Category Archives: つなげるツボ

ナラティブ内部監査6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.302 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査6 ***
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内部監査の対象範囲は事業活動全体をカバーすることが望ましい
のですが、何を監査基準にして内部監査を行うのかについて前回
お話をしました。ナラティブ内部監査における監査基準は社内規
定であると申しました。組織には「定款」を最上位に取締役規定、
分課分掌規定、部門規定、手順書、チェックリストなどの多くの
社内規定が存在します。
基本的にはこれらの社内規定を基準に内部監査を行うのですが、
それでは何百も何千もある社内規定を読まなければならず、読む
うちに社内規定が最新化されていない、規定間に不整合があるな
どの課題にぶつかり、内部監査の推進の障害になってしまいます。

■□■ 監査基準は社内規定 ■□■ 
ナラティブ内部監査では、監査基準として「事業マニュアル」の
存在を前提としています。事業マニュアルとは何百も何千もある
社内規定の総集編であり、顧客及び利害関係者からの期待とニー
ズに対応する活動の骨子を20,30ページくらいにまとめたもの
を言います。
この事業マニュアルを作成する際に多くの企業が直面する課題は、
「何百も何千もある社内規定」の読み込みとその結果判明する
(上述した)社内規定の時代遅れ、不整合などですが、この問題
はここではあまり触れず事業マニュアルの目次構成などについて
話を進めたいと思います。

ただ、一言申し上げるならば現在の「何百も何千もある社内規定」
は、必ず整理をしなければならないということです。必要な文書
を見たいと思って検索しても直ぐに出てこないという問題を多く
の組織が抱えていますが、この問題は文書登録のまずさ、最新化
しない文書管理、社内サーバーの登録構造、フォルダー、ファイ
ル、タグ名などいろいろな問題に関連していますが、これらにつ
いては別途お話ししたいと思います。

■□■ XXXマネジメントシステムマニュアル ■□■
ISOマネジメントシステムを採用している組織では、2012年の
共通テキストが出るまでは、分野ごとXXXマネジメントシステム
マニュアルを作成していたと思います。
しかし、2012年の共通テキストではXXXマネジメントシステム
マニュアルを作成するという要求事項が無くなりました。

2012年の共通テキスト制定において、従来あった要求事項で無く
なったものが2つあります。ひとつは「管理責任者の任命」であ
り、もう一つがこのXXXマニュアルの作成」です。
この2つの要求事項が無くなった理由は、長年の間、ISOユ-ザ
において2つの要求事項がISOの意図するような活用にならなか
った、それが一つの要因として組織のXXXパフォーマンスが向上
しないという問題があったからです。

■□■ システムからマネジメントシステムへ ■□■
話はISO9001規格の2000年改訂に戻ります。ISOは原則5年に
一度規格を見直しして最新のものに改訂するというルールを持っ
ています。厳密に5年に一回改訂されるわけではありませんが、
2000年の前の規格は1994年に改訂されています。ISO9001:1994
規格のタイトルは次のようなものです.
<ISO 9001:1994>
Quality Systems ― Model for Quality Assurance in Design,
Development, Production, Installation and Servicing

ところが2000年版になると規格のタイトルは次のようになりま
した。
<ISO 9001:2000>
Quality management systems - Requirements

この変更が後日(20年後の今日)思わぬ課題を突き付けることに
なりました。

■□■ 飯塚国内委員長の疑問 ■□■
2000年当時私は日本規格協会からISO9001 / TC176の日本代表
エキスパートとして国際会議に派遣されていました。なぜか「日
本代表」という俗称が用いられていました。日本代表とはすばら
しく地位の高いイメージですが、実際は「日本代表団」が正しく、
5,6名が若干のメンバー交代をしながら毎年国際会議でISO9001
規格について議論をしていました。私は10年間担当させていただ
きましたが、そのときの日本代表団の団長が飯塚先生でした。

今でも覚えていますが、国際会議が終わると必ず国内委員会が開
催されます。日本代表エキスパート?に加えて産業界からのメン
バーが参加して、総勢20,30名の会議が年数回行われました。
現在でも基本的には同様な構造が保たれていると思いますが、そ
の国内委員会で飯塚先生が「本当に品質保証を品質マネジメント
システムに変えてよいのか」と疑問を呈し、今後の参考にしたい
ということで2つのどちらを選ぶのか挙手を求めました。

