Category Archives: つなげるツボ

SDGインパクト基準7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.354 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準7 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、351号から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標3のつづきです。

■■ 目標3.健康、福祉 ■■
目標3健康について、前回、中世ヨーロッパの王妃の話をしました
が、残っている記録に基づいて再度お話をします。人々の暮らしは
今からは想像がつかないくらい劣悪な状態に置かれていました。

イングランド王エドワード1世の王妃エリナー(1241-1290)は
16人の子どもを授かりました。エリナーの子どもたちは中世ヨーロ
ッパで望みうる最高の条件のもと、最高の養育環境で育てられまし
た。彼らは宮殿で暮らし、好きなだけ食べ、暖かい服もたっぷりあ
り、当時とすれば最高にきれいな水を飲み、大勢の召使いや腕利き
の医師たちに囲まれて生活していたと当時の宮殿生活から推察でき
ます。

■■ 王妃エリナーの不屈の人生 ■■
しかし、そのような最高の養育環境にあったにも関わらず、彼女の
16人の子どもたちの生涯は次のようなものでした。
 1.1255年 娘(名前は不詳) 出産時に死亡
 2.娘 キャサリン 1歳あるいは3歳で死亡
 3.娘 ジョーン 6カ月で死亡
 4.息子 ジョン 5歳で死亡
 5.息子 ヘンリー 6歳で死亡
 6.娘 エリナー 21歳で死亡
 7.娘(名前は不詳) 5カ月で死亡
 8.娘 ジョーン 35歳で死亡
 9.息子 アルフォンソ 10歳で死亡
 10. 娘 マーガレット 58歳で死亡
 11.娘 ベレンガリア 2歳で死亡
 12.娘(名前は不詳) 出産時に死亡
 13.娘 メアリー 53歳で死亡
 14.息子(名前は不詳) 出産時に死亡
 15.娘 エリザベス 34歳で死亡
 16.息子 エドワード 43歳で死亡(殺される)

なんと、16人のうち成人にまで育った子はたったの6人です。

息子で子供時代の危険な年月を生き延びた末子のエドワードは、父
親が亡くなると王位を継承して、イングランド王エドワード2世と
なりました。言い換えれば、エリナーは、夫エドワードの後継とな
る男子を育成するという、イングランド王妃として根本的な使命を
果たすのに、16回もの試みを重ねなければならなかったのです。

■■ エドワード2世の運命 ■■
末子として生まれたエドワードは、それまで後継王と見なされてい
たアルフォンソが10歳でなくなったため、生後1歳では後継者と
して育てられるようになりました。しかし、父親がスコットランド
などとの戦争でほとんど城に居なかったため君主としての教育であ
る帝王学を得る機会はありませんでした。

そればかりか、女子の兄弟の中で育ったため歪な人格となり、歴代
イギリス王の中で最低の王と言われるようになったと言われていま
す。当時欧州一の美貌の持ち主と言われたフランスのイザベルと結
婚しますが、彼女を顧みることがあまりなく、43歳にして彼女の
命を受けた騎士によって惨殺されてしまいます。

■■ エリナーとエドワード1世夫婦の子どもたち ■■
私たちが知る限り、エリナーとエドワード1世夫婦はすこぶる健康
で、子供たちに致命的な遺伝病を伝えることはありませんでしたが、
それでも、16人の娘と息子のうち62%に当たる10人が子供時代に
亡くなりました。11歳以上になるまで生きたのはわずか6人で、
全体の18%に当たる3人だけが40歳を超えました。

エリナーとエドワード1世夫婦は、平均すると3年に1人の割合で
10人の子どもを次から次と失ったのです。

■■ ギルガメッシュ・プロジェクト ■■
世界でも最古の神話の一つである古代シュメールのギルガメッシュ
神話のテーマは「永遠の生」だそうです。

21世紀の現代、人間ゲノムの解明、健康、環境、医療の進歩により、
人生150年は視野に入っているそうです。次世紀(22世紀)には、
ギルガメッシュ王の願いも叶えられるかも知れないそうです。

