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ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-10 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.230 ■□■    
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-10***
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ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成する
ための指針」について話を進めています。
今回はISO9004 :2018箇条8「プロセスのマネジメント」の続きです。
ISO 9004 ではプロセスアプローチではなく、さらに大きな概念である
プロセスのマネジメントを扱っています。
すなわち、プロセスアプローチをマネジメント(運営管理)することを
ガイドしています。

■□■ ISO 9004;箇条8 つづき ■□■

箇条8.3には、“プロセスオーナ”という言葉が登場します。
プロセスをマネジメントする場合には、プロセスの管理者(オーナ)を
決めておくことが必要です。9004では該当プロセスに責任を持つ組織の
個人又はチームを決定して、プロセスにプロセスオーナを任命することを
推奨しています。プロセスオーナは、プロセスの相互作用を明確にし,
維持し,管理し,改善する責任及び権限を持ち、そのことが組織全体を通して
認識されることが必要であるとしています。

箇条8.4.1では、8.2.2で計画したとおりにプロセスを運営管理することに
ついて述べています。効果的及び効率的にプロセスを運営管理するためには,
計画したプロセスとその相互関係を可視化することを推奨しています。
プロセス一覧表とかプロセスフロー図、あるいはマトリックス図など、
組織になじみのある図表でよいですから、見える化を進めることが良いと
しています。特にプロセスのアウトプット基準の明確化は重要です。
そのためには、プロセスを一連の活動にまで分解して、その実現能力を
確認するとよいでしょう。
プロセスが計画どおりにいかないことは、多く存在するバラツキの要因の
影響によって、十分にありえると考えておかなければなりません。

プロセスは次のような要因によるバラツキのリスクを抱えているでしょう。

1) 人的なもの(知識及び技能の不足,規則違反など)
2) 設備の劣化及び破損
3) 設計・開発のミス
4) 材料の不良
5) プロセス運用環境の変動
6) ニーズ及び期待の変化

プロセスを運営管理する際には,ISOの他のマネジメントシステムも参考に
するとよいでしょう。

1) 製品及びサービスの品質(ISO 9001)
2) 労働安全衛生(ISO 45001),
3) 情報セキュリティ(ISO/IEC 27001)
4) 環境,エネルギー(ISO 14001, ISO 50001)
5) 社会的責任,反贈賄,コンプライアンス(ISO 26000, ISO 37001, ISO 19600)
6) 事業継続,レジリエンス(ISO 22301,ISO 22316)

プロセス(一連の活動)にはいろいろなやり方があります。
従来から実施してきたやり方を変更することは勇気のいることです。
しかし、新しい技術を開発又は獲得する中から、より付加価値を付ける活動を推進して
いかなければ持続的な成功には手が届きません。
極端なことを言えば、1年前と比較して何も変わらない職場があったならば、それは
競争相手に負けていることを意味しています。

組織がより競争力を付けるために実施しなければならないことは年一度の
月刊行事であったり、講演会であったりではありません。
プロセスのやり方を変えることです。
すなわち一連の活動を観察し、他にもっとよい、より効果的で効率的な
やり方があるのではないかと変化を恐れずに提案することです。
そのためには、組織は,人々が改善活動に積極的に参加するように動機付ける
ことが必要です。

一方で、組織は起きてしまったことに対して必要な是正処置又はその他の適切な
処置を講じることも必要になります。すなわち、計画された活動と実際の活動の間に
ギャップが特定される場合などには,原因を究明し対策を取らなければなりません。
このような場合のプロセスの変更はネガティブな変更ですが、それでもプロセスが
改善されたと評価していいのです。プロセスがいったん運用され、期待した成果を
達成したとしても、そのパフォーマンスレベルを継続して維持することは、それなりに
大変です。

パフォーマンスレベルの維持については、プロセスの以下の要素を監視、測定することを
推奨しています。

1.プロセスを運用する人の力量
2.手順におけるリスク
3.提供される資源
4.適切な階層の管理者のフォロー
5.学習,訓練,動機付け及び人的ミス

プロセスのマネジメントの目的は、最終的に組織のパンフォーマンスが向上したか
どうかを確認し、もし向上していなかったら8.4.4に戻り、どこに原因があるのかを
探るところにあります。

ISO 9004では、箇条8.4.5で次のようにガイドしています。
「 組織は,定期的にそのプロセスを監視して,必要な場合には、適切な処置を特定し,
実施することが望ましい。」ここでいう必要な場合とは、このまま実施していると期待する
パフォーマンス向上に結び付かないような状態(9004ではdeviation:逸脱)を言います。
逸脱は,人々,設備,方法,材料,測定及びプロセス運用環境などが当初から変化した
ことから引き起こされます。したがって、組織が重要視しなくてならないのは,箇条8.4.4に
あるいろいろな要素の監視です。そうすることで、組織は効果的で効率的なチェックにより
パフォーマンス指標によって表されるパフォーマンスの向上を期待することができます。

