Category Archives: つなげるツボ

ISO9001キーワード 1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.466 ■□■
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*** ISO9001キーワード 1 ***
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今回からISO9001:2015規格に出てくるキーワードについて、世
の中の広い情報から抽出した周辺知識をお伝えしたいと思います。
これらの知識は要求事項ではありませんので、ISO審査員、内部
監査員が職務遂行する際は使用してはなりません。しかし、審査
を離れて、ISOマネジメントシステムが意図することを一歩踏み
込んで知ることはとても有用だと思いますので、周辺知識を増や
す意味でお読みください。

■■ リーダーシップ  ■■
ISO9001:2015には次の要求事項があります。

5 リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.1.1 一般
トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメン
トシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証し
なければならない。
a) 品質マネジメントシステムの有効性に説明責任(accountability)
を負う。
b) 品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を
確立し,それらが組織の状況及び戦略的な方向性と両立する
ことを確実にする。
c) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項
の統合を確実にする。
d) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進
する。
e) 品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であるこ
とを確実にする。
f) 有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求
事項への適合の重要性を伝達する。
g) 品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成するこ
とを確実にする。
h) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積
極的に参加させ,指揮し,支援する。
i) 改善を促進する。
j) その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダー
シップを実証するよう,管理層の役割を支援する。

引用 JIS 品質マネジメントシステム-要求事項 JISQ9001:2015

■■ ドラッカーのリーダーシップ論  ■■
経営の神様と言われたピーター・ドラッカーは、リーダーシップ
について次のような考えを述べています。
(1)フォロワーがいてこそのリーダーである。
 「フォロワーがいる」という今日的(SNS時代)用語を用いて
説明していることに驚かされます。1980年代にフォロワーと
いう言葉を使ってリーダーシップの本質を説明しています。
裸の王様になっていないか、独りよがりになっていないか、
多くの人たちがついて来てこそのリーダーであると核心を衝
いています。
(2)称賛されもしないし愛されもしない。
  リーダーは孤独です。先頭に立って事を行う人は称賛される
どころか、もしかすると憎まれるかもしれません。ましてや
愛されることはないでしょう。逆に言うと称賛されたり、愛
されたりすることを意識するようでは本当のリーダーシップ
を発揮していないということです。
(3)とてもよく目立ち、模範を示す。
  リーダーは先頭に立ちますから「とても目立ちます」し、進
む方向を示しますから間違えたら大変なことになります。模
範となるような行動をしなければなりません。
(4)リーダーシップを責任と見なしている。
  リーダーシップをとる人はその時の気まぐれで行動をとるこ
とは厳に慎まなければなりません。それでは単なるお山の大
将です。責任(responsibility)という重たい言葉を自覚して
行動をしなければなりません。

■■ リーダーの問い掛け  ■■
ドラッカーは次のようにも言っています。
リーダーはいくつかの鍵となる問いかけをすることができなけれ
ばなりません。
・いま何をやる必要があるか?
いま責任者としてどんなことをしなければならないのか、タイ
ミングを失ったら同じことをやっても効果はないかもしれませ
ん。
・違いを生み出すために私は何をすることができるか?
 リーダーは常に他者との違いを意識していなければなりません。
競争力は他者との違いから生まれますので、差別化の認識は重
要です。
・組織の使命とゴールは何で、何が業績と結果の構成要素となる
か?
マネジメントの根幹にあるミッション/ビジョン、そしてそこ
から導かれてくる業績を簡潔に述べています。
更にドラッカーは「有能なリーダーの特徴は、常に「ミラーテス
ト」を行う」と言っています。すなわち、鏡の中にいる人物は、
自分がなりたいと思い/尊敬し/信じられる人物であるか、と常に
自問しているという説明です。鏡の中にいる人物とは誰でしょう
か?ドラッカーは何も言っていません。
(つづく)

品質経営を考える7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.465 ■□■
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*** 品質経営を考える7 ***
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CG(コーポレートガバナンス)コードの構成は5章構成ですが、
企業経営に重要であると思われる製品「品質」のことが全く出て
こないことに違和感を覚えています。株主の権利保護、取締役の
執行監督・監視などは当然ですが、企業経営の健全性を主張する
のであれば品質についても一言記述していただきたいと思います。