SDGインパクト基準6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.353 ■□■
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*** SDGインパクト基準6 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、351号から一つひと
つの目標に関してお話をしています。今回は目標3についてです。

■■ 目標3.健康、福祉 ■■
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福
祉を促進する。
<3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり
70人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以
下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下
まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の
予防可能な死亡を根絶する。>

目標3には多くの個別の目標がありますが、ここでは母親と新生児に
関する目標について考えたいと思います。

■■ ヨーロッパ中世の状況 ■■
21世紀の今の議論に17世紀頃の中世の話を持ち出すのは場違いと言
われるかもしれませんが、中世ヨーロッパの王妃は現在に比較して子
沢山だったそうです。
ある王妃は15人の子ども授かったそうですが、当時の医療水準が低
かったからでしょうか、成人になる前に亡くなってしまった子供は
60%を超えています。古い記録によれば授かった15人のうち、9人
が次から次に亡くなっています。

王族ですらこんな状況でしたので、一般庶民の子供の生存率はもっと
低かったのではないかと推測されます。私が17世紀の話を持ち出し
たのは、人類の社会的、科学的進化に目をやり、なお将来に向けてど
んな施策を考えていくべきかを俯瞰的に捉えることが良いと思うから
です。

■■ 世界の母親死亡数 ■■
「出産は命がけ」と言われる通り、出産において死亡する母親や子ど
もは世界的に少なくありません。母親や子どもが亡くなる死亡率は、
医療環境や衛生環境などで大きく変わることがわかっています。

最新の世界保健機関(WHO)発表によると、世界の妊産婦死亡数は
年間30万3,000人であり、妊産婦死亡率は0.216%(妊産婦10万人
に対して216人)だそうです。毎日830人が出産により死亡してい
る計算になるそうです。
開発途上国における死亡が多いのですが、その理由は次のようなも
のです。

■■ 母親及び子どもの死亡 ■■
開発途上国における母親及び子どもの死亡が多いのは、次の4理由
からであると国連は説明しています。
・若すぎる出産
・医療環境と保健サービスの未発達
・感染症対策の遅れ

■■ 若すぎる出産 ■■
国連広報センターからの報告では、母親・子どもの死亡率が高い開発
途上国では、出産リスクが高い青年期(10~19歳)の出産が多いこ
とが理由の一つであるとしています。

開発途上国では年間730万人の18歳未満の少女が出産しており、そ
のうち15歳未満での出産は200万人、そして年間7万人の少女が妊
娠と出産の合併症によって亡くなっているそうです。女性の身分の低
さ、児童婚が合法化されている、極度の貧困による圧力、などが若す
ぎる出産と死亡をもたらしていると説明されています。

■■ 医療環境と保健サービスの未発達 ■■
開発途上国では近くに医療施設がなく、医者や看護師が少ない地域が
多く存在します。そのような地域では、自宅出産が数多く行われ、知
識のない介助者が多量出血などに対応できず、母子の命が失われるこ
とは珍しくないそうです。風疹のワクチンを接種し、定期的に検診を
受け、出産には訓練を受けた助産師が立ち会い、出産後には母子の健
康状態を都度確認することが、母子の命を救うと説明されています。

■■ 感染症対策の遅れ ■■
感染症にかかっている母親の子どもは、低体重で生まれる可能性が高
く、健康に生まれても重度の感染症(敗血症や破傷風など)にかかり
死亡する恐れがあります。

開発途上国では、HIVやマラリアなどの感染症にかかっている女性が
出産すると、敗血症などの合併症リスクが高く、ユニセフによると感
染症による死亡は、新生児死亡の36%を占めているそうです。

SDGインパクト基準5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.352 ■□■
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*** SDGインパクト基準5 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

350号で17目標の全体像をお伝えしましたが、前回から一つひとつ
の目標に関してお話をしています。今回は目標2についてです。

■■ 目標2.飢餓 ■■
目標2. 「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持
続可能な農業を促進する。」
<2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼
児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を
十分得られるようにする。>

国連世界食糧計画(WFP)によると「飢餓」とは、「身長に対して
妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要な
エネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態」と定義をして
おり、必要なカロリー数は、年齢や性別、体の大きさ、活動量等に
よって変わるとしています。

