Category Archives: つなげるツボ

品質不祥事に思う ― 品質管理教育1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.190 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 品質管理教育1 ***
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厚生労働省の毎月勤労調査の品質不祥事の原因の一つに官僚に品質管理教育が
されていないことが上げられると思います。

日本のエリートである官僚たちは、教育の機会さえあれば昨今のような問題は
起こさないのではないかと思います。
専門知識以前の常識的な考え、具体的言えば小学校レベルの教育を真剣に考える
必要があるのではないでしょうか。

■□■ 小学校レベルの教育 ■□■

ここでは品質管理教育の話をしたいと思っていましたが、書き始めて、その前に
小学校レベルの教育の話をしたいと思うようになりました。
急に小学校レベルの話というと、程度の低いレベルの話と勘違いされそうですが、
その反対の話です。

私は小学校を卒業してから半世紀以上経っていますが、いまだに小学校の先生の
話を覚えています。覚えているだけでなく、何かの時の判断基準として無意識の
うちに脳内にその教えが蘇ってきます。

例えば、小学校の5年生の時に次のような話を先生がおっしゃいました

■□■ 中国は眠れる獅子 ■□■

先生は、「中国は眠れる獅子だ、隣人として仲良くする大人になりなさい」と
言ったことを覚えています。
当時(1950年代)、日本は「一億総懺悔」と言われるように、国民、教育者、
経営者、マスコミ、政治家がこぞって戦争への後悔を口にし、民主主義の旗印の下、
国中が戦争への反省をしました。

学校教育も、二度と戦争をしない国になる、戦争で迷惑をかけた国に詫びなければ
ならないというアメリカ占領軍からの指示による教育が全国で行われていました。
独裁的な軍国主義の国から、国民による民主主義の国へという大転換が行われて
いたのです。

小学校では「日本は悪いことをした、二度と戦争をしてはならない」という教えが
徹底され、戦争を始めた動機、国際的な日本の立場などの国際情勢については記憶に
ある限り全く教えられませんでした。
そのことの是非は大人になって考えさせられることになるのですが、ここでは触れません。

■□■ いつも中国を意識する自分 ■□■

「中国は眠れる獅子だ、隣人として仲良くする大人になりなさい」の教えは、直ぐに
忘れてしまったものと思います。少なくとも、中学校、高校時代に、その教えから
何かが思い浮かんできたという自覚は今までにありません。

しかし、社会人になってから、何かの機会にまるで不死鳥のごとくその言葉が蘇って
くるのです。1970年代に中国に出張をしました。その時は中国はまだ貧しい国で日本が
盛んにODA援助を行っていました。
その際もこの国は数十年後には大国になるのだと思ったものです。

このように、小学校で教えてもらったことは、そのすべてではなくても、その人の心に
一生残るものかと思います。
いま現在どんなことが小学校で教えられているのか知りませんが、占領軍のように
強力な教育方針は示せなくても、日本の将来に向けてどんなメッセージを小学生に
送るべきかは大変に重要なことであろうと思います。

言いたいことは、子供の頃にしっかりと教育されたことはその後の人生に大きく
影響を与えるということです。

■□■ 品質管理教育とは ■□■

日本は品質を大切にしている国です。国土の品質、インフラの品質、人の品質、
ものの品質、データの品質などについて小学校で教えてもらいたいと思います。
そして。事には因果関係がある、ものはバラツクということも小学校で教えて
もらいたいと思います。

品質不祥事に思う ― ISO9001との関係 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.189 ■□■    
***品質不祥事に思う ― ISO9001との関係***
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厚生労働省の毎月勤労調査の品質不祥事の要因(と思われること)を
Vol.187で幾つか上げました。
官僚は国家公務員試験を合格した日本のエリートたちですから、
今回の品質不祥事は常識的には起こりえないことです。

しかし、我々が常識的だと思うことが、そうではなく裏切られることが
この数年いろいろな分野で起こっています。
OJTを含めて自分の仕事の目的を正しく理解することが何より求められる
と思います。

