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品質不祥事に思う ― 文書化9 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.185 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 文書化9 ***
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昨今の品質不祥事における釈明に、旧来からの慣行であったという
コメントを散見します。10年前あるいは20年前から同様なことを
行っていたので、ことさら悪いことをしたとは思っていなかった
というコメントです。

確かに今回品質不祥事と称された製品が市場で品質問題を起こした
という話は聞きません。問題があってとしても、社会に報じられるほど
大きな品質問題になっていないのでしょう。
不祥事には多様な要因がありますので、言い切ることはできませんが、
製品規格が必要以上に厳格であったということもあると思います。

■□■ ルールの冗長性について ■□■

われわれの日常生活でも同様なことが頻繁に起きます。
例えば、時間についてです。みなさんは、会議の時間にどのくらいの
余裕を持って出発するのでしょうか。

Aさんは新らたなプロジェクトに参加することになり、毎週5Km先の
場所に行かなければならなくなりました。
会議開始時間は原則午後13:00と決まっています。ネット検索では
45分の所要時間と出ていますが、心配性のAさんは1時間を所用時間と
することにしました。

1か月過ぎて4回とも45分以内で会議の場所に行けました。3か月経ち
ましたがAさんは相変わらず1時間を所用時間としています。
15分は交通事情に何かが起こることへの備えだとAさんは考えています。

■□■ ことはバラツクという自然の原則 ■□■

われわれ産業界のルールも、多くの場合、余裕を見て決められています。
産業界ごとに、余裕率、冗長性またはマージンなど異なった呼び方が
されているようです。

例えば、機械部品などの寸法のケースでは、10cmという設計理論値に対して
バラツキを±10%(9cm~11cm:これを公差という)見込んで、部品がユニットに
組み込まれるように設計します。これは多数の部品には、いろいろなバラツキ
要因が働き、すべての部品をきっちと10cmでは作れないことから、バラツキを
見込んで設計しているためです。

自然には多くのバラツキ要因が存在し、機械部品の例でいえば、例えば材料の
バラツキ、機械のバラツキ、刃工具のバラツキ、潤滑油のバラツキなど、
上げだしたら切がないほど、すべてのものはバラツキの原則の中に存在します。

■□■ 厳格な規格の見直しについて ■□■

バラツキをどのくらいの量に押さえることができるのかは、部品を作る側の能力に
よります。作る側に能力があれば、余裕を多く見て例えば設計値±10%という
規格寸法にたいして部品図は±8%と厳しくします。

10%-8%=2%を余裕率というわけです。更に工程に能力がある場合は、余裕率を多く
見て、±7または±6などにする企業もあります。
当然ですが、目標とする寸法を厳しく決められる(余裕率を大きくされる)と、
作る方は大変になりますので、最終品質に影響しないのであれば出来るだけ
余裕率は小さくしてほしいという状況が作る側には生まれます。

これが、厳格な規格寸法を緩められないのか、という見直し議論の背景になります。
さらに言えば、部品供給者は余裕が2%あるので、もし規格寸法をはみ出しても
±10の中に入っていれば、顧客に特別採用してもらえるという事情もあったようです。

■□■ 厳格な規格の見直しについて ■□■

われわれの社会では、一度決められたルールを変えることは、どのような状況に
おいても慎重にならざるをえません。そのルールで行ってきたことが、結果として
問題も起こしていないという事実があればあるほど、そのルールを見直すことには
明確な理由が必要になります。

今般の不祥事の一部にあるような、外部文書で決められていたことを組織の判断で
見直したということはあってはならないことです。

■□■ 14. 外部文書の識別の確認 ■□■

企業の守るべきルールは、多くの場合外部文書に規定されています。
外部文書には次のようなものがあります。

 1.契約書
 2.仕様書
 3.法律
 4.規格
 5.協定など

これらの文書に規定されていることを変更するには、多くの支障を
超えていかなければならないでしょう。

自己業務に関係する外部文書はきちんと確認する、外部文書に規定
されていることを知らず知らずのうちに破っていないか、などを
自問自答することも重要でしょう。

 ■□■ 15. 配布管理方法の確認 ■□■

外部文書は、どのような考え方で必要な部門に配布されているか
確認しましょう。
また、外部文書の配布はどのような方法で行っているのかも
チェックするとよいでしょう。