もっと分かり易く言えば、飢餓とは「栄養不良に陥り、健康で活動
的な暮らしを営むための十分な食糧が得られない」ことです。

日本で生活をしている私たちにとっては「飢餓」という言葉を聞い
ても、具体的なイメージが湧きませんが、国連が2019年7月に発
表した報告書によると、推計8億2,000万人が飢餓状態にあり、
3年連続で増加しているという深刻な事態にあります。

世界の9人に1人がこの問題に直面してとり、今でも飢餓が原因で
1日に何万もの人が命を落としており、世界規模での社会問題とな
っています。

■■ 飢餓人口の分布 ■■
飢餓人口8億2,000万人(9人に1人)の世界地域別の分布は以下
の通りです。
– アジア:5億1,600万人
– アフリカ:2億5,800万人
– ラテンアメリカ・カリブ海地域:4,600万人

世界で最も飢餓人口の多い地域は、アジアで、5億人を超える人が
飢餓に苦しんでいるということです。

アジアに飢餓に苦しむ人が一番多くいるというのは驚きです。私は
何回かユニセフに寄付をしていますが、ユニセフからの飢餓寄付へ
の広告はアフリカのイメージ写真が多く、私は圧倒的にアフリカの
飢餓人口が多いと思っていましたが、事実はアジアそれも南アジア
だということです。

■■ 飢餓が起こる原因 ■■
なぜ飢餓が起きるのでしょうか。その原因は、自然災害によるもの、
紛争によるもの、貧困によるものの3つに分類されます。

<自然災害による飢餓>
地震、津波、洪水、干ばつなど、自然災害は飢餓の原因になります。
農作物や田畑が被害を受け、家や仕事などの生活基盤も失われるか
らです。経済的にも物理的にも食糧を手に入れることができなくな
ります。飢餓に苦しむ8割以上の人々は、自然災害が発生しやすい
場所で生活していることが分かっています。

<紛争/戦争による飢餓>
2018年のWFPとFAOが国連安全保障理事会への報告によると、
紛争/戦争による飢餓がチャド湖周辺地域ほか16カ国で起きていま
す。
紛争/戦争が起きると、家や農地など全て捨てて避難しなければな
りません。避難せずに残ったとしても、危険なので農作業や仕事を
することができなくなり、食糧の確保が困難になり、そして飢餓状
態に陥ってしまうのです。現在進行中のウクライナ戦争もこの例に
なっていくかもしれません。

<貧困による飢餓>
飢餓は目標1.貧困と直接的に関係しています。貧困が長く続く
「慢性的貧困」によって飢餓が生じます。貧しい農民は農業を行
うための土地や水、種などを確保する資金が無いために、自給自
足が困難で、貧困や飢餓から抜け出すことができません。子ども
の世代にも続くという、貧困の連鎖を断ち切ることができないと
いう問題もあります。

■■ 食料は十分ある ■■
飢餓問題でいつも疑問に思うことがあります。それは世界規模で
どのくらい食糧が足りないのかという問題についてです。食料が
足りないから飢餓が起きるというのが江戸時代の「天保の大飢餓」
を知っている人の常識です。「天保の大飢餓」では、食べ物が無く
20~30万人が亡くなったと記録されています。
「食べ物が足りないのでは」と思っていましたが、実はそうでは
ないということが報告されています。
飢餓に苦しんでいる人は、世界の9人に1人の割合でいますが、
人間1人あたりの年間の食料消費量は約180kgであり、現在その
2倍近くの穀物が世界で生産されています。
世界には一人あたりに必要な食糧が十分にあるというのに、実際
には飢餓で苦しむ人、特に子どもたちが後を絶たないというとこ
ろにこの問題の難しさがあります。
(出典: 「世界の食糧安全保障と栄養の現状2018」
(出典:「第I章 2015/16年度の穀物等の需給動向」

どうしてそのような状況になってしまうのでしょうか。
私たちが口にしている食べ物は、生産されてから食べられるまで
に、加工・運搬・販売・購入といったたくさんの工程があります。