■□■ ISO9001のQMS ■□■

いまさら言うまでもないですが、品質マネジメントシステムの構築、運用、
維持はこのような不祥事が起きないように活用すべき経営のツールです。
このことは民間でも、官庁でも全く変わらないと思います。

今回の不祥事の要因として上げたVol.187の項目とISO9001の要求事項との
関係は次のようになります。

・統計データを纏める責任権限があいまいである。
・担当者交替の引継ぎがされていない。
・担当者交替時の引継ぎ項目が決まっていない。
 →「ISO9001箇条5.3 組織の役割,責任及び権限

トップマネジメントは,関連する役割に対して,責任及び権限が割り当てられ,
組織内に伝達され,理解されることを確実にしなければならない。

トップマネジメントは,次の事項に対して,責任及び権限を割り当てなければ
ならない。

a) 品質マネジメントシステムが,この規格の要求事項に適合することを確実にする。
b) プロセスが,意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。
e) 品質マネジメントシステムへの変更を計画し,実施する場合には,品質マネジメント
システムを“完全に整っている状態”(integrity)に維持することを確実にする。」

・統計データを纏める仕事の労力が足りない。
 →「ISO9001箇条7.1.2 人々
組織は,品質マネジメントシステムの効果的な実施,並びにそのプロセスの運用及び
管理のために必要な人々を明確にし,提供しなければならない。」

・統計データを纏める仕事をする力量が決められていない。
・統計データを取る専門知識が足りない。
・統計データの纏め方を知らない。  
・教育訓練がされていない。
 →「ISO9001箇条7.2 力量

a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務を
  その管理下で行う人に必要な力量を明確にする。
b) 適切な教育,訓練又は経験に基づいて,それらの人々が力量を備えていることを
 確実にする。
c) 該当する場合には,必ず,必要な力量を身に付けるための処置をとり,とった
処置の有効性を評価する。
d) 力量の証拠として,適切な文書化した情報を保持する。」

・毎月勤労統計がどんなことに使われるのか知らない。
・やっている仕事の目的、意義を理解していない。
・ルール逸脱の結末を理解していない。
 →「ISO9001箇条7.3 認識

組織は,組織の管理下で働く人々が,次の事項に関して認識をもつことを確実に
しなければならない。

c) パフォーマンスの向上によって得られる便益を含む,品質マネジメントシステム
の有効性に対する自らの貢献」
 
・統計データを纏めるルール改正が規定通り行われていない。
 →「ISO9001箇条7.5 文書化した情報
   文書化した情報を作成及び更新する際,組織は,次の事項を確実に
   しなければならない。
c) 適切性及び妥当性に関する,適切なレビュー及び承認」

・統計データを纏める際に規定文書を確認、チェックしていない。
 →「ISO9001箇条8.5 製造及びサービス提供の管理
  組織は,製造及びサービス提供を,管理された状態で実行しなければならない。
  管理された状態には,次の事項のうち,該当するものについては,必ず,
  含めなければならない。

a) 次の事項を定めた文書化した情報を利用できるようにする。」
 
・統計データを纏める業務の監視測定がされていない。
・何を分析し、何を評価するのか決まっていない。
→「ISO9001箇条9.1 監視,測定,分析及び評価

組織は,次の事項を決定しなければならない。
a) 監視及び測定が必要な対象
b) 妥当な結果を確実にするために必要な,監視,測定,分析及び評価の方法
c) 監視及び測定の実施時期
d) 監視及び測定の結果の,分析及び評価の時期
 
・統計データを纏める業務が内部監査されていない。
 →「ISO9001箇条9.2 内部監査
9.2.1 組織は,品質マネジメントシステムが次の状況にあるか否かに関する
情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければならない。」