20年後の今でこそ飯塚先生の疑問は理解できるのですが、当時の
私は品質保証よりも品質マネジメントシステムのほうが組織に浸
透すると考え、後者に手を上げました。30名くらいの8割がたが
後者であったと記憶しています。
この品質保証から品質マネジメントシステムに規格の名称及び内
容が変わったことで、環境、安全衛生、情報セキュリティなどす
べての分野の規格も同様な名称、内容になりました。
その結果、多くのマネジメントシステムが溢れることになったの
です。このことがどのような課題を組織に突き付けたかは次号で
お話しします。

ナラティブ内部監査5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.301 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査5 ***
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内部監査の対象範囲はどのように決めるのでしょうか。それは、
組織が内部監査を活用してどんな成果につなげようとするかに
かかっています。ISOマネジメントシステムの認証継続だけが
目的ですと、規格の要求だという理由で、ISOマネジメントシス
テム要求事項の運用状況を確認するという認証審査準備の内部
監査になり、監査対象も絞られたものになるでしょう。

■□■ 内部監査の対象範囲 ■□■ 
ナラティブ内部監査では目的を組織の改善においていますので、
監査対象の範囲はおのずから広いものになります。端的に言えば
組織の活動のすべてを監査の対象にするということになります。
最近はあまり質問を受けなくなりましたが、10年以上前には「経
営者も内部監査の対象にするべきですか」という質問を何回も受
けました。ということは、組織によっては内部監査の適用範囲を
経営者にまで広げて真剣に検討していたということです。

私の当時の回答は「経営者も内部監査の対象にすべきということ
ではありませんが、対象にした方がいいと思います。ただし、経
営者の理解が必要になります」というものでした。

■□■ 環境マネジメントシステムの内部監査は? ■□■
この質問は今でも時々受けます。「環境マネジメントシステムの内
部監査はISO9001とは別に行っていますが、一緒に行うためのポ
イントを教えて下さい」という質問です。
最近は認証審査において、ISO9001とISO14001の統合審査を受け
ている組織が多いので、すでに環境マネジメントシステムと品質マ
ネジメントシステムの内部監査を一緒に行っているという組織は多
くあります。
その時のポイントは、「分野固有の要求事項」と「分野共通の要求事
項」を峻別するというところにあります。
分野別規格(例えば、ISO9001、SO14001、ISO45001、ISO27001
など)への共通テキスト(附属書SL)の導入により、内部監査にお
いて次の項目は組織に単一の監査対象として監査することになりま
した。
  ・組織を取り巻く状況の理解 
  ・内外の課題
  ・意図する成果
  ・利害関係者のニーズと機会
  ・マネジメントシステムの適用範囲
  ・必要なプロセス
  ・トップマネジメントのリーダーシップ
  ・方針及び目標
  ・リスク及び機会
  ・変更管理
  ・資源
  ・力量及び認識
  ・コミュニケーション
  ・文書管理
  ・監視測定
  ・パフォーマンス評価
  ・マネジメントレビュー
  ・不適合と是正処置
  ・継続的改善 など
これらの要求事項はすべてのISOマネジメントシステム規格に共通
となったからです。

■□■ 安全衛生、環境保全、情報セキュリティ ■□■
「当社はマネジメントシステムとはなっていませんが、安全衛生、環
境保全、情報セキュリティなどの社内規定は結構多くありますが、ど
のように内部監査すればよいのでしょうか」という質問もいただきま
す。
「マネジメントシステムにはなっていない・・・」とはどういう意味
なのか聞くと、「ISO45001、ISO14001、ISO27001規格などは導入し
ていないという意味である」とおっしゃいます。

確かに今どき日本の企業で、安全衛生、環境保全、情報セキュリティ、
個人情報保護もっと言えばCSR(SDGs)、財務管理(JSOX)、法令
順守(働き方改革)などを事業運営に配慮しない組織はないと思いま
す。ISO9001 を導入しなくても品質保証活動を行っている企業はほと
んどでしょう。それと同じことでISO45001、ISO14001、ISO27001
規格などは導入していなくても多くの企業は、安全衛生、環境保全、
情報セキュリティを事業活動の中に組み込んでいます。