飢餓が問題になっている地域では、運搬や衛生環境など必要なイ
ンフラが整っていないことが多く、世界規模で見れば十分な食糧
が生産されているにも関わらず、そういった地域にまで届けられ
ない現状があります。

そうであれば、ユニセフは寄付もいいですが、余った食品をアフ
リカへ送る物流を呼びかけることも有用な解決方法になると思い
ます。

■■ 食品ロス ■■
開発途上国に対して食糧支援を行うことも大切ですが、「先進国
の食糧廃棄を減らす」ことも大切です。
世界では食用に生産される食糧のおよそ3分の1に当たる13億
トンが毎年廃棄されます。
そして、この廃棄された食糧を処分するために排出される温室効
果ガスは36億トンで、これは世界の温室効果ガス排出量の約8%
に達します。
食品ロスの問題は、私たちにいろいろなアクションが存在するこ
とを教えてくれます。

SDGインパクト基準4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.351 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** SDGインパクト基準4 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をし
ています。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

前回、17の目標の全体像を知るためそれらの目標の概要をお伝え
しましたが、今回から一つひとつの目標に関してお話をしていき
たいと思います。

■■ 目標1.貧困 ■■
目標1は、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」
です。
<1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々
と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。>

世界銀行は、2015年10月、国際貧困ラインを1日1.25ドルから
1.90ドルに改定しました。これは、貧困国において2005年に
1.25ドルで買うことができたものが、2011年には1.90ドルでな
ければ買えないということで、世界の貧困率はほとんど変わらな
いとしています。

1日1.9ドル(約230円)で暮らす「貧困層」は,世界で約7億
2,900万人、世界人口に占める割合は約9.4%で,新型コロナウイ
ルスの感染が拡大する前の7.9%から大きく悪化する見通しとなっ
ています。

世界の貧困層7億2,900万人の半数が、わずか5カ国に集中して
います。この5カ国とは、インド、ナイジェリア、コンゴ民主共
和国、エチオピア、バングラデシュです。世界全体で貧困層を削
減するには、これら5カ国における取組みとともに、貧困層のう
ち85%(6億2,900万人)が暮らす南アジア地域とサブサハラ・
アフリカ地域の貧困削減に取り組むことが不可欠であると指摘さ
れています。

貧困は、単に持続可能な生計を確保するための所得と資源がない
ことだけではなく、飢餓や栄養不良、教育その他基本的サービス
の利用制約、社会的差別と排除、さらには意思決定への不参加な
ど、数多くのネガティブな形となって表れます。

■■ 世界の貧富の差 ■■
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界の富裕層と貧困層
の格差が広がっています。フランスの経済学者トマ・ピケティ氏
らが運営する「世界不平等研究所:World Inequality Lab」(本部・
パリ)が発表したレポートによると、世界の上位1%の超富裕層の
資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の
資産は全体の2%にとどまったそうです。

同様なレポートは、いろいろな所から出されています。国際労働機
関(ILO)は2019年、世界の所得格差に関するレポートを発表し、
世界で支払われている労働所得の半分を、世界のわずか10パーセ
ントの人々が得ている、ということです。

スイスの金融大手クレディ・スイス銀行の発表した「グローバルウ
ェルスレポート2019」では世界全体の貧富の分布をみることができ、
「下から 50%の層が保有する額は世界の総資産の1%未満。上位
10%の人が総資産の82%、上位1%が半分近くを保有している」と
なるそうです。

経済産業省の資料によると、富裕層は2つのカテゴリー、金融資産
が30億円以上の「超富裕層」と、1億円以上30億円未満の「富裕
層」に分けられるそうです。2017年時点で、金融資産50億円以上
の人口は世界に129,730人いたということです。

■■ 貧富の差は広がっていく ■■
世界不平等研究所レポートによると、「貧富の差は今後も広がり続
ける」としています。これは、コロナ禍で景気刺激のための財政出
動や金融緩和によるマネーが株式市場などに流れ込み、多くの資産
を保有する富裕層に恩恵をもたらしたためです。

レポートによると、コロナ禍で世界中の多くの人が仕事を失った一
方で、「2020年は、ビリオネア(億万長者)が保有する世界の富の
割合が、かつてないほど大きな年となった」と述べています。