■■ CGコード第3章 ■■
CGコードの第3章は「情報公開」を扱っていますが、この章に
書かれている情報公開も「品質経営」には必須なことです。
「品質経営」とは、製品・サービスの品質を組織経営の中核に置
いて経営を行うという概念であると前回申し上げましたが、組織
は品質の良い製品・サービスを市場に提供し、顧客に価値を与え
て持続的に存在していけます。その製品、サービスの品質につい
て、近年データ改ざん、認定品の捏造、事実の隠蔽など情報公開
に関する問題が多く発覚しています。

【基本原則3】
 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営
戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報
について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づ
く開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建
設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報
(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、
情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

【原則3-1】(情報開示の充実)
 上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社
の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガ
バナンスを実現するとの観点から、以下の事項について開示し、
主体的な情報発信を行うべきである。

(i)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(ii)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバ
ナンスに関する基本的な考え方と基本方針
(iii)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっ
ての方針と手続
(iv)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指
名を行うに当たっての方針と手続
(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取
締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名
についての説明

【補充原則3-1-(1)】
 上記の情報の開示(法令に基づく開示を含む)に当たって、取
締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者に
とって付加価値の高い記載となるようにすべきである。

【補充原則3-1-(2)】
 上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、
合理的な範囲において、英語での情報の開示・提供を進めるべき
である。
 特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる
情報について、英語での開示・提供を行うべきある。

【補充原則3-1-(3)】
 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリ
ティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資
本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題
との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供
すべきである。

 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収
益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要な
データの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みで
あるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充
実を進めるべきである。

【原則3-2】(外部会計監査人)
 外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資
家に対して責務を負っていることを認識し、適正な監査の確保に
向けて適切な対応を行うべきである。

【補充原則3-2-(1)】
 監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきである。
(i)外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切
に評価するための基準の策定
(ii)外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有している
か否かについての確認

【補充原則3-2-(2)】
 取締役会及び監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきで
ある。
(i)高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保
(ii)外部会計監査人からCEO・CFO等の経営陣幹部へのアク
セス(面談等)の確保

(iii)外部会計監査人と監査役(監査役会への出席を含む)、内部
監査部門や社外取締役との十分な連携の確保
(iv)外部会計監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合や、
不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立

出典 日本取引所グループnlsgeu000005lnul.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第3章の解説 ■■
補充原則3-1-(3)には、サステナビリティについて、および人的
資本や知的財産への投資等についての情報開示を求めていますが、
ここに「製品(サービスを含む)品質」についての情報開示も追
加していただきたいと思っています。
また、補充原則3-2-(2)には、(ii)外部会計監査人からCEO
(Chief Executive Officer)・CFO (Chief Financial Officer)等の
経営陣幹部へのアクセス(面談等)の確保が求められています。
CEO、CFOに加えてCQO (Chief Quality Officer)も加えていただ
きたいと思います。
これまで7回にわたって品質経営とCGコードの関係について説
明をしてきましたが、全体を通じて発信したかったことは、上場
企業において影響力が強いCGコードに品質への言及がないので、
経営の要である製品品質について一言、二言推奨あるいは要求を
してほしいということです。
さらに言えば、株主、機関投資家への還元を言うのであれば、そ
の原資は製品・サービスの品質にありますので、「還元」という
結果と同時に「品質」という要因についてもCGコードは言及す
べきであると考えます。

(つづく)

品質経営を考える6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.464 ■□■
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*** 品質経営を考える6 ***
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品質経営を考えると称して、これまで5回CG(コーポレートガ
バナンス)コードについて説明してきました。しかし、読者から、
このメルマガで説明のあったCGコードは、「品質経営に触れて
いないのではないか」という疑問が寄せられましたので、今回は
その疑問にお答えしたいと思います。

■■ CGコード第2章 ■■
CGコードの第1章に続き第2章の説明に入ります。CGコードの
第2章は「企業の社会責任」を扱っていますが。まさにこの章に
「品質経営」に関係することが出てきます。
「品質経営」とは、製品・サービスの品質を中核において経営を
行うという概念です。組織は製品・サービスを市場に提供し、顧
客に価値を与えて持続的に存在していけます。品質の悪い製品・
サービスは自ずから市場から排除され、そのような製品・サービ
スを提供し続けている組織は退陣を余儀なくされます。

【基本原則2】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出
は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様
々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果である
ことを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働
に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場
や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けて
リーダーシップを発揮すべきである。

【原則2-1】(中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定)
上場企業は、自らが担う社会的な責任についての考え方を踏まえ、
様々なステークホルダーへの価値創造に配慮した経営を行いつつ
中長期的な企業価値向上を図るべきであり、こうした活動の基礎
となる経営理念を策定すべきである。

