄されます(非可
食部廃棄)。衣服でも20年、30年着る人は少なく5年も経てば多く
の衣服は廃棄されるでしょう。住居もスクラップ&ビルドされて50
年も経つと街並みがかなり変わってしまいます。このような多くのも
の、温室効果ガスも含めて「廃棄問題」が目標12の最大の取組課題
です。

■■ 食料廃棄問題 ■■
その廃棄問題で強くフォーカスされているものが食料の廃棄問題です。
<2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの
食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーン
における食料の損失を減少させる。>
目標12には具体的に食料の廃棄を2030年までに半減させるとあり
ます。世界の食料廃棄の現状はどうなっているのでしょうか。
実は世界の食料廃棄の現状を調べようとしましたが、これがなかな
か把握しづらい問題であることが分かりました。Googleで検索し
てもズバリこれが食料廃棄量である、生産量に対する廃棄率である、
国別の廃棄率であるといった数字は出てきません。
農林水産省「平成 27 年度食品産業リサイクル状況等調査委託事業
:海外における食品廃棄物等の発生状況 及び再生利用等実施状況
調査、平成 28 年 3 月 11 日 公益財団法人流通経済研究所」に
詳しいのですが、
(1)食品廃棄の定義、
(2)対象プロセス(生産、流通、小売り、消費)区分、
(3)非可食部、潜在可食部、可食部
などの線引きなどが各国バラバラでなかなか比較が難しいという
ことです。

■■ 世界の食料廃棄の現状 ■■
そうはいっても辛うじて以下のような情報は読み取ることが出来
ました。
米国では、2010 年における小売・消費者段階での食料損失は、
6,033 万トンと推計される。これは、小売・消費者段階での供
給量である 1.95 億トンの 31%を占めるそうです。
31%のうち、10%が小売段階での損失であり、21% が消費者
段階での損失であるとしています。データが古いのですが大き
くいって3分の1が廃棄されているということになります。
EUの情報もありました。
EU では、年 9,000 万トン、1 人 当たり年 180kg の食品が
廃棄されている(2006 年データ)との数値が紹介されていま
す。 また、ECのホームページ「Sustainable Food」では、食
品廃棄物の削減に取り組まなければ、「2020 年には食品廃棄
物が 1 億 2,600 万トンに増加する」と述べられている、と
の調査記載があります。
このように160ページの報告書にはいろいろなデータが紹介
されていますが、各国の状況を理解するのはなかなか困難で
す。しかし、EUの例のように一人当たりの年間の食品廃棄
量の比較資料がありますので、それを眺めてみるのがいいか
と思います(平成24年度推計)。

■■ 日本の食料廃棄の現状 ■■
各国の年間一人当たりの食品廃棄物発生量を整理しますと
次のようになります(平成24年)。
 ・日本 134Kg
 ・米国 178Kg
 ・英国 187Kg
 ・フランス 149Kg
 ・ドイツ 136Kg
 ・オランダ 150Kg
 ・韓国 114Kg
 ・中国 76Kg

別の資料には、日本には2017年度時点で約570万tの食品
ロス(可食部)があると報告されています。一時、日本は食
品ロス大国と表現されましたが、今では上記の表のごとく先
進国の中で際立っているわけではありません。一人あたり年
間134kg、毎日お茶碗3杯分のご飯を捨てているのと同じこ
と、と例えられています。

SDGインパクト基準19 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.366 ■□■
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と日本語訳されています。

今回は目標11についてです。

■■ 目標11 ■■
目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市
及び人間居住を実現する。
<11.1 2030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住
宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。>

目標11は住居に関する目標ですが、まず使用されている用語に聞き
なれない言葉があるので調べてみました。
まず、「包摂的(ほうせつてき)」という言葉です。包括的と変えて
も意味は通じそうですが、もう少し深い意味があるようです。
Goo辞書によると;
1.一定の範囲の中につつみ込むこと。
「知識はその中に包摂されている」〈倉田・愛と認識との出発〉
2.論理学で、ある概念が、より一般的な概念につつみこまれるこ
と。特殊が普遍に従属する関係。例えば、動物という概念は生物と
いう概念に包摂される。

「強靱(レジリエント)」という言葉は、SDGsにおけるキーワー
ドのようで、目標1,2,9その他、多くの箇所に出てきます。
Goo辞書によると;
しなやかで強いこと。柔軟でねばり強いこと。
「強靭な肉体」とか「強靭な意志」というような使用例が出てきま
す。

■■ スラムの定義 ■■
外国映画にはよく都市の周りに貧民が暮らす地域が映し出されます。
その一帯をslum(スラム)といいい、もともとは欧米の概念です。
日本にはスラムと呼ばれるような貧民街は、江戸時代に長屋があり
それらは近代にも存在していましたが、現在は無いと言っていいと
思います。

スラムの定義はそれらしきものがありますが、明確ではありません。
国連ではスラムではなくスラム居住者を次のように定義しています
(人間居住計画)。「耐久性のある住宅十分な居住空間安全な水
へのアクセス
適切な衛生設備へのアクセス立ち退きを強制され
ないための居住権の保障
の5つのうち、ひとつでも欠けている世帯」
であるとしている。

本来スラムの概念は、都市部で極貧層が居住する過密化した地区の
ことであり、他の都市地区が受けられる公共サービスが受けられな
いなど、居住者やコミュニティの健康や安全、道徳が脅かされてい
る荒廃した状況を指す言葉です。世界のスラム住民の数は増加傾向
にあり、国際連合人間居住計画の統計によれば、21世紀初頭での
およそ10億人から、2030年には倍の20億人に増えるとされてい
ます。