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-9 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.229 ■□■    
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-9***
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ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針」
について話を進めています。
今回はISO9004 :2018箇条7「リーダーシップ」、箇条8「プロセスのマネジメント」
についての話をします。

■□■ ISO 9004;箇条7 ■□■

箇条7リーダーシップは次の4つの細分箇条に分かれています。

 ・一般
 ・方針及び戦略
 ・目標
 ・コミュニケーション

当然のこととして、持続的成功を達成するにはトップのリーダーシップが必須です。
ISO 9004:2018に特徴的なことは、CSRのような社会的責任(SDGsを含む)、就業生活の質、
顧客経験(customer experience)などにもポイントを置いているところです。

■□■ 戦略の一つに顧客経験 ■□■

トップマネジメントの戦略について次のように書かれています。
「トップマネジメントは,例えばコンプライアンス(compliance),品質,環境,
エネルギー,雇用(employment),労働安全衛生,就業生活の質(quality of work life),
革新(innovation),セキュリティ(security),プライバシー(privacy),
データ保護(data protection)及び顧客経験(customer experience)などの側面に対処
することが望ましい。」

ここに、顧客経験(customer experience):カスタマーエクスペリエンスという聞き
なれない言葉が出てきます。

■□■ 顧客経験とは ■□■

”customer experience value”とも言われ、顧客は商品・サービスの利用において、
さまざまな「経験」を価値とし認識する、としています。これは、VOC(Voice of Customer)
よりもさらに進んだ、顧客満足を向上させる戦略をいいます。

顧客は、単に商品・サービスを購入するだけでは満足しない、いまや店舗の雰囲気、
販売員の対応、ブランド商品を試着する、最高アイテムを身につける喜びなどの体験を
通じてその企業の価値を感じとります。カスタマーエクスペリエンスこそが競合他社との
差別化要因になるという戦略です。

VOCは顧客の生の声を聞いて一定水準の企業価値を目指す活動ですが、カスタマー
エクスペリエンスは「顧客の期待を上回る満足度」を提供する戦略です。

■□■ ISO 9004;箇条8 ■□■

箇条8はプロセスマネジメントについてガイドしています。
ISO 9001:2015では、プロセスアプローチという用語を使用していますが、9004:2018では
「プロセスマネジメント」という用語を使用しています。プロセスアプローチよりも
広い概念であると思います。

ISO 9004:2018では、外部から提供されるプロセス(外部委託)を含むすべてのプロセスを、
組織の目的とプロセスの様々な目的との間のバランスを最適化して、運用管理することを
プロセスマネジメント(プロセスの運用管理)と呼んでいます。
プロセスは、組織の中にネットワークとしてつながって価値を伝達しています。
そのプロセスは、ネットワークを通じて有機的なシステムとして機能している場合に、
より効果的、効率的に組織の目標達成に貢献します。
また、プロセスはそれぞれの組織に固有のものであるので,組織ごとに製品、組織構造、
規模などに応じてプロセス内の活動の諸要素を決定しなければなりません。

組織は、目的とする利害関係者のニーズ及び期待を満たしたアウトプットを提供するために、
必要なプロセスを決定する必要があります。決定すべきプロセスは、次のような分野・領域に
渡ることが推奨されています。

a)製品・サービスに関する運用
b)利害関係者のニーズ及び期待の充足
c)資源の提供
d)監視,測定,改善、改革等の運営管理

箇条8.2.2では決めたプロセスが対処すべき所(areas)を次のように上げています。

a)プロセスの目的
 ISO 9001:2015箇条4.4.1 には要求されていない項目です。プロセスには当然目的が
あるはずですが、その目的を明確にするべきであるという事項です。
プロセスの目的を明確にしておかないと、提供すべきアウトプットが決まりません。

b)達成すべき目標及び関連するパフォーマンス指標
 ISO 9001:2015箇条4.4.1c)に該当する項目です。達成すべき目標とはプロセスの
活動における目標で、次項c) 提供すべきアウトプットにつながるものです。

c)提供すべきアウトプット
 次工程(プロセス)へ引き渡すもの(アウトプット)です。b)項の目標及び
パフォーマンス指標に合致したものがアウトプットにならなければなりません。