【原則2-2】(会社の行動準則の策定・実践)
上場会社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の尊
重・健全な事業活動倫理などについて、会社としての価値観を示
しその構成員が従うべき行動準則を定め、実践すべきである。取
締役会は、行動準則の策定・改訂の責務を担い、これが国内外の
事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにすべきで
ある。

【補充原則2-3-(1)】
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊
重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引
先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステ
ナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益
機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企
業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り
組むよう検討を深めるべきである。

出典 日本取引所グループ
nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第2章の解説 ■■
第2章は企業の「健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土
の醸成に向けて」の活動について推奨事項を掲げています。

「価値創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値向上を
図るべきであり、こうした活動の基礎となる経営理念を策定すべ
き」であるとして、「気候変動などの地球環境問題への配慮、人
権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、
取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サ
ステナビリティを巡る課題への対応」を求めています。

ただ、品質経営の観点から見ると「品質」の2文字がありません。
「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の
健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・
適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを
巡る課題への対応」の文中を次のように改訂することを提案して
いきたいと思います。

「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の
健康・労働環境への配慮、『製品・サービスの質』や公正・適切な処
遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、
サステナビリティを巡る課題への対応・・・」

(つづく)

品質経営を考える5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.463 ■□■
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*** 品質経営を考える5 ***
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上場企業の組織経営に大きな影響を持っている、コーポレート
ガバナンスコード(CGコード)は出来てからまだ10年です。
企業行動の規範にはいろいろありますが、CGコードが上場企
業のアキレス腱を握っているからだと思います。上場企業のア
キレス腱とは、株主総会に上程した議案が否認されることです
が、この上程議案は株主の投票によって決定されます。CG
(コーポレートガバナンス)コードは、金融庁/東証(日本取
引所グループ)によって運用されていますが、法律ではないの
で強制力はありません。会社が、株主をはじめ顧客・従業員・
地域社会などの立場を踏まえたうえで、透明・構成かつ迅速・
果敢な意思決定を行うための仕組みです。全部で5章構成の比
較的短い文書です。でもここに「品質」の一文字が無いことに
違和感を覚えています。

■■ CGコード第1章-3 ■■
CGコードの第1章は「その1~その7」まであり、株主の権利
について事細かく上場企業に注文を付けています。今回はその3、
すなわち「資本政策の具体的な方針」推奨事項について説明をし
たいと思います。

【原則1-3】(資本政策の具体的な方針)
上場会社は、資本政策の動向が株主の利益に重要な影響を与え
得ることを踏まえ、資本政策の基本的な方針について説明を行う
べきである。

引用 nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第1章-3の解説 ■■
【解説】
「資本政策」というISO関係者には聞きなれない言葉がでてきま
す。資本とは会社が活動する元となる資金のことですが、事業活
動の進展・拡大につれて追加資金が必要になってきます。そこで
事業資金を調達する計画を作成する必要がでてきますが、必要と
なりそうな資金額を事前に見積もった上で、資金調達の方法を計
画します。できるだけ効率的な資金調達をするためには、足りな
くなった都度調達することではリスクが高く、経営の維持や企業
価値の向上にマイナスになってしまいます。
1-3で求めていることは、こうした資金調達を含め金融分野で代
表されるような指標を使用して基本的な考え・方針を株主にする
べきであるという推奨をしています。
金融の世界で資本に関係する代表的な政策、指標には次のような
ものがあります。
1.自己資本比率の向上
企業自身のお金と借金との比率のことで高いほど倒産リスクは
低く、経営は安定していると見なせます。
次の式で計算されます。
・自己資本比率=自己資本÷総資本(自身のお金+借金)

2.資本効率の向上
企業の資金がどのくらいの利益を生み出してるかを表す指標で
す。資本効率の代表的な指数には、ROA(総資産利益率)やROE
(自己資本利益率)などがあります。ここでは、ROAやROEに
は触れませんが、資本効率が高い企業は、少額の資本で多くの利
益を稼いでいると言え、資本効率は株式投資の際に企業の収益性
を測る指標としても用いられています。