■■ スラムの発祥の地 ■■
ロンドンが「slum」という言葉が生まれた地であると言われてい
ます。産業革命以降、ロンドン中心部の人口が過密となり多くの
低所得層は東部のイーストエンドに移住しました。1900年代以降、
低所得者用の公共住宅が供給され、改善の努力が続けられていま
すが、この一帯がスラムと呼ばれたのが最初です。
ニューヨークでも1800年代前半に移民が大量に流入したことによ
ってスラムが形成されました。日本でもスラムとは呼ばれません
でしたが、江戸時代の極貧の長屋が軒を連ねる一帯が該当するの
ではないかと思います。長屋では「こうもり傘なおし」「くずひろ
い」「日雇い人夫」などを生業とする人々が住んでいたと言われま
す。

■■ スラムを改善する ■■
目標11の実行計画にある「スラムの改善」には、都市のインフラ
として重要な電気、水道、下水、通信、移動などの基盤整備がま
ず考えられます。さらに都市インフラの恩恵を受けない地域では、
食料供給など住民生活を最低限維持するライフラインも十分でな
いことも考えなければならないと思います。また、汚水やゴミ処
理などの静脈物流(モノを使用した後の流れ:人間の血液の動脈、
静脈に例えてこう呼ばれる)も必須であり、大量消費の時代に入
ってからは、ゴミ・廃棄物の問題が大都市周辺のスラムで顕在化
しており、スラムの改善には筆頭に上げられる課題になっていま
す。

19世紀以降、都市の限られた空間を効率よく使うために、高層
ビルや地下(近年では大深度地下)が利用されるようになりま
した。都市の発展により、都市の周辺の農村部においても、農
耕地の宅地化や工場・商業施設など建設により、周辺農村部が
都市としての性格を持つようになってきましたが、無計画な都
市化であるスプロール現象(sprawl:「無計画に広がる」「ぶざ
まに広がる」)を避けないと都市のスラム化は止まらないといえ
ます。

SDGインパクト基準18 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.365 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** SDGインパクト基準18 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標10についてです。

■■ 目標10 ■■
目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する。
<10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、
国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。>

経済的な不平等を無くそうというのがこの目標ですが、国内における
不平等よりも国際的すなわち国と国の経済的な不平等を是正するとい
うことが国連の狙いです。世界がグローバル化する中で所得の不平等
は徐々に縮小してきており、その意味で国際社会は、人々の貧困脱出
に向け、長足の進歩を遂げてきたといえます。

しかし、いろいろな不平等は根強く残り、開発途上国の保健サービス
や教育サービスなどについては大きな格差がなくなっていません。経
済成長だけでは国と国の差は少なくならず、経済、社会、環境という
ESG分野の領域に経済成長が波及しなければ、全体の経済格差を削減
するには不十分だというコンセンサスが国際的にでき上がりつつあり
ます。

■■ 開発途上国と先進国 ■■
国と国の格差を議論するときに「開発途上国」と「先進国」という言
葉が出てきます。開発途上国は経済を「開発(発展)」させる「途上」
にある国であり、「先進国」は経済発展によって経済が世界でも「先進」
的な水準に達している国という区別になっていますが、国際的に両者の
間を分ける線が1本になっているわけではありません。この両者の線引
きはあいまいで、国連や世界銀行は「開発途上国」の定義をそれぞれ持
っていますし、研究者もそれぞれに「先進国」や「開発途上国」の定義
を示すことがよくあります。
ただ、OECD(経済開発協力機構)は、「ODA(政府開発援助)受け取り
国リスト」を発表しています。OECDは「経済的により進んだ国が開発
途上の国々を支援するために全力で協力する」ことを目的にした国際的
な機関であるからです。OECDは「先進国クラブ」と呼ばれることもあ
ります。

OECDでは3年毎に「ODA受け取り国リスト」を発表していて、このリ
ストにのっている国は、ODAを受け取る資格があります。これらの国は、
経済開発のための援助を受ける側ということで「開発途上国」と呼ばれ
ています。リストにのっているのは、下の2つの基準のどちらかに当て
はまる国々です。
1.世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々(2016年時点
  の一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以下の国々)
2.国連によって後発開発途上国(Least Developed Countries)に分類
  される国々

■■ 1万ドルクラブ ■■
世界銀行による分類では、開発途上国は「低所得国」「下位中所得国」「上
位中所得国」の3つに分かれています。
低所得国はGNIが1,005米ドル以下の国、
下位中所得国は1,006米ドルから3,955米ドルまでの国、
上位中所得国は3,996米ドルから12,235米ドルまでの国となります。
国連によって「後発開発途上国」に分類される国のほとんどは、世界銀行
の分類では「低所得国」となります。

正確には覚えていませんが、20~30年くらい前には国民の平均所得が1万
ドルを超えると先進国クラブに入ったと言われた時代がありました。

■■ 日本の平均所得 ■■
先に述べたように所得の不平等は国家間で縮小しています。OECDのデータ
からは94 カ国のうち 60 カ国の 1 人当たり所得は伸びていることを示し
ています。これは、開発途上国からの輸出品に有利なアクセス条件を設けた
り、開発途上国からの輸出品に対する免税措置を広げたり、その他の優遇政
策を講じてきたためと言われています。
ところで日本の国民一人当たりの平均所得はどのような状況になっているの
でしょうか。残念なことにあまり芳しくありません。下の表に示すように世
界で24番目というのが2020年のランキングです。他国が伸びているのに日
本はこの30年ほとんど変わっていません。