■□■ 官公庁のQMS ■□■

今回の毎月勤労調査の品質不祥事をISO9001要求事項と重ね合わせてみると、
官公庁にも品質マネジメントシステムが必要であることがよく分かります。

品質不祥事に思う ― 文書化12 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.188 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化12 ***
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厚生労働省の毎月勤労調査の品質不祥事の原因の一つは、役所の
教育訓練体制にあると思います。
国家公務員試験に合格した日本のエリートたちがなぜこのような
問題を起こすのかを考えた時、仕事はこなせても仕事の質について
理解できていないのではないかと感じます。

自分の仕事の目的、その質をOJTなどの教育できちんと教えられて
いないのかもしれません。

■□■ 品質不祥事に思う-文書化 ■□■

品質不祥事に思うー文書化についてはこれで最後にしたいと思います。
本メール計22問の最後に残っているのは、まさしく紛失したと報道
されている記録のことです。

18. 記録すべき文書の確認
19. 要員の記録理解
20. 記録の識別可能性
21. 記録の検索容易性
22. 記録の管理方法

■□■ 記録に関する問題意識 ■□■

本メルマガのvol.179で掲げた記録に関する項目のNo.18~22は
次のようなものでした。
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NO.18
項目:記録対象の確認
問題意識:記録対象は明確か
対応:記録にはどのようなものがありますか
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NO.19
項目:記録の理解性の確認
問題意識:記録の内容が要員に理解できるか
対応:記録を理解するためにどのような方法をとっていますか
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NO.20
項目:記録の識別可能性の確認
問題意識:記録の種類が明確で、区分できているか
対応:記録の種類の区別はどのようにしていますか
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NO.21
項目:記録の検索容易性の確認
問題意識:記録は使用する場合にすぐに検索できるか
対応:記録を検索する場合の方法はどのようにしていますか
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NO.22
項目:記録に対する必要な管理方法の確認
問題意識:記録の管理方法が要求事項を満たしているか
対応:記録の識別、保管、保護、検索、保管期間、廃棄については
どのような方法をとっていますか

■□■ NO.18 記録対象の確認 ■□■

今回の毎月勤労調査に関して、毎月勤労調査結果は記録になっていますか、
と聞けば答えはYesだろうと思います。

官庁には厳格な文書管理の規定がありこの種の基幹調査の記録は必ず
保管対象になっており、保管期間も決まっています。

■□■ NO.19 記録の理解性の確認 ■□■

今回の毎月勤労調査に関して、記録の内容を要員が理解できているか
といえば、これも答えはYesでしょう。
しかし、理解している内容、程度については疑問があります。

記録の使われ方、使用目的、精度、ルール逸脱の結果のダメージなど
について、担当者がきちんと理解していたとは思えません。

■□■ NO.20 記録の識別可能性の確認 ■□■

保管されている記録がそれぞれ識別されているか、ということですが、
厚生労働省でも当然保管用段ボール、あるいは電子情報に名前を付けて
記録を識別していると思います。

■□■ NO.21 記録の検索容易性の確認 ■□■

今回の毎月勤労調査に関して、記録の種類が明確で区分できているか
といえば、答えはこれもYesだと思います。

■□■NO.22 記録に対する必要な管理方法の確認■□■

今回の毎月勤労調査に関して、記録の保管、保護がきちんとしていたか
というと、冒頭述べたように一部の記録が廃棄されたり、紛失していた
ということから、システムは不完全であったと言わざるを得ません。

■□■ 考えられない記録の廃棄 ■□■

日本の官僚の優秀性からして規定されている記録を保管期間中に廃棄する
など考えられません。
今回の統計データの品質不祥事問題は、記録が無くなっているという結果
(これも考えられない状況であるが)よりは、なぜ起きたかの方がより
重要だと思います。要因は前号で述べたようにいろいろあるでしょう。

これらの要因とISO9001との関係を次号から述べたいと思います。

品質不祥事に思う ― 文書化11 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.187 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化11 ***
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先のメルマガでは、品質不祥事の官庁版として、厚労省の毎月勤労統計を
取り上げました。
先週、総務省からは基幹統計56種の内、なんと約半数の22種類(毎月勤労
統計を含む)の統計にミスがあったとの発表がされました。