d)利害関係者のニーズ及び期待並びにその変化

e)運用,市場,技術の変化
ISO 9001:2015箇条4.4.1g)に該当する項目です。経営環境の変化に対応
しなければなりません。

f)プロセスの影響
 原文は“the impacts of the processes”です。

g)必要となるインプット,資源及び情報並びにその利用可能性
ISO 9001:2015箇条4.4.1a)に該当する項目です。

h)実施する必要のある活動及び使用できる方法
ISO 9001:2015箇条4.4.1c)に該当する項目です。

i)プロセスにおける制約条件
原文は“constraints for the process”です。

j)リスク及び機会
ISO 9001:2015箇条4.4.1f)に該当する項目です。

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-8 | 平林良人の『つなげるツボ』

★動画版はこちらから→https://technofer.info/contents/53
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.228 ■□■
***ISO9004:2018持続的成功を達成するための指針-8***
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前回に続きISO9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を
達成するための指針」の箇条6組織のアイデンティティについて話をします。

組織は毎年事業計画を策定し、持続的に成功することを目指していますが、
それらはミッション、ビジョン、価値観、文化に基づいて継続的なものが
望ましい、とJQSC「方針管理の指針」(JIS Q 9023)では述べています。

■□■ アイデンティティと事業計画 ■□■

組織は、毎期事業計画、事業方針を策定し、これを組織全体に展開実施し、
期末にレビューを行って次期の事業計画に反映することを基本にしています。
しかし、これだけでは、経営環境の変化に応じることは難しくなります。
これ以外、技術開発、人材育成、新事業開拓など、成果が直ぐに出なくても
数年後には効果が出るような活動についても適切な方向付けをする必要が
あります。このため、組織は、 中長期経営計画を策定し、これを大元にして
期ごとの事業計画を策定することがよい、とされています。

■□■ 中長期経営計画の策定 ■□■

JQSC「方針管理の指針」では、中長期経営計画の策定について述べています。
中長期経営計画とは、組織によって正式に策定された、事業を将来的にどう
進めるかに関する計画であり、顧客に対してどのような価値を提供するのか、
それをどのような方法で実現するのかに関する戦略です。

通常、中期は3~5年、長期は5~10年を意図している場合が多いと思います。
内容としては、次の項目を含めるのがよい、とされています。

1.対象とする顧客とそのニーズ・期待
2.提供する製品・サービスと、それを通じて顧客に提供する価値
3.製品・サービスを提供する方法及びタイミング
4.競合する他の組織を凌駕する方策
5.人々、インフラストラクチャー、作業環境、情報、供給者とパートナー、
天然資源、財務資源なとの必要資源
6.バリューチェーン(顧客に価値を提供するプロセス)を構成する各機能
(技術開発、生産、物流、 販売など)に対する方向付け、また、機能の実現
において鍵となる基盤(人材育成、情報通信技術など)に対する方向付け

■□■ 中長期経営計画の策定の手順 ■□■

JSQC「方針管理の基本」(JIS Q 9023)から引用した手順を示します。

a)組織の使命・理念及びビジョンを確認する。

b)市場、顧客、社会動向など組織を取り巻く外部環境の変化を分析する。顧客視
点でニーズ期待の変化を把握するとともに、社会における関連固有技術や情報
通信技術の進展の方向を確認する。それをもとに、組織の使命・理念及びビ
ジョンを達成する上での機会及びリスクを明らかにする。

c)組織の経営資源(技術、人材、財務など)の実態、特に今までの中長期経営計
画の達成’実施状況に基づく反省点を明らかにし、競合する他の組織と比較し
て強み.弱みを把握する。

d)環境が変化する中で、不確実性の高い要因がある場合には、複数の起こり得
るシナリオを描く。

e)複数のシナリオに対し、競合分析及びリスク分析などを行い、どのシナリオ
が起こってもリスクを回避できる方向を検討する

f)資源配分を考慮して、ビジョンを達成する計画を決定する(将来のありたい姿
の実現を目指す)。

なお、組織による中長期経営計画の策定に伴い、技術開発、人材育成、新事業開拓、情報システムなどの活動を担当する部門は、さらに各部門の中期計画を立案し、トップマネジメントへ現場からの提言を行い、すり合わせを行うのがよい。

策定した中長期経営計については、時期を決めて見直しを行うのがよい。見直しの方法としては、
計画開始年度から完了年度まで計画を固定して期間計画を定める方式、長期の計画を策定した上で期ごとに見直しするローリング方式などがある。

中長期経営計画の策定を効果的かつ効率的に進めるための手法には、業界分析、
製品トポートフォリオ分析、市場分析、バランストスニアカード、ベンチマーキング、
SWOT 分析、戦略要因分析などがある。