ナラティブ内部監査ではISOマネジメントシステム規格を監査基準に
するのではなく、組織の社内規定を監査基準にします。ISO認証を保
有している企業は、社内規定すなわち組織の内部監査基準の中にISO
マネジメントシステム規格要求事項があるということになります。

ナラティブ内部監査4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.300 ■□■
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*** ナラティブ内部監査4 ***
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内部監査は現在ISO要求事項に基づいてごく普通に行われて
いますが、ISO9000初版が発行された1987年頃は日
本企業にとっては初めて行うもので、内部監査を通じてどんな
成果を上げようかといろいろ議論をしたものです。最初に議論
したことは、規格要求事項へ適合するとはどういう状態をいう
のかということでした。
「ナラティブ内部監査」の目的は適合性の確認だけでなく、発
見した事項の問題解決、改善、そして革新へのインプットまで
をターゲットにしています。

■□■ ISO 19011:2018の序文 ■□■
ISO19011は組織の内部監査をどのように行うのかのガイドを示
した規格ですが、その序文には、「内部監査結果は,事業計画策
定の分析の側面に対してインプットを提供し,改善の必要性及び
活動の特定に寄与することができる。」と述べています。
そして、それ以降の箇条に「改善」の字句が出てきます。組織に
とって「改善」は永遠の課題です。事業活動を進めている限り、
改善することは組織の使命であり、それなくして継続的に社会に
存在していけません。

改善に関与する人は、一般従業員、課長、部長、役員そして社長
まで組織のあらゆる人であって、内部監査はその機会の一部です。
決して内部監査だけが組織の改善の機会ではありません。組織活
動のあらゆるところで改善は行われていかなければなりません。
日常活動を始め、年間計画、中長期計画の実行などにおいても改
善は不可欠なことです。

■□■ 共通テキスト(附属書SL) ■□■
全てのマネジメントシステム規格には、トップの責任として「継続
的改善へのコミットメント」が要求されています。つまり、改善を
行うことは内部監査の実施だけでなく、内部監査を超えて組織全体
で行わなければならない非常に大きな課題であるということです。

管理職から「内部監査では枝葉末節な細かな些細な指摘ではなく、
改善に寄与するようなシステムの弱さを指摘してほしい」というよ
うな要望が出されることがあります。しかし、細かなことにこそ改
善のヒントがたくさん含まれているものです。

ISO 19011が規定しているように、組織が内部監査を「改善の機会」
のための手段として位置づけるならば、内部監査は大向こうを唸ら
すようなことは狙わずに、決められた手順にそって愚直に実行する
ことが大切ですし、そうしてこそ目的を達成することができるので
す。そして、何よりも改善のために行うとしたら、まず「改善する
ための方法」を知る必要があります。今の状態よりも更に良い状態
にすることを改善と言いますから、まずは今の状態を知ることが必
要になります。

■□■ すべてを疑うことから・・・ ■□■
疑うとは嫌な言葉です。しかもすべてを疑うなんてその人の性格?
を疑うと言われそうです。でもここで言う「疑う」とは疑問に思う
ことを言います。社会一般に使われている「うそを言っている」
「悪いことを行っている」「本当のことを隠している」という背景、
ニュアンスではありません。

疑問に思うとは、目の前で行われていることが本当に必要であるか、
行われている事は価値があるのか、価値があるとすればどのような
付加価値があるのか、などを考えることを意味しています。
組織における多くの仕事、出来事は今に始まったことではありませ
ん。先輩、そのまた先輩など10年、20年の昔から行っていること
が組織には多くあります。そして、その行われていることを誰も不
思議とは思わない世界が我々の組織にはあります。