3.株主配当性向の安定化
年間を通じた企業活動の結果、利益がでればその最終利益(税
引き後純利益)の何割かは投資をした株主に還元します。どのく
らいの率で株主配当を行うのかは、業種、企業履歴、企業政策に
よりますが、一般には50%以下が好ましいと言われています。
企業の支払い余力は高いほど良いので、配当性向は高いほど望ま
しいと思われがちですが、100%を超えるような配当は企業が無
理をして株主を引き留めようとしている可能性があり注意が必要
です。上場企業の多くの株主配当性向は20~40%くらいのです。

4.自己株式取得
最近市場に出回っている企業自身の株式を取得するケースが目
立ちます。本来株式は株主に所有してもらうべきものですが、発
行した企業自身が自分の株を取得するという本来の姿と異なるこ
とが行われています。自己株式を取得すると、市場流通の株式が
少なくなりますので、自己株式を取得することで、1株当たりの
価値を高めることができます。株式の価値は、需要と供給で成り
立っていますので、需要が増えればそれだけ株式の価値は上がり、
逆に供給が増えれば1株当たりの価値は下がります。自己株式の
取得は株式の供給数を減らすことになり、現在の株主には好評な
政策です。ただ、自社株買いは会社の内部留保された現金を使っ
て行うため、株主への利益還元につながるにしても、ある限界で
しかできない政策です。

(つづく)

品質経営を考える4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.462 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 品質経営を考える4 ***
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CG(コーポレートガバナンス)コードの構成は5章構成で、比
較的短い文章で述べられていますので、この機会にISO関係者
も中身をざーっと理解しておくと良いと思います。5章構成の中
に、株主の権利保護、取締役の執行監督・監視などが書かれてお
りそれらは当然ですが。企業経営に重要であると思われる「品質
のこと」が全く書かれていないことに違和感を覚えます。

■■ CGコード第1章-2 ■■
CGコードの第1章は「その1~その7」まであり、株主の権利
について事細かく上場企業に注文を付けています。今回はその2、
すなわち株主総会に関する推奨事項について説明をしたいと思い
ます。

「第1章 株主の権利・平等性の確保
【原則1-2】(株主総会における権利行使)
上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であること
を認識し、株主の視点に立って、株主総会における権利行使に係
る適切な環境設備を行うべきである。

【補充原則1-2-(1)】
上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことに
資すると考えられる情報については、必要に応じ適確に提供すべ
きである。

【補充原則1-2-(2)】
上場会社は、株主が総会議案の十分な検討期間を確保すること
ができるよう、招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつそ
の早期発送に努めるべきであり、また、招集通知に記載する情報
は、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送する
までの間に、TDnetや自社のウェブサイトにより電子的に公表す
べきである。

【補充原則1-2-(3)】
上場会社は、株式との建設的な対話の充実や、そのための正確
な情報提供等の観点を考慮し、株主総会開催日をはじめとする株
主総会関連の日程の適切な設定を行うべきである。

【補充原則1-2-(4)】
上場会社は、自社の株主における機関投資家や海外投資家の比
率等も踏まえ、議決権行使の電子行使を可能とするための環境作
り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英
訳を進めるべきである。
特に、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに
議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきである。

【補充原則1-2-(5)】
信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が、株主総会
において、信託銀行等に代わって自ら議決権行使の行使等を行う
ことをあらかじめ希望する場合に対応するため、上場会社は、信
託銀行等と協議しつつ検討を行うべきである。

引用 nlsgeu000005lne9.pdf (jpx.co.jp)

■■ CGコード第1章-2の解説 ■■
第1章の2は株主総会における詳細なこと(出席株主には詳細で
はないかもしれないが)であるので、全6項目のうち4項目
(1-2-(2)、1-2-(3)、1-2-(4)、1-2-(5))は省略して説明します。

【原則1-2】(株主総会における権利行使)
上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であること
を認識し、株主の視点に立って、株主総会における権利行使に係
る適切な環境設備を行うべきである。
【解説】株主が総会の場に出やすいような開催場所の設定、招集
通知をできるだけは早く(1か月前くらい)出す、インターネッ
トによる議決権行使などの便宜が考えられる。

【補充原則1-2-(1)】
上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことに
資すると考えられる情報については、必要に応じ適確に提供すべ
きである。
【解説】TDネット(Timely Disclosure network:東京証券取引
所が運営する適時開示情報ネットワーク)を使って情報開示する
ことが考えられる。

【補充原則1-2-(2)】、【補充原則1-2-(3)】、【補充原則1-2-(4)】
(1-2-(1)と重複する部分が多いので省略)

【補充原則1-2-(5)】
(詳細な推奨事項に及んでいるので省略)

(つづく)