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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.299 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査3 ***
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「ナラティブ内部監査」は従来展開されてきた内部監査とは次の
点で異なります。まず目的は適合性の確認だけでなく、発見した
事項の問題解決、改善、そして革新へのインプットまでを目的と
します。そして、内部監査は内部監査員と被監査者の共同作業で
あると位置づけます。かつ、いまの状況、事項の事実確認だけで
なく、いままでの経過、及びこれからの姿についての物語を作り、
そして実践することを目的としています。
■□■ 内部監査はISOの専売特許? ■□■
いまでこそ内部監査は当たり前に行われていますが、この内部監
査を広めたのはISOマネジメントシステム規格だったと思います。
監査自体の概念は古くからあり、中世ローマには会計監査の原型
がすでに存在していたそうです。監査は英語でAuditといいます
が、これはAudio(聴覚)からの派生語だとイギリス人から教え
てもらい、聴くことがポイントであると知りました。
さらに思い出したことを付け加えると、古代ローマには聴役
(Auditor)がいてローマ皇帝から広大な領地の過疎地にどんなこ
とが起きているかを調べるように命令され、該当地を訪れていろ
いろな情報を持ち帰ったという言い伝えが残っているそうです。
■□■ ISO9001は内部監査が特徴 ■□■
話は30年前に遡りますが、当時私はセイコ-エプソンの英国工
場長をしていました。1989年頃に本社からISO9000の認証を取
れないか打診がありました。私は早速ISO9000の規格書を購入
し読んでみました。内容を理解するまでもなく、20項目の要求
事項(ISO9001:1987年版)はすでに英国工場で仕組みとして取
り入れているものばかりでした。しかし、1項目だけ仕組みの無
い項目が書かれていました。それが、「内部監査」です。当時の
品質管理の世界では内部監査の概念は無いと言ってよいと思い
ます。ただ、当時のTQC(日本式品質管理)には「トップ診断」
という概念があり、組織内部で規定されたこと、現場の実態、職
場の活性度合いなどをトップが直接確認するという活動がありま
した。
しかし、トップが確認することは規定への適合性と言うより現場
を自分の目で確認するという趣旨が主であって、ISOが要求する
内部監査とはやはり異なるという意見が大半でした。内部監査の
解釈もトップが組織内部の確認を実務者に委任するというような
もの(英国人の解説)であり、セイコーエプソン内では内部監査
は今までにないものだという結論になりました。
■□■ 内部監査の効用 ■□■
1991年に英国エプソンではISO9002の認証を英国の認証機関か
ら得ることが出来ました。工場では審査登録プロジェクトで作成
した品質マニュアルに基づいて作業を行うよう徹底しました。そ
して内部監査を年2回行うことにしました。
当時の品質マニュアルの内部監査の項には次のような内容が記さ
れています。
<4.17 内部品質監査>
☆包括的内部品質監査の進め力について,資格者,実施回数,
是正処置,フォローアップなどについて記述する。
1.品質保証部は,品質活動が計画された取決めに従っているかど
うかを検証するために,文書化した内部品質監査を実施する。
2.監査実施者は「B事業部内部品質監査者認定コース」の履修者
とする。
3.品質システム全体を対象とした定期的内部品質監査を年2回実
施する。
4.品質保証部は,監査した結果を報告書にまとめ,被監査部門の
部長に報告する。不適合事項が存在する場合には是正処置の依
頼をする。
5.被監査部門の部長は,自部門の内部品質監査の不適合の是正処
置を実行して,品質保証部長に是正処置報告書を提出する。
6.品質保証部長は,是正処置が確実に実施されたかどうかを確認
するためにフォローアップ監査を実施する。
7.品質保証部長は,内部品質監査の結果を,年4回,品質システ
ム見直し会議に報告して,品質システムの改善に結び付ける。
8.内部品質監査に関する報告書,会議録などは,品質記録として
品質保証部が3年間,保管する。
このような活動を2年間続けて私は英国赴任を終え日本に帰国し
ましたが、私が工場長として在任中に顧客からのクレームは半減
しました。