なぜ行っているのかを不思議に思う感覚が改善には必要です。ちょ
うど物心がついた子供がお母さんに何でも「どうして・・・」と聞
くようなセンスです。

■□■ ナラティブ内部監査で疑うこと ■□■
「ナラティブ内部監査」では次のことを提唱しています。
 -その業務はやめられないか
 -その業務の順番は変えられないか
 -その業務は一緒に出来ないか
 -その業務は別の職場で行っていないか
 -その業務のプロセスは変えられないか
 -そのインプットは必要か
 -そのインプットは変更できないか
 -そのインプットは別のところから得られないか
 -そのアウトプットの価値は上げられないか
 -その監視・測定は必要か
 -その方法は人が変わっても同じ質を保証できるか
 -その方法は標準化されているか
 -新しいアイディアはないか

ナラティブ内部監査3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.299 ■□■
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*** ナラティブ内部監査3 ***
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「ナラティブ内部監査」は従来展開されてきた内部監査とは次の
点で異なります。まず目的は適合性の確認だけでなく、発見した
事項の問題解決、改善、そして革新へのインプットまでを目的と
します。そして、内部監査は内部監査員と被監査者の共同作業で
あると位置づけます。かつ、いまの状況、事項の事実確認だけで
なく、いままでの経過、及びこれからの姿についての物語を作り、
そして実践することを目的としています。

■□■ 内部監査はISOの専売特許? ■□■
いまでこそ内部監査は当たり前に行われていますが、この内部監
査を広めたのはISOマネジメントシステム規格だったと思います。
監査自体の概念は古くからあり、中世ローマには会計監査の原型
がすでに存在していたそうです。監査は英語でAuditといいます
が、これはAudio(聴覚)からの派生語だとイギリス人から教え
てもらい、聴くことがポイントであると知りました。
さらに思い出したことを付け加えると、古代ローマには聴役
(Auditor)がいてローマ皇帝から広大な領地の過疎地にどんなこ
とが起きているかを調べるように命令され、該当地を訪れていろ
いろな情報を持ち帰ったという言い伝えが残っているそうです。

■□■ ISO9001は内部監査が特徴 ■□■
話は30年前に遡りますが、当時私はセイコ-エプソンの英国工
場長をしていました。1989年頃に本社からISO9000の認証を取
れないか打診がありました。私は早速ISO9000の規格書を購入
し読んでみました。内容を理解するまでもなく、20項目の要求
事項(ISO9001:1987年版)はすでに英国工場で仕組みとして取
り入れているものばかりでした。しかし、1項目だけ仕組みの無
い項目が書かれていました。それが、「内部監査」です。当時の
品質管理の世界では内部監査の概念は無いと言ってよいと思い
ます。ただ、当時のTQC(日本式品質管理)には「トップ診断」
という概念があり、組織内部で規定されたこと、現場の実態、職
場の活性度合いなどをトップが直接確認するという活動がありま
した。
しかし、トップが確認することは規定への適合性と言うより現場
を自分の目で確認するという趣旨が主であって、ISOが要求する
内部監査とはやはり異なるという意見が大半でした。内部監査の
解釈もトップが組織内部の確認を実務者に委任するというような
もの(英国人の解説)であり、セイコーエプソン内では内部監査
は今までにないものだという結論になりました。

■□■ 内部監査の効用 ■□■
1991年に英国エプソンではISO9002の認証を英国の認証機関か
ら得ることが出来ました。工場では審査登録プロジェクトで作成
した品質マニュアルに基づいて作業を行うよう徹底しました。そ
して内部監査を年2回行うことにしました。
当時の品質マニュアルの内部監査の項には次のような内容が記さ
れています。

<4.17 内部品質監査>
☆包括的内部品質監査の進め力について,資格者,実施回数,
是正処置,フォローアップなどについて記述する。
1.品質保証部は,品質活動が計画された取決めに従っているかど
  うかを検証するために,文書化した内部品質監査を実施する。
2.監査実施者は「B事業部内部品質監査者認定コース」の履修者
  とする。
3.品質システム全体を対象とした定期的内部品質監査を年2回実
  施する。
4.品質保証部は,監査した結果を報告書にまとめ,被監査部門の
  部長に報告する。不適合事項が存在する場合には是正処置の依
  頼をする。
5.被監査部門の部長は,自部門の内部品質監査の不適合の是正処
  置を実行して,品質保証部長に是正処置報告書を提出する。
6.品質保証部長は,是正処置が確実に実施されたかどうかを確認
  するためにフォローアップ監査を実施する。
7.品質保証部長は,内部品質監査の結果を,年4回,品質システ
  ム見直し会議に報告して,品質システムの改善に結び付ける。
8.内部品質監査に関する報告書,会議録などは,品質記録として
  品質保証部が3年間,保管する。