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-7 | 平林良人の『つなげるツボ』

★動画版はこちらから→https://technofer.info/contents/53
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.227 ■□■
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-7***
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ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成する
ための指針」の箇条6組織のアイデンティティについての話をいたします。
組織の特徴の原文は、“identity of organization”です。ISO 9004では
“identity”を「アイデンティティ」とカタカナにしていますが、辞書を
見ると「正体、素性、身元、同一」などの日本語が並んでいます。

■□■ ISO 9004;箇条6 ■□■

組織のアイデンティティは、ミッション、ビジョン、価値観、文化に
基づいてその性格が決まります。ミッション、ビジョン、価値観、文化は
相互に依存しており、それらはダイナミック(動的)なものと理解することが
望ましいとしています。

ここでは“culture”という英語も使われています。文化(culture)は
次のものから醸成されると説明しています。

・信念:beliefs
・歴史: history
・倫理: ethics
・行動: behavior
・態度: attitudes

トップマネジメントは,事業環境の変化に応じて、ミッション、ビジョン,
価値基準及び文化を見直すことが望ましいとしています。
持続的成功を達成する組織の能力にこの見直しは影響を及ぼす可能性が
あります。

■□■ JSQC 方針管理の指針 ■□■

ISO 9004:2018が推奨していることをどのように実施するのかは、
JSQC規格(JIS Q 9023)に書かれています。
JSQC「方針管理の指針」7章では、トップマネジメントが組織の使命、
理念、ビジョンなどについて明確にすることが書かれていますので
参考になります。

組織全体のパフォーマンスを改善するためには、組織が目指す方向に
ついての共通の認識を形成し, その実現に向けてボトルネックとなる
課題を摘出し、全員の参加を得て確実に解決していくことが重要である、
としています。
トップマネジメント(組織の社長、役員、事業部長など)は、このような
状況を作り上げるために、方針管理が役立つことを組織に認識させ、
その導入・活用を図るとともに、その実践に深く関わり、有効に機能
させていくのがよいとしています。

■□■ 具体的に行うべきこと ■□■

引き続き、JSQC「方針管理の指針」(JIS Q 9023 )にガイドされている
ことを述べます。
具体的には、次のことを行うのがよい、としています。

組織の使命・理念、ビジョン、経営環境などに基づいて中長期経営計画
を策定する。
b)中長期経営計画に基づいて組織全体の期ごとの方針を策定する。
c)組織方針を組織全体に展開する。
d)方針の実施に必要な予算、人々、インフラストラクチャーなどの資源を
確保する。
e)各部門又は部門横断チームとの直接のコミュニケーションを通じて、
方針の展開及び実施のプロセス、並びに方針の達成状況を診断する。
f)方針の達成の状況及びそのプロセスを、期の途中に適宜評価するとともに、
期末にレビューする。
g)人々が組織の方針を達成することに十分に参画できる内部環境を作り出し、
維持する。
h)方針管理を推進するための組織化を行う。組織の規模が大きく、機能又は
部門の数が多い場合は, 方針管理に関する仕組みを構築し、必要な教育を行い、
進捗状況をトップマネジメントに報告する推進部門を設置又は任命する。

このようなことを行うことで組織のアイデンティティが明確になっていくと思います。

ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol 226 ■□■
***ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-6***
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前回は、中條先生編集の「ISO 9004:2018 解説と活用ガイド」に上げられて
いる、5つの変化に対応する組織の能力について、それぞれの変化とそれに
対する組織能力と品質マネジメントの強化点について述べました。

■□■  JSQC日常管理の指針 ■□■

日本品質管理学会JSQCの「日常管理の指針」の中にも組織の能力について
何か所かで触れています。
総合的品質管理 (TQM: Total Quality Management)とは、顧客及び社会の
ニーズを満たす製品・サービスの提供と、働く人々の満足を通した組織の
長期的な成功を目的とし、プロセス及びシステムの維持向上、改善及び革新を、
全部門・全階層の参加を得て行うことで、経営環境の変化に適した効果的かつ
効率的な組 織運営を実現する活動です。

TQMの中核となる活動は、プロセス及びシステムの維持向上、改善及び革新
ですが、組織の能力を引き出すには維持向上、改善及び革新をバランスよく
行うことが大切です。

■□■  日常管理 ■□■

日常管理と方針管理:維持向上を実践するためには、各々の部門・担当者が
自分の役割を継続的・安定的に果たすことができるようにする必要があります。
職務とそれを行うプロセス、職務の出来栄えに影響する要因とそれを一定に
保つ方法などを明確にするとともに、人が入れ替わる中でこれらを確実に行う
ことのできる仕組みを確立する必要があります。また、このような努力にも
かかわらず、思い通りの結果にならないことも少なくなくありません。

