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再び設計開発について | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.110 ■□■   
*** 再び設計開発について ***
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■□■ 設計は図面というイメージが強い ■□■

設計というと「図面を書くというイメージ」が強いが、ISO9001でいう設計・開
発はそれだけではありません。

サービス業における活動においては、図面は書かなくても計画を立てるこ
とはよくあります。それらの計画の内容が新商品、新製品に関するもので
あれば、その計画行為はISO9001が定義する設計開発にあたります。

ISO9000:2015には設計・開発に関して次のようにあります。

「対象に対する要求事項を、その対象に対するより詳細な要求事項に変換
する一連のプロセス」

■□■ くい打ち工事には設計がある ■□■

先日、超ISO起業研究会で飯塚東大名誉教授との懇談会が開かれました
。そこでは設計・開発について「くい打ち工事」を例にしてざっくばらんな議
論がなされました。
専門家も加わり自由闊達に意見交換が行われましたが、いろいろな切り
口が出ました。

設計プロセスは無いという意見。

A.くい打ち工事は国交省の認定工法であり、施工のやり方は決まってい
るので施工者には設計をする余地はない。

設計プロセスは有るという意見。

B.くち打ち工事の実施の仕方については、詳細なことになると決めておか
なければならないことが多くあり、それを決めることは設計にあたる。

なお、ここで議論をくい打ち工事を対象にしている意図は、たまたま社会的
な問題になったことで、事例として取り上げることで多くに人に理解しても
らえると思ったからです。

■□■ A(設計は不要)の意見 ■□■

今回のくい打ち工事は、大臣認定を取得した「ダイナウィング工法」で施工
していたと聞くが、大臣認定工法はやり方が決められているので、やり方
を守らなかったという問題はあるかもしれないが、施工者が工事のやり方
を設計するという余地はない。

ちなみに、大臣認定されたダイナウィング工法の作業フローは次のとおり
である。

 1.掘削作業
   -掘削ロッドの鉛直度を確認・調整
   -掘削液をビットの先端から吐出
   -地盤に適した速度に調整

 2.支持層の確認
   -ボーリング調査結果の確認
   -試験杭時、試掘削にて土砂を採取し土質標本と照合
   -オーガ※モータ電流値の変化傾向による支持層の推定

※建設機械の1つでスクリュー等を回転させて地中に穴を掘っていく機械

 3.根固め部の築造
   -セメントミル注入
   -流量計で注入量を計測・記録

 4.オーガ引上げ
   -拡大掘削径による引上げ

 5.杭埋設
   -杭の建込及び埋設
   -杭の定着

■□■ B(設計は必要)の意見 ■□■

一般論として、施工をする場合には、今回のくい打ち工事に代表されるよう
に手順が決められていたとしても、さらに詳細な要求事項への変換が必要
ではないか。施工仕事が達成しなければならない品質を確保する上で、「
対象に対する要求事項を,その対象に対するより詳細な要求事項に変換
する一連のプロセス」(ISO9000:2015箇条3.4.8)が必要である。

今回のくい打ち工事の事例を見ても、大臣が指定した作業フローだけでは
品質確保されないと思う。

たとえば、2.支持層の確認には「オーガモータ電流値の変化傾向による
支持層の推定」とあるが、より詳細な要求事項に変換が必要であろう。

同様なことは1~5の各要求事項でも言えるのではないか。
   
■□■ 一般に施工にも設計・開発プロセスはある ■□■

AとBのグループに分かれて自由な議論を交わした結果、飯塚先生を含め
て次のような結論になりました。

何事もそうであるが、従事する人にはそれなりの力量が必要とされます。
したがって、施工者の技能が重要になりますが、同時に従事する人が多
数いても、同じ工事品質が得られる工夫も必要であり、大臣認定の要求事
項はさらに詳細化する必要があります。

たとえば、くい打ち工事では次のような詳細化された要求事項が必要では
ないでしょうか。

1.掘削ロッドの鉛直度はどのように調整するのか。
2.地盤に適した速度はどのように調整するのか。
3.ボーリング調査結果を確認して何を行うのか。
4. 試掘削で土砂を採取し土質標本と照合する場合の基準は何か。   
5.オーガモータ電流値による支持層の推定にはどんなやり方が必要か。
  例えば、雨に濡れないようにするとかの注意事項が必要。
6.セメントミル注入時の注意事項は何か。
7.オーガ引上げ時の注意事項は何か。
8.杭の長さが足りなかった場合、どのような対応をしなければならないの
か、など

次回の懇談テーマを検討した結果、「リスクの特定と品質目標」
となりました(箇条6.1.2と6.2.2の関係)。

■□■ 箇条6.1.2 リスクへの取組み ■□■

リスク及び機会は次のような取組み計画を作る必要があります。

a) 決定したリスク及び機会への取組み
b) 次の事項を行う方法

1) その取組みの品質マネジメントシステムプロセスへの統合及び実施
(4.4 参照)
2) その取組みの有効性の評価

リスク及び機会への取組みは,製品及びサービスの適合への潜在的な影
響と見合ったものでなければならない。

■□■ 箇条6.2.2 品質目標の達成計画 ■□■

品質目標にはa)からe)に実行計画の規定があります。

a)  実施事項を決定する。
b)  必要な資源を決定する。
c)  責任者を決定する。
d)  実施事項の完了時期を決定する。
e)  結果の評価方法を決定する。