このような活動を2年間続けて私は英国赴任を終え日本に帰国し
ましたが、私が工場長として在任中に顧客からのクレームは半減
しました。

ナラティブ内部監査2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.298 ■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査2 ***
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いままで内部診断と内部監査のポイント、即ち何を診断するのか、
何を監査するのかをお話ししてきましたが、どのように行うのか
については触れてきませんでした。
今回からは内部監査に焦点を当てて今年1月のテクノファフォー
ラムでお話しした「ナラティブ内部監査」について発信していき
たいと思います。

■□■ ナラティブとは ■□■
皆さんはガンダムナラティブをご存知でしょうか。ガンダムは昨
年暮れに横浜で巨大な実像モデルが実際に動くとマスコミで評判
になりました。ある方にナラティブ内部監査の話をした時に、ガ
ンダムのことを教えていただきました。ガンダムNTといって、
どうやらガンダム物語の一つを意味しているようです。
私が着想を得たナラティブはガンダムからではないのですが、ま
さしくこの「語り口:物語」を意味しています。

■□■ ナラティブとは「語り口」 ■□■
「物語」の前に「語り口:」と付けたことを説明します。私がナ
ラティブと言う言葉を知ったのは、NHKBSの海外番組からで
す。昨年NHKBS海外番組「コロナの時代をどう生きるか」を
観ていてこの言葉を知りました。その番組では何人かの識者がコ
ロナの世界について、それも今と今からについて自分の見識を述
べるものでしたが、画面下の翻訳のテロップには、ナラティブは
「語り口」と紹介されていました。
ナラティブは英語で“narrative”と綴り、語るという意味の“narrate”
の名詞です。

またナラティブセラピーという言葉もあります。心理療法の一つ
として知られ自分の今までを振り返って今の自分を理解しようと
する療法のようです。

ナラティブ内部監査を、単に「語り口物語の内部監査」と説明す
るだけでは何のことか理解できませんので、私が考えた定義をお
示しします。

ナラティブ内部監査 
<定義>
発見した事項(不適合事項、観察事項、気づき事項など)に関連
して、”いまの状況”、”いままでの経過”、”いまからのあるべき姿”
に焦点を当て、事項に関連する業務の問題解決、改善、革新への
インプットを探求
する監査員と被監査者の共同作業。

■□■ ナラティブは新しい物語 ■□■
組織の内部監査にはどんな物語があるのでしょうか。いろいろな
語り口によりいろいろな物語が作られると思いますが、その物語
を監査員と被監査者とが共有することから共同作業が始まります。
一つの事項(不適合事項、観察事項、づき事項など)について監
査員と被監査者は、なにを、どのように共有するのでしょうか、
あるいは共有できるのでしょうか。

「なにを」については、定義に「・・・”いまの状況”、”いまま
での経過”、”いまからのあるべき姿”・・・
」とありますように、
”いまの状況”、”いままでの経過”、”いまからのあるべき姿”の3
つを共有することになります。

■□■ ナラティブは新しい物語 ■□■
ここで課題になるのが、どのようにして監査員と被監査者が共
有するのかということです。共有する対象は上述のように、”い
まの状況”、”いままでの経過”、”いまからのあるべき姿”の3つ
ですが、この3つにはそれぞれに個別の物語があります。
これら特徴ある3つの物語を共有するにはそんなりの知識と実
践を含んだ訓練が必要です。
”いまの状況”の共有には「事実把握」方法についての知識と実
践が必要です。”いままでの経過” の共有には「傾聴とラポール」
方法の知識と実践が必要です。”いまからのあるべき姿” の共有
には「問題解決と改善」方法の知識と実践が必要です。

これらの3つの知識と実践を含んだ訓練については、6月に開
校予定の「ナラティブ内部監査アカデミー」にご参加いただけ
るとご理解が進み、かつ実践していけるようになると思ってい
ます。