報道された統計資料は以下の通りです。

1.住宅土地統計
2.全国消費実態統計
3.経済構造統計
4.法人企業統計
5.学校教員統計
6.社会教育統計
7.毎月勤労統計
8.薬事工業生産動態統計
9.医療施設統計
10.患者統計
11.牛乳乳製品統計
12.農業経営統計
13.ガス事業生産動態統計
14.商業動態統計
15.企業活動基本統計
16.港湾統計
17.造船造機統計
18.建築着工統計
19.鉄道車両等生産動態統計
20.建設工事統計
21.自動車輸送統計
22.法人土地・建物基本統計

■□■ 毎月勤労統計と同じ品質不良 ■□■

随分と多くの統計が不正確であったということで驚くと共に、我々の日常にも
深く関係しそうな統計名が並んでいる事を改めて認識させられました。
以上の22統計の不適切な事象には、納期遅れとか、提出企業のデータ誤記とか、
いろいろなものが混在しています。

毎月勤労統計と同様に「一部を集計しなかった」という品質不良は次の統計にありました。

1.住宅土地統計
2.全国消費実態統計
3.経済構造統計(以上総務省)
4.法人企業統計(財務省)

■□■ 品質不良の原因は? ■□■

それでは何が原因だったのでしょうか。厚労省の毎月勤労統計に限っていいますと、
2004年当時の担当係長が東京都の担当者からの要請で手のかかる統計データ収集を3分の1位に
出来ないかとの相談があり、それに応える形で業務マニュアルを変更したということです。

事実がそのとおりであるのかはこれから明らかにされると思いますが、ここで重要なことは
当時の担当係長、その上司等を責めるのではなくその背後にある要因を徹底して調べることです。

■□■ どんな要因があり得るのか ■□■

考えられる要因は数多くあると思います。その中から本当の、すなわち真の要因を探り当て
なければなりません。
探り当てられた数少ないものが原因であり、その原因を除去しなければまた同様な事象が
何年後かに起きます。そして、除去した状態を維持することは、マネジメントシステムの
構築、運用、維持が必要になります。

新聞情報では、今回の調査対象を少なくした理由は、地方自治体から統計データを集めるに
際しての労力が足りないという話が出ていますので、今回の事象の要因としては資源の不足は
真っ先に要因として上げられます。

それを含めて、次のようなことが考えられます。

 ・統計データを纏める仕事の労力が足りない。
 ・毎月勤労統計がどんなことに使われるのか知らない。
 ・統計データを取る専門知識が足りない。
 ・統計データの纏め方を知らない。
 ・やっている仕事の目的、意義を理解していない。
 ・規定文書を確認、チェックしていない。
 ・文書変更が規定通り行われていない。
 ・担当者交替の引継ぎがされていない。
 ・担当者交替時の引継ぎ項目が決まっていない。
 ・教育訓練がされていない。
 ・責任権限があいまいである。
 ・仕事をする力量が決められていない。
 ・ルール逸脱の結末を理解していない。
 ・監視測定がされていない。
 ・何を分析し、何を評価するのか決まっていない。
 ・内部監査がされていない、など。

■□■ 教育訓練は ■□■

思いつくまま上げましたので、今回の事象からピントがずれているものがあると思いますが、
このような要因すべてが組織の弱さを示しているのか、はたまた個人のポカミスなのかは
十分に分析、評価する必要があると思います。

品質不祥事に思う ― 文書化10 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.186 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化10 ***
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企業においては、文書が修正されたり、廃止されているにもかかわらず、
関係者がその事を知らなかったという状況はまずないでしょう。

先々週、そんな状況に関係すると思える問題が厚労省から発表されました。
すでに大きく問題になっていますが、国民の生活に関係する基礎的な統計
データが不正確であったということです。
その後、総務省からは類似の問題が厚労省以外の省庁の統計データにも
見られると発表がありました。