職務の出来栄えを測定する方法を考え、通常と異なる結果が得られた場合には、
その事実を関係者の間で速やかに共有し、確実な原因追究と対策を実施することが
必要です。これが「日常管理」です

■□■  方針管理 ■□■

他方、維持向上だけでは足りない部分について改善・革新を実践するためには、
顧客のニーズや経営環境の変化に対応するための戦略・目標を立て、その達成の
ために取り組むべき課題・問題を目的指向・重点志向の原則に沿って明らかにする
必要があります。これが「方針管理」です。

日常管理、方針管理の双方に、管理・日常管理を通じて明らかとなった様々な
課題・問題について、解決を図る活動が必要です。コミュニケーシヨンが図り
やすい少人数によるチームを構成した上で、特定の課題・問題 についてスビードの
ある取り組みを行い、その中で各人の能力向上と自己実現、信頼関係の醸成を図る
ための活動を戦略的に行います。部門横断チーム、部門ごとのプロジェクト活動、
第一線の従業員によるQCサ ークル活動などが含まれます。

■□■  工程能力 ■□■

プロセスの結果は様々な原因によってぱらつきますが、原因の中には、結果に
与える影響が小さく、技術的あるいは経済的に突き止めて取り除くことが困難又は
意味のない原因も少なくありません。

他方、プロセスの結果に影響を与える原因の中には、標準を守らなかった、原料が
変わった、設備の性能が低下したなど、安定した結果を得る上で見逃しては
ならないものもあります。このような原因については、直ちにプロセスを調査し
その原因を取り除き、再発防止につなげる必要があります。

突き止めて取り除く必要のある原因によって結果が通常の安定した状態から大きく
外れる事象は、「工程異常」又は「異常」と呼ばれます。
工程能力が不足している場合は、工程能力調査や工程解析などの結果に基づいて
改善・革新に取り組む必要があります。また、改善・革新が完了するまでの間は、
異常がなくとも不適合が発生する可能性が高いため、全数検査を行い、選別や
手直しにより規格外のものが後工程に流れないようにしながら日常管理のもとで
維持向上に取り組みます。

■□■  エラー防止 ■□■

標準の遵守を徹底するためには、なぜそうしなければならないのか、守らなかった時の
影響にいて理解することが大切です。標準を守らなかったために発生したトラブルの
事例を用いて教育すると効果的です。また、パトロール等を行い、標準が守られていない
場合には指摘、指導を行うのがよいでしょう。

さらには、標準を自分で作るだけの能力を身につけさせ、その作成・改訂に参加して
もらうがよいと思います。
日常的に作業担当者からの声を集めて、検討することも大切です。意図しないエラーを
防止するためには、エラープルーフ化(間違いにくくする、間違えると次の作業ができない
ようにするなど)を行います。この場合、作業に潜在するエラーを洗い出し、事前に対策を
取っておくのが必要です。また、過去に行なった有効な対策を共有して活用することも大切です。

■□■  組織風土作り ■□■

日常管理のための人材の育成と職場風土づくりは、各部門の管理者の重要な役割です。
各部門の管理者は自分が役割を果たせているか、職場で何が起こっているのかについて常に
関心を払う必要があります。

この際、次の点に注意するのがよいと思います。

・ 職場の使命・役割を、環境の変化に応じて、適宜見直す。
・ 業務のプロセス、作業内容についても、環境の変化に応じて、適宜見直しを行い、
標準を改訂する。
メンバー全員に仕事の目的・意義を説明し続ける。
メンバーが標準に基づいて作業ができているか、毎日確認する。
メンバーがやり難いと思ったり、標準を守ることができなくなったりしていたら、
メンバーからの声を聞いて、解決に向けた処置をとる。このため、メンバーの困りごとを
絶えず吸い上げる仕組みを構築する。
・ さらにメンバー全員の参加による日常の改善が促進される活動を、仕組みとして整備して
展開することも極めて重要である。(例えば、「QCサークル活動」の導入など)

風士作りにおいては、メンバーのモチベーションを維持・向上させることが大切です。
この際、次の点に注意するのがよいでしょう。

・メンバーに期待を示す。
・メンバーが困ったときには、支援する。
・メンバーが改善に取り組んでくれたら、結果にかかわらず感謝の気持ちを表す。
・ 「メンバーの能力を高めてその能力を最大限引き出す」ことができる職場づくりに取り組む。