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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.79■□■
*** 附属書SL策定における議論***
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■□■ 各専門委員会にその権限はある ■□■
フォーラムの続きです
(昨年テクノファ年次フォーラムでは附属書SLに関して、
有識者の方に集まっていただいてパネルディスカッションを
行いました)。
フォーラムの時の様子をお伝えしますが、
出席者の方の発言は平林の責任で編集させていただいています。
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平林:
次に奥野さんに、TMB/TAG/JTCGで附属書SLの策定作業に
直接携わったことを踏まえて、今までの一連の話に対する
コメントをお聞きします。
奥野麻衣子さん(三菱UFJリサーチ&コンサルティング):
皆さまから附属書SLに対していただいたお話が
あまりにも的を射ていることもあり、
策定に関わった身としてどう言えばいいのかちょっと
戸惑っています。
基本的に規格の中身の作成については、
各専門委員会にその権限があります。
その専門委員会に参加している各国エキスバートの
合意による決定に対して、単なる諮問機関であるJTCGには
待ったをかける権限などは一切ありません。
そういうことを踏まえた上でご紹介します。
まず附属書SLとは、ISOマネジメントシステム規格の
共通の土台になるものです。
逆に言うと、それぞれの分野の固有の規格を作ってもらうために
柔軟性をもっています。
分野ごとの要求事項を追加できるよう
柔軟性を確保しているわけですが、
どうしても適用できない分野固有の規格要素、
あるいは附属書SLの共通要求事項がある場合には、
JTCGにリポートしていただきその扱いを検討するという
プロセスを設けています。
■□■ JTCGにはISO14001の代表として参加 ■□■
奥野さん:
私はJTCGにはISO14001の代表として参加してきました。
実はこのJTCGにおける附属書SLの作成過程は、
要求事項の本文と用語とでは逆の発想で進められました。
まず本文は共通化について最大限の達成を図ることを念頭に
策定が進められました。
具体的には、各分野の規格本文に共通にするものだけを
残していくやり方をとっています。
逆に、先ほどから話に出ているリスクを含めた
用語の定義に関しては、できるだけ幅広く
取り込んでいこうという考えで進められました。
そのためもあって附属書SLには
使い勝手が悪いところも少しはあるかとは思います。
ただ基本的にはそれをどう使うのかという権限、
その際の柔軟性などは、すべて個別の専門委員会に委ねており、
各委員会が判断して策定作業を進めることで、
より使いやすいようにしていただくことになっています。
なお、2013年夏、
ISO中央事務局がTC207総会で報告した内容によると、
附属書SLを使って各専門委員会がそれぞれの規格を改正、
策定作業をしているが、著しく逸脱したケースは
見られないとのことです。
■□■ コンセンサスレベルの低い理由 ■□■
奥野さん:
次に附属書SL策定についてですが、
先ほどの吉田さんがご指摘したとおり、
途中段階のコンセンサスのレベルが低いのは確かですね。
JTCGで附属書SLの策定したグループには、
lSO9001やISO14001からはそれぞれエキスパート4人が
参加していますがISO/IEC27001やISO22301など他からは
一人か二人でした。
附属書SLを作っていく過程でのブロセスは、
試行錯誤の続くジグザグプロセスでした。
ドラフトを各段階で各エキスパートが
専門委員会に持ち帰って議論してもらい、
その内容をJTCGに戻して検討するといった
丁寧なコンセンサスブロセスです。
しかし、スタートからしばらくの間、
また中間でも作業がなかなか進まなかったこともあり、
プロセスを増やす案はTMBに受け入れられませんでした。
むしろ逆にプロジェクト期間が5年ということもあり、
急かされて作ったという印象が残っています。
■□■ リスクに関しては相当議論した ■□■
奥野さん:
皆さんからご意見をいただいているリスクに関しても、
コンセンサスレベルが高かったとは言えないのは事実です。
もちろんさんざん議論は重ねてきてはいます。
このリスクについては、世の中ではリスクマネジメントや、
その他新しいコンセプトが次々と現れてきており、
その定義についてはいろいろな考えを検討する必要が
ありました。
企業ガバナンスの分野においては、
コーポレートレベルでリスクという概念が既にあるが、
附属書SLにおいて馴染むのかという指摘もその一例です。
また、旧態依然としたISOのマネジメントシステムから
経営に本当に役立つ仕組みに昇華させるためには、
リスクというコンセプトをしっかり入れるべきだという
意見も出されました。
さらには、リスクの意昧についてユーザーの間で
相当な開きがあるが、この認識の一致はどうやるべきか。
このように、リスクに関しては
長い時間をかけていろいろ検討を重ねたことを覚えています。
以上
※注)JTCGとは
2006年、ISO本部にJTCG
(Joint TechnicalCo-ordination Group = 合同技術調整グループ)
という委員会が設置され、マネジメントシステム規格の整合性向上の
手順などに関して、改定・作成を含めた作業が行われています。