地域別にみると、最も格差が大きいのは中東・北アフリカ地域
(MENA)であり、上位10%が全体の所得に占める割合の58%を占
めています。格差が最も小さいのは欧州で、上位10%が36%を占め
ています。

■■ 日本の貧富も広がっている ■■
日本においては、所得上位10%の人が、資産の45%を占めています。
最上位1%に占める人が資産の24.5%を占めています。
日本の給与所得者数 は2020年には5,026万人であったので、所得
上位に連なる10%の人の数は約50万人と想定されます。また、最
上位1%の人の数は約5万人と想定されます。

1年間の給与総額は約250兆円なので、最上位1%の人は、この想定
からいうと、平均して年に約12億円の収入を得ているということに
なります。年収と資産とは異なるのですが、人口1.2億人のいる日本
の中のわずか5万人の人が国全体の資産の24.5%を占めているという
ことを実感するアナロジー(比喩)にはなると思います。

日本の下位50%を占める人の資産は5.8%でした。レポートでは日本
の富の分布について、1980年代から収入格差が広がっており、欧州
より格差は大きいとされています。

SDGインパクト基準3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.350 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準3 ***
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前回は2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」について
お話をしました。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。
アジェンダとは、課題という意味ですが、古くは1992年のブラ
ジル・リオデジャネイロで開催された環境サミットにおいて採択
された「アジェンダ21」が有名です。
2015年のSDGs(持続可能な開発目標)には17の目標があります。

■■ 17の目標と169のターゲットの原則 ■■
国連2030アジェンダを基本にして合意された17の目標と169の
ターゲットは以下のような原則で作成されました。

1. SDGsとターゲットは、各国の置かれたそれぞれの現状、能力、
発展段階、政策や優先課題を踏まえつつ、一体のもので分割できな
いものである。

2.地球規模且つすべての国に対応が求められる性質のものである。

3.ターゲットは、地球規模レベルでの目標を踏まえつつ、各国の
置かれた状況を念頭に、各国政府が定めるものとなる。

4.各々の政府は、これら高い目標を掲げるグローバルなターゲッ
トを具体的な国家計画プロセスや政策、戦略に反映していくことが
想定されている。

5.持続可能な開発が経済、社会、環境分野の進行中のプロセスと
リンクしていることをよく踏まえておくことが重要である。

6.最も脆弱な国々、特にアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開
発途上国、小島嶼開発途上国が直面している特別な課題とともに、
中所得国が直面している特有の課題を強調する。

7.いくつかのターゲットについては、基準データが入手困難であ
るということを認識する。国及び地球規模レベルの基準データを整
備するための加盟国レベルでの能力構築及びデータ収集強化の支援
を強く求める。

8.アジェンダの実施の妨げとなり得る課題に関する他のフォーラ
ムでの各国の取組を歓迎する、

9.本アジェンダ及びその実施が、他のプロセスやそこでの決定に
対しこれに貢献することはあっても侵害することのないようにする。

10.持続可能な開発の達成に向け、それぞれの国が置かれた状況及
び優先事項に基づき各々に違ったアプローチ、ビジョン、モデルや
利用可能な手段が変わってくることを認識する。

11.地球という惑星及びその生態系が我々の故郷であり、「母なる
地球」が多くの国及び地域において共通した表現であるということ
を再確認する。

■■ 持続可能な開発目標 ■■
以上のような原則で17の持続可能な開発目標が作られています。
一つひとつの開発目標の説明に入る前に、17の目標全体を概観します。

目標1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続
  可能な農業を促進する。
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉
  を促進する。
目標4. すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、
  生涯学習の機会を促進する。
目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化
  を行う。
目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確
  保する。
目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネ
  ルギーへのアクセスを確保する。
目標8 .包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ
  生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・
  ワーク:decent work )を促進する。
目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能
  な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する。
目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及
  び人間居住を実現する。
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する。
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能
  な形で利用する。
目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能
  な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回
  復及び生物多様性の損失を阻止する。
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべ
  ての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて
  効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。
目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・
  パートナーシップを活性化する。