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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.159 ■□■
*** 朝日新聞記事朝刊1面トップ記事 ***
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これまで、ISO9004:2018 の概要についての説明を続けてきました。
あと2回でISO9004シリーズは終了の予定ですが、7月23日の朝日新聞
朝刊の1面トップに衝撃的な記事が掲載されましたので、そのあらましを
お伝えしたいと思います。
■□■ 「品質認証機関が不正」 ■□■
1面トップのこの見出しは衝撃的です。その見出しの次に副題として
「JIS、無資格や手抜き」とあり、リード文に続いています。
「工業製品の品質やその管理体制の基準を定める国家規格「JIS」や
国際規格「ISO」の認証機関が、不十分な審査で企業に認証を与える
不正をしていることがわかった」とあります。
いままでも、指摘ゼロの審査、ワンランク落とした不適合指摘、2015年版
差分を見ない審査など、いろいろと形骸化した認証審査の問題が議論されて
きましたが、「不正をしている」という認識はなかったと思います。
指摘ゼロの審査などは、わたしもあちらこちらで随分「ありえない」と糾弾?
してきましたが、それを不正だとおもったことは恥ずかしいことにありま
せんでした。
でも、社会の木鐸である新聞社は「不十分な審査」を「不正」だと断定しています。
何が「不十分」であったのか、私どもが指摘し、議論してきた指摘ゼロの審査
などを不十分と言っているのか、興味を持ちました。
■□■ 不正であると主張する根拠 ■□■
そんな興味はより深い思考へ導びいてくれ、また次の興味を抱かせてくれました。
新聞社が不正と断定しているのは、そのような(指摘ゼロの審査など)表面的な
事象からではなく、より根拠のある事象からでした。
朝日新聞が「不正をしている」と結論付けた根拠は、私なりに記事から抽出すると
次のような記載になります。
1.審査員の経歴が不十分
2.審査員が無資格
3.審査員が所定の訓練を非受講
4.審査報告書のチェック工程省略
なるほど、すべてあってはならない事ばかりです。
私の更なる興味は、指摘ゼロの審査、ワンランク落とした不適合指摘、2015年版差分を
見ない審査など巷で言われている形骸化した審査と、1~4の因果関係です。
因果関係がありそうですが、更に詳しく分析する必要がありますので、これについては、
次回以降場面を変えてお話ししたいと思います
■□■ 日本適合性認定協会JABの処分 ■□■
ところで、記事には、こうした不正行為は当該認証機関の代表者(当時)も了承していた、
つまり組織ぐるみの不正であったとあります。
当然のこととして、JABはこの問題を把握しており、意図的な不正である重大な悪質性が
あったとして、7月12日に認定を取り消す処分をしたと報じています。
JABは処分したことはホームページで明らかにしてはいますが、詳しい処分内容は
機密情報に当たるとして公表していないと報じています。
https://www.jab.or.jp/service/management_system/report/list03.html
■□■ 2面における記事 ■□■
さらに2面には、昨今の製造業を中心とした品質不祥事(データの不正改ざん)と
今回の認証審査不正とを関連付けた記事が書かれています。
JISやISOには、企業の製品やサービスが満足できる水準にあると第三者がお墨付きを
与えることで、国内外の取引先がその水準を確認する手間やコストを省き、取引を
円滑にする狙いがあるが、当然のこととして公平な審査が前提になっていると説明
しています。
「品質不正 番人までも 日本のものづくり 揺らぐ信頼」
と、2面の見出しは書かれており、今回の認証審査不正はこうした審査の公平性を
担保しにくい認証制度の問題点を浮き彫りにしたと、認証制度の信頼性に疑問を
投げかけています。
■□■ 油断すると緊張感を失う ■□■
記事の最後にはある審査員の指摘として、「一度認証を出せば、その企業からずっと
金が入ってくる。油断をすれば審査する側とされる側としての緊張感を失いかねない。
そこをいかに律するかが認証機関にとって重要だ」とのコメントで締めくくられて
います。
今回の報道は私にとっては極めて大きな意味を持っています。それは、かつて
光り輝いていた日本の製造業が品質問題で躓いている現状に危機感ばかりか、
唖然とした思いを持っていましたが、ISO認証制度もこの品質不祥事に関係して
いるという事実についてです。
表面的には直接の関係はよく見えませんが、認証を取れば自分の所の品質は
大丈夫だと思ってしまう現状をなんとかして改善する必要性を感じます。
その処方箋の第一は、当たり前の王道であると思いますが、一つひとつの審査が
規格(JIS、ISO)に照らして厳格に公平に行われることであると思います。