■□■ これも品質不祥事問題 ■□■

これは昨今の製造業における品質不祥事と同根の問題であると思います。
しかし、どの新聞も国が不適切な統計作業をしたことを品質不祥事として
扱わず、もっぱら国の責任を追及するだけという姿勢に不満を感じます。

もちろん、責任の追及は必要ですが、なぜ起きたのかの原因追究が優先され
ないことが不満です。品質不祥事問題と位置づけられ是正処置が議論されない
と、単なる官僚の不作為な行為として処置されてしまい、再発防止がきちんと
できないと思います。

■□■ 厚生労働省の「毎月勤労統計」 ■□■

今回のニュースで初めて厚生労働省が「毎月勤労統計」なるものを集計して
いることを知りました。「毎月勤労統計」は国の基幹統計の一つにすぎず、
国が特に重要と位置付ける基幹統計は56あることも知りました。

先週には基幹統計を統括する総務省が、56基幹統計の内半数に近い22統計に
不適切なミスが見つかったと発表しました。
例えば、「毎月勤労統計」は雇用保険額算出の統計データですが、500人以上の
規模の全事業所を調査対象にしなければならないルールを2004年以降、3分の1
程度の事業者調査でよしとした、いわばルールを変えてしまったことが今回の問題です。

■□■ ルールを変えると影響が出る ■□■

真偽の程は分かりませんが、全数統計調査するルールを3分の1程度の統計調査で
よいとルールを変えたのは、作業する人員が足りなかったと報道されています。
長年行ってきたルールを当事者だけで変更したようですが、その結果、賃金などの
統計数値が実態より低くなってしまいました。

統計数値を基に計算される雇用保険の支給金額などが実態よりも低く設定され、
過少支給の対象者は推定するに実に1970万人、過少金額は540億円に上るという
びっくりするような影響になっています。

■□■ 厳格なルールを変えたい ■□■

前号メルマガでもお話ししたように、長年行っている業務には世代交代と共に、
厳しいルールを緩やかなルールに変えたいという誘惑が常に働きます。
厳しいかどうかはその結果によって判断されるべきですが、場合によっては
ルールを緩やかにしてもよいという判断が下される可能性もあります。

しかし、その判断へ至るまでには合理的な道のりがあり、最終判断までには
多くのステップと課題があるはずです。
厚労省のケースでは、職員の人員不足がこの問題を発生させたということですが、
人員不足が問題であるならば、当然そのことを明らかにしてルールを検討する
必要があります。

しかし、勝手に調査対象数を少なくするという今回の出来事は、顧客の特別採用が
あるから緩やかなルールに変えたという民間の品質不祥事と全く同根の問題です。

■□■なぜルール変更のステップを踏まないのか■□■

500人以上規模の事業所を全数調査することが、もはや人員不足で出来ないので
あれば、国民に説明して統計調査のやり方を変更すればよいのですが、その
ステップには多くのエネルギーと強い意志が必要で簡単に問題は解決しません。

ルールを変えるにはそれなりの高いハードルがあるのです。
民間の検査工程で人手が足りないということで検査を省いたと同じで、ここでも
ルールを勝手に変えたが関係者はそのことを深刻な問題であると理解していなかった
ということになります。

■□■ 16.廃止文書の取扱い方法の確認 ■□■

厚労省にも業務の規定文書は当然あったはずですが、その規定文書は在っても無い
同然の扱いになっていたということです。
今回の厚労省の問題に直接関係しませんが、企業では文書を廃止せず、いつまでも
文書を有効な状態にしている例があります。

文書の整理整頓がされていないということになりますが、廃止文書の考え方は明確に
しておく必要があります。
また、廃止と決めた文書の処理はどのようにするのかも決めておかなければなりません。

■□■ 17.廃止文書の識別方法の確認  ■□■

日常の仕事で、人々が廃止文書を「廃止されている」と判断できるようになっているか
というのも大切な要素です。
廃止文書を保管してあるならば、それらをどのような方法で区別するのかも決めておく
ことが必要です。